書院番勘兵衛〈二〉 怨気の剣 鈴木英治
勘兵衛が、書院番になって一年。(前の話は、久岡家は書院番だったが、徒目付頭・飯沼麟蔵に引かれ徒目付になっていた。)
亡き親友、妻・美音の兄、蔵之介の墓参りの帰路二人組に襲われる。相手にはまったく覚えがなかった。
勘兵衛の前を行く四人組の武家が襲われた。主人・原田が斬られ、家臣も斬られる。中間二人が動けない状態だった。勘兵衛が声を掛け抜刀する。襲撃者は頭巾をしていた。襲撃者が目を見張った。勘兵衛の見覚えのある目だった。襲撃者は逃げた。飯沼に知らせた。
原田家に養子に入って十六年、死んだ家臣は岡本。養子に入ってすぐ呼び寄せ用人が亡くなって用人にした。
履物商の鈴野屋伊兵衛が勾引かされた。富裕な商家の勾引かしが五件起きていた。奉行所に知らせず金を払い助かった者、亡くなった者があった。鈴野屋に伊兵衛直筆の手紙が届き、三百両を払い、翌々日、伊兵衛は怪我もなく見付かった。
稲葉七十郎は、隅田川神社近くの小川に顔を突っ込んで死んでいる男が見付かった。名前も住所も分らない。饅頭を十二個包み紙に入れて持ったままだった。
田村屋が勾引かされた。二度目だった。半年前は千両払って助かっていた。今度は遺体で発見された。
田村屋は半年前、勾引かされた時、犯人達と田村屋の息子・吉太郎と伊兵衛を殺すことを約束させ千両払っていた。吉太郎は五か月前、寺の階段から落ち死んでいた。事故死とされた。
原田の前身が分った。丹波の大名の家臣、勘定方勝浦辰之介。三千両を横領し、姿をくらましていた。十年前、原田を襲った浪人は、上役の息子だった。上役は切腹していた。浪人は殺された。その息子が、原田家の中間になっていた。もう一人原田の追ってがいた。原田が逃げる時妻を奪われた、家中一の使い手・鈴木哲之進。その後、藩主の乱心で藩は取り潰しになった。麟蔵たちは、鈴野屋伊兵衛が、原田を殺したと考えたが、七十郎と会い、その時勾引かされていたことを知る。
勘兵衛を狙った二人組は、一年前の事件を起こし改易になった植田家の女中・豊の息子兄弟だった。豊が亡くなりしがらみが無くなった。憎しみをぶつけていた。
原田を殺した男にも狙われる。
田村屋と伊豆見屋が組んでいたことが分る。伊兵衛が、伊豆見屋を狙いに来た時、麟蔵の要請で勘兵衛が一緒だった。伊兵衛と勘兵衛が戦っている最中、伊豆見屋が伊兵衛を刺した。二人は死んだ。
伊兵衛は、勾引かされてすぐ、四人を殺した。買い物に出ていた男が帰ってきた。留めをさせないまま逃げた。原田を殺して、見付かる所にいた。
伊兵衛との出会いを思い出した。十五年前、二人の浪人に集られていた行商人を見付けた勘兵衛は、「お役人、あそこです。早くはやく来て下さい」と叫んだ。浪人は逃げた。行商人は伊兵衛だった。
勘兵衛を狙う者がいなくなったと思ったが、勘兵衛は、狙われた。
勘兵衛の同僚に、小島三郎兵衛と近藤松左衛門がいる。二人は仲良しだ。三郎兵衛に命を狙われた。松左衛門は掏摸を働く。勘兵衛が感ずいたと考えた三郎兵衛は、勘兵衛を殺そうと考えた。強かった。松左衛門が現れ三郎兵衛を連れて行く。松左衛門は届けを出し切腹した。三郎兵衛も切腹。
七か月経った。美音が女の子を産んだ。古谷の女中・多喜が取上げた。多喜が久岡の家に来ることになった。
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