2022年10月30日日曜日

名残の花

名残の花 澤田瞳子 

 読んでいて判った。一度読んだことがある。

 名残の花 鳥居胖庵77才 耀蔵 二十八年ぶりに江戸に帰り寛永寺に花見に行く。
金春座の地謡方・中村平蔵の門弟・滝井豊太郎と出会う。太鼓方の川井彦兵衛の息子・五十雄を探す途中、女スリに遭う。胖庵も印籠をすられる。
 平蔵と豊太郎がスリ・よしを捕まえた。金春屋敷の長屋に妖怪の印籠を埋めたというので鳥居に来てもらう。
 鳥居のために住むところを失い、五才で母親を亡くしたよしは、鳥居を恨み、母親さえ生きていればこんな風にならなかったというよしに、人を恨み、世を拗ねていては周りが手を差し伸べても真っ当な道に戻れるはずがないと鳥居は言った。

 鳥は古巣に 観世座が青山家から能舞台を移設し、桟敷代を鳥勧進能を行なった。豊太郎は見に行き、犬の死体を放り込んだと捕まった。たまたま来ていた鳥居が、豊太郎を連れ帰る。小鼓の兄弟の話しを聞き、犬の死体はなかったことを暴く。
 鳥居は小鼓の家から逃れたい弟の狂言だと言ったが、小鼓の兄は、小鼓を失敗した兄への叱責を紛らすための狂言だったと弟を庇う。
 兄はあんな下手な箙を最後に舞台を下りることは嫌だ。能にしがみつくと決めた。濡れ衣を着せた者の師に会い、梅若六郎にすべてを話すと言う。

 しゃが父に似ず 浅草の小屋掛けの前で、元下役・山本庄右衛門と会った。庄右衛門は言わなかったが、鳥居は、庄右衛門の息子が、今日初日の「御巫卯月地獄巡」の作家の河竹山杉だと思った。平蔵に話しを聞く。元は歌占だと。
 鳥居は豊太郎と一緒に山杉に会い、政府が、狂言綺語を書くなというなら、実の話、自分の話を書けばいい。しかし、父親は息子のことを案じている。山本を苦しめるようなことを描くなと念押しした。

 清経の妻 豊太郎の兄が、叔母の引っ越しを手伝い、千鳥の香炉を貰ったと持ってきた。いくらぐらいで売れるか聞いてくれという。豊太郎は、鳥居の所へ行く。その前に叔母に会った。兄が貰った同じような箱を井戸に落とし入れた。
 千鳥の香炉と思った物は、鴛鴦の香炉だった。叔母が井戸に投げ入れたのは対の香炉だった。先に亡くなった夫を憎んで井戸へ放り込んだのか。それともどちらも安物に替えていたことを意識しないためなのか。

 うつろ病 大蔵省に勤める鳥居の孫が、省庁で十才以下の者を働かせられなくなったと連れ帰った。多崎弥十郎。鳥居が平蔵の所に連れてゆく。多崎の父親は帰った後だった。借金の申し込みを出来なかったようだ。娘を売るかもしれないと言う言葉に鳥居は山水画を渡す。数日後、山水画の三〇円は間に合わず売られた娘は、七十円だとふっかけられ、田崎家は自害したと三〇円を返しに来る。
 鳥居は孫の上司、鳥居に会いたいと行ってきた昔の配下の家に行き、娘の身請けを願う。三〇円と足らずを出して欲しいと。目付であったころどんな働きをしたかを昔の上役として伝える。娘は中村に行くようにしてくれと。
 帰り道、鳥居は豊太郎に「鵺」を謡わす。

