ビブリア古書堂の事件手帳〈Ⅲ〉 三上延
〜扉子と虚ろな夢〜
プロローグ 五日前
栞子は樋口という女性から、息子の父親が亡くなり、相続するはずの息子の本が、売られようとしている。どうにか止めてほしいと言われた。
扉子は話を聞いた。マイブックに記録する。扉子がマイブックを持っていることを両親は知らない。
初日 映画パンフレット「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」
樋口恭一郎は、実父の父親・杉尾正臣に、藤沢古本市での手伝いを頼まれる。大輔が相続したわけでもないのに売るのは拙い、というと、相続した者が売っていいと言っていると言い、恭一郎に返事を迫る。扉子も一緒にバイトする。
ゴジラの息子とインターステラーの値札をすり替えられた。扉子の言う通り近くのコンビニで二人は捕まった。一人が廻りを混乱させ、もう一人が値札を替えて支払う。
映画パンフは康明・恭一郎の亡くなった実父の蔵書だった。康明の幼少時、塗り絵をしたパンフだった。これらのパンフを杉尾・祖父が買った。
二日目・樋口一葉「通俗書簡文」
恭一郎は、父親が、十五、六年 前にいなくなり、五年後位に帰ってきたことを知った。母・樋口佳穂が訪れ、父のことを話した。いなくなっていた五年間、父は事故に遭い記憶を無くしていた。その間に父と母は離婚していた。帰って来た父は、記憶が戻らないままだった。
樋口一葉の本に五千円札が挟まれているのが見付かった。お札番号の1から5まで5冊あるようだ。四冊は見付かった。挟まっているらしい本は売れていた。扉子は、今夜中に五千円が戻ると言う。
本を買ったのは、恭一郎の母・佳穂だった。もともと佳穂は大学時代一葉の研究をし、康明の蔵書となった本は、佳穂のプレゼントだった。
康明は、昔と同じ家に住んで、同じ仕事をしてでも記憶は戻らなかった。持っていた蔵書を読んで自分が何を好んで、何を考えていたかを学んでいった。自分が死んだら好きな本を持って行って欲しい。大切な人に自分の一部を持っていてほしい。という思い。
半年前
康明が九州にいるところを見付けたのは篠川智恵子・栞子の母親だった。
もうすぐ、入院するという康明に「ドグラ・マグラ」初版本を入院時に持って行って欲しいと本を渡した。
最終日・夢野久作「ドグラ・マグラ」
最終日が終わった後、杉尾の家にみんなが集まる。智恵子も来る。智恵子は杉尾に、売る売ると言いながら売ってしまったように見せて、康明の蔵書を自分の物にするつもりだったんだろうと言う。佳穂は智恵子と謀り、蔵書を持ち出し焼いてしまった。佳穂は、恭一郎が彼の蔵書を読み、同じようにならないか心配していた。康明の時は、恭一郎がいたから耐えられた。恭一郎が同じようになると耐えられないと思った。
エピローグ1ヶ月後
恭一郎は、佳穂と顔を合わせなたがらない。週の半分を祖父のところで過ごす。祖父は、佳穂が蔵書を処分しようとしていることを感じ、残しておきたいと考えていた。
智恵子の家に康明の蔵書の七割が揃った部屋がある。恭一郎に、好きに読んでいいよと言う。智恵子は、自分の後継者を探していた。娘夫婦を考えていたが、栞子は別の道に行った。恭一郎が候補だった。そして扉子。扉子をここに通うように仕向ける小道具は用意した。大輔の物よりもっと完全なビブリア古書堂の事件手帳。黒い本だ。
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