栄次郎江戸暦〈29〉 殺される理由 小杉健治
若い女・まちが、兄は人を殺したり自死したりしない と訴える。栄次郎が三味線の練習場所にしている秋の兄ということになっている南町奉行所筆頭与力・崎田を頼って来る。話を聞いた栄次郎は調べると約束する。
まちの兄・多吉は、首を括って自死していた。その場にあった血の付いた合口から、とせが殺されていることが分った。多吉はとせを殺し、自殺したとされていた。とせの囲い主や、とせの周りの人に聞き込み、とせの昔からの情夫が殺されていることが判明した。多吉には言い交わした女がいたが、姿を消していた。栄次郎は岡っ引きや同心を動かす。
栄次郎に見合い話しが来た。栄次郎は気乗りがしないが、兄の上司からの話で義務的に会う。相手は三千石の旗本・岩城主水介の娘・若菜。話によると若菜も、栄次郎がどうしても会いたいと言う「大御所」の息子だから仕方なく会ったということだった。栄次郎はこの見合いの理由が分らないので岩城家のことを調べる。若菜は母親は、美濃藩大野家より嫁いでいた。
大野家は当主が倒れ、息子が乱暴なため廃嫡し岩城家の二人の息子のどちらかを大野家の養子にする案があった。
栄次郎が調べた結果を、大野家にぶつける。多吉は亡くなっていなかった。亡くなったのは多吉の双子の兄・大野家の政友だった。政友に成り代わった多吉は、自分は隠居し、岩城家の息子を養子にすると言う役どころだった。
栄次郎は、政友の死を隠しこのまま多吉を政友として藩主に付かせる。岩城の奥様に訳を話し養子を諦めるよう説得する。聞き入れてもらえなければ、政友殺しが公になりお家取り潰しになる危険がある。
政友が藩主についた。
栄次郎は若菜に会った。大御所の息子の立場から離れていたいという栄次郎に、無理だと言う若菜。栄次郎は大御所の息子の立場を利用しようと考え直した。
親の決めた男と別れたいために栄次郎にこのままもう少し付き合って貰いたいという若菜。
栄次郎は承知する。
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