2024年5月31日金曜日

警察小説傑作選 相克

警察小説傑作選 相克 西上心太編

区立花園公園 大沢在昌
 鮫島33才、本庁公安外事二課から半年前に転任。公安部長にタテついてネタを握って渡さなかった。懲罰人事。警部のまま新宿にきた。 藤野組と繋がっている大森をつけている鮫島。嫌った大森は、鮫島を狙う。その前に入り込み鮫島を助ける死体といわれている課長。課長と鮫島は、移動がない。

新宿心中 藤原審爾
  無理心中にしてほしいと一千万の小切手を受け取る。返したことですっきりし、生活も穏やかになる。見てきたことを繋ぎ合わせ、競り市の場所が判る

日曜日の釣りは、身元不明 小路幸也
 駐在日記

月の雫 大倉崇裕
 月の雫製造の酒蔵の社長が、蔵を買収される酒蔵の社長を殺した。小柄な警補・福家が社長を追いつめ逮捕に至る。

オブリカード 今野敏
 警視庁捜査一課の刑事だった相楽は、東京湾岸臨海署の強行犯係、「相楽班」。もう一つ、「安積班」があり、安積にだけは負けまいと思っていた。安積班の追っている事件と相楽班の追っている事件が交わり、安積は、自分たちの情報を余すところ無く指し出した。二つの事件が解決した。オブリガードな関係。



2024年5月29日水曜日

明日は結婚式

明日は結婚式 小路幸也 

 パン大好きな信用金庫勤めの伊東春香26才が、実家がパン屋さんのグラフィックデザイナーイラストレーターの細井真平31才と結婚することになった。

2024年5月26日日曜日

荻窪シェアハウス小助川

 荻窪シェアハウス小助川 小路幸也

 沢方佳人、高校三年生、将来何をするか決められなくて酒店でアルバイト中。中学一年生の時、父を亡くし、忙しい母に代わり家事全般を完璧にこなす。母が心配し、巣立つために、近くに出来たシェアハウスに四月から入る契約をする。

 シェアハウス小助川は、元医院。タカ先生57才は、父親と母親を一遍に亡くし、二年前に医院を閉めた。和洋折衷のこの建物が好きな相良奈津子は、会社に持ちかけタカ先生に持ちかけ医院をリノベーションし、シェアハウスにした。タカ先生は元々の渡り廊下で繋がる母屋に住む。

 三月、引っ越しをした。
 三浦亜由22才 大学を卒業し近所の幼稚園の先生になる。
 細川今日子18才 高校を卒業し、荻窪の本屋に就職
 柳田茉莉子40才 近くの歯科医院で歯科衛生士をしている。
 橋本恵美里18才 四月から大学生。
 大場大吉37才 レストランのウエイター
六人の生活が始まった。

 ゴミの中からマッチの軸が箱一個分見付かり、亜由は何しているという話になる。亜由は、家族を顧みない画家の父との関係から自分に自信を持てなくなっていた。先生と話し、ゆっくり生きていけばいいと言われる。
 恵美里の先生に対する態度から、佳人が発した質問から、先生が気が付いた。恵美里は、先生の二十年前に離婚した妻の再婚後に生まれた娘だった。相良奈津子は、元妻の妹だった。相良は二年前に離婚した夫の苗字だった。
 大吉は、六月が苦手だという。商社マンだった十四年前、仕事で失敗し、自殺未遂をしたのが六月だった。弟は、北海道に帰らない兄を心配して東京で一緒に暮した。弟と彼女が薬を使っているところを見た。警察が入り弟を北海道に帰したのが六月だったという。
 みんなでバーベキューをした。
 九月、火事発生。外の物置が火元だった。放火の疑いで捜査する。おまわりさんも、消防士さんも元患者だった。親切だった。
 放火犯が捕まった。アパート擬のシェアハウスなどに住んでる連中が赤の他人同士なのに仲良くしているのを憎たらしく思って燃やしてしまえと思ったらしい。
 佳人と大吉は先生と母屋に住んでいる。
 建て直すために二か月が必要らしい。
 佳人は、一年で実家に帰るつもりだ。一年でお金を貯めるという。大吉は、ウエイターでなく厨房に入る。いつか自分の店を持つと考えた。
 先生が犬小屋を造り、犬を飼い始めた。
 十二月、工事が終わり、みんなが帰って来た。
 先生は、母屋を改装し、シェアハウスの食堂兼、レストランにしようと思っていると発表する。薬膳料理だけでなく、心も身体も健康にいい料理を出す。こつこつ一人で改装するので何年掛かるかわからない。大吉と佳人に任せたいと言う。一年後、三人で始める予定になる。
 佳人はフランスに行くことになった。南フランスのレストランで、食材の野菜を作り牛や鶏を飼っている。日本の家庭料理ができ、農作業を進んでやりたがる下働きを希望していた。給料は出る。農家に住み込み、家賃も食費もいらない。
 フランスに到着。恵美里に彼女を作らないことを約束させられた。二日目に〈お土産リスト全員分〉が届いた。プリントアウトして壁に貼る。リストを見ながら買い物する日を楽しみに頑張ろう。
 



