2022年10月30日日曜日

名残の花

名残の花 澤田瞳子 

 読んでいて判った。一度読んだことがある。

 名残の花 鳥居胖庵77才 耀蔵 二十八年ぶりに江戸に帰り寛永寺に花見に行く。
金春座の地謡方・中村平蔵の門弟・滝井豊太郎と出会う。太鼓方の川井彦兵衛の息子・五十雄を探す途中、女スリに遭う。胖庵も印籠をすられる。
 平蔵と豊太郎がスリ・よしを捕まえた。金春屋敷の長屋に妖怪の印籠を埋めたというので鳥居に来てもらう。
 鳥居のために住むところを失い、五才で母親を亡くしたよしは、鳥居を恨み、母親さえ生きていればこんな風にならなかったというよしに、人を恨み、世を拗ねていては周りが手を差し伸べても真っ当な道に戻れるはずがないと鳥居は言った。

 鳥は古巣に 観世座が青山家から能舞台を移設し、桟敷代を鳥勧進能を行なった。豊太郎は見に行き、犬の死体を放り込んだと捕まった。たまたま来ていた鳥居が、豊太郎を連れ帰る。小鼓の兄弟の話しを聞き、犬の死体はなかったことを暴く。
 鳥居は小鼓の家から逃れたい弟の狂言だと言ったが、小鼓の兄は、小鼓を失敗した兄への叱責を紛らすための狂言だったと弟を庇う。
 兄はあんな下手な箙を最後に舞台を下りることは嫌だ。能にしがみつくと決めた。濡れ衣を着せた者の師に会い、梅若六郎にすべてを話すと言う。

 しゃが父に似ず 浅草の小屋掛けの前で、元下役・山本庄右衛門と会った。庄右衛門は言わなかったが、鳥居は、庄右衛門の息子が、今日初日の「御巫卯月地獄巡」の作家の河竹山杉だと思った。平蔵に話しを聞く。元は歌占だと。
 鳥居は豊太郎と一緒に山杉に会い、政府が、狂言綺語を書くなというなら、実の話、自分の話を書けばいい。しかし、父親は息子のことを案じている。山本を苦しめるようなことを描くなと念押しした。

 清経の妻 豊太郎の兄が、叔母の引っ越しを手伝い、千鳥の香炉を貰ったと持ってきた。いくらぐらいで売れるか聞いてくれという。豊太郎は、鳥居の所へ行く。その前に叔母に会った。兄が貰った同じような箱を井戸に落とし入れた。
 千鳥の香炉と思った物は、鴛鴦の香炉だった。叔母が井戸に投げ入れたのは対の香炉だった。先に亡くなった夫を憎んで井戸へ放り込んだのか。それともどちらも安物に替えていたことを意識しないためなのか。

 うつろ病 大蔵省に勤める鳥居の孫が、省庁で十才以下の者を働かせられなくなったと連れ帰った。多崎弥十郎。鳥居が平蔵の所に連れてゆく。多崎の父親は帰った後だった。借金の申し込みを出来なかったようだ。娘を売るかもしれないと言う言葉に鳥居は山水画を渡す。数日後、山水画の三〇円は間に合わず売られた娘は、七十円だとふっかけられ、田崎家は自害したと三〇円を返しに来る。
 鳥居は孫の上司、鳥居に会いたいと行ってきた昔の配下の家に行き、娘の身請けを願う。三〇円と足らずを出して欲しいと。目付であったころどんな働きをしたかを昔の上役として伝える。娘は中村に行くようにしてくれと。
 帰り道、鳥居は豊太郎に「鵺」を謡わす。

 当世実盛 豊太郎は、志ある者を支援するという商家の主に会いに行った。前に支援してもらっていた医者の見習いに出会った。商家の主は、古い物は捨て新しい物西洋の物に乗り換えさせる。亮輔の話しを聞いた豊太郎は、辞めさせられた浅田宗伯に一緒に申し開きをしようとする。鳥居に出会い、鳥居の執り成しで亮輔は戻ることが出来た。
 豊太郎は鳥居に、自分は何ができるのだろうと問う。そのままで良い己の道を見つめ精進すればいい。新しき世を器用に渡れぬ者の定めだと言う。
 梅若六郎が六郎の名を譲り隠居した。実と名乗り平蔵の所で、面倒な出稽古などせず、自分の舞いたい能のために当主の座を下りたと言う。二人の酒盛りに鳥居も付き合う。
 


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