ビブリア古書堂の事件手帳 三上延
〜扉子と不思議な客人たち〜
2018年秋 五浦大輔と栞子が結婚して七年。二人の間に生まれた娘・扉子六才。栞子にそっくり。
七年前から、洋古書の売買を母・智恵子から学び、今は、夫婦交替で海外の智恵子の手伝いをする。
青いブックカバーを付けた大輔の本を、どこかに置きっぱなしだから探して置いてほしいと大輔が栞子に頼んだ。
与田準一編「からたちの花北原白秋童謡集」
平尾由紀子の父の腹違いの弟・坂口昌志が四十年前に、銀行強盗をして捕まった。由紀子が幼稚園に入った頃、刑期を済ませた後、半年間由紀子の家にいた。由紀子が小学四年生の頃、法事で来た昌志は、由紀子の家に泊まった。その夜、叔父が由紀子の部屋へ入ったことを見咎められ叔父との行き来はなくなった。今、父が入院し、叔父に子供が出来たことで、由紀子は父に頼まれお祝いを持って行く。そして本を一冊。からたちの花を読んだ時、幼い頃寝る前に父が本を読んでくれたと思っていたが、あれは叔父だったということが分った。からたちの傍で泣いたよ・・・からたちの傍で笑うよ・・・。
お父さんの本あった?と扉子が、大船の今は本置き場になっている大輔の実家に付いてくる。
「俺と母さんの思いでの本」
息子・秀実がなくなる数日前に電話で、母親が送った荷物の中に、「俺と母さんの思いでの本」が入っていた。今度プレゼントすると言っていた。母親も、妻もそれがどの本か分らない。栞子にその本を探してほしいということだった。
秀実の妻から、少し前に友人・岩本が借りていた本を返し、貸していた本を引き取りに来たと聞き、岩本宅ヘ行く。古本屋・滝野から蓮杖が、岩本の売った本を持って来た。栞子が電話したものだった。
栞子は、妻・きららも呼んで母親に話す。「ファイナルファンタジーⅤピアノコレクションズ」ピアノ用の楽譜だった。秀実が、あの頃は嫌でしかたなかったけど、好きなことだけやってたら学べないことがあった。結果的にはいい経験させてもらったと言っていたというきらら。母親はいそいそとピアノに向かう。きららは聞きたいと大はしゃぎ。
佐々木丸美「雪の断章」
志田は、雪の断章が手に入る度に、人にプレゼントする。篠川文香も貰った。友人・小菅奈緒は志田のことを志田先生と呼ぶ。文香と奈緒は高三の受験生。
志田が橋の下の住み処からいなくなった。紺野祐汰が話しかけてくる。預かったという本を持って。奈緒には二冊目の雪の「断章」。紺野は志田の所に訪れた女の人が、具合が悪くなって救急車を呼んだことを話した。紺野と奈緒は志田を探していたが見付からない。紺野は、古本屋に、奈緒が受験そっちのけで、志田を探している。受験は危ないというような話を流せば、志田は連絡してくるだろうと言った。本当に連絡してきた。元奥さんの腹に腫瘍が見付かり、志田は付添いのために東京に戻っていた。志田は、紺野を知らなかった。奈緒は紺野に訳を聞く。引きこもりの紺野は、自分の部屋の窓から、奇麗な女の子がホームレスと仲良くしているのを見て、高校認定取って、大学目指そう。塾で勉強してバイトして髪切って、話を合わせられるように本読んで。少しは自信もついてマシになったかなと言う時に家族を助け、雪の断章を貰って仲良くなれるかなと思った時、志田がいなくなった。声を掛け嘘を付いたと話した。奈緒は自分のことを話してくれてありがとう。私のことを聞いて。
内田百聞「王様の背中」
吉原孝二は、舞砂道具店の三代目店主だ。先月亡くなった山田家を訪れ、古い本はないかと尋ねた。老女は、息子がビブリア古書店に持って行ったと言った。古書店の前を通ると、若い娘が、山田の息子と間違えて呼び込んだ。扉子が、山田の持ち込んだ王様の背中を読んでいる。孝二は、娘が、山田と間違えていることを利用して、やっぱり売るのは止めて持ち帰ると言い風呂敷に包んで駅へ急いだ。ビブリア古書堂の連中を出し抜いて人気の稀覯本を手に入れ、込み上げる笑いを抑え切れない。電車に乗る寸前、扉子と娘が追いかけて来る。反対から帰ってきた夫婦に話しかける。大輔が電車に乗った。孝二は、王様の背中をビジネスバックに入れ、コートを着替え、車両を変わった。大輔が来た。王様の背中に挟まれていた版画を一枚持っている。ひらひらと落とす。あっと思った時、大輔が空中で挟み込む。吉原さんこっちに来て。何故、自分のことが分ったのか不思議だった。
二人が追いかけたのは版画が落ちていたのを届けるため。吉原の名前が分ったのは、老女が、ビブリアに古書を売るのをやめ、吉原に売ろうと考えたため。警察に行かないで、二人に謝り穏便に済まそうかという大輔に、孝二は、警察に行くと言った。
これらの話を、栞子は扉子に話しながら、大輔の本を探していた。大輔の本・マイブック二〇一〇年の記録。
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