2022年9月22日木曜日

北の御番所反骨目録〈四〉 狐祝言

 北の御番所反骨目録〈四〉 狐祝言 芝村凉也

 宴のあと 古藤は内与力から外された。小田切家の屋敷の留守居補佐になった。深元は内与力筆頭になった。

 狐祝言 上役に暴言を吐いて三日間の謹慎処分を受けた裄沢広二郎は来合轟次郎と美也の婚礼の準備が遅々として進んでいないことを案じていた。
 大奥から戻って以来、美也が備前屋に仮寓したまま親元に帰らないこともあり実家の坂木家に幾度となく出席者を問い合わせても梨の礫だった。
 婚姻許可届けも出さず放置されたが、南町奉行・根岸肥前守鎮衛がまだ出ていないようだがと声を掛けられたことで婚姻届けを提出した。その後のことも全て備前屋が整え、坂木家に手紙で知らされる。坂木家からは何も言って来ない。
 出席者の問い合わせに返事が無いことで、広二郎と備前屋は坂木家に出向く。父親・勘乃丞は、美也が側室にならず帰って来たことにまだ腹を立てていた。勝手に段取りした祝言の席には絶対に出無いという。広二郎は坂木夫妻と跡取り嫡男夫妻の席はぎりぎりまで空けておくと言って帰る。 
 坂木家の嫡男・六郎太が祝言の席に水掛けをする計画があることを知らせてくる。六郎太は父親が筋の通らないことをすると思っていた。
 広二郎は坂木の親戚の伯父に計画を知らせる。坂木家には出席者を知らせる。北町奉行が出席することを知り、増席を望んで来るが断る。親戚を出すため母親、嫡男の嫁は出られないと言われた母親は娘の祝言に出られないなら実家に帰るという。四人で出席した。小田切土佐守は出席した。勘乃丞は隠居した。

まいない新三郎 新しく内与力になった倉島は、考え違いをした。裄沢が深元に擦り寄っていると考えた。仕事に関係のないことを毎日言いつける。裄沢は、古くから古藤と吟味方与力・瀬尾がしていた借財引継や専売品直取引の仲介に気がついた。大名や老中に関わることだった。市中取締緒色調掛・横手が脅迫され手を組んでいた。裄沢は深元に知らせた。
 瀬尾は密かに追放して一件を終息させると奉行が判断した。
 深元に事件を知らせたと腹を立てた倉島は、裄沢に罷免すると叫んだ。裄沢はお奉行様よりの意向承りましたと帰宅する。
 深沢は倉島を呼び出し、古藤が小田切家を出たことを告げた。内与力を辞めた時も明白な証拠があった。確かめたか?思い込みで判断せず推移を見、話しを聞けば簡単に判ったこと。裄沢は切れ味をひと味どころかふた味もみ味も違う。あいつに掛かると斬るべき物は一番無駄のない斬れ方をした上で斬るべきでないところはいっさい瑕をつけぬようしてのける。名刀を探し出すより見付けることは難しい。確かめてみれば良い。殿の承諾も受けず己の感情のまま勝手に罷免を通告した。裄沢がお奉行様の意向と言わなければ、裄沢が誤魔化してくれなければどうなっていたか。裄沢をどうでもいい無駄働きのために顎でこき使っていたことを他の者はどう見ていたか考えたか?
 裄沢の元に、奉行の護衛・宗方が迎えに来た。料亭で小田切は明日は普段通り出仕せよと言った。裄沢は自分の前に、倉島は横手に放逐を申し渡した。脅してやらせた二人は得たお金を取り上げられず追放で済まされた。同じではおかしいと言った。
 裄沢が平然と出仕し、横手の放逐が撤回され倅が出仕することも疑問視されなかった。

 秋日和 小田切家家令・唐家が、内与力を兼任することになった。
 


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