2023年12月30日土曜日

秋山久蔵御用控十七 逃れ者

秋山久蔵御用控十七 逃れ者 藤井邦夫

 痴れ者 尾行る、尾行ていないで揉めている、武士と浪人を見た秋山久蔵は、武士を尾行させる。武士・牧野は小普請、役目が欲しくて旗本の使い走りをさせられていた。永井織部が目を付けた女を妾にしようとしていた。牧野は最後に、養子先の父母を斬り、永井の屋敷に打ち込み永井を討ち果たし、家来に殺された。

 恩返し 口入屋の吉五郎が料理屋で殺された。犯人を見た女中はみていないという。女中が昔、働いていた旗本の息子だった。女中は自分の貯めた十両を息子を逃がすために渡す。旗本は香阿弥に騙されて家を潰された。息子は香阿弥を殺し仇を討つというが、六年、息子は香阿弥を金ずるに暮していた。久蔵は捕まえた。

 逃れ者 十年前に逃げた霞の籐兵衛が戻って来た。仏具屋念仏堂に勤めるようは、笹舟に行く。ようは元霞の籐兵衛の手下の娘だった。籐兵衛から手引きするように言われる。ようは父親から何かあれば、笹舟の弥平治を頼るように言われていた。なかなか言い出せず佇むところを長次に見られ声を掛けられた。ようの告発で籐兵衛たちは捕まった。

 微笑み 大助は、湯島からの帰り、殺しの現場に行き合う。同心と岡っ引きは大助を捕まえようとする。大助は名前を名乗り逃げる。久蔵に話す。自分で犯人を探す。その場所で出会った女を探す。見付けた女は別人を殺そうとした。頼まれて殺す殺し屋だった。女に命じた男も捕まったが、二人ともお金を貰った殺しは認めたがその他のことは何も話さなかった。
 大助は、同心と岡っ引きに見付かった。秋山久蔵の息子だと言い、犯人が捕まったことを話す。


2023年12月28日木曜日

三島屋変調百物語九之続 青瓜不動

三島屋変調百物語九之続 青瓜不動  宮部みゆき

 青瓜不動 ちかのお産が近づいた頃、手習所の青野先生の知り合いの行然坊が三島屋を訪れた。行然坊の紹介で、高月村の洞泉庵のいねが、うりんぼ様という不動明王を背負ってきた。うりんぼ様がこちらの産婦の力添えをするというので連れてきた。富次郎が、黒白の間で話を聞き、富次郎がお祀りすることにした。
 うりんぼ様は、心に痛みを抱えた女たちが集まって暮す洞泉庵の青瓜畑から掘り出された瓜坊の顔を持つ不動明王だった。
 ちかが産気付いた時、富次郎は黒白の間のうりんぼ様の前に座った。
 呼びかけられひっくり返った先は、青瓜畑だった。うりんぼ顔の青瓜を摘んでゆく。山の麓から摘む。麓から大百足が追いかけてくる。富次郎はうりんぼたちを摘みながら逃げる。全てのうりんぼを摘み大百足から逃げる。山の上から海に落ちる。海に飛び込んだ。うりんぼに囲まれうりんぼが泣いている。富次郎は目が覚めた。ちかが女の子を産んだ。ほぼ丸一日掛かった。小梅と名付けられた。

 だんだん人形 百物語を止めないかと言っている伊一郎の紹介で、人形町の味噌屋・丸升屋の三男・文三郎が話しに来た。祖父から言い伝えられた話をする。祖父は四代目、丸升屋の初代・一文から伝わった話だった。
 北国のとある藩の味噌・醤油を商う石和屋に奉公していた。醸造元を訪ねて三倉村で騒動に巻き込まれた。三倉村は良い代官に恵まれ、米は採れないが村中で味噌を作り年貢を払った。土人形を作って売って村は潤った。突然代官が代わり味噌を石和屋に売らずに井達村の問屋に売れという。村長も大人の多くは代官所に連れて行かれた。水牢に入れられたという。一文と一緒に村を回っていた勇次と村長の妻は、一文と飛び猿とおびんを逃がすために役人の前にでて殺された。一文と飛び猿とおぶんは三倉村のことを城下、石和屋に知らせるために逃げる。
 おぶんを土人形を作る村に預け、一文は飛び猿と洞窟に入る。二人は死ぬ思いを何度もしながら城下に付き石和屋に告げる。代官の悪事が暴かれ処分が下されるまで一年掛かった。三倉村のほとんどが殺され、元の村には戻らなかった。おぶんも捕まり代官屋敷の奥に閉じこめられていた。
 おぶんが一文に武者の土人形を贈った。四度死ぬ思いをしたと言った一文に、おぶんはこの武者は四度一文を守よ、と言って。
 一文は文左衛門となり江戸で丸升屋を開いた。二代目の時、火事が起こりきらきらと光る物について行くと安全なところに逃げられた。十年後の火事でも、土人形が宙を舞い演舞をやりながら道案内をしてくれた。三代目の時は、近所の放蕩息子に金を貸してから出せになり合口で脅された時、放蕩息子の手首と眉間に何かが突き刺さり事切れた。人形の短槍だったが、見たのは丸升屋の者だけだった。四代目の時、寮を買い、寮に泊まった時に、盗賊が押し入った。土人形が九人の盗賊を殺し、これで勇さんのところに行けると呟き、粉みじんに砕けた。