2024年5月23日木曜日

ひとりみの日本史

ひとりみの日本史 大塚ひかり

 ひとりみを肯定的に描く大古典
 太古の日本の家族観 夫婦は家族の最小単位ではなかった。
 竹取物語は結婚拒否の話だった。
 源氏物語 結婚が権力の道具だった時代の結婚拒否の思想
 仏教思想とひとりみ。源氏物語で理想とするのはひとりみ 

2024年5月21日火曜日

最愛

 最愛 小杉健治

 鶴見京介は、同期の的場から強盗殺人容疑の栗林の弁護に付いて相談を受ける。
栗林は、闇バイトで強盗に入ったことは認めたが、殺人は否認。バイト仲間のイチローが殺したと主張するが、その男の存在が証明できない。
 一方、鶴見は撲殺事件の容疑者の弁護を引き受ける。半グレだった被害者を調べると、被害者の店の社長・今川が半年前にひき逃げに会い亡くなっている。まだ犯人は見付かっていない。社長のひき逃げ、今回の撲殺事件調べていると、もう一人の社員も殺される。
 今川の恋人、今川の妻、今川の妻が、今回の容疑者の愛人だった。そして依頼人でもある。
 調べていくと的場の事件と繋がっていく。

 今川の愛人・ちずえは、今川のひき逃げの理由と犯人が分るUSBメモリーを警察に届けるようにと、渡されていた。ちずえは、犯人への復讐に使った。
 今川をひき殺した犯人は、最期に殺された社員、殺す段取りを整えたのは、撲殺された社員・高井。容疑者になったのは今川の妻の愛人。憎しみから容疑が強くなるように、犯人から渡されたハンマーを彼のマンションの近くに捨てた。撲殺したのは、高井が強盗殺人のために雇ったイチローだった。今川がちずえに渡したのは、この事実の証拠だった。今川が、高井の闇バイトを知り警察に連絡しようとしたことで殺されたのだった。ちずえは、イチローを雇い高井と須田を殺させた。
 ちずえは、イチローを殺して自死を考えていたが、鶴見のところで自白し警察へ自首した。

 強盗殺人もひき逃げも撲殺事件もナイフで刺された事件も解決した。

 ちずえは今川を愛した。今川の妻は、今川を愛した彼女を支えようと思った。
 

2024年5月19日日曜日

芋洗河岸3 未だ謎 完

 芋洗河岸3 未だ謎  佐伯泰英

 小此木善次郎が一口長屋に住み始めて二年が過ぎた。

 神田明神で一年前から続く賽銭泥棒の捕縛に乗り出し捕まえた。シング神具誂えの高砂屋一門だった。賽銭箱を二つ用意し、小銭の入った賽銭箱と釣り上げて交換していた。
 賽銭泥棒を捕まえた礼金は、高砂屋一門の代わりに神具誂えをする、高砂屋分家の指導料に使われることになった。
 越後屋の要請で、松平邸に行く。次弟の継右衛門との立ち合いで小此木が勝てば借財の一部四千両を返済、継右衛門が勝てば、八千三百両の借用書を廃棄するという。継右衛門は亡くなった。越後屋は四千両を持ち帰り、松平家の借金を帳消しにした。
 善次郎は継右衛門を斬ってしまったことに後悔した。