 当世実盛 豊太郎は、志ある者を支援するという商家の主に会いに行った。前に支援してもらっていた医者の見習いに出会った。商家の主は、古い物は捨て新しい物西洋の物に乗り換えさせる。亮輔の話しを聞いた豊太郎は、辞めさせられた浅田宗伯に一緒に申し開きをしようとする。鳥居に出会い、鳥居の執り成しで亮輔は戻ることが出来た。
 豊太郎は鳥居に、自分は何ができるのだろうと問う。そのままで良い己の道を見つめ精進すればいい。新しき世を器用に渡れぬ者の定めだと言う。
 梅若六郎が六郎の名を譲り隠居した。実と名乗り平蔵の所で、面倒な出稽古などせず、自分の舞いたい能のために当主の座を下りたと言う。二人の酒盛りに鳥居も付き合う。
 


2022年10月28日金曜日

東京バンドワゴン零 隠れの子

東京バンドワゴン零 隠れの子 小路幸也 

 いろんな特殊な能力を持った者たちが協力して生活していた。纏めているのは植木屋。広い場所といろんな職業が必要とされ、みんな長屋で暮らしている。普通に暮らしているようだが、彼らを〈隠れ〉と表現する。
 そんな場所に暮らせなかった者が、特殊能力を利用されたり、利用したり、悪とされる道を行く。盗みを働いた賊を殺し、金を取り戻す闇の存在。闇に殺害を依頼する講が存在した。
 「ざりば講」存在を知り追っていた同心がころされる。心臓な病としか思えない死体。
 同心の息子・堀田州次郎。〈ひなたの隠れ〉と言われる同心が、闇の隠れを追い込む。彼女は、息子を託して自死した。
 
 

2022年10月26日水曜日

鬼役伝〈三〉 入婿

鬼役伝〈三〉 入婿 坂岡真

江戸城門番 から御膳奉行支配同心になった伊吹求馬は、毎日毒味の修行に明け暮れる。かっての上役の窮地が伝えられた。

 鳩の巣を取る時に気が付いた、門普請の絡繰り、屋根の支えの木が細い。気付かれたことを知った作事奉行は門番が鳩の巣を取った後に鳩の死骸を置いた。
 作事奉行は伊丹屋と組み、悪い材料、細い材料を使い安くあげていた。門は修復され証拠が無くなった。作事奉行も殺される。
 伊丹屋の後に、甲府藩次席家老宇治原がいた。五年前、伊丹家当主勝守が宇治原に殺されていたことが分かる。勝守を気に入っていた紀文にも頼まれ、宇治原と比良一族の一人を捕まえ悪事を書き晒す。

龍の涙
 大店の子供を誘拐し、居場所を見付けるために大金を出させる。
南雲が様子を見ていた千振を採集する凛、求馬も会えるよにしていた。凛は捨て子だった。
凛が誘拐された。その場に大切にしていた水晶の玉を落としていた。
回向院で開帳している僧が占う。凛の面倒をみている隠居は五百両を渡したが足りないと言われ、求馬に相談してくる。
 志乃の助けで、凛は助けられる。求馬が古井戸に閉じ込められる。自力で抜け出した求馬は、夜鷹に助けられ、毒味試験に間に合った。
 夜鷹に礼を言いに行くが、殺されていた。
 開帳されている秘仏は盗まれた物だった。
 凛は志乃の姉の娘だと分かったが、志乃は伏せた。凛は水晶を見ると未来が見える。
 
 

南雲

風見新十郎

比良一族

比良の男

甘露小路増長

公人朝夕人

志乃と杯を交わし明日から出仕

2022年10月24日月曜日

猫弁 

 猫弁 大山淳子
 天才百瀬とやっかいな依頼人たち

 百瀬太郎39才 父親は知らず、七才までアメリカで育つ。七才の時、母が太郎を日本の施設に預け行方不明。 東大卒、弁護士 築四十年の木造モルタルアパートの六畳一間に住む。百瀬法律事務所には十一匹の猫が住む。十年大手弁護士事務所ウエルカム所属 世田谷猫屋敷事件を解決し独立して五年。ペット関連の以来が多い。結婚相談所に入会して婚活中、三〇回のお見合いを断られている。
 野呂法男60才 秘書
 七重 事務員 三人の息子がいたが、交通事故で三男を亡くす。

