2022年10月16日日曜日

仕立屋探偵 桐ヶ谷京介②

仕立屋探偵 桐ヶ谷京介② クローゼットファイル  川瀬七緒

 ゆりかごの行方 南雲隆史警部は十二年前、駕籠に入った赤ん坊を見付けた。その子は中学生になって母親を探して欲しいと頼まれた。桐ケ谷は、赤ちゃんが着ていた、大人者のTシャツをベビー服にしているTシャツの縫製から、高級ミシン、針の太さ、糸の種類など判ったことから住所と職業を割り出す。南雲は母親を見付け出した。少年が母親への復讐心を持っていることを知っている南雲は、今は教えられない。必ず教えるよと伝える。桐ケ谷は少年が虐待されていると言う。二年経っても治らない突き指。寝る前に深呼吸を五回する。

 緑色の誘惑 桐ケ谷と水森小春は「未解決事件専従捜査対策室」の捜査協力をしている。
 十五年前の一軒家で一人暮らしの女性65才の首を絞められたことによる窒息死事件。活発で社交的な人だった。みんなが見て女性だと言った、猛スピードで走る自転車の雨合羽の人物の写真を見て、桐ケ谷は男性だと言った。被害者は癒しのため全身を緑に固める方向に突き進んだ。桐ヶ谷は友禅作家の着物を鴬色に染め直していたこと、少量の灰が落ちていたことと合わせて悉皆屋が事件に関わっていると睨む。
 染洗い張り店の主人が捕まった。思わせぶりな態度で着物を修復させ貢がせた。結婚を申し込むと冗談じゃないと嘲笑され首を絞めた。
 
ルーティンの痕跡 水森小春はベランダに干している下着を盗まれた。おまけに使い古した男物もパンツが干してあった。地元の警察に言ったが、一度見に来たが、捜査されている気配がない。南雲に言う。桐ヶ谷と小春は、面倒そうな盗犯係から情報を聞く。
 男性下着六十枚。被害者宅に残された物を前に桐ヶ谷は判る事柄をあげて行く。中に米軍で配られる物がある。途中からパンツの皺が変わる。生活スタイル、仕事が変わった。謝罪代行という仕事か?
 五年下着ドロをしていた男が捕まった。米軍基地のバイトをしていた。謝罪代行会社に登録、謝罪神と呼ばれるほどだった。
  
 攻撃のSOS 桐ヶ谷は新宿で高校生の日常的な暴力の被害者を見付けた。このまま知らん顔ができない。彼女がどこの誰かを知るためにつけた。彼女に付き纏う男がいると警察に連絡され捕まる。南雲に連絡し、どうにか放して貰う。小春に頼み彼女の家を突き止めようとすると、友だちとこっそり会った後、駅のホームから男性を突き落とそうとした。小春は彼女を止め、桐ヶ谷を呼ぶ。彼女たちは交換殺人を計画していた。桐ヶ谷は、彼女の痛みが判る。着ている物、身体付きで被害が判ると説明する。桐ヶ谷は病院で診断書を取り、警察へ行き、親にされたことを告発することを進める。そんなことをしても無駄だと言う彼女に、覚悟があればそうはならない。本気で親と決別する覚悟。
 桐ヶ谷は、彼女の父・大学教授の所へ、診断書と音声ファイルを聞かせ、娘さんと警察へ行くことを断りに行った。彼女の友だち二人にも協力する。

 キラー・ファブリック 十六年前に起きたアレルギーのアナフィラキシーショックによる窒息死。事件か事故かもはっきりしていない。死亡当時三十七歳。彼女は蕎麦アレルギーで徹底的に蕎麦を排除していた。そんな妻が蕎麦を口にするようなことは考えられないと言う夫。1950年代のトウモロコシが一粒落ちていた。
 桐ヶ谷は、遺留品の巾着袋を見て、薬の入った袋を引っ張りあい、誰かが被害者から取り届かない方向に投げたようだと見る。第三者がいた。
 被害者はテディベアの手作り作品を作っていた。夫に合い、ハンドメイドフェスの仲間に合う。四人目の人がスカーフを取った。フィードサックのブラウスの衿が現れた。彼女だ。テディベアをフィードサックで作ってほしいと注文を受けて持って行った。蕎麦を保管していたフィードサックだった。苦しがる彼女から薬をもぎ取りコーヒーカップを洗い証拠隠滅を図った。

 美しさの定義 十年前、アパートで一人暮らしの女性22才が、死亡後一週間後に発見された。死因はハサミによる出血性ショック。服飾専門学校の二年生。犯人は被害者を殺してからシャワーを浴び夜遅くなってから出て行ったと思われる。
 被害者の実家に行き、使っていた道具、作りかけの服を見、ミシンの埃を採取。彼女には印つけの切り込み、合い印のつけ方、はさみの切りかたにも癖があった。
 ミシンの埃を採取し、彼女が最後に縫っていたのは大島紬だったことが判った。しかし、その作品は残っていなかった。十年前、ミス・ユニバースの日本代表のドレスが大島紬だった。全く接点がないと思われたが、犯人だった。夫は現職の国会議員、本人も舞台衣装の監修やデザインをしていた。
 ドレス制作に自分の名前を出すように迫った。そして刺された。

 警察が桐ヶ谷と水森を表彰すると決まりそうだ。


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