 自在の筆 富次郎は骨董店〈古田庵〉で、出会った絵師・栄松師匠が、後日、古田庵に押し入り、古田庵で預かっていた筆を持ち出しばらばらにし、食べて死んだことを聞いた。
 富次郎は店主に聞きに行く。
 自在の筆と言う。あの筆で絵を描くとすごい絵が書け、和算の術式を五才の子が解いてしまうっという。ただ廻りの者の生気を吸い取る。妻の目から血を出し右目がつぶれ、左目が飛び出る。正気を失い十日目に骨と皮になって亡くなった。臨月の娘が産気付き、三日三晩苦しみ亡くなった。跡取り息子、嫁、内弟子、女中と亡くなった。そんな中で栄松は絵を描いた。筆を手放せば良いと分っていても手放せない。幼なじみが得々と説く。手を放した筆を火ばしで挟み、紙箱に納め紐をかけ蝋で封印した。それを古田庵は預かっていた。
 素晴らしい絵が描けたと思っていたが、見てみると勘違いだった。稚拙の線、汚らしい色、異臭を放っていた。栄松は、自在の筆を退治した。
 富次郎は絵師に憧れていた。百物語を聞いて絵にしていた。この話を聞いて絵を描くことを止めようと思った。

 針雨の里 八十助が大番頭になった。伊一郎から羽織、着物、襦袢を貰って、それを着てちかの赤ちゃんを見に行った。
 門次郎は捨子だった。捨子を育てて鳥の羽毛と卵の殻を売って生計を立てている村があった。木を登り木を渡り採るから十七才まで働く。村はお金を貯めており、子供らが村を出ていく時に纏まったお金を渡す。躾けと字が書け、算盤が出来る。お金を貰って独り立ちする。
そんな村に門次郎はいた。十七才になった時、門次郎は村にいたいと言う。村と町を行き来する増造の後を継いだ。
 そんな村に大噴火が起こった。村人は子どもを助け雨と土石流と溶岩み飲み込まれる。村人は風舞さんだった。風舞さんの化身が村の衆という身分を得て富を得られるまでの仕組みができていた。
 富次郎は泣いた。描きたい。


2023年12月24日日曜日

東京バンドワゴン⑱ ペニー・レイン

 東京バンドワゴン⑱ ペニー・レイン 小路幸也

 冬 カフェの向こうで紅茶も出番
 亜美の弟・修平の妻・佳奈と我南人が、近所のロケをする。芸名・折原美世の新しく始まるドラマのモデルになった花屋が近所にある。近所の紹介がある。(隣が元風呂屋・松の湯になっている。)
 二十年前、サザンクロスという喫茶店がなくなった。青の一才年下の浦田麻理・昔は南麻理が、〈日英テレビ〉を辞め、祖母と母と共に元のサザンクロスの場所に、紅茶とスコーンの店を開く計画があることを話す。
 同じ時期、離婚した父親も近くの居酒屋で働いていることが判る。父親は連絡を取らない。

