2023年6月6日火曜日

京都寺町三条のホームズ♦3

京都寺町三条のホームズ♦3 望月麻衣
 〜浮世に秘めた思い〜

 序章 忍ぶ思い 葵がバイトを始めて八ヶ月 オーナー・清貴の祖父が、平兼盛の「しのぶれど・・・」の歌の掛け軸を店の壁に掛けた。
 上田が持ち込んだ浮世絵の掛け軸から浮世絵のレクチャーを受ける。
 上田は、店長・清貴の父に見合いを段取りしたが断られていた。店長は、一番美しい時に、一番愛しい時に亡くなった妻・清貴の母を忘れられない。妻より愛せない人と結婚は、相手に申し訳ないと言う。
 店長・作家・伊集院が、書いていた作品と同じ人を題材にした作品が出版された。店長は・作品を没にして新たに書き直さなくてはならない。いきずまった店長に清貴は鎌倉の観音様の話をする。店長は里見義弘と幼なじみの尼の話を書くことにした。

 第一章 歌舞伎美人の恋慕 11月、
 葵は清貴に顔見世に誘われる。葵は、定期試験の結果が悪く、今度のテストでも悪かったらバイトを辞めるよう言われている。頑張って勉強しないといけないので出ずらいと漏らす。結果、清貴に勉強を教えて貰うことになった。
 清貴の大学の女子大生たちが店に来る。清貴は、楽しげにくだけた口調で語らう。
 葵は、清貴の接し方で、自分が「特別」じゃないかと思ったが、特別ではなくあくまでバイトだと分った。敬語だし、他の人よりさらに離れている。勘違いを暴走させる前に現実を知って良かった。私みたいな平凡な人間につり合わないし。一線を引いてミーハーな気分で眺めていようと思った。

 秋人が歌舞伎役者・市片喜助と女優・元宝塚男役スター・浅宮麗を連れ蔵に来る。
 秋人は、品行方正に京都を紹介しいていた秋人の「本当の姿」が、ドッキリ映像で放送されお茶の間に大きな衝撃とインパクトを与え、話題、評価が高まりテレビの出演回数が増えた。今もロケの合間だと言う。
 市片喜助は九月に襲名し、顔見世に出演する人気者だ。喜助と浅宮麗が付き合っているという関係が分った。華やかな来客。
 秋人が人気者になったにも関わらず、天狗にもならず以前と変わっていないことに、清貴の秋人評価が上がる。
 数日後、喜助と元モデルで資産家の令嬢との婚約報道があった。またグラビアアイドルと付き合いのあったことが報道された。
 葵は三つ股だと憤る。清貴はそういう世界だと言う。
 
 顔見世初日の前日、喜助が「お前が市片喜助の名を継ぐのは許しがたい。襲名を辞退しろ。口上を断固阻止する」と書かれた紙を持って蔵に来た。状況をホームズは言い当て喜助は驚く。襲名の決め手は市片藤三郎の押しだと言った。帰る喜助にホームズは、止められない想いが伝わります。何を仕出かすか分らない。気をつけてくださいと言った。

 昼の顔見世の後、先斗町で夕食。蔵からのボーナスだった。最高の席で、音声ガイド付きで見る。秋人も麗もいた。秋人の四等席に喜助と話題になったグラドルもいる。
 演目のラスト、喜助出演のクライマックスのワイヤーアクションの最中、喜助が空中から落ちた。ホームズは、麗と一緒に楽屋に行く。葵も付いて行く。秋人はグラビアアイドルを連れてくる。婚約者もいた。ホームズは喜助の足を触り、折れてはいないことを確かめる。患部を冷やし、応急処置をする。
 事故だという喜助に、ホームズは故意と仮定した場合の話しをし、犯人を追いつめる。ホームズは藤三郎の妻・あやめに向き合い、喜助さんに裏切られたと感じられましたかと問う。婚約者とあやめとの言い合いで、喜助と藤三郎の妻の関係が明るみに出る。襲名のために関係をもったのは仕方がないと思ったという婚約者の弁に対し、どうしようもなく惹かれたからだという喜助。謝る喜助に藤三郎の平手が飛び、「足をどうにかし、立派な口上をせい!」と一言「あやめ、行くぞ!」とその場を退散。謝るあやめに、昔の報い、因果かな。お前に寂しい思いをさせていたのかもしれない。すまなかった。と言っているのが聞こえた。
 婚約者は、婚約を解消した。グラドルはバイバイと帰った。麗は喜助の背中をばしっとっ叩き元気付ける。
 奥様の不貞を許した藤三郎の器の大きさに圧倒されたという葵に、過ちを許すことで相手の全てを支配できるという清貴。自分の大きな過ちを許してくれるような人になら支配されてもいいかなという葵。先斗町で食事。その後、勉強。

