情け深川恋女房⑤ 札差の死 小杉健治
小間物屋 「足柄屋」の与四郎と俳句の会で付き合いのあった札差の間口屋五郎次が、ふぐの毒で亡くなった。岡っ引きの新太郎は、疑念を抱き探索を開始する。店を継いだ五郎次の息子・心平太の周囲には娘の稲への厳し過ぎる躾けや、女房の雉の兄・密蔵との争いなど問題が起きていた。
与四郎の店の小僧・太助は、最近、商売にも剣術にもあまり力を入れていない。また、女房・小里の具合も良くない。そんなところに密蔵の息子・密三郎を預かることになる。
新太郎が付いている同心・今泉は、ドン尻屋一家を潰そうとしていた。賭場を開き借金の取り立てに容赦なく、殺人も厭わないどんどん力を大きくしていく一家だった。事件で捕まえても、賂で事件をもみ消す。頭の又四郎を捕まえないとどうにもできないと思っていた。
五郎次のフグ事件、その後の間口屋への付け火、どちらもドン尻屋一家の頼みで起こったことだと掴んだ新太郎は、太助を引き込み囮を仕込みドン尻屋の二十六人を捕まえる。
又四郎を逃がしたと残念がる新太郎に、先代頭の息子・金馬は、又四郎は三年前に死んでいると教える。又四郎しかドン尻屋を纏められなかった。みんなに死が知れ渡ればドン尻屋はばらばらになった。
与四郎は三年前のことを思い出した。料理屋の二階の窓で見た又四郎、料理屋から出てきた心平太。その手は血で汚れていた。心平太の顔を見て父親殺しの相と言った易者。与四郎は心平太に疑問をぶつける。又四郎を殺したこと、心平太は、又四郎の息子だと。与四郎は銀煙管を心平太に渡した。新太郎には言っていないと別れた。
間口屋の番頭・喜助が与四郎に告げた。ドン尻屋の先代・金兵衛の妾と又四郎の間に出来た息子を、五郎次が育てた。番頭喜助が任された。三年前、二人が話していたことを心平太が聞き、又四郎を殺した。又四郎の死は隠された。喜助が自訴するつもりだったと言う。心配した与四郎は、喜助に死なないで、なんの意味もないと言った。
喜助は近所の寺で出家した。
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