空也十番勝負(六) 異変ありや 佐伯泰英
寛政十年(1798)師走 磐音の娘・睦月と中川忠英の次男・英次郎が祝言を挙げた。中川忠英は勘定奉行、元長崎奉行だった。睦月は兄・空也が戻るまで両親の傍らにいることを願った。
空也は酒匂太郎兵衛との勝負で酒匂を倒したが、空也は重傷を負った。長崎会所の町年寄りの姪・高木麻衣と長崎奉行所の密偵・鵜飼寅吉に出島に運ばれ異人の外科医の手当てを受けた。上海から外科医・カートライト博士を呼び寄せ手当てを願った。手当てすることも無しと言われるが空也の意識は無かった。
知らせが江戸に着いた。藥丸新蔵が道場を閉じて江戸から立去った。
年が変わった。高麗人・李遜督が長崎会所を訪れた。麻衣は内密に空也の体を会所に移した。遜督は二人きりで剣を振るった。三日目の朝、空也の目が開き、修理亮盛光の柄を掴み抜いた。遜督は消えた。酒匂との勝負から二ヶ月が過ぎていた。
空也は生きていると江戸に知らされた。
空也の体力は見る見る回復する。マスカット銃の仕組みを理解した。分解し組み立てる。
空也は松平辰平と初めて木刀を構えた。構えて一刻、不動の立ち合いで終わった。
空也は麻衣と寅吉と一緒に、長崎奉行と長崎会所の要請で上海に行く。カートライト博士に礼を言う。あんな傷を受けた者が三ヶ月でほぼ戻ったとは信じられないと言われた。
設立されようとしている、イギリス東インド会社の大株主の一人の娘・アンナが誘拐された。相手は「蕃族王黒石」参謀は薩摩の仮屋豪右衛門、示現流。アンナを助け出して欲しいと頼まれる。
空也は目撃者を探し、敵の隠れ家を探す。アンナを助け出し、薩摩人と言っていた高麗人・長南大を倒す。黒石と名乗っていたのは上海を闇から支配していたポルトガルのフェルナンデス・ソーザ公爵だった。東インド会社所有の砲艦の警固兵の面々が取り押さえる。
福江島に着いた空也は、馴染の肥後丸で次ぎの地に向かうことにした。アンナの命を助けた礼に貰った感謝の品々と船室で書いた文は、御用船で尚武館に送られた。
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