 第二章 聖夜の涙とアリバイ崩し 年末定期試験の総合得点、過去最高。まさかこんなに点数が上がるなんて!
 母親に不正を疑られた葵は、バイト先の「蔵」と家頭家の説明をする。京大院生ホーム・ズに勉強を教えてもらったことを話す。母はお礼をしたいので家にお呼びしろと言う。
 上田さんが、北山通りにイケメンカフェを出す。四日間、清貴は手伝うことになった。
 試験の結果が良かったことを清貴に報告し、母親の誘いを言う。土曜日、上田のカフェに行く前に葵の家に寄ることになった。祖父の骨董品を見たいという清貴の言葉もあった。
 土曜日、母親と弟・睦月中二がいるところへ清貴が来る。アップルパイ、クッキー、豆餅。
ホームズの武勇伝を葵から聞いていた母親と弟は、事件に巻き込まれたら相談してもいいかと言った。
 祖父のコレクションを見るが、価値のある物はなかった。清貴は、この中から何も知らなかった葵が、白隠禅師の掛け軸を選んで持ってきたことを良い目を持っていると誉めた。
 葵の部屋で清貴は、この子は自分を好きなんだろうと思っていたが、自惚れだったようで残念でしたと告白する。自分とカップルだと勘違いされて、心底困ったと迷惑そうに強く反論されたと言う。(葵のことだが、葵は気付かない)

 上田さんの店を見に行く。流行りそうだ。店の話の後、元彼女・和泉が現れる。清貴が高校生の時付き合っていた。清貴は大切に扱っていたが、和泉は大学生になるなり合コンで知り合った男性と深い仲になり、清貴と別れた。その彼と結婚の話になったが、破談になった。父親が進める見合いをした。相手が魅力的で話しは進んだ。婚約パーティが開かれた。その婚約パーティの日に、彼が私の部屋に来たという女が現れた。和泉は彼女のSNSを見つけ彼に問いただした。彼女は桃山に住んでいる。松ヶ崎から桃山にその時間に行けるはずがないという。彼のアリバイを崩してほしいと言う。ホームズは、真相を知る覚悟はあるかと問う。ホームズは調べることを言い揃ったら連絡を下さいと言った。

