2025年10月29日水曜日

前略、山暮らしを始めました。8

前略、山暮らしを始めました。8 浅葱 

 佐野昇平26才 ニワトリ三羽と山で暮して一年が経った。このニワトリ達は嘴の中にぎざぎざの歯が生えている。恐竜みたいな鱗のついた立派な尾がある。どんどん大きくなり、カタコトだけどしゃべる。東隣の山には、佐野より二年前から、大トカゲを飼っている桂木さんが住み、東隣の山には、佐野より三年前から、大蛇二頭を飼っている相川さんというイケメンが住んでいる。

 春になり、山の麓の湯本さんの隣の畑で悪さをしていたイノシシを捕まえたことで、ニワトリ達の派遣も終わった。山を降りていた桂木さんも山に戻った。雪が降った。佐野は桂木さんの家の様子を見に行き、佐野の家の雪かきは相川さんが来てくれた。相川さんの家は、屋根の雪下ろしは必要なく、庭(見える範囲)大蛇のリンが、雪を嫌いで勢いよく雪を除く。佐野はニワトリに聞く。ニワトリ達は、イカナーイ、イクー、サノーイッショと三羽がそれぞれに答える。

 ニワトリのユマが大きくなって、佐野と一緒にお風呂に入れなくなってきたので、風呂建設の話が出ている。生活費もいるので昇平は仕事をしようかと考える。相川さんが仮想通貨の運用をしてくれると云うので、10万円を預けた。

 久しぶりに墓参りをし、冬の間行けなかった神様の祠がある山の頂上へ一時間かけて登る。
 佐野の山の炭焼き小屋の近くにある桜の木を見つけた。桂木姉妹と相川さんを誘って花見をした。三羽のニワトリとドラゴンのタツキも一緒だ。相川さんと桂木さんが食事を用意してきた。
 翌日、元山の持ち主・山倉さん三代が来る。元庄屋の夫婦は墓参りまで、息子・圭司さんとその息子・将悟君・今年中学生。三羽のニワトリを紹介する。まず、墓参り、ニワトリ達に先導してもらって道なき道を登る。将悟が、村祭りで釣ったザリガニを逃がしてしまい、近くの川で繁殖してしまったものらしい。伝えてなくて済みませんと謝る。昇平は、昨年、ザリガニが多いのに驚いて、相川さんのリンとテンに食べて貰った。相川さんの手土産にバケツにいっぱいザリガニを持って行っていた。伝えなくて申し訳ないと謝る圭司さんにも、この山を買えたことに感謝しているから気にしないで下さいと伝える。将悟はユマと仲良くなり遊んでいる。山神様に祠を墓のところに下ろしていいかと尋ねれば、風が吹き、気が向かないといわれたようだ。次は、山上様用の祠を持ってくると言って帰った。
 家の中に神棚を作ることにした。
 翌日、相川さんと、町へ買い物に行く。リンもユマも行く。神棚を買った。相川は、お風呂リフォームにしましょうかと言う。相川さんは手製の露天風呂なのだ。相川は、仮想通貨が値上がりして十万円がすぐ出来るようなことを言った。
 次の日、山の頂上に登るための道を作るため山の手入れに行く。ゆっくり進めますね。と言うと優しい風が吹く。
 豆腐屋が、試作品に作った干豆腐をくれた。相川さんに伝えると、調理したいと家に来る。泊まって帰る。
 例の彼女を町で見かけたと連絡が入った。忘れようとしている昇平は、思い出していやな気分になり。母に思い出したくないから、見かけても何も伝えて欲しくないと連絡する。
 湯本のおちゃんと山の手入れをした。山の上へ行く道を整備したいのでこれからはたびたび来ます。と山上様に報告すると。ほどほどに〜と風が吹いた。おっちゃんは、ずいぶん積極的な神様だなと呟いた。おばちゃんのお弁当を食べて、午後は川へ行った。
 次の日、松山さんの養鶏場へ行く。チキンを買い、お昼をご馳走になって帰る。電気を使わない保冷材で冷やす冷蔵庫をもらって来た。ニワトリ達の餌を入れる。
 桂木さんのナル山の神様の祠を探しに行く。山の手入れを頼んでいるオジサンが案内してくれる。妻木さんと元平さん。祠を見つけて帰った。昇平はカレーを食べて帰った。川をみに行く。
 昼、相川さんの所に行く。椎茸がいっぱい取れて椎茸三昧だった。椎茸の原木の量はすごかった。昇平は四十五リットルの袋で頂いた。湯本さんに、三十リットルの袋でもらった。ポチは三本分の椎茸を食べた。
次の日、おっちゃん家に行く。お昼ご飯を頂いた。
 明後日、筍掘りをすることになった。
 四時前に、湯本さん、陸奥さん、戸山さん、相川さんが集まり筍掘りをする。
大鍋で茹でたり、刺身にしたりした。刺身とイチゴ、皮を剥いた柑橘類、リンゴ、軽くゆがいたシイタケを三羽の前に並べる。三羽の一才の誕生日のお祝いだった。食べると、ポチとタマは山へ遊びに行った。
 五月、相川さんを誘って町へ買い物に行くと、相川さんはナンパされた。桂木姉妹が気を利かせて助けてくれた。お礼にシイタケを渡していた。お弁当を持って相川さんに家に寄る。相川さんの味噌汁、切り干し大根、菜の花の胡麻和え、筍の煮物、を食べた。シイタケも貰って帰った。
 三日、四日、五日、山倉さん親子が来る予定。
 前日、昼、タマが、イノシシーと帰ってくる。ニー。おっちゃんに連絡する。秋本さんと結城さん相川さんが来てくれた。三頭になっていた。
 三日、朝、タマが昇平の足の上に乗って起こす。オキャクー。
 山倉親子と墓から山頂への道を作る。幅二メートルぐらいの幅で草を刈る。昼はシイタケ料理を食べた。三時くらいまで頑張ってイノシシの宴会に行った。イノシシの解体費用を出そうとしたら、ニワトリさんが狩ったものは佐野さんから一円もいただきません。と言われた。昇平が気が咎めるというと、お風呂場を改築させて下さいと言われた。大工仕事は楽しい。陸奥さん、おっちゃんにも言われた。みんなでイノシシ料理を食べて次の日の昼、昇平と相川は、おっちゃんの蕎麦を食べて帰った。 
 五日、山倉親子と山の手入れ、山倉さんの奥さんがお昼ご飯を作ってくれる。シシ肉の唐揚げだった。将悟君も山で暮すのは理想だと言った。二日で、二メートル幅、二十メートルほど進んだ。
 不法投棄のゴミをゴミ処理場に持って行き、帰りに豆腐屋さんで豆腐製品を一通りおからをたっぷり貰った。おばさんは豆腐皮を作っていた。相川さんが言ったのだ。お試しで貰い、干豆腐は買った。
 次の日、相川さんが、豆腐皮を使った料理を作りに来た。リンも来た。ザリガニ取りに行く。相川さんは、京醤肉絲や、焼二冬、豚肉の代わりにシシ肉を使って作った。トマトと卵の炒め物。豆腐皮は細切り肉、白髪ねぎ、キュウリを包んで食べた。干豆腐も和え物になった。リンとユマがバケツいっぱいのザリガニを持って帰ってきた。リンは、サノ コマル リン クルと言った。
 スローライフを営むつもりで、山に籠るつもりでここに来たのだが、山暮らしは忙しい。

