東京 バンドワゴン⑬ ヘイ・ジュード 小路幸也
冬 人と出会わばあかよろし 二月 藤島の父親・藤三が亡くなり、花陽以外の者総出で葬儀に参列。花陽の葬儀出席は藤島が断る。
堀田家に研人の後輩・水上君が来る。写真が趣味の水上は、堀田の家の写真が撮りたいらしい。今までの写真を入れたポートフォリオ持参でくる。勘一、我南人、紺、青が見、感心し、マードックと藍子を呼ぶ。マードックは水上の許可を得、写真を引き伸ばしてカフェに飾る。水上の好きな写真家は、石河美津夫だと言う。
家の前の道が陥没し、工事が始まる。警備員は研人のバンドのナベの父親だった。去年の夏にリストラされ、就職探し中のアルバイトだった。
藤島が後妻の弥生さんと一緒に藤三記念館を任せようと思っている三島政幸という書家が、蔵の作品を見に来た。ナベの父親・渡辺善尋と顔を合わせた。幼い頃の書道仲間であり、大学の同級生だった。
我南人が藤島と渡辺さんと蔵にいる三島さんも集めて話す。藤島は藤島の本家の後取りの立場と、自分の会社の社長の立場で悩んでいた。弥生さんと三島さんに任せるつもりが、親戚が何かと煩かった。迷っていた藤島に、我南人は、藤三の作品を守っていくことだけを考えるのではなく、自分の会社に取り込んで若い者を育てる方向に持っていけばいいとアドバイスする。渡辺さんは「大日エデュケーション」で習字のeラーニングデジタルシステムの部長だった。FJの技術なら毛筆でもデジタル習字も可能なのではないかと言う。渡辺は履歴書を持参して会社に伺うと言う。
水上の作品の少女の写真のモデルは、二年生の時、「三匹のやぎのがらがらどん」を売りに来た名塚のぞみちゃんだった。今は五年生、春野のぞみになっていた。個性的な美人。
春 新しき風大いにおこる かんなと鈴花が藤島の部屋に泊まった。
花陽は高校卒業、第一希望の私大医学部合格。パソコンで合格発表を見る。
夜の合格祝いの食事会の席で、花陽は、藍子とすずみと花陽の三人で、父親の墓に行きたいと話す。蟠りが少ない研人が、堀田家を代表して一緒に行くことになった。鈴花とかんなも行く?藤島家の墓にも行くことになった。
藍子が、マードックとイギリスに行くことにしたと伝える。
藤島ハウスに研人と花陽が住み、青とすずみと鈴花が二階に移り、勘一が離れに住むことになった。研人の部屋に、来年、鈴花とかんなの机を置き、小学生の二人の部屋にする。
二週間後の日曜に、大引っ越しとなった。藤島、渡辺、甘利、裕太、玲井奈、夏樹、麟太郎が手伝いに来た。のぞみちゃんも子供たちの相手。
芸能関係ぽい人がカフェに来たので、のぞみちゃんの写真を外す。
のぞみちゃんの家のことが心配になった勘一は、研人もよく知っている先生に尋ねる。のぞみにも話しを聞き、のぞみの書いている物語を読む。芸能界に入れようとする継父に、のぞみの希望は小説家であり勉強のため堀田家に預けませんかと言って来た。紺がサチと話しをしている。のぞみの両親も真剣だった。のぞみも逃げてばかりいないで両親と向き合った。
夏 若さ故の二人の夏に 藍子とマードックがいなくなって四ヶ月。
花陽の大学の友だち・君野和がお粥モーニングを食べに来る。
青の映画の配給会社の知りあい・笈川が、雑誌の買い取りの相談をする。編集者でカメラマンの石河美津夫が亡くなり、残した物が全て笈川智佐子の物になったと言う。両親が早くに離婚し、親戚のいない石河の物が娘・笈川の物になった。青が鎌倉に行き、写真や雑誌を見積もり、家具も知りあいの骨董品屋に連絡し、馴染の業者に梱包も含めて手配した。次の日、八十二個届いた。
研人が、再婚した芽莉依の両親と三人で芽莉依の誕生パーティをすると微妙な空気が流れそうなので堀田家で両親を招いてやりたいと言う。玲井奈がケーキを作って手巻きパーティをすることにした。芽莉依の両親は離婚し、また再婚していた。父親が実の父なのだが、ぎくしゃくしているらしい。
