北の御番所反骨目録〈六〉 冬の縁談 芝村凉也
年寄同心 裄沢は年寄同心・彦内から呼び出しを受けた。一介の同心の身でありながら増長し、御番所内を混乱させる諸悪の根源を放置しておかないということか。質問された瀬尾、古藤、倉島、佐久間どの件も奉行や内与力から口外せぬことと期待されていると認識している。それを言わなければならないかと問う。彦内はやりこめられる。
内与力・唐家が訪れこの部屋の有りようも考えなおさねばならぬかもしれぬな。と言う。
たとえ怖れられる年寄同心であっても決して触れてはならぬ男がいる。
冬の縁談 裄沢は、茜の勾引かし事件が噂にならぬよう細心の注意をした。茜のことが噂される。調べてみると、関谷家に問題があった。茜を監禁し、友達にも合わせない。今まで断っていた縁談を急に求めるようになった。関谷を呼び出し室町や西田に相談させるが、関谷は聞く耳を持たない。そして聞こえて来た茜の縁談は、倍も年上の、妻を離縁させた後添えだった。妻に乱暴を働き、良い噂を聞かない南の同心だった。
裄沢に相談に来た若者がいる。吟味方与力・甲斐原之里の嫡男・佑だった。茜に好意を持っているので取り持ってほしいというものだった。関谷も自分の行いを反省していた。
裄沢は二人を合わす。縁談は進んだ。
南の同心・孫田が文句を言いに来る。お節介で要らぬ口を出してい、痛い目を見ようぞという。御家人株を売ろうとしている孫田は、二組に声を掛けている。裄沢は二人の商家の主を同時に呼び出し孫田と合わせた。孫田は計略が崩れ縁談どころではなくなった。
茜の縁談が決まり、甲斐原家を訪れた。勾引かされた時、共をしていた下女の末がいた。茜は結婚にあたり、一つだけ条件を出していた。辞めさせられた末を雇ってくれていた。
小日向心中 茶道の宗匠の妾と弟子が心中した。納得出来ないと南町の与力・中屋が甲斐原のところに来る。弟子は与力の三男だった。宗匠は二人を許すつもりだったのにと言っている。
備前屋の力を借りて宗匠に詰め寄る。妾に弟子を誘惑させ二人の様子を覗くことが度重なった。弟子は、師への裏切りの後ろめたさのために、妾は純真な若者に惹かれ心中した。甲斐原と中屋は隣で聞いていた。中屋は真相がわかり充分だ、菊と倅を一緒に埋葬することにした。
冬芽 来合は、廻方の席を争い負けたことで悪事に走った横手の息子を気づかっていた。仲間外れにされていた。新人同期四人が、手柄をあせった。いつもなら無視される新八にも声が掛かった。功名心に走る岡っ引き崩れの甚六が、盗賊の相談を聞いたと持ってきた話に乗った。今日押し込むという日、集まった者の中に飛び込んだ四人だったが、思った以上の頭がいた。皆が後づさりするなか新八は前に出る。四人の動きを見張っていた藤井が助けに入る。来合も来る。雷霆山を打つ。事無きを得た。新人同心は叱られ謹慎になった。
横手の役場・町火消人足改同心部屋では横手の悪口が始まる。裄沢は。先輩の落ち度を咎める。菊池は敵に回すことがないように、慎重に振る舞わねばならぬと思った。
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