山に引きこもることにしたある男の話 相川さんの話
ヒヨコの成長は止まらない おっちゃんとヒヨコとのマムシの契約。
 
 

2025年10月26日日曜日

京都寺町三条のホームズ*22

 京都寺町三条のホームズ*22 望月麻衣
 〜美術補佐人・アート・アドバイザーの誕生〜

 輝かしい未来に想いを馳せていた葵だったが、突如、世界を襲った新型ウイルスにより、ニューヨークへの留学を断念せざるを得なくなる。
 緊急事態宣言が明けたら結婚しようという清貴と葵は、両親を説得する。一緒に住むことになったが、結婚は卒業してからということになった。

 弟・睦月は、大学受験だったが、志望大学に落ち、浪人した。ホームズのオンライン教室で勉強している。睦月の家庭教師をするつもりでオンライン教室を始め、数人に教えている。

 葵は大学四回生、清貴と一緒に暮している。就職活動に出遅れ、学芸員の資格を活かせる仕事は内定者が決まっていた。不採用の通知が届く。清貴は蔵での仕事を、好江や清貴の祖父・家頭誠司の紹介も断り、誰も葵のことを知らないところで、自分の力を試してみたいと考えた。清貴への感謝の気持ちと清貴への甘えの気持ちで落ち込む毎日だった。
 大きな美術商の求人の面接を受け、柿右衛門様式のウースターとチェルシーの壺だと答えると、小賢しいと言われ不採用になった。
 大阪市内の広告代理店に合格した。
 香織は、KYOMIという京都四条烏丸にある出版社に決まった。

 卒業し、五月三日婚姻届けを出した。

 会社は、広告もイベントも仲介業者であり仕事は、依頼書作りと等、事務・経理・雑務だった。葵の指導担当の先輩・憎田は、セクハラありの古い体質だった。緊迫した世の中、どこか、歓迎されていない職場、小さなセクハラ、やりたいことをさせてもらえず、合わない仕事を黙々とこなす。誰にも打ち明けられない。それでも二年は頑張ろうと思っていたが、八か月で、大阪支社が無くなり、退職となった。
 自分の心を誤魔化して頑張っても上手く行かない。空回りしていたと思った。清貴は、無駄ではないです。経験値は上がり、自分の本当の心に気付けたりすると言う。
 清貴は、来年から二階に会計事務所を開くので一階を葵に任せたいという。葵は蔵で働きたいと申し出る。

 結婚して二年目、鑑定番組の二時間特番が放送された。一般人の家の蔵にあった掛け軸に五千万円の値が付いた。次の土曜日、蔵は、鑑定品を持った人でいっぱいになる。
 即席で造った鑑定スペースに座ったのは葵だった。無料で鑑定する。
 本物はなかったが、葵は、縁起がいい絵です。床の間に飾るとお部屋が明るくなりますよ。贋作を持ち込んだ客には、先ほどの物は真作に敬意を払った副製品ですが、これは、人を騙し儲けようとして意図的に造られた贋作です。買い取ることはできないという。
 陶磁器の香合を持ってきた若い女性がいた。親の反対を押し切って結婚した父母、父の祖祖父からの二十歳の祝いに貰った品物だった。複製品だった。彼女は、知っていた。葵ならなんて言うか聞きたくて来ていた。あなたが、試されているということも考えられるが、あなたへの想いも必ずあると信じてみませんか?香合と言うより薬壺と考えてみませんか?祖父に会った時、桃花は、香合を有り難うございました。あれは香合ではなく薬壺と思うことにしました。と言うことにした。
清貴は、美術補佐人と書いてアート・アドバイザー、家頭葵という名刺を作った。

 清貴の家頭会計事務所には、相笠クリス、梶原秋人がすぐ顧客になり、父・伊集院武史等の紹介もあり結構な顧客を抱えている。
 藤原慶子が来た。秋人が来店。秋人の兄・冬人の結婚の祝いの相談だった。慶子は、輪島塗のカップ&ソーサーのペアカップだった。葵は、冬人が気に入っていたが、婚約者・祥子が壊した人間国宝・荒川豊蔵の黒の美濃焼の茶碗を金継した物、清貴は、朱器台盤を意識した漆塗りの朱色の台盤だった。妊娠しているという祥子の言葉に、秋人は、茶碗を兄貴に、カップ&ソーサーは義姉さんに、台盤は赤ちゃんにプレゼントとした。
 慶子さんは、篠原さんの企画で、開催される「アンダー25・アート・プロジェクト」にチャレンジしてみないかというお誘いだった。