 長屋の一室に半二階を作った八五郎たちは、越後屋に報告する。越後屋はこんな危ない物は駄目ということで大工を入れ正式な半二階を造作した。善次郎の長屋は、増築された。一階は台所土間と二部屋になり、二階ができた。二階は周回廊下で囲まれた床の間付きの六畳間だった。

 二階で、中秋の名月と不忍池に反射した光で愛刀・國重の抜き身が、神秘の光に彩られていた。今後自分の成すべきことを考える。

 生後一月の犬を長屋で飼うことになった。息子・芳之助に、もみじを家で飼いたいならば道場の稽古に行くと条件を付けた。

 善次郎は愛刀を封印した。越後屋の共で真田家に行く。善次郎は竹棒で対する。越前屋嘉兵衛は家老は向後百年を熟慮し、あえて惨敗という結果で、奮起させようとしたのではないかと思った。

2024年5月17日金曜日

書院番勘兵衛〈二〉 怨気の剣

 書院番勘兵衛〈二〉 怨気の剣 鈴木英治

 勘兵衛が、書院番になって一年。(前の話は、久岡家は書院番だったが、徒目付頭・飯沼麟蔵に引かれ徒目付になっていた。)
 亡き親友、妻・美音の兄、蔵之介の墓参りの帰路二人組に襲われる。相手にはまったく覚えがなかった。
 勘兵衛の前を行く四人組の武家が襲われた。主人・原田が斬られ、家臣も斬られる。中間二人が動けない状態だった。勘兵衛が声を掛け抜刀する。襲撃者は頭巾をしていた。襲撃者が目を見張った。勘兵衛の見覚えのある目だった。襲撃者は逃げた。飯沼に知らせた。
 原田家に養子に入って十六年、死んだ家臣は岡本。養子に入ってすぐ呼び寄せ用人が亡くなって用人にした。

 履物商の鈴野屋伊兵衛が勾引かされた。富裕な商家の勾引かしが五件起きていた。奉行所に知らせず金を払い助かった者、亡くなった者があった。鈴野屋に伊兵衛直筆の手紙が届き、三百両を払い、翌々日、伊兵衛は怪我もなく見付かった。
 稲葉七十郎は、隅田川神社近くの小川に顔を突っ込んで死んでいる男が見付かった。名前も住所も分らない。饅頭を十二個包み紙に入れて持ったままだった。
 田村屋が勾引かされた。二度目だった。半年前は千両払って助かっていた。今度は遺体で発見された。
 田村屋は半年前、勾引かされた時、犯人達と田村屋の息子・吉太郎と伊兵衛を殺すことを約束させ千両払っていた。吉太郎は五か月前、寺の階段から落ち死んでいた。事故死とされた。

 原田の前身が分った。丹波の大名の家臣、勘定方勝浦辰之介。三千両を横領し、姿をくらましていた。十年前、原田を襲った浪人は、上役の息子だった。上役は切腹していた。浪人は殺された。その息子が、原田家の中間になっていた。もう一人原田の追ってがいた。原田が逃げる時妻を奪われた、家中一の使い手・鈴木哲之進。その後、藩主の乱心で藩は取り潰しになった。麟蔵たちは、鈴野屋伊兵衛が、原田を殺したと考えたが、七十郎と会い、その時勾引かされていたことを知る。

 勘兵衛を狙った二人組は、一年前の事件を起こし改易になった植田家の女中・豊の息子兄弟だった。豊が亡くなりしがらみが無くなった。憎しみをぶつけていた。
 原田を殺した男にも狙われる。
 
 田村屋と伊豆見屋が組んでいたことが分る。伊兵衛が、伊豆見屋を狙いに来た時、麟蔵の要請で勘兵衛が一緒だった。伊兵衛と勘兵衛が戦っている最中、伊豆見屋が伊兵衛を刺した。二人は死んだ。
 伊兵衛は、勾引かされてすぐ、四人を殺した。買い物に出ていた男が帰ってきた。留めをさせないまま逃げた。原田を殺して、見付かる所にいた。
 伊兵衛との出会いを思い出した。十五年前、二人の浪人に集られていた行商人を見付けた勘兵衛は、「お役人、あそこです。早くはやく来て下さい」と叫んだ。浪人は逃げた。行商人は伊兵衛だった。

