2022年9月4日日曜日

ドルチェ

 ドルチェ 誉田哲也 
 元捜査一課刑事・魚住久江42才独身。一課復帰を拒み所轄で十年。今は練馬署強行班係。
 捜査一課殺人犯捜査第三係、警部補金本健一は、捜査一課に復帰を誘う。

 袋の金魚 一才二ヶ月の子供・守が溺死、母親・由子が行方不明、通報は父親。久江が父親・斉藤明に会いに行く。守の重症の小児喘息のため外出もままならなかった。久江の調べでは、由子は献身的に守るの世話をしていた。
 斉藤由子が出頭する。何も喋らない。
 久江が、語りかけていると、由子が喋りだした。由子は十ヶ月前に殺され、自分は身代り、浜田仁美。守と生活し始め由子が殺されていることを知った時には守が離せなくなっていた。守と風呂に入り、仁美は疲れで眠ってしまった。気が付くと守は顔を付けて浮いていた。布団に寝かせたが、息をしなかった。怖くなって逃げた。
 本当の由子は六月に白骨で発見され、大腿部の金属プレートから斉藤由子の名前が出、金本は由子が生存しているか調べに来ていた。守の事故死は翌々日に起こった。

 ドルチェ 川西恵22才 大学四年、十時半頃、暴漢に襲われ左脇腹を刺された。全治三週間。科学捜査研究所の柚木に彼女が持っていたハンカチの調べを頼む。
 柚木は昔の仲間だった。柚木の妻・奈津子を知っている。柚木の指に指輪がないことに気が付く。金本に尋ねる。三年前に別れたと教えられる。柚木は近々再婚する。
 ハンカチに付いた整髪料から犯人は恵の家庭教師をしている教え子と分かった。恵が出頭させた。
 金本が柚木の話しをした。柚木が仕事に没頭し、なっちゃんは寂しさに耐えきれず、アルコールに頼り内蔵がボロボロで入院した。アルコール依存症が深刻だった。一年後、なっちゃんがお荷物になるからと離婚を言い出し、離婚した。ようやく、最近乗り越え支えてくれた同僚と結婚を考えるようになった。

 バスストップ 二十一才の大学生・飯森淳子が、何者かに抱きつかれた。大声を出し抵抗しそれ以上の被害はなかった。交番から峰岸巡査長が臨場。現場保存、鑑識に足痕を取らせた。峰岸は捜査課への転属希望。捜査に加えて欲しいと頼む。農協前でじーと見ている人がいたと言った。
 警視庁刑事部捜査第一課、性犯捜査第二係、佐久間晋介警部補が来る。所轄に乗り込み、調書を出せと言う。久江は佐久間の態度に我慢ならない。俺が仕切ってやると言う。
 農協を見張る。バスが来る前から男が現れ、バスを見送る。青年は佐久間に捕まり署に連れて行かれる。久江は彼・増本秀弥は無関係と判断した。彼は何も言わない。翌日、佐久間が、仕切る。久江は峰岸と自分の判断で動く。昨日と同じバスに乗り、増本が見ていたと思われる男性に声を掛けた。彼らは恋を禁じられバス亭で顔を見ることだけで良しとしていた。秀弥は彼に迷惑が掛かることを気にして何も言わなかった。
 峰岸がとって貰った足痕が決め手になって特捜本部が被疑者を確保した。久江は佐久間に湯飲みのお茶を頭からかけた。佐久間が凄んだ瞬間、里谷が現れ佐久間の馬乗りになる。久江は里谷を止め、上から圧倒的な力で押さえつけられる恐怖、屈辱、少しはお分かりになりました?と言った。

 誰かのために 峰岸が刑組課強行犯係に正式配属になった。印刷工場で障害事件発生。被害者の一人は蹲り頭に怪我、一人は手。加害者は堀晃司。堀は返してくれと喚いていた。堀は結束器で殴った。
 堀家に行き部屋にいた晃司を署に連れて行く。半年、印刷会社で働き、三日前に辞めていた。堀が返せと言ったのは図鑑だった。原口がザリガニと捕まえてきたのは毒を持ったサソリだった。堀は飼っていたサソリを捕まる前に窓から撒いていた。
 堀は仕事を辞める時、ここでも自分は必要とされなかったと言ったと聞いた久江は、晃司に、始めから必要とされる人はいない。みんな一所懸命努力して必要とされる人間になっていくんだと思うと言う。俺も頑張ったという晃司に誰のために?お金のため、自分のため?誰か人のために頑張ってごらん。サソリは十七匹。みんな見つかった。

 ブルードパラサイト 医者に運びこまれた男・吉沢徹が女房に刺されたと言う。生まれて半年の赤ちゃんがいる。会社で徹夜して帰ると、いきなり殴りかかり、包丁を持ち出して刺されたと言う。妻・明穂の所に行く。
 明穂を署に連行する。明穂は完黙。一ヶ月前、夫・徹がモデル出身の女優・阿川佑子との付きあいを週刊誌に報じられた。吉沢は昔は付き合ったが、今は何もないということで明穂も納得したという。阿川が大麻所持で捕まった。その時、久江は明穂の気持ちが分かった。
 阿川の本名は美保だった。子供の名前も美保だった。美穂ではなく美保だった。昔の恋人の名を付けたことがわかった時、夫が帰って来た。
 久江が徹のマンションを訪れた時、同時に女が尋ねてきていた。久江は徹の頬を張った。あなたの罪を裁くことは、今の法律では無理。自分の無力が情けない。女に奥さんすぐ帰るわよと言った。

 愛したのが百年目 住宅地の路上で乗用車と通行人の接触事故が発生。車で送って来た友人が、バックと前進を間違え、前の人を撥ね、門柱にぶつかり後に倒れて頭を打ったようだ。
 送ってきた友人・柿内は酒気帯び運転だった。神野は助かった。妻・逸美もいれて三人は大学の時から親友だった。娘・和美は大学四年、就職先も決まっていた。柿内の心配をする。
 久江は柿内の動きが気になる。柿内は酒を飲んでいなかった。事故を起こしてから酒を飲みウイスキーを入れていたペットボトルを捨てに行っていた。柿内は女優と不倫した。週刊誌が写真を掲載しようとした。止めるために、女優の広告クライアントを経由して掲載見合わせをさせようとした。週刊誌の発売元の出版社に和美の就職が決まっていた。娘の就職の取り消しを匂わせた。神野のスキャンダルもみ消しは家族のためではなく、事務所の利益のためであり、和美の就職が駄目になっても退く気がないと言ったことで、柿内に殺意が芽生えた。事故にすれば逸美に犯行動機がさとられないと思った。
 久江は調書を書く。殺人未遂だが、中止未遂になる。柿内は直後に救命措置を行い家人を呼び、救急車も呼んでいる。
 逸美と和美が柿内に差し入れを持ってきた。柿内の待っている。ちゃんとわかっている。どんな結果になっても受け入れられると伝えてくれと言われる。和美は内定を辞退した。来春、警察官採用試験を受けることにした。


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