風烈廻り与力・青柳剣一郎60 ひたむきに 小杉健治
八十吉は紙屑買いをしている。木綿問屋「田所屋」の手代だった。一人娘・節と恋仲になり婿にと言われたが、八十吉と所帯を持つ約束だという幸が現れ縁談が取り止めになった。節は三村屋の次男・丹次郎を婿にした。八十吉は店を辞めた。
丹次郎は三村屋を勘当されていた。幸は丹次郎に頼まれて芝居をしていた。田所屋の主人も知っていた。丹次郎は妾を囲って子どもがいる。丹次郎の遊び癖は直っていない。
八十吉に近づく者がいる。主に詫び金を出させようと誘われていた。
青柳剣一郎は、小普請組支配波多野義行から、十年前、勘定組頭だった波多野の配下だった高山俊二郎を探して欲しいと頼まれた。土木工事出張検分で材木問屋から賄賂を貰い検分に手心を加えたことを暴かれ小普請にされ、三年後、不始末をしでかし、士籍剥奪された者だった。
高山を糾弾した牧が闇討ちされた。水沢も背後から斬られた。
剣一郎は、高野俊太郎を見つけた。高山俊二郎だと確信するが、精練潔白の高野と十年前の事件、三年後の事件、今回の闇討ち。結びつかなかった。何度も長屋に行く。
高野の長屋の隣に八十吉がいた。高野は八十吉を訪れる男たちが気になり声を掛ける。八十吉は誘われていることを伝える。高野は夜忍び込む手筈を整えてる通りにするようにいう。
当日、八十吉たちが田所屋に押し入り、主を殺そうとする寸前、八十吉は主を庇う。一味は青柳に捕まった。主を殺し、八十吉を犯人にするつもりだった。
田所屋は離縁を考えていた。千両で主人と八十吉殺しを頼まれた。丹次郎も認めた。
十年前、検分に手心を加えたのは、牧と水沢だった。波多野も承知していたため、高山を犯人にして未然のため小普請にと収めていた。三年後、離縁した妻の父が、旗本との後添えの話しが在ることを話に来た。諦めさせて欲しいと。自分の行いでないことを受け入れ士籍剥奪になった。妻と子どもは旗本の家族になった。
波多野が、勘定奉行になるはなしが出た。牧と水沢は波多野に出世の願いを出した。
波多野の家臣・柏木は殿のためにならじと二人を殺した。高野は汚名を濯がれた。十年前の事件は秘密裏に始末したため蒸し返すことが出来ない。高野は武士に戻るつもりがない。高野を感心して見ていた川島屋の勧めで、口入屋の番頭になることになった。
田所屋に戻って欲しいと言われている八十吉も、戻るつもりになった。
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