2024年9月30日月曜日

武士はつらいよ② 蔵元の娘

武士はつらいよ② 蔵元の娘 稲葉稔

 夏目要之助 徒目付下士、家禄三百石。藩主・藤田伊勢守氏鉄

 藩主の墓参の行列に付いた。町中で「要さん、要さん」と幼馴染の清に声を掛けられた。
清の実家は造り酒屋で、「星泉」が評判で江戸にも出し、二年前に家を建替え大きくなっていた。藩のご用足しにもなっている。要之助は、城下で声を掛けてはならないと言いに行った。
清は奇麗な娘になっていた。

 清から相談を受ける。江戸に下ろしている酒問屋から、別の問屋にも下ろしているようだから、もう取引をしないと言われていた。清水屋は、常磐屋にしか下ろしていない。どう証明すればいいのか分らなかった。
 要之助は、同じ幼馴染の源吉と、清兵衛に相談する。川荷置き場に出入り出来る者から順に、同じ町の造り酒屋の、樽作る者、樽の材料となるものあたる。一軒の造り酒屋に、清水屋と焼き印を捺す樽屋があった。
 同じような樽に自分の作った酒を入れて江戸の組合に入っていない店に卸していた。清水屋は常磐屋に証拠を付けて番頭を送る。今年も同じように卸すことになった。

 清は手代・幸吉と一緒になって店を継ぐことを決めた。

 

2024年9月28日土曜日

助太刀稼業〈一〉 さらば故里よ

 助太刀稼業〈一〉 さらば故里よ 佐伯泰英

 文政三年1820年 十月十二日

 豊後毛利家の徒士並・神石嘉一郎23才。身に覚えのない罪を着せられ脱藩を余儀なくされる。大阪に向かう船には「そなたが頼りだ」と毛利家の三男・助八郎が待ち構えていた。家宝の刀を持ち出した若様と旅をする羽目になる。

 金も宛てもない旅が始まる。大阪で、助八郎の持っている刀と、助八郎の口で、二天一流三宅道場で道場破りをすることになったが、嘉一郎は、七人衆と稽古した。嘉一郎は三宅道場に居候して門弟衆に指導を始めた。助八郎はいなくなった。佐伯藩の上役・下野枝陸が来る。下野枝は、元の役に戻すので自分を手伝えという。助八郎から刀を取り返すという。助八郎は京都へ行った。
 下野枝と三十石船に乗った。途中、浪人三人が強盗と化した。老商人を助けた嘉一郎は、弁当を貰い、老人の船宿「たかせ川」の使用人の部屋で一夜を過ごす。老人・梅鴛は禁裏一刀流荒賀道場を紹介する。隠居は、助太刀稼業を紹介する。
 大名・吉川家に金を貸す伊勢谷の主・重蔵と吉川家に掛け取りに行く。番頭・有馬兵衛と発ち合い勝ちを収めた。三百二十五両を受け取った。四十両を渡すという重蔵の言葉を断り、助太刀稼業の名と重蔵の三朱と数十文入った巾着を貰って、旅だった。
 武者修行に四十両は邪魔だった。
 瀬田あたりの伊賀一刀流山波結城道場で稽古した。
 山城結城、妻・和乃。藍16才と小太郎10才の四人家族だった。
 膳所藩の藩士の臨時師範をして一月、山波家そ実家と思い必ず帰ると旅立った。

 二ヶ月後、大井川で足止めされていた。どのような剣術家を目指すのかまだ考えていた。
寸又峡に仙人のような武芸者がいると聞いて大井川を遡った。岩屋にいた。仙人は酒を飲んだ。十数日、嘉一郎は独り稽古した。仙人はただ見ていた。見られることで稽古は充実した。仙人が小枝で滝の水を嘉一郎に振りかけた。旅に出よ。と言われ旅に出た。
 文政四年 1821年 晩春