 春 恋の空き騒ぎ
 三月、恒例のひな祭り
 四月 かんなと鈴花は小学三年生、芽莉依ちゃん大学二年、花陽大学四年。
 三月半ばの金曜日 青の実母・池沢百合枝が、三浦のかずみが住む老人ホームに引っ越す。
勘一と我南人と青が行く。
 同じ日の夕方、マードックと藍子がイギリスから帰国する。
 土曜日、二階の増谷家と三階の会沢家の引っ越し。〈藤島ハウス〉から
 日曜日、藤島ハウス内の引っ越し。
 小料理屋〈はる〉が、隣の空家を買い取り、店を広げることにした。夜だけではなくランチもすることにした。隣の古い二階の部屋に、バンドワゴンでバイトしている花陽の友達・君野和が、坂上元春と住むことになった。家賃なし、光熱費だけ。〈はる〉でバイトする。真幸のベビーシッター。好条件だった。
 研人のバンドのサポートメンバーを紹介される。鈴花のピアノの先生・三輪さんの娘・華さん。大学生。近所の佐藤大河とディオを組んで活動中。大河は芽莉依と高校が同じで知り合いだった。
 
 夏 答えは風と本の中にある
 三浦に海水浴。
 研人はイギリスでキースに貰ったワンボックスカーを日本に持ち帰った。
 和ちゃんは〈はる〉の二階に住むようになった。
 寺や神社の賽銭泥棒だと思った若者が、茅野さんと一緒に賽銭泥棒を捕まえた。茅野さんは、若者を尾行していた。彼・岡部隼人は、古文書や古本が大好きで、神社で話を聞いたりし廻っていた。賽銭泥棒を許せないため見回りをしていた。尾行していた茅野さんと一緒に捕まえ警察へ。
 茅野さんは、岡山の妻の実家に移り住むことにした。何かの縁だと、自分の蔵書、二千冊ほどを隼人に譲る気になった。バンドワゴンに持ち込もうと思っていたが、倉敷に実家がある隼人に譲るから古本屋をやればいいと言った。

 秋 ペニー・レイン
 佳奈のお腹に赤ちゃんができたようだ。人気女優なので発表はもう少ししてから。
 浦田麻理のお店が9月にオープンした。〈紅茶とスコーン〉という名前。
 十月、猫のベンジャミン逝く。
 茅野さんは岡山に転居した。
 隼人は、倉敷の山の中の廃寺を譲られ手に入れた。古本屋をしながら文化的事業をするらしい。
 近所で不審火による火事が三軒あった。木島は三軒の火事場で、隣の元風呂屋でアートギャラリーをしている高見を見たと言う。消防士の行沢は高見とは同級生だった。高見に聞く。放火はしていないと言いながら、ビルが火事になり保険金で助かった知り合いの話を聞いたと話す。元風呂屋の建物を残したいから手に入れたが、どうにもならないところに来ている。売れば建物が壊される。バンドワゴンに買ってくれないかと頼む。
 青が買うことにした。青は家族で自分だけが何もできていないことに不甲斐なさを感じていた。元風呂屋で、クリエータービレッジを作る。資金は、池沢さんと一緒に出た映画のギャラ。映画の全ての収入のパーセンテージで貰っていた。池沢さんは全てを青に渡していた。青にやることが見えてきた。
 犬を散歩させていると、小猫が付いてきた。るうと名付けた。
 
 
 

 

2023年12月18日月曜日

源氏物語 中 

 源氏物語 中 吉屋信子

 花散里 楓刀自の源氏物語の講義は続く。
 ジョー葉村の講義出席はないが、鮎子へには、ブローチが贈られたり映画に誘ったりする。藤子が付添映画に行く。容子は、祖母の講義ノートを清書するぐらいで身体の養生をしている。
 源氏25才。源氏の父・桐壷院の女御・麗景殿の妹が、花散里。帝が亡くなられた後、係累のない麗景殿女御姉妹の生活を庇護している。
 ジョー葉村が、また帰って来ると言い、アメリカに帰国する。

 須磨 源氏26才の三月から27才の三月。朧月夜との恋愛事件から身辺に圧迫を感じ須磨へ隠遁する。
 明石 源氏28才
 藤子の夫・彰の消息が分る。もうすぐ帰国できるだろうという便りが届く。
 源氏、明石入道の邸の客となる。秋、十三夜、明石と関係ができる。紫の上に知らせる。
 七月、源氏京に帰る。

澪標 源氏28才秋から29才の末。
 二月、朱雀帝は、元服した春宮12才に御位を譲る。誰も知らないが新帝の実父は源氏。源氏は内大臣になった。摂政は、亡き葵の父を推薦する。太政大臣になる。明石の君が女の子を産む。源氏は乳母を遣わす。
 御息所が亡くなる。娘・元斎宮の今後を源氏に託す。源氏は帝の女御に内裏に入れる。

