向島・箱屋新吉 新章 〈三〉 決断の刻 小杉健治
定町廻り同心・梶井扇太郎は、闇猿という盗賊を追っている。二ヶ月程前まで武家屋敷を専門に狙う盗人がいた。それが商家を狙い闇猿になったのかもしれないと思っていた。
扇太郎は、芸者・葉の客・利三郎に目を付けた。
新吉は命を狙われている。町奉行職を狙う八巻貞清は、家臣を使って町奉行になることが決まっていた勘定奉行笠木を暗殺した。暗殺者・茂太の顔を知っているのは新吉だけだった。だから命を狙われると思っていた。
梶井は「闇猿」を捕まえた。身軽な年寄りと錠前を開けられる年寄りが二人、大切な人のために五十両を盗んだ。一度で終わるはずだったが、刺激を忘れられず回を重ねていた。一回五十両。六軒に入ったと言う。五件分の金は残っていた。梶井は五件分を持たせ自主させる。一軒から被害届けが出されていなかった。「長崎屋」には抜け荷の品があった。
新吉は、利三郎が武家屋敷を狙う盗人だと判った。八巻の屋敷で茂太に捕まり利用されていた。新吉は利三郎を使い、茂太に近づく。
八巻が次期町奉行に決まった。
八巻と老中・坂城越後守の関係、長崎屋の関係を知る。新吉は茂太こと奥野茂一郎や他の八巻の家来、坂城の家来、長崎屋、梶井などがいる前で、抜け荷で結びつく、商家と藩と次期町奉行の関係をしゃべった。梶井は最後の仕事として奉行が長崎屋の抜け荷を徹底して探索するように命じたことを話す。
八巻は謹慎になった。奉行職の芽はなくなった。
奥野は新吉に挑み殺された。これで楽になれると言葉を残した。
0 件のコメント:
コメントを投稿