あさ酒 原田ひ香
新宿 モーニング
数か月前、水沢恵麻26才は、会社を辞めた。五年付き合い、同棲し、結婚式場を探し始めた男性から別れを告げられた。住まいと恋人をいっぺんに失った。コロナ禍が始まり三年目だった。ワンルームマンションを探した。派遣社員だったが、契約が更新されなかった。そしてコロナに禍かっった。一人、高熱で意識が朦朧としている時、恵麻の父母から頼まれた「お助け本舗」の犬森祥子と社長の亀山が訪れ、入院した。退院後、祥子の管理するシェアハウスに住み、見守り屋の仕事をするようになった。
恵麻は祥子に誘われ、マイスターモーニングと黒ビールを頼んだ。途中で祥子は帰ったが、恵麻は、初仕事後のビールを楽しんだ。なんとかやっていける。
日本橋 インドカレー
恵麻は、朝カレー定食(半カレー、半たぬきそば)430円 日本酒・八海山の食券を買った。今日の見守り屋の仕事は、気軽に話せる相手がいないという三十位の河野心春さんだった。マッチングアプリで出会った相手と何度か会い、気が合うかなと思った頃、部屋で食事を作った。自分では簡単に出きるインドカレー。チキンカレーを作った。スパイス五本、鶏もも半分、トマト、タマネギ。彼は千円払った。おいしいと食べて改札まで送ってくれ・・・。連絡が止まった。手の込んだカレーを作り、スパイスを用意して家にくる。そういう女は怖いと言われた。理解し合ったり結婚するところまでわかり合ったりすることってなんて大変なんだろう。真っ当に生きれば生きるほど幸せが遠のいて行くようだと心春は語った。
カレーが食べたくなった。結婚が人生の目的でもないし、終点でもない。一人で生きて行く覚悟もないし、仕事もない・・・しつこくまとわりつく思いを断ち切るように恵麻は朝が始まる地下鉄の階段を駆け下りた。
南池袋 ハンバーグ
ハンバーグ中心の懐かしいファミリーレストラン。「チーズバーグディッシュ」味噌汁付き、イカの箱船、ビール中ジョッキ。
パチンコ依存症の林田杏奈。別居中、三か月パチンコに行かなければ家に帰られる。今、三週間。
ハンバーグを堪能して店を出た。駅前のパチンコ店にいる杏奈を見つけた。声を掛けようか迷っていると彼女が恵麻を見つけた。彼女は取り乱しパニックになる。杏奈を抱きかかえ家に帰る。彼に言わないで・・・。言うか言わないかは杏奈が決めること。嘘を付くとそのまま離婚と言われている。
新橋 餃子
杏奈は自分で話したらしい。祥子から聞いた。そして次の仕事。角谷一希という祥子の知り合いらしい。男の人だけど、危ない人ではないと言われた。
自分は外へいくから寝室で寝て下さいと言われる。角谷は恵麻のいきさつを聞き、祥子さんはお元気ですか。シェアハウスはうまくいっているかと聞く。私は何もしていないと言うとあなたが、きたことで、答えは出ました。と言われた。
五目焼き餃子とニラ入り水餃子とビールを頼む。ウーロンハイを追加。
シェアハウスに帰ると祥子がいた。あなたが来たことで答えは出ましたと言われたことを伝えた。
目黒 生ハム
同じシェアハウスに住む、フリーランスの甲田さよから、生ハムの食べ放題の店に行かないかと誘われる。生ハムとビュッフェで850円。恵麻はステーキ付き350円プラスのモーニングビュッフェと赤のスパークリングワイン。エミリア・ランブルスコ。さよは、ネットのライター。こたつ記事を書いていると言った。テレビや雑誌、SNSの情報を組み合わせて記事にする。辞めると言いに行くらしい。ラジオを聴くなら書いてみないと誘われる。
角谷と祥子は民泊をはじめたが、コロナで観光客がいなくなり、シェアハウスに変えたと教えて貰った。さよは先に帰る。もういっぱいワインを頼み、生ハムとサラダ、スープ、フランスパン。
祥子は、娘を引き取って一緒に暮すのが夢。角谷に民泊を提案され、お金が貯まったら規模を広げようとした。コロナで大変だった。彼とぎくしゃくして彼は、大阪でもしごとをしていて・・・。恵麻はちゃんと話し合ったほうがいいと思ったが言えなかった。
恵比寿 中華
ゴールデンウィークに急に呼ばれた仕事は、愛人さんの話し相手だった。コロナで店が休み声を掛けてくれたお客さんの愛人に。コロナ終わったから店に戻ったらと言われるが、その間に若さ失った。熟女系のキャパクラしか雇ってくれなくなった。と嘆く。
24時間営業の中華の店。じゃがいも千切りさっぱり味、北京ダックの春巻き、四川麻辣スープ餃子に生ビールを頼む。
一度、「中野お助け本舗」の事務所に行きたいな。
鶏肉ピータン粥を頼む。
この仕事は、人の悲しみやつらさを、ほんの少し持ち帰ってきてしまう。
赤坂 ソルロタン
二十四時間営業の韓国料理店。雪濃湯・ソルロタン(牛頬肉スタミナスープ・各種おつまみ・キムチ・カクテキ・ライス付き)と生ビールを頼む。
