2023年3月26日日曜日

駅の名は夜明け

 駅の名は夜明け 高田郁

 トラムに乗って 身体が弱かった娘・由希を亡くし一年、真由子は思い出のウィーンへ。娘もきたがっていた。夫との別れを考えた真由子の前に夫が現れる。喜んだ由希が見えた。

 黄昏時のモカ 美津子72才、ウィーンで親切な爽やかな青年に声を掛けられ案内をしてもらう。日本語を習っているという。詐欺師と思ったことを心の中で謝っていた。買い物袋とバックを持ったまま彼はいなくなった。亡夫の写真だけが心残りだ。ごめんなさいを言っていた。彼は煙突掃除人の小さな人形と豚の形のチョコレートを買いに行っていた。

 途中下車 小学生の時から一人で過ごしてきた。シカトと判っていても何もしない担任。高校になれば誰も知らないところへと思っていたが、高校でも同じだった。亜希は北海道の祖父母の元へ行く決心をした。乗り換えもなく着く電車に乗るとき、一人で行けると母を返す。途中で気分が悪くなり途中下車する。駅のレストランの主に助けられ話をする。自分で遅れると学校に電話をした。

 子どもの世界 大人の事情 小学四年生の圭介。父と母が離婚し東京から大阪に転校する。流氷を見に行こうと言っていた父がいなくなり一人で行きますというハガキが当選し、旅行がプレゼントされた。もう流氷がない季節だったが、オホーツクの海を前に、圭介は父親に電話する。前みたいにパパとママと三人で暮したい。駅のレストランで泣き疲れて眠った圭介。次の日、パパが来た。父親はごめんよと圭介を抱いた。

 駅の名は夜明け 慢性心不全を抱える俊三、パーキンソン病の妻の富有子。介護保険制度になって今まで受けていた介護を受けるために一月十三万三千三百八十円が必要と言われ、俊三は富有子を連れて帰らないつもりで旅に出た。山の中の駅に降り、駅の名前が夜明けと知り、帰る気になった。

夜明けの鐘 杏子と翠は久しぶりに旅行に出た。父母の看病で毎日過ごし独身の杏子、七才年下の後輩と結婚した翠。夫は会社を辞め、大学に入り直す。三年浪人して私大に入り来年卒業予定。一切の金銭を翠が出している。そして若い彼女ができた。翠は別れる決心をする。

 ミニシアター 車両にいる乗客。祖父が抱いている孫から悪臭が発せられると思われたが、同じタイミングで老女が鞄の中にねこをいれていることが分かる。じいじにゃあにゃという孫を老女から離れた席に移す祖父。アトピーの高校生、アレルギーのコンパニオン。夫の納骨に行った墓にいた猫、生後一ヶ月ぐらい。一人暮らしの私に夫がよこしたように感じてという老女。車掌が来た。窓を開ける。鞄を隠す。香水を振りかける。高校生は携帯電話を掛ける。終着駅が来た。降りた老女はお礼を言う。車掌はぼろぼろの籐のバスケットを持ってきた。祖父は大番のタオルハンカチを出す。

 約束 売れっ子作家が電車に飛び込む寸前、女に止められた。私の五十歳の誕生日という女と指切りをして別れた。体験をもとに本を書きヒットする。彼女を探し年上の彼女と結婚するが全く合わない。また書けなくなった作家は、作品が貧乏臭くなったのはおまえの所為だと言った。彼女はいなくなった。作家は彼女が作る駅蕎麦を食べ彼女に謝る。

 背中を押すひと 妹の医大の合格発表の日、母親を突き飛ばして怪我をさせ家を出た。十一年が経ち、妹は医者になった。妹が会いにくる。父が長くない。会いに帰ってという。時彦は帰る。父を負ぶって屋上に出る。謝る時彦に父は、折角の一生じゃけい大事に生きろ。俳優を夢見て出た時彦だった。今は劇団の大道具を任せれていた。背から降りた父は、辛うじて立ち、あの二人を頼むと言い、時彦の背を押す。

 

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