2024年9月26日木曜日

京都寺町三条のホームズ・21

京都寺町三条のホームズ・21 望月麻衣 
〜メランコリックな異邦人〜

 九月から「蔵」でジウ・イーリンが1か月アルバイトをすることになった。
十月からイーリンは、京都の大学院の修士課程に通う。

 イーリンは、葵に興味を持ってきたようだ。清貴と一緒に働け、円生とも会える。父親・ジウ・ジーフェイは、イーリンに、高宮宗親と親しくなり彼が「珍しい宝石」を持っているか調べて欲しいと頼んだ。

 イーリンは、歌舞伎役者・市片松之助が持ち込んだ根付けが元で、高宮と根付けの会で親しくなる。清貴に「珍しい宝石」のことを相談する。小松も調べる。
 ジウ家の家族に関係深い話しになった。

 イーリンが、生まれることにより、ジーフェイの妻は自殺したと聞かされ、ジーフェイの姉妹夫婦、イーリンの腹違いの兄弟姉妹から苛めを受けて育ち、幼少期から孤独に育った。イーリンの味方はばーやだけという環境だった。自分の所為で妻が亡くなったという引け目を感じて生きてきた。
 清貴が、ジーフェイが、高宮の息子に「珍しい宝石」を手に入れることを頼み、その宝石が、持ち主が自殺すると言われる呪いのブラック・ダイヤモンドだったことで妻・クーチンが自殺したと言われているいう事実を掴む。
 ジーフェイには宝石を頼んだ覚えがない。離婚寸前の妻に、宝石を贈る気はなかった。ジーフェンには、クーチンが、「信じられない、そこまで私を憎んでいたの。お望み通り今から死んでやる。」と言った意味がわからなかった。
清貴は、自分に送られる宝石が、持ち主が自殺するという宝石だと知った言葉だろうという。
 クーチンは、一人で出て行きボートに乗ったと言われているが、義兄はいなくなっていたことを珠蘭は知っていた。クーチンが自殺ということも疑問になった。
 パソコンの電話で繋がっていたジーフェンとイーリンの異母兄・シュエン。シュエンは、今までのことをイーリンに謝った。
 イーリンは、ばあやが、本当の祖母だと知った。イーリンを置いてお金を持って逃げたと言われていた母親も、ジーフェンが面倒みていることも教えられた。

 イーリンのバイト期間が終わった。イーリンは、葵と清貴を父と母のようの思った。
イーリンの言葉を聞いた円生はハッとした。
 清貴は、葵を皆をたらし込むと表現する。

 清貴は九月から一年間、税理士事務所に通う予定。


2024年9月24日火曜日

拵屋 銀次郎半畳記 ④ 汝 戟とせば〈二、三〉

拵屋 銀次郎半畳記 四 汝 戟とせば〈二、三〉 門田泰明

〈二〉
 傷を負った銀次郎は、医師溜で養生していた。黒書院直属監察官大目付は解職され無職の状態だった。着替えの衣装には葵の紋が入り、銀次郎の大小刀にも葵の紋が入れられていた。本丸殿舎内でも大小を帯びて構わないということだった。上様・家継に会いに行くが老中に止められた。銀次郎は隠宅に帰る。
 隠宅は、杖三とコトが世話をしてくれ、浦と滝が黒鍬から派遣され防備していた。隣家の嫁・萩が出入りしていた。
 よりかたと名乗る侍が来る。銀次郎が萩を送って行った時、よりかたが一人になった時、四人の浪人風がよりかたを襲った。浦と滝がよりかたを守る。銀次郎が帰った時、四人は逃げた。よりかたが襲われたようだ。よりかたを帰し、銀次郎はよりかたの素性を調べさせる。
 黒鍬の頭領黒兵を守る者が十人いるらしい。
 銀次郎の拵屋の跡は何も残っていない。銀次郎の剣術修業の場・人間修業の場である無外流大道場・笹岡道場も無くなっていた。
 銀次郎は黒鍬黒兵に引かれていた。現れた黒兵には影武者が三人いると言う。妻にするはずだった艶の墓で黒兵と会う約束をした。
 夜、よりかたが訪れた。真っ赤な装束の刺客に襲われた。よりかたは、萩を側室にしたいと相談して帰った。よりかたは徳川吉宗だった。