 勘兵衛を狙う者がいなくなったと思ったが、勘兵衛は、狙われた。
 勘兵衛の同僚に、小島三郎兵衛と近藤松左衛門がいる。二人は仲良しだ。三郎兵衛に命を狙われた。松左衛門は掏摸を働く。勘兵衛が感ずいたと考えた三郎兵衛は、勘兵衛を殺そうと考えた。強かった。松左衛門が現れ三郎兵衛を連れて行く。松左衛門は届けを出し切腹した。三郎兵衛も切腹。

 七か月経った。美音が女の子を産んだ。古谷の女中・多喜が取上げた。多喜が久岡の家に来ることになった。

 

 
 

2024年5月15日水曜日

隠密船頭〈十二〉 仇討ち

隠密船頭〈十二〉 仇討ち 稲葉稔

 南町奉行・筒井伊賀守の「隠密」沢村伝次郎は、過去の裁きの再探索を下知された。
 酒問屋仲間の行司役の徳兵衛が、肝煎り・矢野屋弥兵衛に斬りつけた事件だった。幸い傷は浅く、徳兵衛は捕らえられ「中追放」となった。徳兵衛は、後に自ら命を絶った。徳兵衛の仇討ちを企む者がいるらしい。徳兵衛は調べでも何も話していなかった。 

 伝次郎の調べで、仇討ちをしようとしているのは、息子の勘次郎、番頭の利兵衛、徳兵衛に助けられた浪人・丸橋金三郎の三人だった。
 徳兵衛は商売上手だった。問屋仲間に入りたい店があった。鹿島屋を仲間に入れるために松村屋が邪魔だった。鹿島屋を仲間にすれば、矢野屋に利が入った。行事役がうまく廻らないようにしたり、松村屋の内情を調べるために勘次郎の女房を呼び出し手込めにしたりした。辰は離縁され自殺した。問屋仲間の内にも不平不満が溜り、仲間が壊れそうになっていた。徳兵衛は決心し、弥兵衛に斬りつけた。

 徳兵衛の気持ちを知った三人は、弥兵衛が寮にいる時を狙う。利兵衛と金三郎は、近所の空家の柱に勘次郎を括り付け二人で行く。張り込んでいた伝次郎に止められる。利兵衛は、弥兵衛が勘次郎に謝ってくれれば、殺す気はなかったという。もし謝る気がなくて、殺してしまっても、勘次郎は、新しい店のためにもここにいない方がいいと考えていた。弥兵衛はやったことを暴かれ、連れてこられた勘次郎にも謝る。利兵衛は千両出し、肝煎りを下りると念書を書いた。伝次郎は引き上げた。
 矢野屋を潰す気はなかった。店には奉公人がいる。利兵衛はいった。
 肝煎りを下りた翌日、弥兵衛は卒中で死んだ。

2024年5月13日月曜日

上泉信綱伝 第一部 新陰の大河

 上泉信綱伝 第一部 新陰の大河 上田秀人

 上野国箕輪城主長野業政に仕える上泉信綱。関東管領・山内上杉家憲政と扇ガ谷上杉家朝定、関東公方・足利晴氏の連合軍を守るため獅子奮迅の活躍をするが、主君の嫡男・吉業を失った。憲当と名乗りを変えた憲政は、長尾景虎を頼り越後に逃げた。業政は関東管領を見限った。武田晴信の誘いも断り独自の勢力として西上野を死守することにした。1552年

 上杉景虎関東管領に任じられる。1560年
 北条討伐に加わった業政だったが、北条を小田原に押し返しただけで終わった。業政が亡くなる。1561年
 兵法を極めよという業政の言に従い上泉信綱は、家督を秀胤に譲り、弟子・疋田文五郎と神後宗治の二人を連れて廻国修業の旅に出た。
 信濃の国諏訪大社で奉納演武し、常陸の鹿島神社に詣でる。
 塚原卜伝に会う。話をし、三日滞在して鹿島を発つ。卜伝に京を目指せと言われ、言われた通り京を目指す。
 伊勢の北畠家に滞在し、具教から柳生里の柳生新左衛門に逢って欲しいと頼まれ大和柳生の郷へ行く。