 霊柩車が盗まれた取り返して欲しいという以来がくる。シンデレラシューズ会長の葬儀。喪主・社長・大河内進より依頼される。初期の身代金、千五百四十万。五日後、霊柩車と棺が社の駐車場に置いてあった。電話で一億円で遺体をお返しすると連絡があった。元々遺体はなかった。会長と社長の意見が合わず、会長が出て行った状態だった。
 霊柩車を盗んだ二人は、遺体が無いのを盗まれたと思っていた所に、会長と出くわしていた。会長は知らぬ振りで二人にいろいろアドバイスする。お金を持って来る場所を、会社の社長室から見えるホテルの一室にする。
 代理でホテルの部屋に行った百瀬はカーテンを開き、社長から偽遺体・会長を見えるようにする。飛んできた社長と会長の蟠りを百瀬は和らげる。

 会長は、拘りの手作りシューズ職人・桜井と、霊柩車泥棒の二人を職人見習いにして秋田で起業する。
 霊柩車を盗まれ会社をクビになった運転手を、社長の車の運転士にした。

 結婚相談所の百瀬担当の大福亜子は、猫屋敷事件の関係者だった。訴えられているお婆さんに同情してどうにかならないかとまこと先生に相談にきた中学生だった。百瀬は知らなかった。
 百瀬は相談所を退会した。亜子は三〇回、百瀬が断られるような人ばかりを選んで紹介していたと告白した。私と結婚してくださいと申し入れした。

 

 
       

2022年10月22日土曜日

まやかしうらない処

まやかしうらない処 山本巧次 
 信じる者は救われる
 
本郷菊坂の瑠璃堂。主人千鶴の占いは当たると評判。観察力と推理力、口八丁で丸め込む。
札差・佐倉屋喜兵衛、千両箱が偽物千両にすり替えられていた。番頭が殺され、喜兵衛も,
殺される。
 正右衛門が、空家を貸したが、店賃は入っているが一月経っても誰も入っていないと相談にきていた。
 千鶴と権次郎と梅治は、佐倉屋の取り換えられた千両箱が、正右衛門が貸した店に運び込まれたと考え調べに行く。
 千鶴たちは命を狙われる。逃げた刺客が殺された。盗賊だった。
 喜兵衛殺しの疑いが掛かったのは、梅治の幼馴染だった。梅治の内緒の恋人だ。捕まったのは後添えの女将と二番番頭・克之助だった。一番番頭・昌之助を殺した時、見ていた者が、黙っててやる言うことをきけと言って姿を消した。後の日、喜兵衛を殺せと言ってきた。階段から突き落とせと言ったと言う。
 十両の偽金が見つかったと言ってきた近江屋に行くと主は違った人物だった。瑠璃堂に近江屋を名乗って来た男を探す。突き止め話しを聞く。役人がやって来た瞬間に逃げられる。やっていたことと偽金の成功さ、数右衛門と名乗った男の後にもっと大きな人物がいると考えた。
 梅治の幼なじみ・磯貝は武士を辞め、貸本屋になった。正右衛門のけちが付いた空家を安く貸してもらえ、息子たちを連れて移り住んだ。

2022年10月20日木曜日

烈廻り与力・青柳剣一郎58 59

風烈廻り与力・青柳剣一郎58 59 約束の月 上下 小杉健治

 陸奥国白根藩水沼家は世継ぎ騒動で揺れていた。嫡男が病死、藩主も病に倒れ、将軍家との養子縁組が浮上する。藩主の落とし胤の存在が発覚する。

 青柳剣一郎は小間物屋の手代・清太郎をならず者から救う。店主の娘・絹に近づくなと脅される。二人は好きあっていた。絹にはいくつもの縁談話があった。清太郎は再び何者かに襲われる。

 水沼家の世継ぎと知らされた清太郎は絹に桔梗が咲く頃迎えにくると告げ、陸奥国に発った。刺客の刃が迫る。さらに偽のご落胤だと評定所に訴えられる。
 老中・飯岡飛騨守が、将軍の八男・家正を水沼家に押し付けようとしていた。江戸家老は飛騨守の話しを受けようとしていた。

