京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先 望月麻衣
時は大正、四神の力を持つ「神子」が台頭する時代。いわく付きの名家・梅咲家の令嬢・菖蒲は、幼い頃、許嫁として垣間見た桜小路家の御曹司・立夏に一目惚れをする。
立夏を一途に思い続け、十五才で桜小路家に越してきた菖蒲だったが、立夏は冷たい瞳で菖蒲を拒絶した。
梅咲家も桜小路家も賀茂家の分家だった。江戸時代、梅咲規貴が世を乱す悪人として捕らえられ流罪になっていた。梅咲家は誇りを取り戻そうとした。伝わる「玄武」の力、商才があり指折りの大富豪になった。
桜小路家は伯爵だった。芸術の「朱雀」でもあった。今や没落の危機にあった。
菖蒲と立夏の結婚は政略結婚だった。
梅咲家の長男・藤馬は幼い頃「白虎」の力を持っていた。成長と共に薄れ「神子」になれず十八才で家をでてしまった。菖蒲には能力の兆しがなかった。
冷たい桜小路家での扱いだったが、菖蒲は心を尽くしていれば必ず伝わる。と明るく過ごす。そんな菖蒲に、立夏と女中・千花との仲が聞こえて来た。菖蒲は、自分がこのまま家に帰ると、桜小路家が困ったことになるため、パーティで自分が失敗して家に帰ることになったことにしようと決心する。
パーティの日、立夏は千花と家出をしようとして、千花に断られた。桜小路家の長男の嫁・蓉子は、夫・喜一が、愛人と蓉子のベットにいるのを見て、錯乱した。部屋に火を付けた。
菖蒲は、立夏が大切にしている母親の肖像画を護るため飛び込んで行く。気を失うが、その前に特殊な力を発揮した。立夏が菖蒲を助ける。菖蒲が「麒麟」の力に包まれたのを見た。
家を出て、力が戻った藤馬は審神者になっていた。見えないところで菖蒲を見守っていた。使用人として菖蒲に付けていた桂子から報告されていた藤馬は、立夏の仕打ちを許せない。
桂子は、立夏に礼を言って立ち去る。立夏は、菖蒲が、本当に優しい人物だったのだと思った。
菖蒲は、立夏は、身分で人の判断をしない人、自分が間違っていたと思えば頭を下げられる誠実な人と思った。思っていた以上に素敵な人に恋をしていたと思った。千花と幸せに暮しているだろうと。
菖蒲は兄と病弱な母と審神者が集う椿邸で暮した。菖蒲は「斎王」の候補になった。菖蒲は自分の能力を知らない。菖蒲に護衛が付くことになった。梅咲家の父親は、桜小路家の長男・喜一と菖蒲をこちらに側に拉致することを考えた。喜一は蓉子を離縁した。心が壊れた蓉子は、施設に入っていた。
家を出て一人暮らしの立夏の所に妹・撫子が来る。兄の企みで菖蒲を拉致するため立夏を菖蒲の護衛にしようとした。撫子は、兄の計画を立夏に伝える。立夏は菖蒲の護衛をすることにした。
護衛は立夏を含む四人に決まった。
審神者との会話で、菖蒲は「麒麟」の能力のある者が斎王になるのではなく、「斎王」を指名するのだと知った。自分の能力を知らないまま、遠くの風景を見る。そして話す。蓉子を指名した。兄・藤馬と蓉子の関係も知った。藤馬に蓉子を迎えに行くように言った。
父親が菖蒲を拉致し、桜小路家に連れて行った時、桜小路家は、警察が取り囲んでいた。立夏が兄の悪事を暴いた。桜小路家の父親は阿片中毒で地下に軟禁されていた。喜一は逮捕された。
立夏は詫び、菖蒲は恋を貫いた。