2024年5月10日金曜日

ビブリア古書堂の事件手帳〈Ⅲ〉

ビブリア古書堂の事件手帳〈Ⅲ〉 三上延
 〜扉子と虚ろな夢〜

 プロローグ 五日前
 栞子は樋口という女性から、息子の父親が亡くなり、相続するはずの息子の本が、売られようとしている。どうにか止めてほしいと言われた。
 扉子は話を聞いた。マイブックに記録する。扉子がマイブックを持っていることを両親は知らない。

 初日 映画パンフレット「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」
 樋口恭一郎は、実父の父親・杉尾正臣に、藤沢古本市での手伝いを頼まれる。大輔が相続したわけでもないのに売るのは拙い、というと、相続した者が売っていいと言っていると言い、恭一郎に返事を迫る。扉子も一緒にバイトする。
 ゴジラの息子とインターステラーの値札をすり替えられた。扉子の言う通り近くのコンビニで二人は捕まった。一人が廻りを混乱させ、もう一人が値札を替えて支払う。
 映画パンフは康明・恭一郎の亡くなった実父の蔵書だった。康明の幼少時、塗り絵をしたパンフだった。これらのパンフを杉尾・祖父が買った。

 二日目・樋口一葉「通俗書簡文」
 恭一郎は、父親が、十五、六年 前にいなくなり、五年後位に帰ってきたことを知った。母・樋口佳穂が訪れ、父のことを話した。いなくなっていた五年間、父は事故に遭い記憶を無くしていた。その間に父と母は離婚していた。帰って来た父は、記憶が戻らないままだった。
 樋口一葉の本に五千円札が挟まれているのが見付かった。お札番号の1から5まで5冊あるようだ。四冊は見付かった。挟まっているらしい本は売れていた。扉子は、今夜中に五千円が戻ると言う。
 本を買ったのは、恭一郎の母・佳穂だった。もともと佳穂は大学時代一葉の研究をし、康明の蔵書となった本は、佳穂のプレゼントだった。
 康明は、昔と同じ家に住んで、同じ仕事をしてでも記憶は戻らなかった。持っていた蔵書を読んで自分が何を好んで、何を考えていたかを学んでいった。自分が死んだら好きな本を持って行って欲しい。大切な人に自分の一部を持っていてほしい。という思い。

 半年前
 康明が九州にいるところを見付けたのは篠川智恵子・栞子の母親だった。
もうすぐ、入院するという康明に「ドグラ・マグラ」初版本を入院時に持って行って欲しいと本を渡した。

 最終日・夢野久作「ドグラ・マグラ」
 最終日が終わった後、杉尾の家にみんなが集まる。智恵子も来る。智恵子は杉尾に、売る売ると言いながら売ってしまったように見せて、康明の蔵書を自分の物にするつもりだったんだろうと言う。佳穂は智恵子と謀り、蔵書を持ち出し焼いてしまった。佳穂は、恭一郎が彼の蔵書を読み、同じようにならないか心配していた。康明の時は、恭一郎がいたから耐えられた。恭一郎が同じようになると耐えられないと思った。

 エピローグ1ヶ月後
 恭一郎は、佳穂と顔を合わせなたがらない。週の半分を祖父のところで過ごす。祖父は、佳穂が蔵書を処分しようとしていることを感じ、残しておきたいと考えていた。
智恵子の家に康明の蔵書の七割が揃った部屋がある。恭一郎に、好きに読んでいいよと言う。智恵子は、自分の後継者を探していた。娘夫婦を考えていたが、栞子は別の道に行った。恭一郎が候補だった。そして扉子。扉子をここに通うように仕向ける小道具は用意した。大輔の物よりもっと完全なビブリア古書堂の事件手帳。黒い本だ。

 


 

2024年5月8日水曜日

ビブリア古書堂の事件手帳

ビブリア古書堂の事件手帳 三上延 
 〜扉子と不思議な客人たち〜

 2018年秋 五浦大輔と栞子が結婚して七年。二人の間に生まれた娘・扉子六才。栞子にそっくり。
 七年前から、洋古書の売買を母・智恵子から学び、今は、夫婦交替で海外の智恵子の手伝いをする。
 青いブックカバーを付けた大輔の本を、どこかに置きっぱなしだから探して置いてほしいと大輔が栞子に頼んだ。