食べている最中に、恵麻?と声を掛けられた。タケルだった。カフェに場所を変えた。
今日のお客さんを思い出した。三代の芸子さん宅だった。夜、お祖母ちゃん独りになるから呼ばれた。訪問看護の人だと機嫌が悪くなるが、亀山先生のところの人だと言うと機嫌がいい。急だったのでショートステイも頼めなかった。ちょっと楽しい夜だった。恵麻はどうしてるかって心配してたけど、元気そうでよかったとへらへら笑いながらいうタケルを真顔で見つめ、「あなたに心配されるいわれはない」と振り返らずに出て行った。
渋谷 焼きそば
依頼人・福山さゆみ。課長、係長と気が合わない。リモートワークになってうまくいっていたのに、出勤が始まって数日でウザくなり、金曜日が待ちどおしい。日曜の夜には落ち込み最悪。と言う彼女に、仕事変えたらと言ったとたん。そういうことじゃない。あなたと話したくないと言われた。九千円のところ五千円を頂いて帰ってきた。
ルース焼きそばと生ビール。焼きそばを食べていたら、亀山から電話。福山さんが、悪かった。夜中にドアを開けたら恵麻さんが起きていてくれるのが見えて安心してぐっすり眠れた。残りのお金はふりこみます。と電話があったと連絡してくれた。
タケルからLINEが入っていた。今朝は仕事だった・・・ちょっと疲れた。と送ってしまった。しまったと思った。
広尾 チーズバーガー
社長・亀山から三人で食事をしようと誘われた。祥子と話して、フレンチに。コースの他に生牡蛎と牛フィレ肉も頼む。
パチンコ依存症の彼女のところに、祥子が行くことになった。
父親の単身赴任のところに母親が行く急用ができたので、小学生を見てほしいという依頼だった。子どもは、母親が嘘を言っていると思っているようだった。帰ろうとすると引き止められ十時までいた。遅くなったのでチーズバーガーのお店に行けた。クアトロチーズバーガーとポテトフライ、ブルックリンラガーをタッチパネルで選んだ。
和歌山から10時に帰られるか?依頼人を探るのはやめよう。
ネットライターをするかもしれないと伝えた。
祥子は、見守り屋の仕事を辞めるかもしれないと言った。角谷と連絡を取り合い、今は大阪と遠距離だが、大阪に行くことも考えているらしい。
浜松町 焼鯖定食
空港が大好きで、前はグランドホステスだったが、コロナ時に解雇され事務職をしていたが、やっぱり空港が好き。ラウンジのアルバイトそしている高木加代。
焼鯖定食と鮪ぶつの単品、稲波を頼んだ。
加代からベテラン芸人竹下の話を聞いた。若手のコダイコのヤスを利用して女の子を落とすと言う話。二年前にラジオで話していたはなしだった。
初台 オムライス
加代から聞いた話から恵麻は記事にまとめ編集部に出した。署名はチャンエム。スキャンダル専門のタコルが恵麻の記事にコメントを付けて再投稿した。どんどん大きくなって竹下がヤスを呼び出し暴力事件になり動画が流れ竹下は無期限活動停止になった。恵麻の記事が出てから一か月も経ってなかった。人の一生を変えてしまったと落ち込んだ。
タケルから連絡がきて、慰められた。
今日の依頼人は、亀山と祥子の同級生・幸江だった。馬鹿だったという恵麻にどっちが?と聞く幸江。記事を書いたことか、昔の男と寝たことか。どちらも。やっぱり記事の方か。
祥子と亀山がシェアハウスの管理人に任せたいと思っている人がどんな人かと確かめたくて。あなたになら任せられる。後悔もなくこれからも書き続けるならちょっとと思っていたけどと話す。彼女も出資者だった。
共用部分の掃除、庭の手入れで普通の生活費は入る。住み込みだから家賃はタダ。見守り屋も出来る。考えてみてと言われた。
教えて貰った店に行く。オムライスと中ジョッキ。コロッケ一つ追加。
稲荷町 蕎麦
大阪に行く祥子と仕事の引き継ぎで祥子と依頼主のところへ行く。
祥子と一緒に立ち食い蕎麦に行く。豚ラー蕎麦、祥子は塩だし鳥蕎麦。二人でホッピーの黒、氷と焼酎が入ったグラスが二つ。話ながら食べながら、白のホッピーを頼む。
角谷さんとやり直そうと思ったのは何故という質問に、よく話し合ったからと答えた祥子。やっぱり好きだから。
恵麻と元彼の関係については、だらだら今の関係を続けるのか、結婚するつもりなのか言質を取った方がいい、姉としての意見ね。
シェアハウスの管理をすることになった。八人分の管理費と家賃の十パーセント貰える。
タケルに言った。結婚することが怖くなった。自分の人生を決めることが。今は一緒にいたいなと思うのは恵麻しかいない。恵麻が試してみたいと言ってくれるならそれに乗りたい。前は傷つけてごめんなさい。もう一度やり直してほしい。恵麻もこちらこそ宜しくお願いします。また、別れることになるかもしれないが、気が済むまでやってみよう。
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