蓬生 源氏28才〜29才初夏頃まで
 常陸の宮の息女・末摘花は、荒れた邸に住んでいた。源氏は花散里を訪れる途中、末摘花を思い出し荒れた邸に寄る。その後、邸内の手入れをしたり、蓬を刈らせ、生活の面倒をみる。老いた女房達のお仕着せまで気を配る。二年後には二条院の近くの新しい邸に移る。

関谷 源氏29才の秋
 空蝉は桐壷帝崩御の翌年、夫と共に常陸に赴く。京の帰る逢坂の関で空蝉一行と源氏が出会う。源氏は手紙を送るが、空蝉はすげない。そのうち常陸介は病に倒れる。継子に恋され空蝉は出家する。

 筍ご飯を作っている時、藤子の夫・彰が帰って来た。
 大貝夫人の秘書役を藤子から鮎子に代わる。
絵合 源氏30才春
 朱雀帝が思いをかけていることを承知で、源氏は元斎宮の幼帝に入内をきめる。朱雀帝は特別注文のお祝い品を贈る。梅壺の女御。
 梅壺の女御と弘徽殿の女御、絵合せが行なわれる。最後に源氏の須磨の絵日記が出され梅壺の勝ちになった。
 
松風 二条院ができ、西の対に花散里、東の対に明石の上と姫を住まわせるつもりで明石を呼ぶ。明石は源氏の嵯峨御堂の近く、大井川のほとりの別荘に住んだ。明石入道は隠遁生活に入る。

薄雲 源氏31才冬〜33才秋
 明石の姫を紫の上に託す。
 葵の上の父・太政大臣が亡くなり、藤壷が亡くなった。帝は、老僧によって陛下の父親は源氏だと知らされる。

 朝顔 桐壷帝の弟・桃園式部卿の娘、賀茂の斎院となる。七年。父親の訃により役目を退く。源氏32才。
 朝顔は、父の妹・女五の宮と桃園邸に住む。源氏は朝顔の下を訪ねるが、靡かない。

 乙女 源氏の息子・夕霧。12才元服。六位。大学寮で学問をする。書斎を花散里の東の院。夕霧は一緒に育った雲井の雁と恋仲になるが、父親・頭の中将・現内大臣に反対される。
 皇后は前斎宮になった。
 八月、六条院落成。東南源氏と紫の上、北東花散里、西北明石、南西中宮。十月明石が移る。
  
 孫たちの父母が帰国出来る中に入っているという情報がもたらされる。

玉鬘 源氏34才から35才の末
 夕顔の忘れ形見・頭の中将の娘。どこに行ったか分らなくなっていた娘が乳母に守られ京に帰って来た。長谷寺参りをした源氏の使用人と出会い源氏が引き取った。玉鬘。夕霧は姉だと思っている。

 両親が帰って来た。夫妻は疲労のため大貝夫人の人力で、容子が付添い強羅の宿へ行った。
初音 36才正月
 花散里の住まいには夕霧中将、玉鬘がいる。

2023年12月15日金曜日

源氏物語 上

源氏物語 上 吉屋信子

 牛込に高倉良英氏の邸宅があった。太平洋戦中に財務官として満州に赴任。雪子夫人も同伴した。留守を預かるのは母、楓刀自と三人の孫娘だった。
 長女・藤子は嫁いでいたが、良人がジャワに銀行員で赴き、留守の間実家に帰っていた。
 次女・容子は、女学校を終え学徒勤労に加わっていたが、肺尖にかかり勤労奉仕を医師から禁止された。
 三女・鮎子は女学校に在学中。寄宿舎があった。
 二月、容子の養生もあり、鎌倉山の高倉家の別荘に疎開することにした。
 家具のほとんどを運べず、トラック一台で運べる物を運んだ。楓刀自の蔵書は鮎子が土曜日に鎌倉山に行く時にリュックで運んだ。湖月抄、源氏物語五十四帖が六十冊の写本にまとめられていた。
 三月十日、高倉家は灰に化した。父親の蔵書、家具、祖母の秘蔵書・古典の写本類も殉じた。
 八月終戦を迎える。
 翌三月、預金封鎖、新円切り替え。没落した。
 鮎子は横浜の商館で働く。
 生活は苦しく、物を売るしかなかった。
 隣の山荘に未亡人の女実業家が越してきた。製罐業で成功した人だった。大貝夫人が挨拶に来た。夫人は高倉を知っており恩人だと言った。夫人は、藤子に夫人の秘書をお願いした。
高倉家の生活は安定した。