 与田準一編「からたちの花北原白秋童謡集」
 平尾由紀子の父の腹違いの弟・坂口昌志が四十年前に、銀行強盗をして捕まった。由紀子が幼稚園に入った頃、刑期を済ませた後、半年間由紀子の家にいた。由紀子が小学四年生の頃、法事で来た昌志は、由紀子の家に泊まった。その夜、叔父が由紀子の部屋へ入ったことを見咎められ叔父との行き来はなくなった。今、父が入院し、叔父に子供が出来たことで、由紀子は父に頼まれお祝いを持って行く。そして本を一冊。からたちの花を読んだ時、幼い頃寝る前に父が本を読んでくれたと思っていたが、あれは叔父だったということが分った。からたちの傍で泣いたよ・・・からたちの傍で笑うよ・・・。
 お父さんの本あった?と扉子が、大船の今は本置き場になっている大輔の実家に付いてくる。

 「俺と母さんの思いでの本」
 息子・秀実がなくなる数日前に電話で、母親が送った荷物の中に、「俺と母さんの思いでの本」が入っていた。今度プレゼントすると言っていた。母親も、妻もそれがどの本か分らない。栞子にその本を探してほしいということだった。
 秀実の妻から、少し前に友人・岩本が借りていた本を返し、貸していた本を引き取りに来たと聞き、岩本宅ヘ行く。古本屋・滝野から蓮杖が、岩本の売った本を持って来た。栞子が電話したものだった。
 栞子は、妻・きららも呼んで母親に話す。「ファイナルファンタジーⅤピアノコレクションズ」ピアノ用の楽譜だった。秀実が、あの頃は嫌でしかたなかったけど、好きなことだけやってたら学べないことがあった。結果的にはいい経験させてもらったと言っていたというきらら。母親はいそいそとピアノに向かう。きららは聞きたいと大はしゃぎ。
  
 佐々木丸美「雪の断章
 志田は、雪の断章が手に入る度に、人にプレゼントする。篠川文香も貰った。友人・小菅奈緒は志田のことを志田先生と呼ぶ。文香と奈緒は高三の受験生。
 志田が橋の下の住み処からいなくなった。紺野祐汰が話しかけてくる。預かったという本を持って。奈緒には二冊目の雪の「断章」。紺野は志田の所に訪れた女の人が、具合が悪くなって救急車を呼んだことを話した。紺野と奈緒は志田を探していたが見付からない。紺野は、古本屋に、奈緒が受験そっちのけで、志田を探している。受験は危ないというような話を流せば、志田は連絡してくるだろうと言った。本当に連絡してきた。元奥さんの腹に腫瘍が見付かり、志田は付添いのために東京に戻っていた。志田は、紺野を知らなかった。奈緒は紺野に訳を聞く。引きこもりの紺野は、自分の部屋の窓から、奇麗な女の子がホームレスと仲良くしているのを見て、高校認定取って、大学目指そう。塾で勉強してバイトして髪切って、話を合わせられるように本読んで。少しは自信もついてマシになったかなと言う時に家族を助け、雪の断章を貰って仲良くなれるかなと思った時、志田がいなくなった。声を掛け嘘を付いたと話した。奈緒は自分のことを話してくれてありがとう。私のことを聞いて。

 内田百聞「王様の背中」
 吉原孝二は、舞砂道具店の三代目店主だ。先月亡くなった山田家を訪れ、古い本はないかと尋ねた。老女は、息子がビブリア古書店に持って行ったと言った。古書店の前を通ると、若い娘が、山田の息子と間違えて呼び込んだ。扉子が、山田の持ち込んだ王様の背中を読んでいる。孝二は、娘が、山田と間違えていることを利用して、やっぱり売るのは止めて持ち帰ると言い風呂敷に包んで駅へ急いだ。ビブリア古書堂の連中を出し抜いて人気の稀覯本を手に入れ、込み上げる笑いを抑え切れない。電車に乗る寸前、扉子と娘が追いかけて来る。反対から帰ってきた夫婦に話しかける。大輔が電車に乗った。孝二は、王様の背中をビジネスバックに入れ、コートを着替え、車両を変わった。大輔が来た。王様の背中に挟まれていた版画を一枚持っている。ひらひらと落とす。あっと思った時、大輔が空中で挟み込む。吉原さんこっちに来て。何故、自分のことが分ったのか不思議だった。
 二人が追いかけたのは版画が落ちていたのを届けるため。吉原の名前が分ったのは、老女が、ビブリアに古書を売るのをやめ、吉原に売ろうと考えたため。警察に行かないで、二人に謝り穏便に済まそうかという大輔に、孝二は、警察に行くと言った。