 浪人が斬り殺され大川に浮く。五人の遺体があった。剣一郎は、隠密同心・作田新兵衛に捜査を頼む。浪人になり調べた新兵衛は怪我を負いながら真相を摑んだ。飛騨守の下屋敷で、家正の命令で黒川と真剣での果たしあいが行われていた。家正の書名入りの証拠もあり、剣一郎は飛騨守に、真っ当な評定をするよう談判する。

 清太郎はご落胤と認められ白根藩に行くが、藩主になることを断り、後見となった藩主の従兄弟を新しい藩主とする。清太郎は江戸へ帰り、絹に会う。絹は待っていてくれた。

2022年10月16日日曜日

仕立屋探偵 桐ヶ谷京介②

仕立屋探偵 桐ヶ谷京介② クローゼットファイル  川瀬七緒

 ゆりかごの行方 南雲隆史警部は十二年前、駕籠に入った赤ん坊を見付けた。その子は中学生になって母親を探して欲しいと頼まれた。桐ケ谷は、赤ちゃんが着ていた、大人者のTシャツをベビー服にしているTシャツの縫製から、高級ミシン、針の太さ、糸の種類など判ったことから住所と職業を割り出す。南雲は母親を見付け出した。少年が母親への復讐心を持っていることを知っている南雲は、今は教えられない。必ず教えるよと伝える。桐ケ谷は少年が虐待されていると言う。二年経っても治らない突き指。寝る前に深呼吸を五回する。

 緑色の誘惑 桐ケ谷と水森小春は「未解決事件専従捜査対策室」の捜査協力をしている。
 十五年前の一軒家で一人暮らしの女性65才の首を絞められたことによる窒息死事件。活発で社交的な人だった。みんなが見て女性だと言った、猛スピードで走る自転車の雨合羽の人物の写真を見て、桐ケ谷は男性だと言った。被害者は癒しのため全身を緑に固める方向に突き進んだ。桐ヶ谷は友禅作家の着物を鴬色に染め直していたこと、少量の灰が落ちていたことと合わせて悉皆屋が事件に関わっていると睨む。
 染洗い張り店の主人が捕まった。思わせぶりな態度で着物を修復させ貢がせた。結婚を申し込むと冗談じゃないと嘲笑され首を絞めた。
 
ルーティンの痕跡 水森小春はベランダに干している下着を盗まれた。おまけに使い古した男物もパンツが干してあった。地元の警察に言ったが、一度見に来たが、捜査されている気配がない。南雲に言う。桐ヶ谷と小春は、面倒そうな盗犯係から情報を聞く。
 男性下着六十枚。被害者宅に残された物を前に桐ヶ谷は判る事柄をあげて行く。中に米軍で配られる物がある。途中からパンツの皺が変わる。生活スタイル、仕事が変わった。謝罪代行という仕事か?
 五年下着ドロをしていた男が捕まった。米軍基地のバイトをしていた。謝罪代行会社に登録、謝罪神と呼ばれるほどだった。
  
 攻撃のSOS 桐ヶ谷は新宿で高校生の日常的な暴力の被害者を見付けた。このまま知らん顔ができない。彼女がどこの誰かを知るためにつけた。彼女に付き纏う男がいると警察に連絡され捕まる。南雲に連絡し、どうにか放して貰う。小春に頼み彼女の家を突き止めようとすると、友だちとこっそり会った後、駅のホームから男性を突き落とそうとした。小春は彼女を止め、桐ヶ谷を呼ぶ。彼女たちは交換殺人を計画していた。桐ヶ谷は、彼女の痛みが判る。着ている物、身体付きで被害が判ると説明する。桐ヶ谷は病院で診断書を取り、警察へ行き、親にされたことを告発することを進める。そんなことをしても無駄だと言う彼女に、覚悟があればそうはならない。本気で親と決別する覚悟。
 桐ヶ谷は、彼女の父・大学教授の所へ、診断書と音声ファイルを聞かせ、娘さんと警察へ行くことを断りに行った。彼女の友だち二人にも協力する。

