鬼役 〈二十六〉 金座 坂岡真
将軍家毒味役・矢背蔵人介は養母・志乃が姿を消したことで案じていた。志乃は江戸に来る前に生んだ我が子のことを調べに京へ行っていた。矢背家の前に現れるようになった「痩せ男」が志乃に恨みがましい言葉を吐いたためだった。
蔵人介は「痩せ男」と同じ技を使う男に会い、「痩せ男」の正体を掴む。蔵人介自身、京の近衛家から勾引かされ、薩摩の国境の村で隠密が逃げるために子連れを隠れ蓑にした子供だった。隠密がそのまま江戸で養父となり、矢背家に養子に入ったという過去を持っていた。全てを知っているのは蔵人介だけ。京で近衛家当代と会い瓜二つだった。兄が勾引かされたことを聞いたのだった。
「痩せ男」は自分の正体を、志乃が近衛家の先代の子供を産み、近衛家の紋付きのお包み包んで御所の猿が辻に捨てた赤子だと思っていた。志乃を母と思い、蔵人介を本当の兄だと思い、恨んでいた。同じ時、捨てられた子は二人いた。近衛家の赤子は死んでいたことを知っている人から話を聞いた。蔵人介に殺された痩せ男を志乃は不憫に思った。
痩せ男を追いつつ、痩せ男を雇っていた金座を調べつつ、蔵人介は佐渡島から送られる御用金を盗み隠していた元金山奉行の山賊たちを退治し、長岡藩京都所司代牧野備前守忠雅に連絡した。五十万両分の佐渡から盗まれた御用金と書いた。蔵人介の名前を出さないよう願う。御用金盗みの首謀者は後藤三右衛門。蔵人介は倒した。
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