2025年2月13日木曜日

風の市兵衛 弐 ㉞ 蝦夷の侍

風の市兵衛 弐 ㉞ 蝦夷の侍 辻堂魁

 西蝦夷地アイヌの集落に、江戸の武士がいるという。元船手組同心、瀬田宗右衛門は、蝦夷の武士が十二年前に刃傷事件で義絶した、長男・徹だと確信し、唐木市兵衛に徹の捜索を頼む。瀬田家の後を継いだ次男の明が成敗され、瀬田家は改易の危機にあった。宗右衛門は、何も問わず義絶した徹の事件と明の事件に疑念を持っていた。徹から話を聞く必要があった。

 両替商近江屋から瀬田家の依頼を聞き、近江屋の伝手で廻船で蝦夷へ行く。
 蝦夷で、ロシアからの交易による武器の密売を探るために蝦夷へ渡っていた弥陀丿介と会う。五六人で、金品を強奪する賊がいることを話す。
 コタンで暮す徹を見つける。徹は熊に襲われ、片足、左手が不自由で、左目は見えない、顔に傷跡が残る身体になっていた。コタンの首長の娘と一緒になり、子どもがいた。徹は狩にも行き、生活していた。熊に襲われ傷ついた徹の介抱をしたのが、首長の娘・レルラだった。
 話しを聞いた徹は、江戸へ帰る。
 松前に行く途中、賊に襲われるが、五人を倒し、並べて置いた。弥陀丿介が話した賊かは判らない。

 江戸へ帰った徹は、家族に会わないで、十二年前に自分が傷つけた男・此度、明を成敗した尾上陣介に果し状を出した。陣介は受けた。が、人斬りと言われる無頼の九竜十太郎と無頼の者を雇った。陣介は徹の同輩だった。陣介には何人かの同輩が件分役で付き、徹には唐木が着く予定だったが、明の事件の時、見て見ぬ振りして申し訳ないと言った二人の同輩が付くことになった。
 十太郎は唐木を襲い、徹は陣介と戦った。十太郎は倒れ、陣介も倒れた。
 船手組頭・田岡仙太郎善純は、十人目付筆頭・片岡信正の呼び出しを受け、明の成敗に事件と徹の果たし合いの事を聞かれる。終わった後、若年寄林様に何を送ろうかと考えながら、卒中で倒れ亡くなった。
 徹は、瀬田家の者と話し合い、蝦夷へ帰った。
 船手頭が新しくなり、瀬田家の逼塞は解かれ、優が、船手同心の見習に出た。

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