百貨の魔法 村山早紀
風早の星野百貨店 開店50周年。願い事をかなえてくれる猫がいる。隣にホテルを合わせ持つ。
空を泳ぐ鯨 三月 エレベーターガールの松浦いさな。就職一年。
十年前の桜色のテディベアを直して欲しいと持ってきたバイオリニスト・サクラさん。滅多に家にいない音楽家の母が、海難事故に遭い亡くなった母が、娘・サクラに渡したかったものだった。いさなと芹沢結子が話を聞く。
贈答品を扱う佐藤健吾が引き受ける。
芹沢結子は新設されたコンシェルジュだった。
シンデレラの階段 星野百貨店の次期社長が決まっていない。社長は二度結婚して二度離婚している。杉江まり子・創業時からの美容サロンの店長・星野百貨店のドンは、次期社長に、太郎現社長の子供を推しているらしい。
百田咲子は二十年前に星野百貨店の地下一階の百田靴店を開き店長になった。咲子は母が亡くなり、芸能活動を止めて店を継いだ。咲子は芹沢結子を昔から知って居たような気がする。
夏休みに屋上のステージで開く子供のど自慢大会の出場者の靴を選んだ。。グループの仲間とうまく別れていなかった。シンデレラ・ウイング。ツインボーカルだった杏が風早のFM局にゲストで出て、連絡とってないけど勝手に友達のままだと思っていると言っていた。
咲子は昔の広告を思い出す。あの少女が大きくなったら芹沢さんのような人になるんじゃないかなと。
夏の木馬 星野百貨店六階本館から連絡通路を渡った先の別館、時計・宝飾・贈答品を扱うフロアマネージャー・佐藤健吾。少年の頃、この百貨店の屋上に母親に置き去りにされた過去を持つ。お子様ランチの果物の種を花壇に埋めた。健吾が勤め始めた時、花壇に種たちが育っていたことに驚いた。花壇の世話をする竹田フローリストの跡取り息子・健太郎が、祖父が自分の植えた種が育っていたら驚くだろうと言って育てていたと言った。健太郎に健吾は自分が植えた子供だと話した。回転木馬が撤去されることになった。健吾は思わず母さんとの待ち合わせの目印がなくなってしまうと口走る。
芹沢結子が祖父から贈られた時計の電池交換を頼みにきた。健吾は彼女の祖父がその時計を手にした時のことを思い出す。カンパラノ・コスモサイン。文字盤に星座盤をあしらった美しい時計だった。
倒れた老婦人が、星野百貨店・宝飾フロア・佐藤健吾と書いたメモを持っていたと連絡があった。子供の頃、健吾が贈った玩具の指輪をつけた母だった。一緒に住むことになった。
健吾と母が写った写真が見つかった。広報部で百貨店の歴史をまとめる作業をしていた。
精霊の鏡 別館二階の「風早郷土資料館」勤務・早乙女一花。一花は高校生の時、絵のコンクールに応募し、佳作になったことがあった。風早の街の百貨店の絵だった。優勝したのは同級生だった。自分に失望し絵を描かなくなった。彼は画家として活躍していた。彼が、一花の描いた絵に感動した風早にやってきた。偶然一花と会う。一花は屋上で彼と花火を見る約束をした。魔法を使う美容部員・豊見城みほさんに、化け方を教わった。一花は時刻に間に合わなかった。雨も降っているが彼は待っていてくれた。年越しの花火大会の約束をする。
豊見城みほは、芹沢結子にあなたは佐倉ユリエの娘さんと尋ねたい。
幕間 孫娘を心配しながらひとりの老人が、病院のベットで人工呼吸器をつけて横たわっている。十数年ぶりに再会した最愛の孫娘に悪かったと謝りながら。
百貨の魔法 コンシェルジュ・芹沢結子は、定年退職をした鷹城慎吾夫妻の案内をしている。二人は昔、この百貨店で結ばれた。「お利口くん」と「福の神ちゃん」と呼ばれた二人だった。ひそかに百貨店の人々から愛されていた。離島の病院の一人娘の福の神ちゃんは医者になった。離島に帰るつもりで、慎吾と別れるつもりだった。クリスマスに帰る二人にサンタさんのドアマンは福引き券をプレゼントする。二人は三万円分の花屋の賞品券が当たり、深紅の薔薇の花束を買った鷹城はプロポーズする。妻は離島の産婦人科医をし、夫は世界中に橋を架けていた。ドアマンは花屋の娘と結婚した。
結子はバレリーナだった。病気になり手術をし、バレリーナで無くなった頃、祖父が倒れた。二十歳で祖父の腕時計を継いだ時、百貨店を継ぐことも覚悟した。まり子がお試し期間の提案をする。偽名でコンシェルジュとして入ること、住まいはホテルにすること。結子は日本に帰った。
星野百貨店の社是と企業理念の一部をフランス語で綴ってある。大理石に刻まれた誓いの言葉魔法の呪文のように玄関ホールのシャンデリアに照らされ輝いている。
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