2024年9月18日水曜日

上絵師 律の似面絵帖⑩ 照らす鬼灯 

 上絵師 律の似面絵帖⑩ 照らす鬼灯 知野みさき

 所変われば 
 七朗という見習いの奉公人が入った。
 律は涼太と、疎遠になっている叔母の弔問に、王子に一泊し滝野川村に出かけた。
追い剥ぎから、母娘を助けた余助と出会う。余助の言葉を似面絵にし、番屋へ届ける。後日追い剥ぎは捕まる。
 着物の意匠に地獄絵を頼まれた律だったが、地獄絵は描けない、書きたくないと断る。律は自分の怖い思い出に繋がる鬼灯を描く事にした。買い手がなくても良い、描く事にした。

 春告鳥
 巴屋の貴彦が奉公人にと健生を連れてきた。巴屋は、十七年前、火事があり涼太の祖父・青陽堂の先代の宇兵衛は、当時七才の貴彦を助け亡くなっていた。盗賊が窃盗と火付けで捕まった。健生は追分宿の旅籠の次男だった。四年前、旅籠の火事で、父親と長男・正生が、亡くなった。正生は健生を助けようとして亡くなったため、母から健生が亡くなれば良かったと言われた。貴彦は健生を引き取った。貴彦は、出家しようとしている。巴屋に馴染めず青陽堂で奉公させてほしいと言ってきた。
 往来の喧嘩に巻き込まれ亡くなった娘の供養の着物に、鴬・経読鳥の絵を描いた。

 薮入りにて 弐 
 竜吉は地獄絵に、九相図を描いた。
 律は薮入りで帰った慶太と夕、綾乃と直太郎と一緒に護国寺へ行く。慶太は、母を殺した辻斬りが、父も殺し、犯人の小林吉之助は捕まり、旗本ゆえに「病死」になっていることを知らない。慶太が犯人を憎み続けていることを知る。広瀬との約束で誰にも真相を話していない。
 火盗改の小倉に付いている太郎が、似面絵に描いた伝八を追っているのを涼太は見付けた。太郎は伝八と親しげに話しをしていた。律は太郎を疑うが、小倉は私は太郎を信じると言う。

 照らす鬼灯
 余助は元侍で、二十年前、辻斬りを殺したことがあった。辻斬りとして殺された・秀一郎は、余助・義之介と同じ年で同じ道場だった。秀一郎は武家に仕官していた。義之介は浪人だった。秀一郎は先生のお気に入りだった。義之介は辻斬りを捕まえ仕官したいと願い、探していた。辻斬りの現場にあった義之介は腕の立つ辻斬りを斬った。本当は義之介が辻斬りではと言われ江戸を出て上方に行った。律は、辻斬りにあった男に会い話しを聞いた。秀一郎が辻斬りなのは間違いなかった。
 余助は、盗人のことを探り、奉行所に知らせていた。
 貴彦が出家する前に、律と健生は貴彦に会いに行く。律の具合が悪くなり巴屋に泊まった。その夜、巴屋に賊が入り、太郎が刺され、行灯が倒れ火が出る。健生と律が、皆に知らせ、健生は布団を持って行灯に被さる。余助が現れ二人は助け出される。小倉が現れ賊は捕まる。太郎が追っていた伝八だった。健生は、火事から救い出されたが、兄を見殺しにしたと余助を睨む。
 伝八は、前に巴屋に入った賊だった。火付けはしていないが、息子は窃盗と火付けの罪を着せられたと恨んでいた。
 火事になったのは貴彦が行灯を倒したためだった。貴彦はずっと忘れていたが、四年前思い出した。そのために出家すると考えたのだった。信濃に出家に行く貴彦が、健生の母に正生と健生を描いた似面絵と健生の手紙を託した。
 余助は広瀬の御用の助けをすることになった。
 鬼灯の着物は、元々地獄絵を頼んだ人の手に渡った。主人が頼んだが、病で寝つき割り符を見付けた妻が現れた。妻は散々振り回されたから、今際の際であざ笑ってやるつもりだったが、鬼灯の着物を見て、いろいろ思い出し、切なくて。死装束にするが、迎え火や送り火におかみさんが着ることにした。

 律は涼太に授かったようだと告げた。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