 楓刀自が、大貝夫人と孫三人に、土曜日の夜、源氏物語の話しをすることになった。
  
 秋、光琳の香包み、掛け軸、李朝の壺に小菊、千鳥の袖香炉、〈誰ヶ袖〉香木の中で始まった。桐壷。

 大貝夫人は子どもがなく、ある華族の主人と小間使いの間に出来た子どもを、実子として届けた。康男は慶応へ行き、戦後結婚し、工場も任せ東京の本邸も渡し鎌倉に移り住んだ。

 平安時代の絵巻物を見る。
 帚木 
 帚木続
 空蝉
 藤子は大貝夫人と東京へ行き、帰りが一人になった。自動車を運転するジョー葉山青年と知り合う。お茶に招ばれ、礼を持って藤子と鮎子は出かける。
 夕顔 
 ジョー葉村も源氏物語の聴講生になる。
 若紫 二夜。
 末摘花 大貝夫人風邪で欠席、ジョー葉村、名古屋へ出張
 紅葉賀
 刀自風邪でお休み
 花宴
 大貝夫人、孫が産まれ光と名付ける。
 葵
 賢木
 息子夫婦、孫の夫の消息も不明瞭、一家は晴れ渡った気持ちではないが、刀自が源氏物語を初めてから中心に目標が出来、空気に希望を持たせる物になっていた。

2023年12月12日火曜日

体質は3年で変わる

 体質は3年で変わる 中尾光善

2023年12月10日日曜日

柳橋の桜〈四〉 夢よ、夢 

柳橋の桜〈四〉 夢よ、夢 佐伯泰英 

  波乱万丈の旅を経て、二人は江戸に帰って来た。

 二人の祝言が挙げられる。
 コウレルが描いた、長崎から江戸までの素描画五十五枚、真ん中に「花びらを纏った娘」と「チョキ舟を漕ぐ父と娘」が展示された。十六年前の柳橋の桜と三才の小春。広吉と小春の絵だった。北州斎霊峰絵師が白壁一面に小春の花嫁姿と小龍太の紋付き袴姿を描いた。

 小春は船頭を続けることを決めた。
 小龍太は、自分の棒術が大内家が教えてきた香取流棒術ではなくなっていることを知る。携えていた刀を返した。自分は何をしようか迷う。
 長崎会所から貰った刀を差す。江ノ浦屋五代目彦左衛門が隠居し、海外貿易、長崎会所とおなじものを江戸会所として作ろうとしたが、性急過ぎた。長崎会所の江戸店ということで始められた。小龍太は彦左衛門の右腕として長崎に向かった。

2023年12月8日金曜日

マンションフォンティーヌ

マンションフォンティーヌ 小路幸也 

 羽見 晃  29才 小説家 
  膠原病になった晃は、家で小説を書き、新人賞を受賞し小説家としてデビューできることが決まった。会社を退職した。マンションフォンティーヌに移った。
 
大家が日本で六十年暮す、日本国籍を持つフランス人、リアーヌ・ボネさん・如月理亜音78才。終戦に父が殺され、母と如月岩雄の助けで日本に来た。国籍を持つため岩雄と戸籍上の結婚をした。淋しがるためフランスで住んでいたマンションと同じマンションを建てた。中庭に噴水が有る。全ての部屋が中庭に面している。十部屋あり大家さんと管理人さん以外に八部屋ある二階建てのマンション。

 管理人は、嶌谷拓次45才。元暴力団員、刑務所にも入った。暴力団員を抜けてからの刑務所入は、正義感からの喧嘩だった。
マンションの清掃、点検補修大好きで、自分の仕事にぴったりだと思う。

 貫田慶一郎33才 海外送金所勤務・通訳 父親は日本人、母親はフランス人。フランスで三十年暮らし日本に帰ると父親の家は売られていた。日本に来て三年。英語、ドイツ語、中国語ポルトガル語にスペイン語も話せる。

 坂東深雪58才 大学文学部教授 このマンションに住んで三十年になる。死ぬまで住むと言う。羽見晃の名を知っていた。受賞作品も読んでいた。

 野木翔44才 花丸不動産ロイヤルホーム部長 野木はこのマンションに住んでいない。このマンションに住む人を斡旋する唯一の人。リアーヌさんに管理人に嶌谷の相談を受けた。野木は嶌谷を知っていた。家も近く、小中高と同じ、中学校では野球部の一つ後輩になる。家庭の事情も知っていた。妹も知っている。

