2019年8月21日水曜日

百万石の留守居役(十三) 舌戦

百万石の留守居役(十三) 舌戦 上田秀人
 将軍の命で江戸に出た本多安房政長は、評定所へ行った。加賀藩上屋敷に不逞の浪人が入り込み藩士藩邸に被害が出たことを明らかにする評定だった。本多憎しの老中・大久保加賀守と旗本・横山長次と加賀藩江戸家老・横山大膳が結託していた。
 政長と別れた瀬能数馬は、江戸城へ急ぎ、老中・堀田備中守家の留守居役・葉月冬馬に、本多長政の出府届けを昼ごろ受け取ったと右筆に届けて貰った。堀田家への借りを使い、お城坊主の口止めは数馬の冬馬への借りになった。
 評定所では政長の出府届けが昼ごろ出ていたと分かり開かれた。政長の言い分が通り不逞の輩の押し込みは無かったことになった。
 評定の間に横山長次の屋敷が不逞の者に襲われ、門を明けられ、横山内記討ち取ったりと言われていた。
 政長は綱吉と会った。直江状に関して関ヶ原の戦いの話をする。黒書院の天井裏から軒猿の刑部を呼び、綱吉に陰共を連れるように言上した。我殿を将軍継承に巻き込ませたくない。そのためにも将軍は元気でいてもらわなくてはならない。綱吉に本多の直臣復活は無いと言わしめた。時々江戸に出てこいと。
 加賀では本多政直を倒そうと考える者たちが、正直の長男・主殿を見方に引き入れようとしていた。

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