定食屋「雑」 原田ひ香
会社帰りに週二回か三回、「雑」に寄って、食事して酒を飲むのが楽しみ、自分の楽しみを取らないでと別居した夫。三上沙也加は納得出来ず、離婚届を書いていないが、夫は催促する。沙也加はやり直したいと思っている。「雑」がどんな所か、若い女性でもいるのかと偵察に行く。若い女性はいない。太ったおばちゃん一人で切り盛りしていた。
結婚後、仕事を辞め派遣会社で働く沙也加は、生活が苦しくなる。ひょんな事から「雑」がパートを募集していることを知り、派遣で行かない日に働くことになった。
雑色みさえ、前の店主・雑色さんから店を継いで、二代目ぞうさんと呼ばれている。先代が、みさえが出来るように定食屋に替えて行った。コロッケや豚カツを沙也加に教える。みさえは以前、雇った子のこともあって、沙也加に深入りしないようにしている。お客さんに対しても個人的な話はしないようにしている。だから、名前を呼んだことがない。
唐揚げの揚げ方を教わり、ハムカツの研究をする。
糠味噌の漬物を漬け、二人でカレーを作る。沙也加と呼ぶようになっていた。
沙也加は両親に離婚の話をした。父母は、あちらのご両親と話をすると言う。沙也加は父母が何か行動するよりも早く、離婚届を書いて健太郎に取りに来させた。自分で決めたかった。
九州から卵の営業マンが来た。卵かけご飯の店にすると言う話に、みさえは乗っている。自分の身体に自信が無くなり、卵かけご飯に少しおかずを付けるだけならまだ出来そうだと思った。
大晦日、恒例みさえは常連さんの御節を作る。沙也加にも。沙也加に誘われ初詣でに行く。
沙也加は、1Kのアパートに移った。
コロナの緊急事態宣言が発令され、「雑」はどうしようかね、と話しているうちに脅迫されるようになった。店は休業した。
みさえは歓迎されないことを承知で実家に帰った。思っていた以上に居る場所がなかった。
みさえと沙也加は相談し、店の前でお弁当を売り出した。
エピローグ コロナが下火になった。「雑」は弁当屋になって駅前に移り営業を始めた。コロナの緊急事態宣言が出たり引っ込んだり、定食屋兼お弁当やをやっているみさえは疲れてしまった。沙也加は駅前の空き店舗を見付け、体力的にも精神的にもみさえには難しいと思った沙也加は、ぞうさんの味が残ることが一番だと、厨房を作り替えみさえ一人で店を回せるようにした。いろんな雑事や書類仕事は沙也加がやり、みさえはご飯を作った。「雑」の片づけ、元店長の息子への連絡も沙也加がし、新しい店も昼の客だけに絞った。みさえが生活できればいい。
沙也加は新宿のIT関連会社に正社員で就職した。仕事後に寄り、店番と帳簿つけをした。
みさえは、沙也加に会社を辞めここを手伝ってほしいと話した。二人でやれば、帰ってしまう客が少なくなるし、途中でおかずが無くなることもない。お客をもっと増やせる。ゆくゆくは営業を代わってほしいと言われる。
まだ、きっちり返事をしていないがそうなるだろう。
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