 蔵の公式ホームページの所々にある葵の葉をクリックすると和歌が現れる。葵は、私の状況を和歌で伝えた日記のようなものと感じた。

 有馬で行われるアート・プロジェクトのスタッフを選出する試験を受けに行った。
 有馬温泉で、清貴から有馬と秀吉の関わり、有馬温泉のレクチャーを受けた。
 6人で争われた。6人の中に鑑定番組に出ていた要、前の会社の先輩・憎田がいた。
 協力者は他に京都国立博物館の副館長・栗城祐希、美術商の田島がいた。
 最後に、要と葵が選ばれた。要は篠原の活動に協力する久住恵蔵の孫だった。
 要は、桃花の従兄弟だった。桃花も現れ祖父と上手くいっていることが伝わった。祖父、恵蔵も要も、葵のことを承知だった。
 憎田は、彼女にしてあげようと言う。君は失礼な人だ。僕の妻です。と清貴が言った。
 田島からうちに来ないかと葵を誘った。清貴が妻は面接を受けたが小賢しいと一蹴されたと言った。田島はあの時、何も知らなかった。後で確認し、彼女が言ったことが正しかったと判ったすまないことをしたと思っていたという。
 清貴と葵は有馬で一泊し、結婚して初めての旅行を楽しんだ。

 エピローグ サイトの隠し扉を見つけたと葵は清貴にに言う。和歌を使った日記ですね。清貴は、日記というか、報告かもと言った。
 久住要が、蔵に来て一緒にロンドンへ行こうと誘った。清貴も一緒に。清貴と葵もヨーロッパに行きたいと話していたところだった。

東北・恐山に行っているのは円生だろう。いろんな贈り物は円生からで、葵の近況報告を蔵のHP でしているのだろう。

2025年10月24日金曜日

奥様姫様捕物綴り〈三〉 入るを増やして出ずるを為せ

 奥様姫様捕物綴り〈三〉 入るを増やして出ずるを為せ 山本巧次

 美濃御丈藩の正室・彩智の実弟・堀川正泰が藩主の下総猿原藩で、留守居役が切腹する事件が起こる。新田開墾にまつわる公金横領の責を取ると遺書を残していた。彩智は娘の佳奈姫を連れ、正泰を訪れ、事件の真相を明らかにすると約束する。
 猿原藩に金を貸し付けていた両替商が自死したと報せが入る。
 
 両替商の事件にに付いて、八丁堀同心・萩原に聞く。主は殺されたようだ。猿原藩に金を出している総まとめをしているような位置付けの主だった。猿原藩の者とお金を横領し遊興費にしていたようだ。
 二人の調べで、留守居役は、自分が開墾しようとした土地が塩害の土地と判り、申し訳なさに切腹していたとわかった。遺書は改竄されていた。元右筆茂川が、自分の横領を隠すため留守居役の遺書と取り換えた。ひ頃から留守居役に代わって書類を作成していたため、筆跡の鑑定で判らなかった。
 商家の主の調べをしている途中、侍に襲われた。佳奈は一人の者の腕に傷をつけた。その者が証拠になった。
 
 二人が真相を話した後、正泰は、新田が駄目になったのなら、綿の加工に金を使おうと言った。

2025年10月22日水曜日

京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先〈三〉 小さな恋の結末

 京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先〈三〉 小さな恋の結末 望月麻衣

 京の町で、若い男女が神隠しのように失踪する事件が発生。菖蒲も時雨書房のアルバイトからの帰りに忽然と姿を消してしまう。事件に怪異”土蜘蛛”が絡んでいると判り、立夏は敵を追うために己の中の白虎の力を目覚めさせるべく、独りで山に修業に籠る。

 昔、朝廷を認めない力を持った一族がいた。朝廷が力を持ち一族を追いつめ虐げた。一族は土蜘蛛と言われた。
 神子や技能者の認定試験を受ける者がいるが、能力があっても一族であることが調べられ落とされた。能力者と認められることはなかった。
 今回、そういう者が集められた。菖蒲は、麒麟でありながら、斎王になれず落とされたと思われていた。
 一族を、土蜘蛛の力を持つのは、西園寺金吾だった。千花が嫁いだ男だった。西園寺は、自分と同じ力を持つ子どもが欲しかった。独り白虎と土蜘蛛の力・力を籠らせる力を持つ者がいた。彼の力のために、桔梗や蓉子、藤馬らの力が発揮できなかった。
 帰ってきた立夏は、時雨書房や、椿邸、神泉苑の呪符を取り除く。
 大原で、妻・小百合と息子・鷹矢と暮す春鷹は、自身の力を取り戻していた。立夏と藤馬が訪れ、力を借りる。
 立夏は、彼らの力を借り、蓮池の儀を行い、菖蒲と話し居場所を知る。
 菖蒲は逃げ道を知った。千花の手を握り西園寺の全てを知った。洗脳される攫われた少女たちにまずは自由をと地上に逃げる。桂子に土蜘蛛のところへ連れて行ってもらう。広場に土蜘蛛を誘導した立夏が弓を引こうをしていた。菖蒲は、土蜘蛛の怒りに対して攻撃では駄目だと言う。時雨書房の編集員・松田に、あなたにしか出来ないやり方で土蜘蛛を収めてほしいという。あなたにしか出来ないやり方で世の中を変えてほしいと。想いを集められるあなたに、恨みや憎しみを集めるのではなく、改善したいと思う者の心を集めてほしい。宜しくお願いしますと。みんなからの言葉を聞き、西園寺が怒りを表し、土蜘蛛を動かせと言う。松田は、土蜘蛛を金吾に向けた。
 金吾は、能力と記憶を失った。息子・松田と銀次は警察の取調を受けている。父親の命令に従ったことで情状酌量の余地がありそうだ。
 