 キラー・ファブリック 十六年前に起きたアレルギーのアナフィラキシーショックによる窒息死。事件か事故かもはっきりしていない。死亡当時三十七歳。彼女は蕎麦アレルギーで徹底的に蕎麦を排除していた。そんな妻が蕎麦を口にするようなことは考えられないと言う夫。1950年代のトウモロコシが一粒落ちていた。
 桐ヶ谷は、遺留品の巾着袋を見て、薬の入った袋を引っ張りあい、誰かが被害者から取り届かない方向に投げたようだと見る。第三者がいた。
 被害者はテディベアの手作り作品を作っていた。夫に合い、ハンドメイドフェスの仲間に合う。四人目の人がスカーフを取った。フィードサックのブラウスの衿が現れた。彼女だ。テディベアをフィードサックで作ってほしいと注文を受けて持って行った。蕎麦を保管していたフィードサックだった。苦しがる彼女から薬をもぎ取りコーヒーカップを洗い証拠隠滅を図った。

 美しさの定義 十年前、アパートで一人暮らしの女性22才が、死亡後一週間後に発見された。死因はハサミによる出血性ショック。服飾専門学校の二年生。犯人は被害者を殺してからシャワーを浴び夜遅くなってから出て行ったと思われる。
 被害者の実家に行き、使っていた道具、作りかけの服を見、ミシンの埃を採取。彼女には印つけの切り込み、合い印のつけ方、はさみの切りかたにも癖があった。
 ミシンの埃を採取し、彼女が最後に縫っていたのは大島紬だったことが判った。しかし、その作品は残っていなかった。十年前、ミス・ユニバースの日本代表のドレスが大島紬だった。全く接点がないと思われたが、犯人だった。夫は現職の国会議員、本人も舞台衣装の監修やデザインをしていた。
 ドレス制作に自分の名前を出すように迫った。そして刺された。

 警察が桐ヶ谷と水森を表彰すると決まりそうだ。


2022年10月14日金曜日

すべての神様の十月

 すべての神様の十月 小路幸也

2022年10月12日水曜日

きたきた捕物帖〈二〉 子宝船

 きたきた捕物帖〈二〉 子宝船 宮部みゆき

 子宝船 文庫を作る作業場ができた。図柄は欅屋敷・小普請組支配組頭・椿山勝本様の別邸のご子息に描いて貰っている。ご子息と言うが、出会ったのは、北一と同じくらいの女だった。名前は栄花。

 おでこの中身 おでこ・三太郎が出てくる。二十五年くらい経っているらしい。すぐ長さを測っていた少年・ぼんくらの同心の息子は長崎に行き、学者になってる。
 茂七親分の名前が出る。
 おべんとう桃井の家族三人が毒殺される。北一は、通夜の時、銀杏の木に隠れて見ていた女を見た。うなじの下に銀杏の葉の入れ墨があった。

 人魚の毒 検視の与力・栗山周五郎に教わり、犯人が捕まった事件を、追う。銀杏の入れ墨の女は九崎村で二十一年前「染めちょう」の一家五人と機長を毒殺していた。九崎村へ連れて行く途中船から北一を道ずれに海へ飛び込んだ。北一は喜多次に助けられた。



2022年10月10日月曜日

隠密鑑定秘録〈一〉 退き口

隠密鑑定秘録〈一〉 退き口 上田秀人 

 家斉は御用の間の書棚で「土芥冦讎記」を見付ける。諸大名二百数十名の辛辣な評価が記された人事考課表だった。綱吉公はこれをもとに腹心を抜擢したと推測した家斉は、盤石な政治体制をきずくため綱吉に倣うことにした。調査役に白羽の矢を立てられた小人目付・射貫大伍。

