隠密船頭〈九〉 神隠し 稲葉稔
日本橋海苔問屋・磯松屋で、手代の徳助が殺された。伝次郎が雑用係の吉蔵が捕まえた。
磯松屋の主夫婦が千草に来て、伝次郎に、十三才の息子・清吉を探してほしいと頼みにきた。殺人があった店でまた事件となると店に影響がでる。できるだけ内密に探して欲しいということだった。
磯松屋の主人は海苔問屋の老舗大店・浜磯谷で奉公し三十三才で暖簾分けで小さな店を出した。浜磯屋が火事に遭い、身代が減少、主が急死し、後を継いだ長男は遊び癖が抜けず店は危機に陥り、次男が継ぎ立て直しを図っている。磯松屋は繁昌している。
内儀・くらの妹・ようの詐欺師のような夫・栄助を調べていると、栄助が殺された。伝次郎は栄助殺しを調べなくてはならなくなった。脚気を治す薬の開発をしていたという。栄助の付き合いのあった者を調べるともう一人医者が殺されていた。
医者と栄助と万作の三人で脚気に効く薬を作っていた。医者と栄作は、万作を除け二人で別の所で作り始めた。万作は別の医者を探して作り始めた。辞めたと思っていた二人が、別の所で続けているのを知った万作は二人を殺していた。
清吉の行方は摑めない。浜磯屋のやっかみが浮上する。浜礒屋の与兵衛を調べると、ようと密会したいた。清吉はように懐いていた。ようの呼び出しならば出て行く。ようを追求する。
ようは清吉を呼び出していた。与兵衛に話しを聞く。与兵衛は清吉をしばらく預かり返すつもりだった。沢野新右衛門と関村染三郎に五日ほど面倒みて欲しいと頼んだ。二人が清吉を別のところに連れて行き、与兵衛を脅していた。旗本の家臣だったが、浪人になった二人だった。二十両で頼んだが、五十両請求されていた。
取引場所で、二人を捕まえた。清吉を取り返し、五十両も取り返した伝次郎は、故郷に帰るという二人を逃がしてやる。与兵衛と清吉を連れ磯松屋へ行く。与兵衛は全てを話し謝る。
何故、二人を逃がしたという磯松屋に、二人を突き出すと、与兵衛もようも罪に問われる。与兵衛は悔い改めようとしている。咎めを受ける覚悟も観念もしている。磯松屋の本家だろう。恩義もあるだろう。許してやったらどうだろう。磯松屋も清吉が帰ってきただけでありがたい。許すことにした。
伝次郎はお礼の百両は受け取らない。
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