蘭方医・宇津木新吾⑯ 友情 小杉健治
天保三年 1832年
次郎吉が捕まった。小幡藩松平家の中屋敷に忍び込んだ次郎吉はあわてて壁を乗り越えたところ、見回り中の大石杢太郎同心に捕まった。もう盗みは止めたと言っていた次郎吉が盗みに入ったことが不思議で、新吾は調べ始める。
新吾は次郎吉は誰かの頼みで屋敷に盗みに入り、待っていたように捕まり、罠にはまったと考えていた。 同心・津久井半兵衛と升吉と一緒に調べる。
次郎吉にも牢内で何度も会う。次郎吉は、刑を言い渡されても覚悟を決めていた。
引き回しの時、次郎吉は化粧をしていた。新吾とも目を合わせ覚悟していた。
処刑された顔は引きつり、覚悟を決めた顔に見えなかった。
次郎吉と付き合いのあったせつは、あれは次郎吉ではないという。耳の後ろの黒子も無い。
新吾は、半兵衛と升吉に話し、また調べる。
調べたことをが、次郎吉に伝わるように、また何かが動くかと、次郎吉に盗みを頼んだ女に、次郎吉に会いたいと伝えてと言う。
隠密を辞めた間宮林蔵にも伝える。幕府の上部の人間が関係していると思われるから。知っててくれたらいいと伝える。
新吾は次郎吉が生きていればどうすればいいか迷っていた。幻宗は、生きていてはいけない人間だ。自殺を呼びかけるか、新吾が殺すかしかないだろうと言う。
次郎吉から連絡があり、覚悟が定まらないまま会う。
次郎吉は、覚悟していたが怖かったという。最後の休憩所で別部屋に連れて行かれ生かされた。折角生きているのに死ぬのは嫌だと言う。五人の侍が現れ、新吾を殺そうとする。幻宗が現れ、新吾は次郎吉に対するが、もうねずみ小僧ではなかった。矜持が無かった。殺そうと斬り付けた次郎吉を押さえ込んでも新吾は一太刀が出来なかった。次郎吉は逃げた。
五人の侍は捕まり奉行所に入ったが、どこの誰かわからないまま釈放された。
林蔵が、五人の侍は鳥居の手の者だったと伝えた。水野越前守も承知のようだ。今、ねずみ小僧は鳥居の手の内にいないようだ。
天保四年 1833年 新吾と香保の間に男の子が生まれた。お宮参りに出かけた。
雲水姿の行脚僧が、次郎吉が立って居たところに立っていた。すぐ姿が見えなくなった。
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