 最初の喚問、御用の間に行くこと。山里曲輪口の地下道を通って御用の間に行く。

2022年10月8日土曜日

東京バンドワゴン ⑰ 

東京バンドワゴン ⑰ ハロー・グッドバイ 小路幸也



 春 ここ掘れワンワン迷子かな 裏の田町家は取壊され、増谷家と会沢家の家が建つ工事が始まった。道路が狭く、余分な予算も無しで、概ね自分たちで解体し家も建てる予定。藤島ハウスの藤島の部屋を増谷家が借り、裕太と真央夫婦と母・三保子が住んでいる。藤島は美登里の部屋に泊まる。
 かんなと鈴花は小学二年生。芽莉依は東大生。花陽は医学部三年生。
 研人と我南人はイギリスから帰国。マードックが事件に巻き込まれ解決後、レコーディング、ネイキッドにした。キースとイギリス各地でチャリティライブをし、帰国した。
 夏樹が会社の後輩を連れてくる。久田かおり。彼女は空間認識力・3Dを感覚的に把握できる。堀田家の地下道に気がついた。夜、かおりが行方不明になった。田町家の解体現場の床下の入り口から落ち、堀田家に続くトンネルを彷徨っていることを犬のサチが気付いた。堀田家の店から蔵、蔵から田町家まで地下道があったことがわかった。地下道は塞ぐことにした。
 かおるには近所で働く双子の弟・種村かいとが居り、小学一年生の時、秋実に会っていたことが判った。

 夏 一夜一夜にもの語る 七月 夏の間、カフェを十一時まで開けることにした。その後のことは様子を見て。和ちゃんにはちょうどいいバイトになった。
 四十年前にLPを出したローズ&ボーズのボーズ・蠣崎正太が、昔我南人に借りていたマーチンD-35を返しに来た。売ってしまったギターが、自分の務めているリサイクルショップに持ち込まれた。我南人が付けた傷も自分が付けた傷もあるという。買って返しに持って来た。我南人はローズ&ボーズの「夜明け」を歌ってもらった。ギターは受け取らなかった。
研人が、曲を貰った。借りたハードケースを返しに来た時、ライブの話をしていた。
 夜の営業が始まってから、椅子に文庫本が置き忘れになっていることがあった。文庫本は東京バンドワゴンの値札が付いた物、間に千円札が挟んである。五冊になった。祐円と康円から本の話しを聞いた。通勤途中の古本屋のワゴンから本を万引きしてしまった男が、返すチャンスが出来たと詫びのつもりで本を置いているという話しだった。男の娘が結婚する。その後で顔を出せということになった。

 秋 どこかで誰かが君の名を 十月カフェの営業は、このまま通年十一時までになりそう。
 鈴花とかんなは、箸置きをいろいろ考えるようになった。
 花陽は時間が合えば、時々麟太郎とデート。
 カフェの和を見て、慌てて帰った美しい顔の男子学生。古本屋にもカフェにも時々きている児童文学がすきな教育学部の学生さん。ファイルを忘れていた。和は、その童話・「猫のちゃんと犬のクン」が、祖母が話してくれたくれた童話だと気付く。
 忘れも物を取りに来た学生に、みんなは話しを聞く。なんとなんと彼・坂上元春は、和の高校の二年後輩だった。童話の話を聞いていると彼の祖母の話になり、なんとなんと、彼は北稔ときりちゃんの孫だった。次の日、きりちゃんは堀田家にやってくる。そして童話の話をし、テープを聞き始めると、なんとなんと童話を語っているのは秋実だった。キリの娘・舞の誕生日に、秋実が創作童話を朗読してプレゼントしたものだった。キリと和の祖母・茂美とは仲良しだった。茂美が書き取って持って帰っていたことが判明した。
 テープはデジタル化し保管することにした。