 黒兵に会った銀次郎は、結ばれた。屋敷に帰り朝を迎えると、黒兵は消えていた。叔父・筆頭目付和泉長門守兼行・黒鍬支配を訪れる。黒兵は御役御免を願いを出していた。
 城中で家継に見舞いし、黒鍬・滝と話す。滝はご自身で京に行ってほしいと言った。

 隠宅に柳生御盾班組頭の警護で、月光院と新井白石が来た。上様名代で、従四位下・備前守、本丸参謀長の職、六千石に給する。有事の際、将軍直属軍の指揮統括、江戸市中の刑事機関の統括、二条城拠点の京の全機関の統括を申し渡された。


〈三〉 
 二人がいる隠宅が赤装束十五人に襲われた。柳生の御盾班に守られた。
 吉宗が訪れ、将軍の内示が出たことを伝えた。銀次郎に内示は決定だと思えと言われた。言葉では、尾張が第一位と言いながら、将軍になった時の職を考えていた。新井白石と間部詮房に×を付け、桜伊銀次郎に◎を付けたり×を付けたりしていた。
 銀次郎が萩を連れて来た。銀次郎は江戸を出るにあたり、吉宗に幕翁となれば、自分の身の丈にあった隠密情報機関を拵えなさい。幕府を縁の下で支える大奥を確立されよ。と忠告する。妹とも思う萩の亡き亭主と儲けた幼子が三人いる。四人を慈愛で見守ってほしい。と言い置いた。吉宗は、内示通りにコトが進めば、三年間は助けて欲しいと頼んだ。
 吉宗の馬・吹雪を借り受け京に発つ。上様に別れを告げ、天栄院への手紙を託す。
 途中で、奈良の御破裂山神聖な霊山で三百を超える山伏の激しい武闘訓練が行なわれていると噂されたが、集落は解体され小さな寺のみが残っているだけになっていた。と報告を受けた。
 保土ケ谷で、滝が、黒兵を天之御方様と呼んだ。気の毒だから救って欲しいと、多分御所内にいるであろうと言われた。
 三島で、叔父の走部が、上様が亡くなったことを伝えた。
 京に入り夜の山中で百姓女に会った。町中に入り、盗賊団に襲われる後藤金座を助けた。後に来た同心に縄を掛けられる寸前、やってきた町奉行に放免される。戻って百姓女の家に宿を願う。朝京都所司代・水野忠之が朱印状を持ってやってきた。新将軍直々の朱印状。従三位・左近衛権中将・本丸参謀総長、九千八百石。二条城代という役職だった。
 吉宗は、銀次郎の手紙を受け取った天栄院に背中を押され将軍の座に着いた。
 浦が用意した三条通りに沿った「呉服商五井」に宿を求めた。浦に吉宗への伝言を頼む。旧政府のご老中はそのまま継続して用いること。絶対手放してはならない。強く言っていたと伝えるように。
 五井の前は紀州藩京屋敷だった。筆頭留守居役・禅籐吾郎右衛門は、商家から金を借り返す気もなく、女に金貸しをさせ、惨い取り立てをしていた。禅籐に直接五日の内に返すことを言うと、命を狙いに来た。

2024年9月20日金曜日

安倍晴明 あやかし鬼譚 

安倍晴明 あやかし鬼譚 六道慧 

 陰陽師・安倍晴明、84才。晴明は自分が「光の君」と呼ばれる夢を見た。その夢を見るたびに現実の晴明は、若返る。力は衰える。
 内裏の北面・不開の門が開き死人が続出。中宮彰子のまわりでも帝の寵愛をめぐり後宮の女たちの争いが巻き起こる。紫式部の執筆中の源氏物語と奇妙な符号を示していた。

