2020年11月11日水曜日

向島・箱屋の新吉

向島・箱屋の新吉 小杉健治

 新吉は、向島で芸者・葉の箱屋をしている。目をかけてくれている料理屋の主人が首を吊った。現場に手ぬぐいが落ちていたことから他殺として調べる。

 新吉の本当の名は油木新次郎。仙北藩近習番士。八年前、剣は強く学問も出来たが、吉原の花魁・小紫と親しくなり浪人になった。小柴に熱を上げた旗本の次男・幡多忠次郎と仲間が新次郎を襲った。新次郎は相手を斬り伏せ江戸から逐電した。三年後、小紫は身請けされそうになり自死した。

 南町定町廻り同心・梶井扇太郎は三人殺された辻斬りの探索をしていた。新吉が新次郎だと思った扇太郎は、新吉を調べに利用する。扇太郎が犯人と目を付けた大江惣兵衛が葉の客であることで大江の調べを頼む。新吉が疑問を口にするとそれに沿って調べる。

 向島を深川のようにしようとしている鹿島吉兵衛が浮かぶ。手ぬぐいの持ち主は、賭場の代貸し辰平だと思われた。岡っ引き嘉六も辰平と繋がり新吉の言い分は通らない。吉兵衛と本所の虎三、仙四郎と芝で料理屋をしている弟・仙次郎が会っていたことも分かった。同心梶井が中に入って嘉六に話してくれた。辰平と仲間二人が自訴してでた。博打の借金のことで揉めたということになった。
 
 辻斬りは、目くらましではないか。目的は次ぎに斬られる人。大江は刺客。土木工事の水増し請求を調べられると困る幡多忠兵衛が利用した蓬莱屋と、息子の敵・新次郎を殺すことを大江に頼んでいた。大江は新次郎と斬り合い死んだ。死ぬ前に幡多に依頼を受けたことを認めた。助けられた博多屋は調べられていく。

 新次郎は幡多忠次郎を斬ったのは自分ではないと呟いた。忠次郎と共に新次郎を殺そうとした向山五平太は新吉は新次郎ではないと言った。

0 件のコメント:

コメントを投稿