京都寺町三条のホームズ*22 望月麻衣
〜美術補佐人・アート・アドバイザーの誕生〜
輝かしい未来に想いを馳せていた葵だったが、突如、世界を襲った新型ウイルスにより、ニューヨークへの留学を断念せざるを得なくなる。
緊急事態宣言が明けたら結婚しようという清貴と葵は、両親を説得する。一緒に住むことになったが、結婚は卒業してからということになった。
弟・睦月は、大学受験だったが、志望大学に落ち、浪人した。ホームズのオンライン教室で勉強している。睦月の家庭教師をするつもりでオンライン教室を始め、数人に教えている。
葵は大学四回生、清貴と一緒に暮している。就職活動に出遅れ、学芸員の資格を活かせる仕事は内定者が決まっていた。不採用の通知が届く。清貴は蔵での仕事を、好江や清貴の祖父・家頭誠司の紹介も断り、誰も葵のことを知らないところで、自分の力を試してみたいと考えた。清貴への感謝の気持ちと清貴への甘えの気持ちで落ち込む毎日だった。
大きな美術商の求人の面接を受け、柿右衛門様式のウースターとチェルシーの壺だと答えると、小賢しいと言われ不採用になった。
大阪市内の広告代理店に合格した。
香織は、KYOMIという京都四条烏丸にある出版社に決まった。
卒業し、五月三日婚姻届けを出した。
会社は、広告もイベントも仲介業者であり仕事は、依頼書作りと等、事務・経理・雑務だった。葵の指導担当の先輩・憎田は、セクハラありの古い体質だった。緊迫した世の中、どこか、歓迎されていない職場、小さなセクハラ、やりたいことをさせてもらえず、合わない仕事を黙々とこなす。誰にも打ち明けられない。それでも二年は頑張ろうと思っていたが、八か月で、大阪支社が無くなり、退職となった。
自分の心を誤魔化して頑張っても上手く行かない。空回りしていたと思った。清貴は、無駄ではないです。経験値は上がり、自分の本当の心に気付けたりすると言う。
清貴は、来年から二階に会計事務所を開くので一階を葵に任せたいという。葵は蔵で働きたいと申し出る。
結婚して二年目、鑑定番組の二時間特番が放送された。一般人の家の蔵にあった掛け軸に五千万円の値が付いた。次の土曜日、蔵は、鑑定品を持った人でいっぱいになる。
即席で造った鑑定スペースに座ったのは葵だった。無料で鑑定する。
本物はなかったが、葵は、縁起がいい絵です。床の間に飾るとお部屋が明るくなりますよ。贋作を持ち込んだ客には、先ほどの物は真作に敬意を払った副製品ですが、これは、人を騙し儲けようとして意図的に造られた贋作です。買い取ることはできないという。
陶磁器の香合を持ってきた若い女性がいた。親の反対を押し切って結婚した父母、父の祖祖父からの二十歳の祝いに貰った品物だった。複製品だった。彼女は、知っていた。葵ならなんて言うか聞きたくて来ていた。あなたが、試されているということも考えられるが、あなたへの想いも必ずあると信じてみませんか?香合と言うより薬壺と考えてみませんか?祖父に会った時、桃花は、香合を有り難うございました。あれは香合ではなく薬壺と思うことにしました。と言うことにした。
清貴は、美術補佐人と書いてアート・アドバイザー、家頭葵という名刺を作った。
清貴の家頭会計事務所には、相笠クリス、梶原秋人がすぐ顧客になり、父・伊集院武史等の紹介もあり結構な顧客を抱えている。
藤原慶子が来た。秋人が来店。秋人の兄・冬人の結婚の祝いの相談だった。慶子は、輪島塗のカップ&ソーサーのペアカップだった。葵は、冬人が気に入っていたが、婚約者・祥子が壊した人間国宝・荒川豊蔵の黒の美濃焼の茶碗を金継した物、清貴は、朱器台盤を意識した漆塗りの朱色の台盤だった。妊娠しているという祥子の言葉に、秋人は、茶碗を兄貴に、カップ&ソーサーは義姉さんに、台盤は赤ちゃんにプレゼントとした。
慶子さんは、篠原さんの企画で、開催される「アンダー25・アート・プロジェクト」にチャレンジしてみないかというお誘いだった。
蔵の公式ホームページの所々にある葵の葉をクリックすると和歌が現れる。葵は、私の状況を和歌で伝えた日記のようなものと感じた。
有馬で行われるアート・プロジェクトのスタッフを選出する試験を受けに行った。
有馬温泉で、清貴から有馬と秀吉の関わり、有馬温泉のレクチャーを受けた。
6人で争われた。6人の中に鑑定番組に出ていた要、前の会社の先輩・憎田がいた。
協力者は他に京都国立博物館の副館長・栗城祐希、美術商の田島がいた。
最後に、要と葵が選ばれた。要は篠原の活動に協力する久住恵蔵の孫だった。
要は、桃花の従兄弟だった。桃花も現れ祖父と上手くいっていることが伝わった。祖父、恵蔵も要も、葵のことを承知だった。
憎田は、彼女にしてあげようと言う。君は失礼な人だ。僕の妻です。と清貴が言った。
田島からうちに来ないかと葵を誘った。清貴が妻は面接を受けたが小賢しいと一蹴されたと言った。田島はあの時、何も知らなかった。後で確認し、彼女が言ったことが正しかったと判ったすまないことをしたと思っていたという。
清貴と葵は有馬で一泊し、結婚して初めての旅行を楽しんだ。
エピローグ サイトの隠し扉を見つけたと葵は清貴にに言う。和歌を使った日記ですね。清貴は、日記というか、報告かもと言った。
久住要が、蔵に来て一緒にロンドンへ行こうと誘った。清貴も一緒に。清貴と葵もヨーロッパに行きたいと話していたところだった。
東北・恐山に行っているのは円生だろう。いろんな贈り物は円生からで、葵の近況報告を蔵のHP でしているのだろう。
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