大江戸科学捜査八丁堀のおゆう⑨ 山本巧次
抹茶の香る密室草庵
茶問屋の清水屋が、根津の寮の茶室で殺害された。居合わせた南町奉行所の与力・戸山の証言によれば、被害者の入室後、茶室に近づいた者はいないという。
戸山の呼びで、駆けつけた同心・鵜飼伝三郎、岡っ引き・源七・ゆうは、聞き込みを始める。
源七とゆうは、同じお茶関係の駿河の名主・徳左衛門殺しとの関連も調べた。徳左衛門は何か訴えがあって馬喰町の宿に泊まったようだが、茶問屋を訪ねたと思われるが、土左衛門で見付かった。徳左衛門は江戸では茶の値段が上がっているのにも関わらず買い取り値が、あまりに安く抑えられていることで訴えにきていた。茶問屋との話がうまくいかなければ、勘定所、あるいは評定所に訴えるつもりでいた。
伝三郎は、旅ゆけば駿河の国に茶の香りってぐらいだ。と口にした。
ゆうは、冥加金のことで、伝三郎に相談、戸山様にも話を聞きに行った。
根岸の聞き込みをしていると、侍が、清水屋のことを調べ廻っていた。井角四郎兵衛という。
茶室の密室を解くために、ゆうは、宇田川を呼び、地下道がないか調べた。寮の離れには地下室が見付かった。鍵が掛かっているためファイバースコープで中を調べる。茶葉を発酵させていた。清水屋は永山という蘭学者と二人だけで離れにいたようだ。失敗していたが、紅茶を作っていたようだ。
茶問屋筑後屋の娘が勾引かされた。ゆうは考えられる範囲をドローンを飛ばした。それらしい蔵を見付けた。ファイバースコープで覗き、娘の存在を確かめた。全面上部にカメラを設置し、明るくなってから動くつもりだった。朝、娘が帰って来た。カメラを確かめる。井角が諸肌脱いで助けていた。井角は遠山金四郎だった。屋敷から出てきた遠山を尾行し、話を聞く。
勘定奉行の父親の指図で、勘定所内の不正を調べていた。
裏木戸の閂の指紋を調べ、一番遅れて来た遠州屋辰治郎が犯人だと割り出した。戸山が清水屋が躙り口から入ったと思った時、辰治郎が清水屋を殺し躙り口から出ようとしたが、誰かがいると分かりもう一度茶室に戻っていく姿だった。戸山がいなくなってから茶室を出、裏木戸から外に出て、表から遅くなったと今着いたように入ってきたのだった。
徳左衛門と清水屋殺しの犯人として、遠州屋辰治郎は捕まったが、冥加金の中抜きや、冥加金追加を逃れるための賄も計画はあったが、まだ動いてはいないため勘定所の佐戸江は捕まらなかった。
ゆうの機転で、佐戸江の首実検をした。清水屋の女中に佐戸江を合わし、永山という蘭学者が佐戸江だったことを暴いた。清水屋に金儲けと言い、作り方もはっきり知らない茶を作り出し儲けようとしたことを暴いた。諸々の動きのため御役御免にはなるだろう。
徳左衛門の息子が、新しい御茶・紅茶の作り方を教えて欲しいという。ゆうと宇田川は自分たちも知らないと教えなかった。まだ日本に紅茶の記述はない。
宇田川は、伝三郎が口にした旅行けば・・・を調べる。大正から昭和の初めに流行った浪曲だと分った。ロシア船事件の時も伝三郎はオロシャと言わずにロシアと言った。
伝三郎は、紅茶と言った二人をしくじりだと考えた。二人が自分より未来から来ていることは分っている。何のために来ているのか。未来人だとはっきりさせることはゆうとの関係を壊してしまうことになる。どうしても避けたい。やっぱりこのままで行こう。
0 件のコメント:
コメントを投稿