 冬 ハロー・グッドバイ 十二月、昭爾屋の餅つきにみんな集まった。研人と芽莉依、花陽と麟太郎、鈴花とかんなもお父さんと一緒に杵を振り下ろす。
 二十九日 マードックの母親・メアリーさんが亡くなった。サチはオックスフォードのカウリーに行く。ロンドン警視庁〈美術骨董盗難特別班〉の事務官・ジュン・ヤマノウエに会う。彼女はサチが見え、話しも出来る。春にマードックが事件に巻き込まれた時にサチと話していた。ジュンは藍子と仲良しになっていた。一緒に中に入る。
 みんなが帰った後、マードックの父親・ウェスは、これからのことを話す。ウェスは知りあいがやっている保養施設のガーデナーとして働く。動けなくなったら施設も病院もある。最後まで面倒みてくれるという話しになっている。お前たちは日本に帰りなさい。最後まで家族といられてメアリーは感謝していたと話した。
 一月一日 かずみが来た。夕方、藍子から春に日本に帰ると連絡が入った。
二日、百合枝と一緒にかずみは帰った。夜、百合枝が堀田家に来る。百合枝は四月にかずみの入っている施設に自分も入ると言う。かずみと一番仲良しでしょう。生き方とか考え方が似ている。かずみは目が見えなくなってきている。朝も道が分からなくなって迎えに行った。勘一の妹のようなかずみと一緒に人生を生きていこうと思う。盆暮れ正月にこの家に帰ってくるのを楽しみにできる。泊まらせて下さい。
 百合枝の決めたことに、勘一も我南人も何も言えない。
 マードックと藍子が帰ってきたら、研人たちは部屋を明け渡す。管理人室をスタジオに変える話しが出た。

  

  

2022年10月6日木曜日

拵屋銀次郎半畳記 汝戟とばせ(一)

拵屋銀次郎半畳記 汝戟とばせ(一) 門田泰明 

 品川に、馬からずり落ちそうになり銀次郎は着いた。猛毒の矢を受け生死の境をさ迷った。
黒鍬の女帝と称された女頭領・加河黒兵の看護を受け目覚めた。

 銀次郎は幼君に会いに城に行き、襲われる。怪我を負う。


2022年10月4日火曜日

巡査長・倉田沙月 殺愛

 巡査長・倉田沙月 殺愛 六道慧

 五年前 DVを行なっている家に行き、夫を縛り、妻に殺せと命じる。夫を殺せば助けるといいながら子供も妻も殺す。そんな事件が三件起きた。殺愛事件の犯人に倉田沙月巡査長は拉致され、殺愛を強要される。インターネットで配信され、警視庁凶悪犯対策課に殺愛事件から手を引くようにと交換条件を出す。倉田の上司・黒崎吾郎警視正は条件通り、合同捜査本部は解散、黒崎は課長を辞任し、所轄の証拠品保管庫へ異動した。倉田は少年課地域相談係に異動した。

 仲間同士、一対一の喧嘩の結果、二人が死んだと見える中学生の遺体が見つかった。少年課倉田が呼ばれる。二人のことは知っていた。殺愛事件と同じ印が付けられ、殺愛事件に似せているが沙月は違和感を持った。
 二人の仲間の少年が喋るなという警告、喋ったろうという報復のような怪我をさせられた。
 捜査一課の仕事だと言われながら沙月は捜査する。
 少年たちが出入りしていた都営住宅の住人・加藤トヨ子が亡くなった。
 沙月は、犯人は殺愛事件の犯人を挑発しているのではないかと思った。
 殺愛犯に心酔し、天誅と称してDVを行なう者に暴行を働くグループが現れた。その中の一人、竹内智士が取り調べを受ける。沙月の元夫の塾の生徒だった。智士は、夫の上から目線を罵る。竹内は倉田沙月に会った者は、伝言するようにパーマネントに命じられた。「不幸の手紙ならぬ、不幸の殺人である。誰かを襲撃しなければ家族の誰かが犠牲になる。」

 沙月は捜査の結果、加藤トヨ子が、少年の一人を殺した。加藤の夫は孫に殺されていた。少年に金の無心をされ蘇った。向かいの部屋の日野が、遺体を運び部屋の処置をした。もう一人の少年が強請った。日野が殺し、殺愛事件のようにした。日野は五年前に事件の犠牲者の父親だった。挑発したのだ。日野は沙月の周りにいれば犯人が出てくると思ったと。少年たちの後に誰かいると思った。