 元子が操られ、一条帝を惑わす。元子の兄・藤原重家を操り道長の命を狙う。宮廷陰陽師の地位を狙う弥勒法師が、操る幻軍団は晴明を狙う。
 追い込まれた晴明、氷に閉ざされた道長。紫式部に「語違え」を描いて貰い燃やす。葵の上を物語に戻す。道長の凍りついた肉体が、元に戻る。紫式部に光源氏の誕生を描いて貰う。物語と密接な関係を保っていた夢幻世界の均衡が崩れた。道兼の幻が消える。重家の友人・源成信が現れた。自刃を止めた。

 晴明は翌年、85才で死亡。

2024年9月18日水曜日

上絵師 律の似面絵帖⑩ 照らす鬼灯 

 上絵師 律の似面絵帖⑩ 照らす鬼灯 知野みさき

 所変われば 
 七朗という見習いの奉公人が入った。
 律は涼太と、疎遠になっている叔母の弔問に、王子に一泊し滝野川村に出かけた。
追い剥ぎから、母娘を助けた余助と出会う。余助の言葉を似面絵にし、番屋へ届ける。後日追い剥ぎは捕まる。
 着物の意匠に地獄絵を頼まれた律だったが、地獄絵は描けない、書きたくないと断る。律は自分の怖い思い出に繋がる鬼灯を描く事にした。買い手がなくても良い、描く事にした。

 春告鳥
 巴屋の貴彦が奉公人にと健生を連れてきた。巴屋は、十七年前、火事があり涼太の祖父・青陽堂の先代の宇兵衛は、当時七才の貴彦を助け亡くなっていた。盗賊が窃盗と火付けで捕まった。健生は追分宿の旅籠の次男だった。四年前、旅籠の火事で、父親と長男・正生が、亡くなった。正生は健生を助けようとして亡くなったため、母から健生が亡くなれば良かったと言われた。貴彦は健生を引き取った。貴彦は、出家しようとしている。巴屋に馴染めず青陽堂で奉公させてほしいと言ってきた。
 往来の喧嘩に巻き込まれ亡くなった娘の供養の着物に、鴬・経読鳥の絵を描いた。

 薮入りにて 弐 
 竜吉は地獄絵に、九相図を描いた。
 律は薮入りで帰った慶太と夕、綾乃と直太郎と一緒に護国寺へ行く。慶太は、母を殺した辻斬りが、父も殺し、犯人の小林吉之助は捕まり、旗本ゆえに「病死」になっていることを知らない。慶太が犯人を憎み続けていることを知る。広瀬との約束で誰にも真相を話していない。
 火盗改の小倉に付いている太郎が、似面絵に描いた伝八を追っているのを涼太は見付けた。太郎は伝八と親しげに話しをしていた。律は太郎を疑うが、小倉は私は太郎を信じると言う。

