闇医者おゑん秘録帖② 碧空の音 あさのあつこ
臨月近い竹という女が、産みたいと駆け込んで来た。浮腫があり、頭痛や吐き気、眩暈があるという。十両をゑんに預ける。二日後、陣痛が始まる。赤ん坊・男の子は産まれたが、竹は死んだ。竹一と名付けられ近所の磯の乳で元気に育っている。里子に出す親を見付けなければならない。
ここから里子に出した二人の子が亡くなっていた。花は病気で亡くなった。与一は何故なくなったのか分らない。与一は二年前に貰われて行った。八か月前は元気だった。四月前に子が産まれた。内儀が与吉を折檻すると噂がでる。真相は判らない。ゑんが知った時には葬儀は終わっていた。
ゑんは仕組みを作ろうと思う。引き取り手をできる限り江戸府内にし、少なくとも二、三年は三月に一度程の割合で様子を見る。赤ん坊の世話を請け負う者、赤ん坊の引き受け手を新しい親として相応しいが詳しく調べる者。そんな仕組みを作りたいと思う。赤ん坊の部屋を整え、母親の部屋を増やす。与一の死を無駄にはできないと思う。
吉原の首代・甲三郎が、惣名主・川口屋にお出で願いたいと伝えに来た。
座敷持ちの女郎・桐葉が大店の主に内儀として身請けされることになっている。桐葉が懐妊した。備後屋主人・将吾郎の子で将吾郎は喜んだ。桐葉・喜多は、身請けされることは喜んだが、子を産むことを良しとしなかった。ゑんは子を流すにしても、喜多の今の体力では母体が持たないと考え、母体を元気にしている間に産むことを説得しようと思っていた。
喜多と共に甲三郎も手伝いに寄越して貰う。備後屋の番頭が着た。甲三郎に尾行を頼むが、いなくなっていた。番頭でもなかった。番頭と名乗った者は殺された。
ゑんは喜多の過去を調べる。将吾郎が養子に入る前が何も分らない。甲三郎の同僚・梅蔵に喜多を連れてきた女衒・丑松のことを聞いたり、備後屋の番頭に、将吾郎の亡くなった内儀のことや先代や先代の兄弟のことを聞く。
喜多は、竹一の襁褓を縫ったり、竹一の世話をしているうちに、産みたくなる。ゑんは、呪縛に掛かり産んではいけないと思い込んでいるように思える喜多に、産んで良いんだよという。
将吾郎とゑんが呼び出され現れたのは番頭と梅蔵だった。番頭は店のお金を使い込んでいた。もともと他所から先代に引き抜かれお嬢さんの婿になった将吾郎に嫉妬し妬み憎しみが募っていた所に吉原から身請けし内儀にしようとする、その上、使い込みを指摘され命を奪おうとした。吉原の首代と親しくなってお金で梅蔵を仲間にしていた。ゑんは二人が動くように罠を掛けた。二人の悪巧みを暴く。
ゑんの祖父は異国人の医者だった。難破し辿り着いた村で病気を治し村人と助け合って暮していた。流行病は異国から来たものだと人々が、祖父を母を殺した。その中からゑんと末音は逃げ出し現在に至る。
将吾郎は、四国の山の中で、十才の時、母子二人で暮す親子を生け贄にした村人側にいた。父親は、丑松に息子を託した。将吾郎は江戸に連れてこられた。一年余り前に、丑松は、死を前にして将吾郎に桐葉の見守りを願って来た。桐葉を見て、身請けしようと思ったと話す。丑松は喜多の姉と恋仲になっていた。村で立て続けに起こる災いが喜多の家族の所為だと言われ、家族が生け贄に選ばれた。家に火を付け殺される。喜多の姉が丑松に妹を託した。丑松は喜多を連れ江戸に出た。自分が喜多を育てるつもりだったが、喜多を見ると村人の残忍さを思い出す。どうしようもなく川口屋に渡した。今まで見守って来たが、自分ができなくなりそうで将吾郎に託した。将吾郎なら喜多の気持ちが分るだろうと。
そんな過去を持つ二人だった。
喜多は、竹一の具合が悪いと知らせるために、走った。喜多は出血した。出血が止まらなければ喜多も赤ちゃんも命が無くなる。下腹の痛みに耐えながら喜多は、この子を産みたい竹ちゃんと一緒に育てたいと言うようになった。
喜多は身請けされたが、ゑんのところで働いている。子供が出来たら、竹一と子供を備後屋の子として届けるつもりのようだ。将吾郎は、待っているつもりのようだ。
建物の建替えが始まった。備後屋と川口屋が費用を出してくれる。
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