江戸人情短編傑作選 御厩河岸の向こう 宇江佐真理 菊池仁編
御厩河岸の向こう ゆりの八才違いの弟・勇助は、前世を覚えていた。年を取ると未来が判っていた。ゆりが婚礼を迷っていると幸せになるよと背を押した。自分が十六才で死ぬことも伝えて来た。ゆりは弟の死をゆっくり看取った。
蝦夷錦 古着屋・日乃出屋の主・喜十の店に、着物をハギにした変わった生地を持って来た者を断った。後日、隠密廻り同心からその着物を探すように言われる。端布屋を廻り探し出すが売られていた。買ったのは大津屋の娘だった。人形を抱き本当の赤子のように話しかける娘だった。盗まれた物で買い取りたいと言うが、相手にされない。喜十は娘が、気が振れた振りをしていることを指摘する。娘は手放した。同心に渡す。
仲ノ町・夜桜 岡っ引きをしていた夫が亡くなり、息子が結婚する。とせは家を出て働くことにした。吉原の縫子だった。住み込みだった。
秘伝 黄身返し卵 臨時廻り同心・椙田忠右衛門家の嫁・のぶは、離婚を考えている。忠右衛門は舅、伝説の同心だった。姑はふで、口調ほどきつくはなかった。六年経つが子どもはいない。夫・正一郎の大失恋の最中、ふでが連れてきたのぶと結婚させられた。それを知ったのぶは、この家には合わないと思っている。
藤尾の局 元大奥で暮した藤尾の局・梅は、呉服屋の娘。両替商「備前屋」の後妻に入り、二人いる兄弟とうまくいかないまま。娘・利緒がいる。兄弟は身を持ち崩し勘当された。主が倒れた。梅は、兄弟に意見し、売り言葉に買い言葉で実家に帰る。主が持ち直し兄弟は梅を迎えにくる。かんしゃくを起こしてくれていい。初めて意見した梅に兄弟はそう言った。
赤縄 呉服屋の一人娘・このが恋した相手はお坊さまだった。このは赤い糸で繋がっていると言う。お坊さま・清泉。清泉が国に帰ったら死ぬというこの。このが自裁したら私も後を追うきがすると言う清泉。奉行と住職が話して、清泉の還俗が決まった。
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