 少年に聴き取りをしていた。沙月が入った途端、彼はプラスチックナイフで暴れ回り、沙月を賞金首といって追いかける。上司の石丸が立ちふさがり刺されて死ぬ。二百万貰える約束だったようだ。

 黒崎警視が捜査の指揮に付いた。沙月は五年前、だれが自分を拉致したか判った。その頃の夫・服部だった。拉致した者の香り、夫の今の妻・沙月の友人の香りだった。アリバイは時計を進めたことで誤魔化せた。五十万貰っていた。
 沙月の娘が拉致された。沙月は黒崎に、犯人の潜伏先に心当たりはないかと聞いた。黒崎は、閉められた祖父の病院へ向かった。沙月が娘を助けた時、犯人はいなかった。
 沙月は古い警察官の服を着た女性を探すよう言う。女性警察官は黒崎を刺し捕まる。

 黒崎は女癖が悪かった。昔手をつけた女性警官を捨てた。黒田は沙月を愛したが手をつけなかった。女は黒田の子を二人産み、黒田を憎み、沙月を妬んだ。竹内智士の母、五年前、始めたのが母、その後、娘が手伝った。少年たちの裏でやらせていたのは娘だった。
 黒田は警察を辞めた。

 

 

2022年10月2日日曜日

隠密船頭〈九〉 神隠し

 隠密船頭〈九〉 神隠し 稲葉稔

 日本橋海苔問屋・磯松屋で、手代の徳助が殺された。伝次郎が雑用係の吉蔵が捕まえた。
 磯松屋の主夫婦が千草に来て、伝次郎に、十三才の息子・清吉を探してほしいと頼みにきた。殺人があった店でまた事件となると店に影響がでる。できるだけ内密に探して欲しいということだった。
 磯松屋の主人は海苔問屋の老舗大店・浜磯谷で奉公し三十三才で暖簾分けで小さな店を出した。浜磯屋が火事に遭い、身代が減少、主が急死し、後を継いだ長男は遊び癖が抜けず店は危機に陥り、次男が継ぎ立て直しを図っている。磯松屋は繁昌している。
 内儀・くらの妹・ようの詐欺師のような夫・栄助を調べていると、栄助が殺された。伝次郎は栄助殺しを調べなくてはならなくなった。脚気を治す薬の開発をしていたという。栄助の付き合いのあった者を調べるともう一人医者が殺されていた。
 医者と栄助と万作の三人で脚気に効く薬を作っていた。医者と栄作は、万作を除け二人で別の所で作り始めた。万作は別の医者を探して作り始めた。辞めたと思っていた二人が、別の所で続けているのを知った万作は二人を殺していた。
 清吉の行方は摑めない。浜磯屋のやっかみが浮上する。浜礒屋の与兵衛を調べると、ようと密会したいた。清吉はように懐いていた。ようの呼び出しならば出て行く。ようを追求する。
 ようは清吉を呼び出していた。与兵衛に話しを聞く。与兵衛は清吉をしばらく預かり返すつもりだった。沢野新右衛門と関村染三郎に五日ほど面倒みて欲しいと頼んだ。二人が清吉を別のところに連れて行き、与兵衛を脅していた。旗本の家臣だったが、浪人になった二人だった。二十両で頼んだが、五十両請求されていた。
 取引場所で、二人を捕まえた。清吉を取り返し、五十両も取り返した伝次郎は、故郷に帰るという二人を逃がしてやる。与兵衛と清吉を連れ磯松屋へ行く。与兵衛は全てを話し謝る。
 何故、二人を逃がしたという磯松屋に、二人を突き出すと、与兵衛もようも罪に問われる。与兵衛は悔い改めようとしている。咎めを受ける覚悟も観念もしている。磯松屋の本家だろう。恩義もあるだろう。許してやったらどうだろう。磯松屋も清吉が帰ってきただけでありがたい。許すことにした。
 伝次郎はお礼の百両は受け取らない。