 クリスマスイブ。葵は蔵の店番。店長が帰って来ればアルバイトが終わり。上田さんのカフェへ行こうと思っている。清貴は上田の店の手伝い四日目だ。店長に自作クッキーをプレゼントして帰る。イケメンカフェは大人気、葵を見つけた清貴は、葵に店が終わった後、和泉が来るからご一緒にと声を掛けた。
 和泉と婚約者・橘が現れる。寺町三条のホームズを知っていた橘。和泉との関係を聞かれ、高校時代の同級生と言い、葵を婚約者と紹介する。
 ホームズは、橘のその日の行動を話す。彼女は桃山に住んでいたのではなく、松ヶ崎近辺に住んでいた。橘がコンビニでお金を下ろし、慰謝料・手切れ金を渡し、すぐ桃山へ引っ越す条件を付けた。念書を書かせたか?等ホームズは話す。橘は認めない。すべてホームズの仮説通りだとしても終わったことだと言う。葵は、橘に不誠実だと言う。大好きな人にでも誤魔化され続ければ信じられない。何もかもが嘘に感じる。どんなに良い言葉を並べても嘘では意味がないんですと泣く。和泉もあなたに惹かれたが、もう駄目です。信用できない人と人生を共に出来ない。勘当されるかもしれないが、嘘をつき通されるのは嫌ですと涙をお流す。橘はほぼ清貴の仮説通りだと言う。和泉と結婚しなければ多額の借金を背負うことになると彼女に言った。彼女がそれでもいいと言えば考えようと思っていたが、彼女は、掌を返すように別れてくれた。後は清貴の言った通りだった。前の彼との別れが女性関係と聞いていたので、嘘をつき通そうと思ったと謝った。清貴と葵は席を外した。
 清貴と葵は教会の庭で話す。和泉と橘のこと。清貴はクリスマスプレゼントとして「植物園の年間パスポート」と「京都市美術館友の会」の会員カードを渡す。
 葵は手作りのクッキーを渡す。「ほんま、あかん」と言う清貴に迷惑と思われないように「純粋にお礼です。他意はありません」と念押しする。冷たくなった葵の手を包み込み「葵さん」と言いかける清貴。和泉と橘が現れる。誠実で有りたいと言う橘。お幸せに。

 第三章 祇園に響く鐘の音は 十二月末 オーナーが蔵に来て、しのぶ恋の掛け軸の話をし、葵を見る。葵は蔵の人たちに清貴に恋をしていると思われては蔵にいられなくなる。絶対に嫌だ。
 大晦日の家頭邸でのパーティに行く。
 清貴はパーティの準備に錦市場に行く。葵と途中の「新京極八社寺」に行く。清貴が用意していた薄紅色の朱印帳を貰い、寺社巡りをしていると秋人に出会う。清貴は仕方なく三人で行く。今までカフェオレを飲んでいた葵は、清貴の入れたコーヒーをブラックで飲めるようになりたいと思う。
 パーティの用意ができるまで、家頭邸の居住スペースに行く。そして清貴の部屋に。清貴の部屋は、散らかっていた。本の山だった。
 秋人のどう思うという質問に、葵は、素敵だと思うが、美意識の高い人は私を選ばないと思うから一線を引いていると答える。変人ぶりには、もう慣れました。
 オーナーの友人、美術関係者、市片喜助、浅宮麗等揃った。
 宝探しゲームが始まる。もうすぐ見つかる手前で入ってきた円生が見つけてしまう。円生と清貴は睨み合い、円生が用意した真贋ゲームが始まる。樂茶碗を二個出す。清貴はどちらも割る。山岡鉄舟の「清濁」。こことここにあなたが出ています。書を切り裂く。写楽。清貴は切り裂く。本物だと言う円生。清貴は決めては耳だ。心の叫びを聞いてもらいたいのではないですかと言う清貴。互いに胸ぐらをつかみ力を込める二人に、葵は、二人ともパーティの席です。いいかげんにしてください。終わったのですね。円生さん片づけて下さいと声を上げた。二人は笑みを浮かべ、内側の黒い感情を隠すことなくぶつけ合う。
 上田が葵に、清貴は自分にとって特別な子だと話す。親友の彼女を好きになり、結婚、妊娠はショックだったが、清貴が生まれた時はほんまにうれしく涙が出た。清貴は変わり者で捻くれ者やけどこれからも仲良くしたってと言われる。
 奥の部屋の窓際にいた清貴に葵は声を掛ける。反省していたという清貴。円生のことを考えている。
 
 三人で八坂神社に行く。白朮火を貰って清貴と父親が住むマンションに行く。
秋人の今年の抱負は、公私共にガンガンいこうぜ。らしい。
葵は、ブラックコーヒーを飲めるようになりたい。
清貴は、去年は情けなかったので、今年こそは・・・です。
 
 
  

0 件のコメント:

コメントを投稿