駐在日記 小路幸也
蓑島周平 30才 神奈川県松宮警察署雉子宮駐在所勤務。巡査部長。前任地横浜では刑事だった。。妻となった花に静かな暮らしをさせたくて駐在所勤務を希望した。
蓑島 花 32才 周平の妻。横浜の大学病院の外科医だったが、ある事件で利き腕の右手に重症を負い、勤務医を辞めた。駐在の妻として生きることを決めた。
品川清澄 57才 雉子宮神社の神主。若い周平と花の良き理解者。
品川早稲 22才 清澄の一人娘、神社の跡継ぎ。周平と花の友人になる。
昭憲 51才 雉子宮唯一の寺〈長瀬寺〉の住職 一人暮らし。
高田与次郎 72才 雉子宮で〈村長〉を務めているが正式な役職ではない。
小菅 昭 12才 雉子宮小学校六年生。駐在所に出入りする読書好きの男の子。
田島美智代 12才 雉子宮小学校六年生。駐在所に出入りする読書好きの女の子。
プロローグ 昭和50年 4月5日 土曜日 今日からここが、私と周平さんの新しい住居と職場です。で始まる。私は日記を書くことにした。右手の指が細かく動かないが、ゆっくり書くことは出来るので、リハビリにもなるので。
駐在所は、二階建てで横に長く、下は土間と四畳半程の板敷きの駐在所と、子供に開放された和室に縁側付きの図書室がある。奥に竃や井戸がある土間があり、板敷きの台所、二部屋の八畳間がある。江戸時代の建物です。
荷物の整理に早稲ちゃんが手伝いに来てくれた。
日曜日の電話は、逃亡者 4月6日 周平がパトロールで出かけた後、バスから下りた男女が、顔面蒼白。食あたりの診断を下した花は、二人を駐在所で休ませる。
松宮警察からの電話で、強盗事件の犯人が、雉子宮出身なのでそちらに逃亡の恐れがあると連絡が入る。刑事科の先輩に電話する。
男が雉子宮出身だと話すので、清澄さんに来てもらい確認する。
周平は、久米康一31才と田村良美に話を聞く。康一は暴力団のような番畔組の沼田の家に押し入り良美を連れて逃げた。沼田が発砲したため、民間人が通報した。沼田は久米が十万円を盗んだと警察に届けた。沼田をよく知っている周平は、松宮警察からの連絡が納得出来なくて裏があると思い先輩に連絡した。康一の話を聞いた周平は、松宮署には、怪しい者は来ていない。久米という家は過去にない。と連絡する。刑事だった時、沼田を逮捕できなかったことが何回もあった。証拠がないからだった。君なら逮捕出来るネタを知っているのではないかと訪ねる。「とっぽい田舎のお巡さんかと思ったら、とんだデカだった。」
サービスで佐久間さんの家に住めるようになるまで、ここの二階に暮す宿泊代も食費も奢りにするよ。
佐久間康一君が両親の離婚のため、母方の苗字・久米になって帰って来た。父親も亡くなり五年、空家になっていた家に手を入れて住めるようして住む。
久米康一 29才 周平の赴任初日に雉子宮を訪れた男
田村良美 28才 康一の婚約者
木曜日の嵐は、窃盗犯 六月二十五日 水曜日 強風が吹いた夜明け。昭憲さんから泥棒が入ったと連絡があった。樹木が倒れ窓ガラスを割った所から入った賊が、あったと思われる秘仏を盗んで行ったという。周平は、秘仏のこと寺の先代住職のことを聞き廻った周平は、ひとつの結論に達した。
秘仏は、今日や昨日無くなった物ではないこと。このまま、泥棒が入ったことにすると、泥棒が見付からなければ、少し前に村に来た康一が疑われること。周平は、先代の住職が売り払いお酒に替わってしまったのだろうと考えた。二年後、秘仏公開の年が迫って、秘仏がないことを知った昭憲が苦し紛れの言い訳を考えたのだろうと思った。父親が、酒代にしてしまったとは言えない。
昭憲と清澄と相談し、窓から入った足跡は動物の物で、香木の香りに誘われ咥えて逃げたということにした。
久米康一は佐久間康一になり、康一の情報を、周平の横浜の先輩に送り、沼田は逮捕され、しばらくは刑務所から出てこれないらしい。
金曜日の蛇は、愚か者 八月二十九日 金曜日 晴天が続いているにも関わらず、濁った水が川を流れていた。木の枝とかも一緒にたくさん流れた。どこか道が崩れていると困るのでパトロールをする。そんな時、小学生が、蛇に噛まれた。蛇はアオダイショウで、大事に至らなかったが、小学生たちは、この二日程前から、蛇が多くなったという。
川の中で、炭焼きの民蔵さんが骨折して見付かった。花が応急処置をして町の診療所に運ぶ。周平は現場検証し、民蔵が落ちた場所を見付けた。低い崖になっているところに隠した穴があった。周平は、民蔵に確かめる。金塊があると思い、誰にも知られず自分の物にしようとしたのだろう。あれは金塊ではなく黄鉄鉱だよ。人が近づかないように蛇を捕まえ蒔いてていたのだろうと話した。捕まるか?と訪ねる民蔵に、誰にも言わない。足が治ってから助けてくれた人を集め鍋でも囲もう。子供たちには、祭りの時に綿飴でも買ってあげればいいよ。
西川民蔵 47才 雉子宮で唯一の炭焼き職人
日曜日の釣りは、身元不明。 十月五日 日曜日 良美さんが、川で人が倒れていると駆け込んできた。周平と花が行く。康一と山小屋の富田さんと甥の坂巻君がいる。倒れた人は死んでいた。花が見たところ心臓発作か脳梗塞だろう。周平も事件性は無さそうだと思うが、財布があるが、身分証はない。免許証も無く、身元が分らない。どうやってここに来たのかも判らない。連絡を入れ、遺体を寺に運ぶ。村の人に見てもらうが、誰も知らない人だと言う。警察車両が来て病院へ連れて行った。周平は、康一に坂巻君の動きを見張っていてと頼む。康一は圭吾が参月沼に行ったことを伝えた。参月沼の廻りに、タイヤの跡があったことを言った。沼には入れないから車があるかは確認出来なかったという。
康一は圭吾を食事に誘う。周平と花も康一の家に行く。周平は圭吾に聞く。あの身元不明者が誰か知っているね。圭吾は知っていた。姉を自殺に追い込んだ男。姉の写真で見た。圭吾の姉の死の話になった。姉は村を出た。東京からの連絡で圭吾が行くと、男と不倫し騙され入水自殺していた。身元不明の死体になっていた。
今朝、散歩の途中で、川の遺体を発見した。姉の写真の男だった。姉と同じように身元不明にしてやろうと思って身元の判るものを隠した。車も沼に沈めた。
あの沼の車を引き上げられない。ダイバーも入れない。君の隠した免許証等が草むらから見付かった事にして身元が分ったと連絡を入れる。君が反省して今から正しく生きていくかを見てる。圭吾に、康一は、俺なんか強盗で指名手配されたんだ。という。周平はどうして言うかね。と笑った。
またひとつ、周平が日報に書かない出来事になってしまった。
富田哲夫 51才 山小屋の主人。坂巻圭吾の叔父
坂巻圭吾 26才 山小屋で働く若者。父母が亡くなり、叔父が引き取ってくれた。
エピローグ 雉子宮駐在所に、三か月の子犬がやってきた。猫のヨネとチビとクロはどういう反応をするか。早稲ちゃんが名前はミルと付けた。
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