 これらの話を、栞子は扉子に話しながら、大輔の本を探していた。大輔の本・マイブック二〇一〇年の記録。
 

 

2024年5月6日月曜日

江ノ島西浦写真館 

 江ノ島西浦写真館 三上延

 桂木繭は、2015年1月10日、江ノ島にある祖母の写真館の遺品整理に来た。母・作家・桂木奈々美。一緒に遺品整理をする予定だったが、母は来る気はなかったようだ。繭は、大学を卒業し、就職した。写真館の二階に滋田が住み、管理を任されている。整理は、自分が居ない、8時半から夜9時までにして欲しいと言った。

 余り話をしない繭に、祖母はカメラを貸してくれた。繭は写真が大好きだった。自分が撮った写真をかってに世に出し、唯一無二の友人を失った。繭は写真を辞めた。

 写真館に未渡しの写真があった。

 真島昌和。代々似た人がというぐらい時代は違うが似た人が写っていた。認知症気味の祖母と共にいる真島秋孝という孫に写真を渡す。秋孝の祖母は、祖母・富士子を富士子お姉さんと呼ぶ。孫・秋孝を夫・昌和さんと呼ぶ。
 秋孝が家の整理を手伝ってくれることになった。

 永野琉衣の写真が出てくる。撮ったのは高坂晶穂。琉衣は、繭の唯一の友人だった人で、晶穂は、四年前縁を切った大学の先輩だった。琉衣には、教主様が付いていた。繭が撮った写真を母が本の表紙に使い、琉衣は映画出演した。大学に入り琉衣の写真を撮った。その写真がネットにばらまかれ集団自殺カルテット教主様とかで炎上した。琉衣は繭を責め、芸能界を引退し、姿を消す。繭は誰も信じられなくなりカメラが怖くなり逃げた。琉衣は繭を拒絶した。誰がネットに揚げたか判らないまま放置された。
 写真を渡すために、晶穂の居所を探す。大学のサークルの先輩に電話する。
 晶穂と写真館で会う。晶穂は仕事がなくなり困った時、この写真館の従業員だった。同じ頃、琉衣もここにいた。
 話をしていて繭は、誰がネットに流したか分った。晶穂も分っていた。

 立川研司は、婚約指輪を、写真館の棚の中にあった銀の固まりで作った。祖母は気が付いていた。死ぬ前に婚約者・現奥さんに話していた。研司は謝った。
 研司は秋孝が、前に会った人と違うと言う。

 秋孝は、事故に遭い記憶を失った。顔を整形で祖父の顔に作られた。祖母が、昌和に昌和さんはどこ?と言うようになったから。また、秋孝の顔は今の方が良いだろうという祖父。
本物の写真が、袋に仕舞われていた。秋孝は、元に戻る機会を与えてくれた繭に。顔を変えられて何も出来ずにいた自分を記録しておきたい。今の僕を撮ってほしい。あなたが、写真に関わっても誰かの人生が簡単に狂ったりしない。狂った人生が戻ることもある。写真を撮った。
 
 二階にいる管理人は琉衣だった。琉衣久しぶり。ごめんなさい。久しぶり、繭ちゃん。

 

2024年5月3日金曜日

闇医者おゑん秘録帖② 碧空の音

闇医者おゑん秘録帖② 碧空の音 あさのあつこ

 臨月近い竹という女が、産みたいと駆け込んで来た。浮腫があり、頭痛や吐き気、眩暈があるという。十両をゑんに預ける。二日後、陣痛が始まる。赤ん坊・男の子は産まれたが、竹は死んだ。竹一と名付けられ近所の磯の乳で元気に育っている。里子に出す親を見付けなければならない。