 桜の華が舞う中、菖蒲は立夏と祝言を挙げる。結婚後、撫子も一緒に梅崎邸で暮す。

2025年10月20日月曜日

大奥様陽だまり事件帖 

 大奥様陽だまり事件帖 角を曲がれば謎がある 山本巧次

嬉代は四百五十石の旗本・羽鳥家の大奥様。何にでも首を突っ込みたがる孫娘の那美をお供に、六十三才とは思えぬ機転と洞察力で厄介事を収める頼もしい存在だ。

 消えた道具箱

 描かない絵師

 盗まれない拝領茶碗

 その掛け軸の値打ちは


2025年10月18日土曜日

あさ酒

あさ酒 原田ひ香 

 新宿 モーニング
 数か月前、水沢恵麻26才は、会社を辞めた。五年付き合い、同棲し、結婚式場を探し始めた男性から別れを告げられた。住まいと恋人をいっぺんに失った。コロナ禍が始まり三年目だった。ワンルームマンションを探した。派遣社員だったが、契約が更新されなかった。そしてコロナに禍かっった。一人、高熱で意識が朦朧としている時、恵麻の父母から頼まれた「お助け本舗」の犬森祥子と社長の亀山が訪れ、入院した。退院後、祥子の管理するシェアハウスに住み、見守り屋の仕事をするようになった。
 恵麻は祥子に誘われ、マイスターモーニングと黒ビールを頼んだ。途中で祥子は帰ったが、恵麻は、初仕事後のビールを楽しんだ。なんとかやっていける。

 日本橋 インドカレー
 恵麻は、朝カレー定食(半カレー、半たぬきそば)430円 日本酒・八海山の食券を買った。今日の見守り屋の仕事は、気軽に話せる相手がいないという三十位の河野心春さんだった。マッチングアプリで出会った相手と何度か会い、気が合うかなと思った頃、部屋で食事を作った。自分では簡単に出きるインドカレー。チキンカレーを作った。スパイス五本、鶏もも半分、トマト、タマネギ。彼は千円払った。おいしいと食べて改札まで送ってくれ・・・。連絡が止まった。手の込んだカレーを作り、スパイスを用意して家にくる。そういう女は怖いと言われた。理解し合ったり結婚するところまでわかり合ったりすることってなんて大変なんだろう。真っ当に生きれば生きるほど幸せが遠のいて行くようだと心春は語った。
 カレーが食べたくなった。結婚が人生の目的でもないし、終点でもない。一人で生きて行く覚悟もないし、仕事もない・・・しつこくまとわりつく思いを断ち切るように恵麻は朝が始まる地下鉄の階段を駆け下りた。
 
 南池袋 ハンバーグ
 ハンバーグ中心の懐かしいファミリーレストラン。「チーズバーグディッシュ」味噌汁付き、イカの箱船、ビール中ジョッキ。
 パチンコ依存症の林田杏奈。別居中、三か月パチンコに行かなければ家に帰られる。今、三週間。
 ハンバーグを堪能して店を出た。駅前のパチンコ店にいる杏奈を見つけた。声を掛けようか迷っていると彼女が恵麻を見つけた。彼女は取り乱しパニックになる。杏奈を抱きかかえ家に帰る。彼に言わないで・・・。言うか言わないかは杏奈が決めること。嘘を付くとそのまま離婚と言われている。

 新橋 餃子
 杏奈は自分で話したらしい。祥子から聞いた。そして次の仕事。角谷一希という祥子の知り合いらしい。男の人だけど、危ない人ではないと言われた。
 自分は外へいくから寝室で寝て下さいと言われる。角谷は恵麻のいきさつを聞き、祥子さんはお元気ですか。シェアハウスはうまくいっているかと聞く。私は何もしていないと言うとあなたが、きたことで、答えは出ました。と言われた。
 五目焼き餃子とニラ入り水餃子とビールを頼む。ウーロンハイを追加。
 シェアハウスに帰ると祥子がいた。あなたが来たことで答えは出ましたと言われたことを伝えた。

 目黒 生ハム 
 同じシェアハウスに住む、フリーランスの甲田さよから、生ハムの食べ放題の店に行かないかと誘われる。生ハムとビュッフェで850円。恵麻はステーキ付き350円プラスのモーニングビュッフェと赤のスパークリングワイン。エミリア・ランブルスコ。さよは、ネットのライター。こたつ記事を書いていると言った。テレビや雑誌、SNSの情報を組み合わせて記事にする。辞めると言いに行くらしい。ラジオを聴くなら書いてみないと誘われる。
 角谷と祥子は民泊をはじめたが、コロナで観光客がいなくなり、シェアハウスに変えたと教えて貰った。さよは先に帰る。もういっぱいワインを頼み、生ハムとサラダ、スープ、フランスパン。
 祥子は、娘を引き取って一緒に暮すのが夢。角谷に民泊を提案され、お金が貯まったら規模を広げようとした。コロナで大変だった。彼とぎくしゃくして彼は、大阪でもしごとをしていて・・・。恵麻はちゃんと話し合ったほうがいいと思ったが言えなかった。

 恵比寿 中華
 ゴールデンウィークに急に呼ばれた仕事は、愛人さんの話し相手だった。コロナで店が休み声を掛けてくれたお客さんの愛人に。コロナ終わったから店に戻ったらと言われるが、その間に若さ失った。熟女系のキャパクラしか雇ってくれなくなった。と嘆く。
 24時間営業の中華の店。じゃがいも千切りさっぱり味、北京ダックの春巻き、四川麻辣スープ餃子に生ビールを頼む。
 一度、「中野お助け本舗」の事務所に行きたいな。
 鶏肉ピータン粥を頼む。
 この仕事は、人の悲しみやつらさを、ほんの少し持ち帰ってきてしまう。

 赤坂 ソルロタン
 二十四時間営業の韓国料理店。雪濃湯・ソルロタン(牛頬肉スタミナスープ・各種おつまみ・キムチ・カクテキ・ライス付き)と生ビールを頼む。
 食べている最中に、恵麻?と声を掛けられた。タケルだった。カフェに場所を変えた。
今日のお客さんを思い出した。三代の芸子さん宅だった。夜、お祖母ちゃん独りになるから呼ばれた。訪問看護の人だと機嫌が悪くなるが、亀山先生のところの人だと言うと機嫌がいい。急だったのでショートステイも頼めなかった。ちょっと楽しい夜だった。恵麻はどうしてるかって心配してたけど、元気そうでよかったとへらへら笑いながらいうタケルを真顔で見つめ、「あなたに心配されるいわれはない」と振り返らずに出て行った。

