2022年8月5日金曜日

東京バンドワゴン⑨ 

 東京バンドワゴン⑨ オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 小路幸也


 秋 真っ赤な紅葉はなに見て燃える かんなと鈴花は三才になった。毎朝、布団にダイビングして皆を起こす。一番は研人、紺も青もマードックも。朝食の座る席は二人が箸を置いて決める。全員揃って頂きます。
 青が出演した古本屋の映画〈古書店オーガスタ〉上映開始。
 花陽は高校、研人は中学
 はるの真奈美の母親・はるさんが入院。余り先が長くないようだ。
 青の映画の脚本家・岸田安見が〈東京バンドワゴン〉に来る。すずみが、二十年近く前に亡くなった作家・川田鉄フェアをやっているのを見た。
 同時に、増谷裕太が来る。裕太と岸田は同級生だった。
 小学二三年の少女・のぞみがおやつを買うために絵本を売りに来た。勘一は絵本にメッセージをつけ返し百円を渡した。我南人が少女を追う。見ていた岸田は涙ぐみ帰った。
 裕太は高校の時、岸田がたくさんの本を燃やしていたことを話した。
 裕太と母親、妹・玲井奈と夏樹夫婦と子供・小夜が、裏の空家になっている田町家に住むことになった。
 青の映画の穴崎監督が岸田のことに詳しかった。監督は学生時代、川田鉄と親しかった。岸田は川田の娘だった。売れない作家のまま亡くなった川田は、岸田にとって母と自分を
顧みないかってな父親として心に残っていた。紺は青と一緒に岸田の母親にも会って話しを聞いた。小さい頃は父親と古本屋へよく行っていた。
 我南人は、岸田とのぞみ親子をカフェへ呼んだ。
 我南人は、川田の本から娘への思いを引き出し、曲を付けて歌った。父から娘への思いだよ。のぞみを見て涙が出たのは、お父さんへの思いが憎いだけじゃないからだろうと問いかける。川田の本・八冊を売る。燃やす前にもう一度読んでほしいと言う。
 のぞみちゃんは離婚しようとしている父と母の家を行ったり来たりして生活していた。もうちょっと考えてやってほしい。そしてのぞみにはいつでも本を読みに来ていいからと言った。
 
 冬 蔵くなるまで待って 十二月の大掃除、障子の張り替えに集まった。藤島に花陽の塾友だち・谷田愛奈穂。隣から玲井奈と小夜。蔵の掃除に茅野。
 蔵に興味を持ったフリーライターの仁科由子。五条辻家からサチ、そしてバンドワゴンと辿ってきた。木島の知りあいの女性。若くで亡くなった勘一の戦友・小舟黒丹の蔵書の書き込みから辿ってきた。黒丹とサチのロマンスがあったような・・・。蔵の中にはサチの日記もある。
 蔵の書物のデジタルアーカイブを作ることにした。
 藤島の父親は、藤三・藤島三吉77才という皇室関係の書も書く書家だとわかった。藤島より五才年長の元CA・弥生と結婚した。藤三が弥生とバントワゴンの蔵を訪れた。弥生との再婚理由を、自分の作品の扱いを受け継いでくれると確信したからと言った。デジタルで残す理由を、勘一はデータになった古いもんから匂いを感じ取ってくれるけもしれないと言った。残さなければ古いもんにならない。消えたもんになる。二人は話した。
 藤島と我南人は、卓越した父親を持つ息子の心情を話した。
 クリスマス。木島にサプライズ。愛奈穂を合わす。木島の娘だった。みんな知っていた。そして愛奈穂が大人になるまで待たなくていいから結婚しなさいと仁科を連れてくる。堀田家の蔵の書籍や書類のデジタルアーカイブ作成業務を、仁科と木島がすることになった。外に漏れないようにしなければならない。
 正月過ぎに池沢が藤島ハウスに住むことになった。

 春 歌って咲かせる実もあるさ 花陽は高校二年、研人は中学三年。鈴花とかんなは幼稚園。マードックは大学の講師。
 勘一が盲腸の手術を受ける。入院。見舞いにくるなと言いながら、来てくれるとうれしそう。入院中の皆から古本の注文を取る。
 茅野、古本詐欺にひっかかる。古本の価値はないが、アンティークにはなる。
 近所の薫子61才が、カフェの支払いを古銭でする。そのことを知った我南人は同級生と調べ始める。薫子は息子夫婦に子供が出来ないのは自分がいる所為かもしれないと思い、施設に入ろうと思った。言い出せずに認知症の症状が出れば施設に入る話しが出ると思って、わざと古銭を出していた。我南人は古銭屋へ連れて行き、売ったお金でのんびり温泉にでも行くことを進める。息子が、母親を嫁任せにしていることも反省させる。

 夏  オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 七月半ば、かんなと鈴花は朝の席決めの時、おじちゃん、おばちゃんを付ける。
 夏休みの葉山海水浴のスケジュール調整始まる。
 蔵の作業・デジタルアーカイブ化がもうすぐ終わる。内緒のものは、紺と青とすずみの三人で作業した。木島と仁科の結婚式は、祐円さんの神社で九月二十八日、仁科の誕生日に決まった。
 夏休みに、芽莉依がバンドワゴンで廃業する親戚の残った中古レコードとCDを売ることになった。管理は芽莉依がする。
 池沢が真幸のベビーシッターになる。
 葉山の海水浴に行った、花陽と研人と芽莉依と愛奈穂が、一泊の予定だったにも関わらず夜帰ってきた。二人を家に送る。
 研人が高校へ行かないでイギリスへ行くと言ったことを聞いた芽莉依が、泣いてしまったことで帰って来た。
 研人は、イギリスに行きたい、もっとすごいロックに浸りたい。ミュージシャンになりたいから今からそうしたいというのはだめかなと言う。紺はお前の好きなようにすればいい。ただみんなの言うことをちゃんと聞いて言われたことを考える。そうして出した答えには何も言わない。したいようにさせると言った。
 花陽は、芽莉依と一緒の高校に行ってあげても、日本で三年高校に通ってもロンドンは逃げない。研人が尊敬するおじいちゃんは男の生きるエネルギーは、女へのLOVEだよと言ってると言った。
 マードックが研人と芽莉依を連れ出し東京国立博物館へ行き、尾形光琳の風神雷神図屏風の前にたった。そこへ我南人とキースが来た。キースは自分の家のキーを渡し、いつ来ても良いよ。日本の話が宿泊料だと言って帰る。マードックは、自分の生まれた国の良さを知らないと外国の良さもわからない。自分の国の素晴らしさを知った人はとても強い。才能を伸ばすと思うと言った。
 研人は芽莉依にとりあえず勉強教えて、受験までに間にあわせなきゃ。でも研人の成績では芽莉依の学校は絶望的らしい。

 勘一が仏壇の前で、サチに俺ばっかり楽しんじまってすまねなと言う。やって来た研人が、小さい時、大ばあちゃんを見たんだ。幸せそうににこにこ笑っていた。今でもにこにこ笑っていると思うよと言った。

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