 照らす鬼灯
 余助は元侍で、二十年前、辻斬りを殺したことがあった。辻斬りとして殺された・秀一郎は、余助・義之介と同じ年で同じ道場だった。秀一郎は武家に仕官していた。義之介は浪人だった。秀一郎は先生のお気に入りだった。義之介は辻斬りを捕まえ仕官したいと願い、探していた。辻斬りの現場にあった義之介は腕の立つ辻斬りを斬った。本当は義之介が辻斬りではと言われ江戸を出て上方に行った。律は、辻斬りにあった男に会い話しを聞いた。秀一郎が辻斬りなのは間違いなかった。
 余助は、盗人のことを探り、奉行所に知らせていた。
 貴彦が出家する前に、律と健生は貴彦に会いに行く。律の具合が悪くなり巴屋に泊まった。その夜、巴屋に賊が入り、太郎が刺され、行灯が倒れ火が出る。健生と律が、皆に知らせ、健生は布団を持って行灯に被さる。余助が現れ二人は助け出される。小倉が現れ賊は捕まる。太郎が追っていた伝八だった。健生は、火事から救い出されたが、兄を見殺しにしたと余助を睨む。
 伝八は、前に巴屋に入った賊だった。火付けはしていないが、息子は窃盗と火付けの罪を着せられたと恨んでいた。
 火事になったのは貴彦が行灯を倒したためだった。貴彦はずっと忘れていたが、四年前思い出した。そのために出家すると考えたのだった。信濃に出家に行く貴彦が、健生の母に正生と健生を描いた似面絵と健生の手紙を託した。
 余助は広瀬の御用の助けをすることになった。
 鬼灯の着物は、元々地獄絵を頼んだ人の手に渡った。主人が頼んだが、病で寝つき割り符を見付けた妻が現れた。妻は散々振り回されたから、今際の際であざ笑ってやるつもりだったが、鬼灯の着物を見て、いろいろ思い出し、切なくて。死装束にするが、迎え火や送り火におかみさんが着ることにした。

 律は涼太に授かったようだと告げた。
 

2024年9月16日月曜日

情け深川恋女房⑤ 札差の死

情け深川恋女房⑤ 札差の死 小杉健治

 小間物屋 「足柄屋」の与四郎と俳句の会で付き合いのあった札差の間口屋五郎次が、ふぐの毒で亡くなった。岡っ引きの新太郎は、疑念を抱き探索を開始する。店を継いだ五郎次の息子・心平太の周囲には娘の稲への厳し過ぎる躾けや、女房の雉の兄・密蔵との争いなど問題が起きていた。
 与四郎の店の小僧・太助は、最近、商売にも剣術にもあまり力を入れていない。また、女房・小里の具合も良くない。そんなところに密蔵の息子・密三郎を預かることになる。
 新太郎が付いている同心・今泉は、ドン尻屋一家を潰そうとしていた。賭場を開き借金の取り立てに容赦なく、殺人も厭わないどんどん力を大きくしていく一家だった。事件で捕まえても、賂で事件をもみ消す。頭の又四郎を捕まえないとどうにもできないと思っていた。
 五郎次のフグ事件、その後の間口屋への付け火、どちらもドン尻屋一家の頼みで起こったことだと掴んだ新太郎は、太助を引き込み囮を仕込みドン尻屋の二十六人を捕まえる。
 又四郎を逃がしたと残念がる新太郎に、先代頭の息子・金馬は、又四郎は三年前に死んでいると教える。又四郎しかドン尻屋を纏められなかった。みんなに死が知れ渡ればドン尻屋はばらばらになった。
 与四郎は三年前のことを思い出した。料理屋の二階の窓で見た又四郎、料理屋から出てきた心平太。その手は血で汚れていた。心平太の顔を見て父親殺しの相と言った易者。与四郎は心平太に疑問をぶつける。又四郎を殺したこと、心平太は、又四郎の息子だと。与四郎は銀煙管を心平太に渡した。新太郎には言っていないと別れた。
 間口屋の番頭・喜助が与四郎に告げた。ドン尻屋の先代・金兵衛の妾と又四郎の間に出来た息子を、五郎次が育てた。番頭喜助が任された。三年前、二人が話していたことを心平太が聞き、又四郎を殺した。又四郎の死は隠された。喜助が自訴するつもりだったと言う。心配した与四郎は、喜助に死なないで、なんの意味もないと言った。
 喜助は近所の寺で出家した。
 