 鈴木幸介35才 大日印刷株式会社第一課営業・菜名38才 株式会社集円社出版校閲部夫婦
幸介は無精子症、菜名は病気で取ったので子どもが出来ない夫婦だという。菜名の妹は奈々子。
 
 市谷倫子28才 蓼凪建設庶務一課勤務、坂上麻実奈23才 ファッションブランドショップ店員
 北海道出身、同じ小学校校区。偶然羽田空港で会い、交流が深まり一緒に住むようになった。
 麻実奈は、空手三段、高校生の時、国体で優勝している。二人はレズビアン

 三科百合27才 いとファクトリー縫製・パタンナー・三科杏5才 年長さん
 母親が孤児、母親が産院で百合を産んで亡くなった。何も判らず母親の名前・三科百合と名付けられた。百合は施設で育ち、専門学校に行き、寮住まいだった。アルバイト先で知り合った人と結婚し子どもが出来た。彼はDVだった。気がついた友人が助けてくれた。助言を求めた人が会社の上司・野木だった。野木がこのマンションに連れてきた。このマンションは、こういう時のために一部屋か二部屋空けて有る。離婚が成立した。

 みんなの事情は知っていた。嶌谷が、百合を探しているらしい男を駅で見かけていた。
みんなで芝居をする。百合と嶌谷がカップルを装い彼を諦めさせようというものだった。
 麻実奈が駅で彼を見付けた。用意した二人は駅に行く。彼の前を通り電車に乗り、彼の行動を見る。全てを麻実奈が動画で取る。彼は諦めたようだ。

 みんなの話を聞いて、菜名は元同僚の編集者を思い出した。千葉出身、養子になる前は嶌谷、長いこと会っていない兄がいると言っていたことを。橋本杏子。羽見の編集者だった。
 そろそろと杏子は、羽見のところにやってきた。兄のことを訪ねられ、ここの管理人だと教えられる。兄は杏子のことを思い近づかなかった。杏子も空いている部屋に住むことになった。
 

2023年12月5日火曜日

源氏物語アンソロジー 君を恋ふらむ

 源氏物語アンソロジー 君を恋ふらむ

 やんちゃ姫玉かつらの巻 田辺聖子
 私十五才、源氏の素敵なお邸きらびやかな六条院に来て三ヶ月経った。流し目で見られると背中がゾクゾクする。私を連れてって。筑紫へ早く。

 髪 瀬戸内寂聴
 横川の僧都が御遷化されたと聞いたのは陸奥の海辺の村だった。
 宇治の院で死にかけた女を助けた。後にもあのまま死なせて下さっていたらと言われ、出家を願う人。
 助けた時の濡れそぼった髪の感触、目に焼き付いた清浄の裸身。
 僧都が出家させたことの後悔の手紙を書かれたことで、彼女が出家を貫けまいと感じ、僧都の手紙は仏への裏切りだと思い、横川を出奔した。長い流浪の中で、僧都を生き菩薩と言う認識に至った。
 彼女は薫大将と匂宮の愛を受け板挟みに悩んだ結果だった。還俗せず、出家を遂げきり五年後流行り病で亡くなったと聞く

 桜子日記 永井路子
 和泉式部に憧れ屋敷に上がった。私を桜子と呼んで下さった。道貞との間に娘がいた。道貞が。伊勢に行く時、式部は行かなかった。
 弾正宮為尊親王が来られる。弾正宮は亡くなる。
 弟・帥宮敦道親王が通う。帥宮も亡くなる。
 弾正宮と帥宮に付いていた桜子のお相手・桂丸も亡くなった。
 帥宮との思いでを書きながら、藤原保昌ともお付き合いしている。