日曜日、花陽がカフェに入るならと和ちゃんが手伝いに来た。和ちゃんの実家は静岡で喫茶店をしている。慣れている。
青とすずみは蔵の雑誌に値付けをしていて、若い頃の池沢のヌード写真を見付ける。どうするか迷っていると勘一が来、我南人が来る。我南人が、預かると言い雑誌に挟んで持って行く。
池沢が真幸を連れて来る。芽莉依と両親も来る。夏樹と玲井奈と小夜も来る。そこへ、笈川さんと西元さおりさんが来る。西元は、池沢と同世代の女優・五嶋香奈江さんの娘で、本人も女優をしている。二人は池沢がいることに驚く。五嶋は池沢とよく似た女優だったが、早くに引退していた。食事をする。
西元は石河が亡くなったことを知り、自分のヌード写真がどうなったか知りたくて笈川に連絡したのだった。青の所に全部渡ったことを知り慌てて来た。我南人は預かっていた写真をさおりに断り池沢に見せる。良い写真ですね。
池沢はグラビアを見ながら、石河さんには情熱を感じた。情熱を持った人と仕事ができて幸せでした。
突然、研人と芽莉依が、正座をして結婚するからと言い出す。言い直す。二人で北海道に行って下さい。芽莉依はこの家で預かります。芽莉依の父は単身赴任をするつもりだった。折角再婚したのに芽莉依がいるからと言う。
研人は十八になったら結婚届を出す。飛び回って音楽を続ける。芽莉依は大学に行って国際的な仕事をする。全然一緒に過ごせないかもしれない。でも一生二人で生きると決めている。二人の気持ちをわかって貰うために話した。
だから二人で北海道に行ってほしい。
紺が、父親に相談するものだというが、研人は反対されるとは思っていない。
勘一は、結婚のことは後回しにして、高校卒業までは芽莉依を預かりますと言った。
サチと話せる紺と見える研人の三人で仏壇の前で話す。大ばあちゃんがずっと見えてずっと喋れるかんなはすごいな。
秋 ヘイ・ジュード 十月 夏休みから芽莉依は花陽の部屋で一緒に暮らしている。
かんなと鈴花は、箸置き作業を芽莉依ちゃんに任せている。置き場所は指示する。
藤島の仕事をしている木島が久しぶりに来る。渡辺さんは仕事をしている。
見慣れない男性が、古本屋を見、家を見、カフェを見て帰った。木島が不審に思いつけると野島久夫だと分かった。
裕太と真央が、三月にこの家で結婚式を挙げたいとお願いに来た。野島久夫は真央の父親だった。
近くで研人のライブがあった。麟太郎が来ていた。研人と麟太郎が話す。研人は花陽が、麟太郎が藤島のことを気にしてるようだと思っていることを知っていた。だから、二人は付き合っていると公言出来ないでいるようだ。藤島のことを知りたいならと紺を呼ぶ。
麟太郎は花陽の大学費用の借用書を見た。ただの仲良しのおじさんでは済ませられなくなった。藤島の姉の事を話す。心中、高木、藍子への憧れ、そして花陽の幸せを願う気持ち。藤島が言う、重症のシスコン。このことを知っているのは、紺と青だけ、そして麟太郎。他言無用。
ボン・麟太郎の父親がスタジオで倒れたと連絡が入った。紺が青に連絡して花陽を連れてくるように言う。
病院で痛み止めを打ったボンに麟太郎が、花陽と付き合っていることを話す。ボンはカホンを使ってドラム代わりに三人でアンプを通さず演奏する。ヘイ・ジュード。年長者から若者への励ましの歌。恋人へのその気持ちを躊躇うなという歌詞。ボンは麟太郎に「ひょっとしたら俺の最後のライブかも」。
藤島ハウスの管理人の高木さんが、身内では唯一親身になって心配してくれた独り身の叔母に、一緒に住んで最後の時まで面倒みて欲しいといわれたので叔母のところに行くことになった。勘一は、玲井奈一家に頼めば良い、明るくてよく気が付いてうってつけ。引っ越しも楽。裕太の結婚も決まって手狭だと言っていた。ちょうど良いと言う。
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