上絵師 律の似面絵帖⑧ 告ぐ雷鳥 知野みさき
にわか御用聞き 律は涼太から彼岸花の透かし彫りの鈴を貰った。律が描いた彼岸花の着物を見て達矢という錺師が意欲を掻き立てられ作られた鈴だった。
綾乃が御用聞きに成りたいと言う。
大泥棒の晃矢がまだ見つかっていない。晃矢は錺師・達矢の双子の兄だとわかった。
律が片桐和十郎と話している時に、弟子になりたいという仁太が来た。和十郎は断っていたが、後に和十郎の所に行くと仁太が、和十郎の世話をしていた。
律が、前に助けられた男を見付けた。やくざ一家の右腕・賢次郎というらしい。悪さを仕掛けたのは、赤間屋の者だと教えられた。綾乃は赤間屋の息子の悪行を調べていた。旅籠・赤間屋の次男・茂郎とその連れ二人が悪さをして多くの人が泣き寝入りしているという。尾上の板前が殴られている昇太を助け殴られた後亡くなった。綾乃は被害を受けた人を探していた。
晃矢は子供を勾引かしていたことがわかった。
綾乃が探し出した秀に話しを聞く。 三年前、赤間屋で働いていた許嫁・清吉が薮入りに帰らないまま姿を消した。前から清吉は茂郎から嫌がらせを受けていた。同心が調べを始めた。三人は大川で溺れて死んだ。話しを聞いた隠居が船をだし孫を溺れさせたようだ。隠居が孫の長男を仕込み、茂郎に甘かった父親を引退させることにした。秀の許嫁は品川で亡くなっていた。隠居が昇太を連れて尾上の板前の仏前に行く。
広瀬保次郎の頼みで、阿芙蓉売りで捕まった留八の弟の似顔絵を描く。保次郎は弟の顔は知らないが留八の若い頃にそっくりというので、留八の顔を書いた。形見を渡すと言う。律は仁太にそっくりだった。留八は和十郎の密告で捕まった。和十郎の息子・善一郎は、仁太兄弟と一緒にいた。仁太は和十郎の芸のことを善一郎から聞いた。敵討ちのつもりで仁太は和十郎に弟子入りしたが、復讐を躊躇するようになった。親から受け継いだ御護りと、律が書いた留八の似面絵を見た。仁太は阿芙蓉には無関係だ。和十郎は仁太に好きにしろと言った。仁太は辞めないようだ。
鬼子母神参り 涼太の友人・勇一郎が、身を固めようと思った囲っていた女・のとがいなくなった。律は似面絵を描き、涼太は勇一郎と知りあいを廻る。
律は、関口水道町の志摩屋の隠居の要望で店まで意匠相談に行くことになった。広瀬の妻・史織と鬼子母神へ行くことになった。志摩屋で「らいの鳥」を描くことになったところで隠居に用ができまた今度ということになった。朔日に行くことにした。帰り道、律はのとを見付ける。声を掛け、女と行動を共にする。のとは身ごもっていた。自分のような者が子供を授かっていいのかという憂いの気持ちから家を出ていた。三人で家に帰ると、のとの姐さん・銀と男がいた。男は金を要求する。史織は広瀬に習った護身術で捕まえ番屋に渡す。勇一郎はのとに妻問いする。
達矢が十両を払ったり、芸者を呼んだりしたと聞いた律は、晃矢が達矢を騙ったりしているのではないかと思った。達矢は晃矢に騙られないように顔に傷を付けた。
告ぐ雷鳥 達矢は、晃矢を探している。律は白山権現に行く途中、達矢に会った。達矢が雷鳥の懐中仏に描かれた雷鳥を見せてくれた。律は紙に写す。達矢は紙に雷鳥を書いてくれた。着物の下書きを明日届けるという日、遣いの者が来て持って帰った。史織の実家で父親が、梅園禽譜を見せてくれた。そのころ、達矢が律に会いに来た。今井と晃矢の話をしていた。律に鈴を見せて欲しいと頼む。
志摩屋か全て任せるという言葉と前金をもらった。
達矢の品物を全部買う客がいるらしい。
六日ほど経った。志摩屋が捕まった。志摩屋は盗人宿、隠居は頭だった。晃矢は殺されていた。
達矢が雷鳥の着物が欲しいと言ってきた。達矢は旅に出ると言う。隠居の着物に贈り主は晃矢だった。二両を置いた。律は丁稚に涼太に伝えるようにと、達矢と白山権現に行くと言い置いて行く。達矢は懐中仏を律に預けた
千恵を勾引かし、無体を働いた男が頼った万屋も、律が勾引かされた駕籠や栄屋も志摩屋に関係していた。一緒に捕まった。志摩屋は着物の注文を口実に律をおびき出し、律を殺すつもりだった。晃矢が殺すなら雷鳥の着物が出来てからにしてくれと言った。
晃矢が捕まった。志摩屋にいたのは達矢だった。まだ殺されていなかったが、晃矢を油断させるために晃矢が殺されたと言った。律は達矢と名乗った男が、晃矢と分かっていた。火盗に志摩屋のことを密告したのは晃矢だった。
晃矢は捕まり二日間、洗いざらい白状した。そして自死した。
晃矢が勾引かしたとされる少年は、腹違いの弟がいるため、兄である少年は父や継母から虐待を受けていた。晃矢の知る盗人宿を教える代わりに少年のまっとうな里親か奉公先を世話してやってくれと頼んだ。晃矢は憎めない盗人だった。
少年は達矢が引き取った。律は少年に懐中仏を渡した。
達矢と晃矢は違った。着物は藍井の由郎が買うことになった。
約束 十五年前の千恵の許嫁が、妻を亡くし、千恵に後妻にと申しこんだ。雪永も類も千恵が決めることだからと口を出さない。千恵は律の所に来る。律と千恵は、義父の清次郎から茶道を習う。千恵が事件の後、十年くらした家・椿屋敷で茶を入れ、律と話した。村松に断りを入れた。
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