 ここから里子に出した二人の子が亡くなっていた。花は病気で亡くなった。与一は何故なくなったのか分らない。与一は二年前に貰われて行った。八か月前は元気だった。四月前に子が産まれた。内儀が与吉を折檻すると噂がでる。真相は判らない。ゑんが知った時には葬儀は終わっていた。
 ゑんは仕組みを作ろうと思う。引き取り手をできる限り江戸府内にし、少なくとも二、三年は三月に一度程の割合で様子を見る。赤ん坊の世話を請け負う者、赤ん坊の引き受け手を新しい親として相応しいが詳しく調べる者。そんな仕組みを作りたいと思う。赤ん坊の部屋を整え、母親の部屋を増やす。与一の死を無駄にはできないと思う。

 吉原の首代・甲三郎が、惣名主・川口屋にお出で願いたいと伝えに来た。
 座敷持ちの女郎・桐葉が大店の主に内儀として身請けされることになっている。桐葉が懐妊した。備後屋主人・将吾郎の子で将吾郎は喜んだ。桐葉・喜多は、身請けされることは喜んだが、子を産むことを良しとしなかった。ゑんは子を流すにしても、喜多の今の体力では母体が持たないと考え、母体を元気にしている間に産むことを説得しようと思っていた。
 喜多と共に甲三郎も手伝いに寄越して貰う。備後屋の番頭が着た。甲三郎に尾行を頼むが、いなくなっていた。番頭でもなかった。番頭と名乗った者は殺された。
 ゑんは喜多の過去を調べる。将吾郎が養子に入る前が何も分らない。甲三郎の同僚・梅蔵に喜多を連れてきた女衒・丑松のことを聞いたり、備後屋の番頭に、将吾郎の亡くなった内儀のことや先代や先代の兄弟のことを聞く。
 喜多は、竹一の襁褓を縫ったり、竹一の世話をしているうちに、産みたくなる。ゑんは、呪縛に掛かり産んではいけないと思い込んでいるように思える喜多に、産んで良いんだよという。
 
 将吾郎とゑんが呼び出され現れたのは番頭と梅蔵だった。番頭は店のお金を使い込んでいた。もともと他所から先代に引き抜かれお嬢さんの婿になった将吾郎に嫉妬し妬み憎しみが募っていた所に吉原から身請けし内儀にしようとする、その上、使い込みを指摘され命を奪おうとした。吉原の首代と親しくなってお金で梅蔵を仲間にしていた。ゑんは二人が動くように罠を掛けた。二人の悪巧みを暴く。

 ゑんの祖父は異国人の医者だった。難破し辿り着いた村で病気を治し村人と助け合って暮していた。流行病は異国から来たものだと人々が、祖父を母を殺した。その中からゑんと末音は逃げ出し現在に至る。
 将吾郎は、四国の山の中で、十才の時、母子二人で暮す親子を生け贄にした村人側にいた。父親は、丑松に息子を託した。将吾郎は江戸に連れてこられた。一年余り前に、丑松は、死を前にして将吾郎に桐葉の見守りを願って来た。桐葉を見て、身請けしようと思ったと話す。丑松は喜多の姉と恋仲になっていた。村で立て続けに起こる災いが喜多の家族の所為だと言われ、家族が生け贄に選ばれた。家に火を付け殺される。喜多の姉が丑松に妹を託した。丑松は喜多を連れ江戸に出た。自分が喜多を育てるつもりだったが、喜多を見ると村人の残忍さを思い出す。どうしようもなく川口屋に渡した。今まで見守って来たが、自分ができなくなりそうで将吾郎に託した。将吾郎なら喜多の気持ちが分るだろうと。
 そんな過去を持つ二人だった。

 喜多は、竹一の具合が悪いと知らせるために、走った。喜多は出血した。出血が止まらなければ喜多も赤ちゃんも命が無くなる。下腹の痛みに耐えながら喜多は、この子を産みたい竹ちゃんと一緒に育てたいと言うようになった。

 喜多は身請けされたが、ゑんのところで働いている。子供が出来たら、竹一と子供を備後屋の子として届けるつもりのようだ。将吾郎は、待っているつもりのようだ。
 建物の建替えが始まった。備後屋と川口屋が費用を出してくれる。