 渋谷 焼きそば
 依頼人・福山さゆみ。課長、係長と気が合わない。リモートワークになってうまくいっていたのに、出勤が始まって数日でウザくなり、金曜日が待ちどおしい。日曜の夜には落ち込み最悪。と言う彼女に、仕事変えたらと言ったとたん。そういうことじゃない。あなたと話したくないと言われた。九千円のところ五千円を頂いて帰ってきた。
 ルース焼きそばと生ビール。焼きそばを食べていたら、亀山から電話。福山さんが、悪かった。夜中にドアを開けたら恵麻さんが起きていてくれるのが見えて安心してぐっすり眠れた。残りのお金はふりこみます。と電話があったと連絡してくれた。
 タケルからLINEが入っていた。今朝は仕事だった・・・ちょっと疲れた。と送ってしまった。しまったと思った。

 広尾 チーズバーガー
 社長・亀山から三人で食事をしようと誘われた。祥子と話して、フレンチに。コースの他に生牡蛎と牛フィレ肉も頼む。
 パチンコ依存症の彼女のところに、祥子が行くことになった。
 父親の単身赴任のところに母親が行く急用ができたので、小学生を見てほしいという依頼だった。子どもは、母親が嘘を言っていると思っているようだった。帰ろうとすると引き止められ十時までいた。遅くなったのでチーズバーガーのお店に行けた。クアトロチーズバーガーとポテトフライ、ブルックリンラガーをタッチパネルで選んだ。
 和歌山から10時に帰られるか?依頼人を探るのはやめよう。
 ネットライターをするかもしれないと伝えた。
 祥子は、見守り屋の仕事を辞めるかもしれないと言った。角谷と連絡を取り合い、今は大阪と遠距離だが、大阪に行くことも考えているらしい。

 浜松町 焼鯖定食
 空港が大好きで、前はグランドホステスだったが、コロナ時に解雇され事務職をしていたが、やっぱり空港が好き。ラウンジのアルバイトそしている高木加代。
 焼鯖定食と鮪ぶつの単品、稲波を頼んだ。
 加代からベテラン芸人竹下の話を聞いた。若手のコダイコのヤスを利用して女の子を落とすと言う話。二年前にラジオで話していたはなしだった。

 初台 オムライス 
 加代から聞いた話から恵麻は記事にまとめ編集部に出した。署名はチャンエム。スキャンダル専門のタコルが恵麻の記事にコメントを付けて再投稿した。どんどん大きくなって竹下がヤスを呼び出し暴力事件になり動画が流れ竹下は無期限活動停止になった。恵麻の記事が出てから一か月も経ってなかった。人の一生を変えてしまったと落ち込んだ。
 タケルから連絡がきて、慰められた。
 今日の依頼人は、亀山と祥子の同級生・幸江だった。馬鹿だったという恵麻にどっちが?と聞く幸江。記事を書いたことか、昔の男と寝たことか。どちらも。やっぱり記事の方か。
 祥子と亀山がシェアハウスの管理人に任せたいと思っている人がどんな人かと確かめたくて。あなたになら任せられる。後悔もなくこれからも書き続けるならちょっとと思っていたけどと話す。彼女も出資者だった。
 共用部分の掃除、庭の手入れで普通の生活費は入る。住み込みだから家賃はタダ。見守り屋も出来る。考えてみてと言われた。
 教えて貰った店に行く。オムライスと中ジョッキ。コロッケ一つ追加。

 稲荷町 蕎麦
 大阪に行く祥子と仕事の引き継ぎで祥子と依頼主のところへ行く。
 祥子と一緒に立ち食い蕎麦に行く。豚ラー蕎麦、祥子は塩だし鳥蕎麦。二人でホッピーの黒、氷と焼酎が入ったグラスが二つ。話ながら食べながら、白のホッピーを頼む。
 角谷さんとやり直そうと思ったのは何故という質問に、よく話し合ったからと答えた祥子。やっぱり好きだから。
 恵麻と元彼の関係については、だらだら今の関係を続けるのか、結婚するつもりなのか言質を取った方がいい、姉としての意見ね。
 シェアハウスの管理をすることになった。八人分の管理費と家賃の十パーセント貰える。
 タケルに言った。結婚することが怖くなった。自分の人生を決めることが。今は一緒にいたいなと思うのは恵麻しかいない。恵麻が試してみたいと言ってくれるならそれに乗りたい。前は傷つけてごめんなさい。もう一度やり直してほしい。恵麻もこちらこそ宜しくお願いします。また、別れることになるかもしれないが、気が済むまでやってみよう。
 

 

2025年10月15日水曜日

長寿大国フランスの医師が教える健康法 

 大酒飲み・美食家が多いのに
長寿大国フランスの医師が教える健康法 ミシェル・シメス

 ザクロ

2025年10月13日月曜日

前略、山暮らしを始めました。7

前略、山暮らしを始めました。7 浅葱 

 佐野昇平26才 山暮らしを始めてまもなく十一か月。

 ニワトリは陸奥さんちに主張中。ソウギョの料理を食べる。もう陸奥さんちも終わりにしようという日、ニワトリはハクビシンの住み家を見つけてきた。小屋に住着いていた。7匹捕まえる。近所の家にも住着いていないか点検。三匹捕まえ、四匹ほど山に逃げたようだ。ハクビシンの料理で宴会。