 朝顔斎王 森谷明子
 娟子は元斎王。父親が亡くなり斎王から下りる。俊房がたびたび訪れる。俊房が訪れる度、いろんなことが起きる。鳥の巣が壊されたり、犬のしっぽが投げ込まれたり。少納言が娟子に付くようになった。
 一滴も雨が降らない夏、帝から娟子に祈祷せよと言われた。数日後、貴船で祈祷を行なった。夜雨が降った。
 朝、朝顔が根こそぎ引き抜かれた。俊房は毎日訪れる。
 火事が起きた。少納言が娟子を非難させた。娟子は鎮火の祝詞をあげる。「鎮火の祝詞を捧げるとはゆるさない」の声が聞こえた。俊房が駆けつけた。
 屋移りの日、少納言が現れ、今日無事に屋移りが終われば全てを話すと言った。
屋移りの途中、液体を掛けるという女が現れる。少納言が抑え、娟子は、構うな と命を下し新しい屋敷に移る。
 少納言は、現れ全てを語る。いろいろ悪さをしていたのは次の斎王・現斎王・三輪だった。俊房が好きで、斎王・娟子の元に行く俊房が、自分が斎王になったから来てくれると思っていた。俊房が行くのは娟子の所だった。抜け出し娟子に悪さをした。そして調べるために少納言を娟子の下に置いた。少納言は三輪から娟子を護るためにいるようになった。
自分が雨ごいをしても雨が降らなかった。帝は娟子を頼る。三輪は火を付けた。そして汚れた血を掛けようとした。
 少納言は、俊房に娟子に代わって歌を残した。
 君こずは 誰に見せまし わがやどの かきねにさける 朝顔の花 読み人知らず

 照日の鏡ー葵上 澤田瞳子
醜いが理由で照日の前に雇われた。吉野の山中に二年籠ったよりまし憑坐として。
照日の梓の法でも葵上は助からなかった。生霊の怨念がわが法を上回っておりました。
生霊などいないのではないか。何もかも承知の上で生霊がいると思いたい人に寄り添っているのではないか。

 栄華と影と 永井紗耶子

2023年12月3日日曜日

たすけ鍼③天神参り

 たすけ鍼③天神参り 山本一力

 天保六年 1835年 三月 いまりは、深川茶屋の老夫婦の後押しを受け、父・染谷の後を継いで鍼灸を習うことを決めた。辰巳芸者の検番にも許しを貰い父の許可ももらった。六ヶ月間、唐人の宋田兆師のもとで武術を教わることになった。六ヶ月で修了となった。
 いまりは難癖をつけてきた男二人を護身術で伸した。札付きだった。
 いまりを探している男がいた。いまりのことを調べている。
 住吉屋の表向き稼業は駕籠屋だが、賭場が本業だった。そこの二人を手玉に取られたため、
住吉屋の主・虎蔵はいまりへの仕置きを考えていた。代貸は、元締の大木尊宅の検校の代貸役・勾当の元徳に、虎蔵が染谷の娘に手出ししようとしていることを話す。
 尊宅は、虎蔵に、恩ある染谷の娘に近づけば、染谷のはたすけ鍼だが、わしが拵えた始末の針で始末すると脅した。

 いまりは庭先の離れに手を入れ、稽古場を作った。年配女性を集め身体の筋を伸ばしたり関節を回したりする。稽古着を作った。六人が集まった。十二月に始まって三月まで続ければ、手が痛みなく上がるようになるという運動だった。

 いまりの兄・勘四郎は染谷の仕事を継がなかった。父親の友人・昭年先生の娘・さよりが好きだった。一度嫁いで帰ってきている。いまりにさよりの気持ちを確かめて貰おうとした。ちょうど、さよりに医者からの縁談があり整ったところだった。
 勘四郎は書を習いたく卜斎先生に師事した。先生と行った大豆屋で算盤を弾いたことがあった。大豆屋から娘の縁談相手と卜斎を通して話を持ち込まれた。勘四郎は話を断りに行く。店で娘の書いた札を見た。卜斎に断りを言った後貰った半紙の言葉を思い出した。
  小人は縁に気付かず    頭の中で半鐘がなった。
 大豆屋に出直しますと言い、雨の外に出た。大八車がひっくり返り、怪我人が出た。勘四郎はずぶ濡れになりながら船宿へ連絡する。勘四郎は黒羽二重の紋付きと仙台平の袴を脱ぎ、紺の腹掛と股引に着替えた。弦太が漕ぐ船で染谷のところに草太を運ぶ。
 勘四郎は船宿・岩戸屋の主・葦五郎夫婦から、大豆屋のこと娘・しおりのことを聞く。
 勘四郎は洗い張りが仕上がってから大豆屋さんに行くことにした。
 弦太はいまりにお熱のようだ。
 


2023年12月1日金曜日

ねこ背をぐんぐん治す!基本ワザ

 ねこ背をぐんぐん治す!基本ワザ 原幸夫