2024年9月11日水曜日

風烈廻り与力・青柳剣一郎66 忘れえぬ

 風烈廻り与力・青柳剣一郎66 忘れえぬ 小杉健治
 
 剣一郎は、旗本・坪井貞道の悪い噂を耳にした。小間物屋の美しい内儀に言い寄り何かを画策している。不審を抱いた剣一郎は身辺を探る。老中から横槍が入る。
 十五年前のそば屋の夫婦殺しの話しが耳に入る。犯人とされた侍は、旗本の若党で自死していた。が本当の犯人はその旗本の次男だといわれていた。次男が坪井家に養子になっていた。
 坪井家では、女中が手打ちにあっていた。女中の許嫁と十五年前のそば屋の弟、自死した若侍の弟が、恨みを抱き仇討ちを企んでいるようだった。
 坪井家に老中が招かれる。何かが起こると考えた剣一郎は、隠密同心・作田新兵衛を坪井家に見届けるよう頼む。
 何かが起きた。新兵衛が報告する。そば屋になって入り込んだ三人は、用人・矢崎平左衛門に隣の控室に呼ばれた。矢崎は、坪井に、十五年前の事件と女中への手討ちの罪を問いただし、坪井家にあなたのような当主は不要だと言い、貞道を斬りつけた。近衆の高槻に若君を頼み討たれた。異変を知った老中は、病死と届けるように言い帰った。
 坪井家にも矢崎家にも長男がいる。

2024年9月9日月曜日

脳科学捜査官真田夏希㉑

脳科学捜査官真田夏希㉑ 鳴神響一 
 〜ジャステス・エボニー 〜
 
 横須賀市内で大学教授の息子が、誘拐された。夏希は用意するが連絡はない。
 現場でアリシアと小川に会う。
 防犯カメラ、Nシステムで誘拐した車を追う。
 夏希は、被害者宅から犯人の隠れ家を探すために待機場所を移動する。
 身代金受け渡し時間が近づく。
 携帯基地局、アリシアの鼻のお陰で少年の監禁されている倉庫を見付ける。
 少年を助け出し、犯人の男を捕まえている最中、アリシアが吠え出す。
 アリシアは爆弾探知犬だった。小川は、急いで外に出るように言う。
 倉庫は爆発する。犯人は、ナイフを自分の胸に刺した。
 犯人は、病院に運ばれた。
 少年は、夏希が見たところ異常がないので、駆け付けた両親に明日病院へ行くように言った。アリシアが、少年の両親に吠える。
 夏希は、少年の両親に、明日にでも犯人に事情聴取を行なうと言う。
 夏希は織田に、犯人の病室の張り込みを頼んだ。
 朝、織田から夏希に連絡が入る。依田美穂・少年の新しい母親を逮捕したと。

 誘拐は美穂の計画だった。犯人・本条を殺す目的だった。受け渡し時間には、本条と少年を倉庫ごと爆発させるつもりだった。現場をカメラで見ていた美穂は、警察が倉庫に踏み込んだので爆発させた。本条は美穂の気持ちが分り自殺しようとした。
 

2024年9月7日土曜日

武士の流儀〈十〉

武士の流儀〈十〉 稲葉稔 

 用心棒 太物問屋の主の後添えに脅迫状が届く。北町吟味方与力・大杉勘之助に頼まれ清兵衛は用心棒をすることになる。
 犯人は番頭だった。主は誰にも言わず番頭を辞めさせて納めた。

 兄弟 安江は、紙問屋の奉公人・松と知り合う。親に勘当され妹の松に金をせびりにくる兄がいると言う。兄・伊兵衛は、金貸しから金を借り松を渡さなければならないところまで追い込まれたという。安江は、清兵衛に相談する。松の実家は大工の頭領だが、長男の伊兵衛は、職人の見習いに出ても長続きしない。商売を始めてもすぐにだめにる。両親には勘当され、
妹の兼にもずいぶん無心し、見放され、頼れるのは松しかいなかった。清兵衛は、親・吉蔵に話し、金貸しのところに行った。八両の借りが十五両になっていた。九両で話を付け、吉蔵が払った。清兵衛は、吉蔵に伊兵衛を頼むと頭を下げた。