 ひな祭り、ユマとタマは湯本さんのおばさんから半纏をもらい写真を撮る。桂木姉妹は湯本さんちに三泊四日する。
 湯本さんの山と西隣の山を見回ることになった。西隣の山は本山さんの山だ。
 相川さんのところで炭焼きをする。炭焼き小屋は山の麓にある。昔ここに住んでいた人たちの手作りの窯。年季が入っている。結城さんと窯を見張る。炭が貰えるので濾過装置を更新するつもり。ポチとタマは「サノ〜クサイ〜」と言って寄って来ない。翌日、半年前に作った炭焼き窯を開けた。今回の炭窯は半年後に開ける。
 ニワトリを買った稲荷神社にありがとうと言うと、「うちじゃなない〜」と言われた。佐野は、いつも気にかけていただいてありがとうございます」と山頂に手を合わせる。ふわりと風が吹く。
 湯本さんちにニワトリ派遣。みんなで、遅くなってからイノシシを吊って帰ってきた。元木さんは自分が見たのはこんなに大きくなかったと言う。湯本家に泊まり、明日も山に行く。
みんなが山に行っている間に、昇平は、おばさんの手伝いで倉庫の片づけをする。
 明日は宴会。昼間は、おっちゃんと本山さんで山の草刈りをするらしい。墓掃除に行く。
 宴会の次の朝、イノシシ鍋の後の汁の雑炊だった。ユマとタマの卵を使っていた。
 松山さんの養鶏場へ、ニワトリの餌を買いに行き、お昼をご馳走なる。夕方、ユマがシカと言って帰ってくる。秋山さんと結城君が来てくれ二頭を回収する。三日後松山さんちで宴会だ。相川さんと桂木姉妹を誘う。
 松山さんちには、山唐さん夫婦が連れてきたトラがいた。にゃーと鳴くトラという名前の大きな猫だった。獣医の木本さんもいた。昇平はトラにも挨拶をする。ポチもタマもユマも予防接種を受けた。山唐さんは隣町でレストランを経営している。シカ料理を教えてとお願いしたそうだ。去年の夏の初め引っ越してきたらしい。夏祭りで子猫を売っていて買ったのがトラだそうだ。朝、ニワトリがトラを突いて大騒ぎになった。トラが卵を食べてしまったからだった。
 翌日、ポチとタマが、手入れが終わった湯本さんと隣の山へ行く。イノシシを捕まえたが、本山さんはもっと小さかったと言う。翌日、本山さん家族と宴会になった。
 宴会の翌日、朝からニワトリがイノシシを二頭狩った。本山さんが解体費用を出し、内蔵はみんなニワトリが貰った。後の肉は本山さんが考える。宴会は明後日。これでニワトリの主張が終わった。おっちゃんがサワ山の麓に山菜取りに来た。
 一年が過ぎた。

2025年10月10日金曜日

前略、山暮らしを始めました。6

前略、山暮らしを始めました。6 浅葱

 佐野昇平25才 山を二座買い、暮し始めて九か月経った。三羽のニワトリはしゃべり、イノシシを狩る。東隣の山には桂木実弥子さんと妹・リエちゃんが住み、大トカゲのタツキが飼われている。冬の間は、町に住んでいる。西隣の山には相川克己さんが、大蛇二匹と住んでいる。一疋は雄のテンで、一疋は、雌のリン・彼女は上半身は人間 だ。タツキもテンもリンも片言しゃべる。

 一月八日、新年最初の狩の日、昨日見つけたイノシシの痕跡へ、ポチとタマが案内する。山の東側で狩ったイノシシは、湧き水が出ている池になったところに沈めてくる。昇平は行かない。陸奥さんの猟師仲間・戸山さんと隣の相川さん。解体師・秋山さんに連絡して来てもらう。明日、湯本さんで宴会を開く。おばさん何時も済みません。湯本さんへの手土産を考える。寝る前に、山の神にイノシシの礼を言う。
 次の日、土曜日、陸奥さんと、川中さんと畑野さんも一緒に来る。朝、タマが昇平の上に乗り起こす。今日の猟は、何も無し。イノシシとシカの痕跡が東の山に繋がっているらしい。桂木さんに連絡を取る。今日は泊まりで湯本家に行く。
 西のはずれに和菓子屋が出来た。おじさん夫婦と若い女性の親子でやっている。
 泊まりの明けは、タマとユマの卵が大人気。
 桂木さんが家の様子を見に帰る。タツキは冬眠中、タツキとタマは仲良し。リンとユマは仲良し。
 毎日、猟に出ている。昇平は買いだしに。ニワトリの餌を買っている養鶏場が卸している、味付けした蒸し鶏をパウチした物を買う。お試し価格。感想を伝える。豆腐屋で買い物をしてニワトリの餌にもなるおからを貰う。
 イノシシとシカを狩った。土曜日、シカ肉が湯本家に届く。湯本家で宴会。イノシシや、シカの内臓はニワトリたちが食べる。昇平の取り分の肉は、昇平とニワトリが食べる。
 昇平が解体費用を払おうとするが、秋本さんは取らない。
 翌朝は雪。早めに山に帰る。相川が、リンを連れて佐野家の除雪を手伝う。
 夜、昇平は、ユマとお風呂に入る。ユマが大きくなり一緒に入るのが無理になってきそう。
 松山さんのところへ鶏肉を買いに行き、ポチとユマは、イノシシを家近くに追い込んで狩った。みんなで雪を被せて冷やす。秋本さんに来て貰う。明日の夜、秋山さん宅で宴会になった。宴会の日、ニワトリたちは、松山さんの山で、何だか判らない者に出会った。
 相川さんの裏山に猟友会のメンバーとニワトリが行くが、何もいない。一週間ほど行くが、何もいなかった。リンに聞くと大勢が来て、みんなで国有林の方へ行ったという。
 節分の大豆をニワトリたちは喜んだ。
 陸奥さんにニワトリを一週間ほど貸し出す。
 玄関の前に、四阿を作りたいので大工さんを紹介してもらおうとすると、湯本さんや相川さん、陸奥さん等が集まり、昇平の誕生祝いだと二日で作ってくれる。玄関前の脇に床がセメントで四本柱にトタン屋根の電灯付きの四阿が出来た。寒ければ周りを囲ってニワトリを洗える。コンクリートにユマの足型が付いた。
 相川はバレンタインに佐野に手作りのチョコレートケーキを渡す。
 ニワトリたちは、陸奥さんの林でシカ二頭を狩る。
 リエが運転免許試験に合格した。姉妹で山中さん家に泊めて貰っているが、陸奥さんのところにも泊めてもらうらしい。
 ニワトリが、アイガモを二羽ゲットした。
 


 

