2022年8月28日日曜日

東京バンドワゴン⑭ アンド・アイ・ラブ・ハー

 東京バンドワゴン⑭ アンド・アイ・ラブ・ハー 小路幸也



秋 ペンもカメラも相身互い  十月 藤島ハウスの管理人室に、相沢夏樹・玲井奈夫妻が住むことになった。正式に管理人に決まった。引っ越しが終わる。
 すずみの友人・美登里が東京に帰ってきてNPOの事務所を立ち上げた。美登里の同僚の長谷部さんは、「美琴へ」を書いた作家・宇田川拓也の元奥さん・美琴さんだそうだ。
 茅野が絡まれている水上を助けてカフェへ連れてくる。カメラを渡せと言われた。二人を尾行して来た男がいた。我南人が感づき、男を神社におびき出し捕まえた。探偵をしている宇田川だった。宇田川は、見つかれば命を狙われるような危ない高級料亭を写している水上を見た。水上のことを知っていた。危ない写真を取りあげるつもりでガラの悪い高校生に頼んだのだった。水上のフィルムは木島が話しを付けてくると持って行った。
 宇田川は、本を書けとお尻を叩かれ帰った。

冬 孫にも一緒の花道か 喪中の藤島は年末年始を堀田家で過ごす。今まで正月を過ごしていた実家は、藤三記念館に建て替え中。二十七日の昭爾屋の餅つき、家と蔵の大掃除、そして初詣。
 藤島ハイツを探っている不審者がいる。芸能界で池沢さんを探している人がいる。東京バンドワゴンに、古い映画のあれこれを持ち込んだ人がいた。仕事始めの日、田山監督が訪れた。監督は池沢さんに、引退前に、映画に出ないかと出演依頼だった。どこか旅の空の下にいる梅蔵と別れたマドンナが、梅蔵の子を生んで、育てあげていたと言う話し。子供役を青にオファーする。
 監督は池沢の妊娠に気がついた。相手が我南人だということも話したうえで、誰にも知られないように映画を撮ってくださった。監督のお陰で、マドンナ役を務めあげ、青さんを産めたと池沢は話した。
 監督は親子だと名乗る必要はない。映画の中の親子として俳優として銀幕に立ち、引退すればいい。田山監督の映画に出て正式に女優から引退することを公表しようと思う。俳優として息子役で出てくれないかという池沢に対し、青は出ますと答えた。そして孫に娘たち二人を使って欲しいと売り込む。全てが決まった。
 夜、我南人は、僕と研人が主題歌を歌えないかお願いしておけば良かったと言った。
 ボンが亡くなった。麟太郎と花陽が見取った。

 池沢さんと青が、母子役で映画に出ることになった。でいいのかな。

春 桜咲かすかその道の 二月、ボンのお別れ会、音楽葬が行われた。
三月 増谷裕太と真央の結婚式が堀田家で行なわれた。
 四月 鈴花とかんなが小学校入学。二人の部屋へ祖父母に買って貰った机を入れ、二段ベットを取り付ける。上下、毎日交代。
 研人と芽莉依は高校三年生
 蔵のことで以前揉めた山端文庫の醍醐教授が二年前からアメリカの古書フォーラムで五条辻の蔵印書を探している。
 研人が、バンド仲間の将来を自分が決めてしまって大丈夫か背負ってしまうことを悩んでいることを知ったサチは、かんなを通じてボイスレコーダーを使い紺に知らせる。紺は我南人に相談した。
 勘一と醍醐教授が、お互いに謝罪した。醍醐は、世界に一冊の本・〈最愛の娘、咲智子へ〉と書かれた「欧羅巴見聞鉦」を持ってきた。醍醐はお互いが死んだ時、後進のために正式な資料として研究のために貸してほしいと願った。約束だけでもさせていただきたい。
 勘一は護るのは自分まででいい。資料にしていい。文章にして残すと言った。
 我南人のバンドのメンバー・ジローさんと鳥さんが、決めたのは自分だ。他の誰かに決められたものじゃない。渡辺君だって渡辺君の生き方だ。希望も後悔も自分のものなのだ。と言った。

夏 アンド・アイ・ラブ・ハー  すずみが子宮筋腫で顔色が悪い。芽莉依は、東京大学を受けるが、余裕綽々で受験勉強中。研人はライブがいくつもある。のぞみちゃんが書いた詩に曲を付けたいと思っている。
 美登里が来た。すずみは病院へ行っていて留守。美登里は藤島の会社に事業パートナーになってもらうことになったと話す。
 みんなが揃っていた。すずみと青が子宮筋腫の手術を受けることにしたと報告する。かずみが子宮全摘術だね。元気になるけど妊娠はできないということだと勘一に説明する。
 すずみは、美登里も同じように手術して妊娠できない体だになっていると言った。そういう話しになって気まずい思いをしないよう先に言っておくと美登里にも話していると言った。手術は一ヶ月か二ヶ月先。
 かずみが介護も医療施設も付いた老人ホームを契約したとはなした。身元引受人は藤島だった。
 かずみの行く老人ホームを見に行く。入居施設が十棟もある巨大マンション群のようだ。設備も見晴らしもいい環境だった。一週間でかずみは引っ越しした。かずみは、自分が死んだ時、この箱を棺桶に入れて欲しいと、亜美とすずみに頼んだ。中身は勘一と一緒に写った写真と一人で無医村を渡り歩いていた日々に書いた勘一への手紙だった。出すことの無い手紙。生きている間に燃やせない手紙。
 帰って来た藤島が、かずみの後の部屋へ美登里が入ると言った。
 自分は家庭を持つビジョンが全く見えない。でも子供は好きです。世界中の子供に希望を与えたい。美登里と話して同じ方向を見つめ、同じ絵を描いていることが分かった。死ぬまでビジネスパートナーであり、人生のパートナーとして歩いて行きたいと思った。結婚ではないけれどということで。
 

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