 ほだされて 高橋勝之丞は、国許から参勤交代で江戸に来て心が踊った。中屋敷に住み、気楽だった。駒に出会い駒の虜になった。三十俵四人扶持なのに百石取りと言ってしまった。駒にお金を使うため、高橋は、通りすがりの町人に恐喝を働いた。
 清兵衛は 岡っ引きの東吉に手代や女中から六両を脅し取った事件を調べてほしいと頼まれた。東吉は清兵衛が元与力ということを知らない。清兵衛は調べ始めた。女の家に出入りする勤番侍に目を付ける。侍が弱そうな手代をを脅す現場に現れ捕まえる。話を聞き、女の正体を話、もうしない事を約束させる。脅し取った店で、脅し取った金額の倍の金額の物を買うことを約束させる。
 東吉には、やっぱり難しい手に負えないと話した。

 家出娘  秀の家は南品川の旅館兼仕出屋で両親と兄と姉が手伝っている。秀は疎外感を味わい家を出る。安とりょうという娘たちと出会い行動を共にする。二人は空家に寝泊まりし、盗みをしているようだった。清兵衛は、安くしておくと安に声を掛けられ三人を知る。清兵衛は三人を調べる。りょうが安のお金を盗んだ。二人の言い争いに近所の人が気付き三人は逃げる。秀は逸れた。清兵衛と会った。清兵衛は、秀の話を聞き、家族は忙しいから秀をかまえなかったのだと思った。秀と話、南品川に一緒に行く。二人の話はしないことを約束させ、自分が味方になることを言い聞かせ両親の元に連れて行った。秀が家を出て一か月が経っていた。
 家族は秀が帰ってきたことを喜んだ。清兵衛は、安江という女が何も聞かないで寝泊まりさせていたと話した。秀はありがとうと言った。

2024年9月5日木曜日

京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先〈2〉

 京都梅咲菖蒲の嫁ぎ先〈2〉 望月麻衣
 〜百鬼夜行と鵺の声〜

 新斎王の就任を目前に控えた京都で、百鬼夜行の目撃談が相次ぐ、不穏な噂が流れる。藤馬率いる四天王が討伐に赴く。立夏は自ら囮を買って出る。百鬼夜行を連れ出し現れるだろう鵺を退治するつもりだったが、、結界が崩れ、逃げる鵺を、立夏が声を頼りに放った矢が擦った。新斎王・蓉子が連れ去られる。
 神子・犬居家で行われる新年の宴で、立夏と菖蒲は筝と三味線を演奏し、再び鵺を呼ぶ。
演奏中、菖蒲は蓉子と話が出来、居場所も分った。
 鵺が現れた時、力が欲しい者が鵺を狙うが矢は当たらない。菖蒲は射る気になれない。蓉子を屋敷に連れてきて監禁していた神子に連れだされた蓉子は、私の仕事と鵺を開放するつもりで矢を射る。鵺は矢に当たり落ちた。春鷹は、自分が矢を当てるつもりでここまで用意したのにと呟く。
 結界を解き、百鬼夜行を放し、鵺を開放したのは春鷹だった。元々、先が見える春鷹だったが、今は、見えなくなった。鵺に矢を射った者は力が増と言われていた。春鷹は、力を蘇らせたかった。
 蓉子は春鷹を裁いた。審神者と神子の資格を剥奪、実家で謹慎を言い渡される。蓉子は、自分の力が無くなった原因は、自分を偽って生活していたからだと考えた。春鷹にも、自分を偽って生活しているから力が無くなったのだろうと言い、兄からの手紙を渡す。人はやり直せます。と蓉子は言った。

 蓉子は、菖蒲に、斎王になりたくない理由を聞く。菖蒲は、はっきり立夏と結婚するのが遅くなると答えた。菖蒲は、出版社に勤めることと立夏と結婚することが望だから。