2025年10月7日火曜日

法医昆虫学捜査官⑧ 18マイルの境界線

 法医昆虫学捜査官⑧ 18マイルの境界線  川瀬七緒

 捜査分析支援センター 鑑識操作での技術開発のエキスパート・波多野。プロファイラー・広澤春美。法医昆虫学者・赤堀涼子。

 ゴルフ場の林の中で、刺殺され、殺されてから、頭と顔の骨を砕かれ、歯を抜き取られ灯油をかけ燃やされた遺体が見付かった。手足も炭化するほど燃やされ、身元の調べようがなかった。60才ぐらいの女性とわかった。
 赤堀が呼ばれ捜査に加わる。担当は、岩楯と深水。
 解剖医が残した、遺体に付いた虫、虫の卵から死亡推定日時を割り出す。殺された場所から移されていること、移す時に遺体に熱湯をかけられウジを殺そうとしていること。場所を移されたのは、発見直前だったということ。キノコバエに寄生する虫がいたこと等。

 ゴルフ場の遺体と同じような損傷を受けた遺体が、相模原の解体スクラップヤードで見付かった。岩楯と深水は、解剖の終わった遺体を見に行く。刺殺され、歯を抜かれ顔を潰され燃やされていた。死亡時期も同じ、同一犯の犯行で間違いない。
 解体スクラップヤードは不法投棄場だった。
 二件目の事件の一週間後、焼却されていると思われていた虫がまだ残っていた。赤堀は、解剖室で虫の死骸を分別した。やはりキノコバエに寄生する虫がいた。
 赤堀は、キノコ栽培の場所ではなくキノコが自生する山林に遺体は置かれていたと分析する。
 ヤードの裏の木が枯れてきたという林を訪れ、赤堀は、ツチクラゲというキノコを見つける。このキノコに因って木が枯れる。ツチクラゲ発生の原因は火だった。遺体を燃やした時に菌糸を刺激したのだろう。
 遺体に火を放った場所は、ここと同じように木が枯れているだろう。また、火元に飛んでくるツメアカナガヒラタタマムシの目撃情報と合わせて場所を特定しようとする。
 岩楯と深水は、ゴルフ場と解体ヤードと両方に関係する人を探す。ヤードは近所の人が出入りを調べるため監視カメラを付けていた。ヤードを片づけるための問題定義行動も成されていた。
 目撃情報に近い公園の展望台から、双眼鏡を覗き、円形に枯れている森を見つけた。赤堀と波多野は、森に行く。森の持ち主と枯れ木の話をした。ツチクラゲを見つけた。警察の人間とわかった途端、大振りの金槌を振り上げ赤堀に振り下ろす。波多野はスタンガンを夫に押し付けた。波多野は二人を逮捕した。

 二人は、森でレストランを開こうとしていた。そんな場所に遺体置かれていた。二人は死体損壊をして捨てた。岩楯と深水も同じ夫婦に目星を付けていた。
 森の近所の失踪者のマンション部屋のペットカメラの映像に二人の殺される現場が映っていた。近所の聞き込みで映っていた犯人を特定し捕まえた。

2025年10月4日土曜日

前略、山暮らしを始めました。5

 前略、山暮らしを始めました。5 浅葱

 佐野昇平 二十五才 独身 故郷から離れた山を二つ買い、暮し始めて約八か月。
 三日目、屋台で買ったヒヨコを三羽購入。一か月でニワトリになり、尾羽の部分は恐竜のような鱗がついた尾があり、鉤爪、ぎざぎざの歯がある。性格も違い、かたことの言葉をしゃべる。東側の山の住人は、年下の女の人で、桂木実弥子さん。ドラゴンのようなトカゲと暮している。やはりかたことしゃべる。西隣の人は、相川克己さん。大蛇と暮している。片方は上半身が人間の奇麗な女性の姿をしている。

 桂木さんは、妹と共に雪が降る前に町に降りた。妹は車の免許を取る予定。
 陸奥さんたち猟銃チームが、裏山に来る。一日目は、墓参りと山の神に挨拶。墓までは車で行けるが、山の頂上までは道が無い。作るつもりではいる。
 翌日から始まった。イノシシを狩、スズメバチの巣を獲ってくる。まだマムシがいる。
 何か行事のある日は、タマが昇平の上に乗って起こす。重い。
 タマとユマは卵を産む。生では食べられないが、大きくて美味しい。
 昇平は、味噌汁を作って待つ。
 桂木さんと相川さん以外の人の前では、ニワトリにしゃべらないように言う。
 年末だから障子の張り替えをする。
 ごみ捨てに行くついでに桂木さんに会う。
 イノシシ料理のため湯本家に集まる。川中さんが、ニワトリの写真、動画を所持していることが判り全部消去する。
 桂木の免許、実習はいいが、学科試験が危ないそうだ。

 雪が降った。ニワトリの尾に竹箒をつけ振り回す。柔らかい雪だときれいに払える。
 相川さんのリンは雪が嫌いで、見える雪は全て排除している。屋根はルーフヒーターがついていて雪下ろしの必要なし。相川さんが佐野家の雪かきを手伝ってくれる。
 鎌倉作り失敗。雪だるまを作る。
 昇平は、いつも世話になっている人に持って行く手土産に頭を悩ませる。
 年末、年始を相川さんの家で過ごす。二日、相川さんで朝ご飯を食べて家に帰る。
 三日、夕方から湯本家へ。毎日、餅、豪華食でお腹がいっぱい。

さわ山の其れの話
 山の神 青年が危なかしく見守っている。ニワトリには其れが見えるようだ。

2025年10月1日水曜日

産医お信なぞとき帖〈二〉 子宝いぬ

 産医お信なぞとき帖〈二〉 子宝いぬ 和田はつ子

 護符 充信堂の信の元に、紙問屋平島屋から損料屋・逢坂屋に嫁いで三年目になる千鶴が、不妊の悩みで訪れた。悩んでいるのは千鶴本人で、義母も夫・左之助も離縁はする気もなく、平島屋から金を引き出す事しか考えていないように思える。千鶴を心の病を抱える女を世話する尼寺に入れたがっていた。元々千鶴の医者は山口高志郎だった。
 
