2022年9月30日金曜日

浮世小路の姉妹

 浮世小路の姉妹 佐伯泰英

 町火消い組の鳶見習の昇吉17才は、老舗料理茶屋加賀屋うきよしょうじの火事の最中、うきよしょうじの姉妹、従業員を助け出すが、主人と女将を助けられなかった。
 半年が経ち、茶屋の新築の材木も用意されているのに新しい茶屋が建たない。付け火の犯人も捕まらない。
 昇吉は、今川橋から日本橋までどんな店があるか調べて行く途中、うきよしょうじの姉妹・佳世19才と澄14才と知りあいになる。
 佳世と若頭・吉五郎には縁談があった。若頭の求めで、昇吉はい組を離れて放火犯を追うことになる。幼友達と古船を直し屋根をつけた船で中洲に作った葦の中の小屋を塒に調べる。
 二人姉妹は今も何者かに狙われていた。昇吉は、夜はうきよしょうじの姉妹と従業員が暮らす屋根船と料理茶屋の跡地を「あかべい」という犬と見張る。
 怪しいのは、金遣いの荒い小間物屋の若旦那を佳世の婿にすれば、料理屋の再建に力を貸すと言ってきた船が沈み大損した札差の内儀。
 一ノ木の若旦那薗太郎を名乗り、職人と一緒に座敷に上がった四人。調べると薗太郎は似ても似つかぬ人だった。
 昇吉は、主人夫婦を殺すつもりの火付けだと考えた。
 加賀屋の別邸に行き、加賀屋の秘密を知る。澄は父親から後継ぎだと言われ秘密を教えられていた。二百年の間、加賀屋は加賀藩の影御用を務めていた。知りえた幕府の情報を加賀屋に知らせる。
 黒装束で料理屋の跡地に立っている男を見た。料理屋の跡地の見渡せる名主の味噌ぐらに誰かが入った形跡がある。置かれた煙草入れを持ち帰り、見張る。男を誘い出したと思った昇吉だが、二人は襲撃された。服部十之助は、藩主・斉広の御近習だった。服部は、藩の親公儀派は加賀屋の陰御用をよく思わない。襲撃も火付けも親公儀派が雇った者による者だと言う。
 襲撃したものは捕まり、火付けを認めたため町奉行所に引き渡され遠島になる。加賀藩でも親公儀派の重臣が切腹した。
 澄は、代々の主人が書き残した書状を全て加賀藩に渡し、陰御用を父の代で終わりにしたいと伝えた。斉広は願いを聞き入れた。
 見張りも今日でお終いという日、跡地に影が立った。屋根船に火を付けようとする。昇吉は阻止する。加賀の親公儀派に雇われた髭の磯松という盗賊だった。捕まった。
 澄は、跡地の地下蔵の話しを昇吉にする。
 昇吉は将来、婿になることを考えて、加賀屋の奉公人になった。

 
 
 

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