 山口が、五千石の旗本の奥様・美緒の診察を依頼に来た。信は、美緒と隠居・瑠衣と殿の子を宿した足軽の孫娘・さくらを看る。
 瑠衣が心の蔵の発作で亡くなった。麝香丸を飲まずに亡くなっていた。美緒は自分が渡す薬を瑠衣が拒否したことで亡くなり、自分が見殺しにしたように思い、自死しようとした。
 足軽・五兵衛が亡くなる。モモと言い残した。五兵衛を看た信は、さくらが、五兵衛を殺したという。産気付いたさくらは、子を産み、舌を噛み亡くなった。屋敷内の桃ノ木の根元を掘り、一年は経った骸をと守り袋を見つけた。さくらの手紙が見付かった。
 さくらは瑠衣の双子の娘の一人だった。植木職人の子だったため二人は、寺と足軽の娘に預けられた。一年前、瑠衣が娘に会いたがり、ももを探した。話を聞いたももは、桃の木の元でさくらに会いさくらを殺した。そしてさくらに成り代った。代わったことを感じ始めた五兵衛を殺し、ももに会いたがる瑠衣を殺し、美緒が自死するように仕向けた。
 美緒は、さくらが産んだ子どもを育て、殿は、美緒と子どもの良き夫、父として生きて行くことにした。

 愛しの化け猫 充信堂は、北町与力・田巻高之進の役宅敷地内にある。火付け騒ぎ時に化け猫を見たという噂があると聞く。
 版元・明開堂の内儀・志乃の初産に立ち合い、三か月後子どもを勾引かされ立ち直れず亡くなったことがあった。十八年経った。毎年、夫・慶三と、亡き妻に食べさせたかったという贅沢な食事をする。慶三は日本人には少ない二重の大きい目をしている。慶三が見た化け猫を描いていた。喜怒哀楽を猫の表情に表した物だった。興味があると言った。
 三才の時、疱瘡に罹った飛脚屋の息子・俊吉を看た。先生のお陰でと今でも付き合いがある。俊吉は飛脚屋として走り、店の奥のこともしている。俊吉は疱瘡に罹り捨てられていたことを信は知らされた。
 信の亡くなった夫・善周が難産故診療した奥絵師触頭・狩原昌栄の息子・恒香が病気だと屋敷に呼ばれた。恒香は、絵師の個性はいらないという狩原家で、酒を飲み、粉本の筆法だけを守り続けていいのかと戦っていた。母・寿美は、自分の昔の行いの所為で息子がこのようになってしまったと悔いていた。信は話を聞き出す。寿美は、はじめての子を、一度捨て、拾ってくるという家訓に添った。そして赤ちゃんを失った。失意のまま歩き、他所の赤ちゃんを連れてきた。恒香が生まれた。連れてきた赤ちゃんは目が二重で、我家の血筋で無いのは明らかだった。その子が疱瘡にかかった時、恒香に移ってはいけないとどこかにやられたてしまった。寿美は夜出て行く恒香を尾行したことがあると言った。
 信は、夜、恒香を尾行した。恒香を尾行するもう一人がいた。恒香は、神社の賽銭箱に火を付けた。化け猫の面を付けた男が、筵で消し始めた。信を尾行していた田巻が、面をかぶった者を捕まえた。信は明開堂の慶三だと思ったが、飛脚屋の俊吉と名乗った。二重の
目をしていた。俊吉は付け火をする男を見た時、懐かしい思いがし、屋敷も懐かしかった。自分が描いた猫の面を被り付けるようになったと言った。俊吉は、付け火を消し止め世間を騒がせたことは不問になった。信は、俊吉の絵を預り慶三に見せた。
 信は、俊吉に詫びようとする寿美に、前の事は、何も言わなくて良い、今から見守っていさえすればと伝えた。

 罪多き 大奥の陽光院様を看た信。陽光院は、泉生寺参詣の折り、住職に無理やり犯され妊娠、中条流の施術時にテラヌスに罹り亡くなった。中条流の真鍋道安と、大奥取締役・松緒小路が殺され、泉生寺の住職も殺された。陽光院の義兄・京花屋華右衛門と実母・登代が、陰腹を切り果てていた。信に手紙が残された。

 子宝いぬ 逢坂屋の幸と左之助と千鶴付きの女中が亡くなった。信が検視した。一人残った千鶴は犯人ともくされ牢・揚がり屋に入れられた。
 子が授からない嫁が、子宝いぬに縋った。子どもが授かったが、祈祷所で犯され出来た子だと書き残し自死した者がいた。何人か似たような者がいたが、誰も公にしなかった。
 信は田圃の中にぽつんとある質素な小さな宿・蓮の屋の女将・園を看ている。持病は貧血。今日は客を看て欲しいと言われて看てのは、上方からの客で大黒屋の隠居だった。薬も持っており、自分の病気を承知していた。
 園の夫は、輿屋・極楽堂の湯潅師をしていた。極楽堂の主人・団吉が殺された。捕まったのは子宝いぬの犬神教の犬神姫・れんと組んでいる井村だった。葬儀も儲けになると考えていた。団吉は、井村の逢坂屋殺しの証拠を持っていた。二人は打首、獄門になった。
 大黒屋が死んだ。大黒屋は、信に世話になった園に持っていた金を託した。元盗賊の頭領。妻をわかい者に連れ去られ探しにきていたようだ。信は破いて捨てた。
 逢坂屋の二人は大阪に問い合わせたところ、本当の二人ではなく、逢坂屋親子は、江戸に来る途中で殺されていた。左之助が盗賊・鬼百合党の印の鍵を持っていた。ことから、二人は元盗賊と思われた。
 千鶴は、牢から出、山口の家にいる。山口は平島屋に挨拶に行くつもり。
 信の預った金で、紀八は団吉の墓を建て、極楽堂を供養堂と改め、紀八と棺桶作りの安五郎と共に新しい主になった。園が身籠もった。
 信は、北町奉行・大山健四郎から骸医の要請を受けた。信は承諾した。