2023年12月15日金曜日

源氏物語 上

源氏物語 上 吉屋信子

 牛込に高倉良英氏の邸宅があった。太平洋戦中に財務官として満州に赴任。雪子夫人も同伴した。留守を預かるのは母、楓刀自と三人の孫娘だった。
 長女・藤子は嫁いでいたが、良人がジャワに銀行員で赴き、留守の間実家に帰っていた。
 次女・容子は、女学校を終え学徒勤労に加わっていたが、肺尖にかかり勤労奉仕を医師から禁止された。
 三女・鮎子は女学校に在学中。寄宿舎があった。
 二月、容子の養生もあり、鎌倉山の高倉家の別荘に疎開することにした。
 家具のほとんどを運べず、トラック一台で運べる物を運んだ。楓刀自の蔵書は鮎子が土曜日に鎌倉山に行く時にリュックで運んだ。湖月抄、源氏物語五十四帖が六十冊の写本にまとめられていた。
 三月十日、高倉家は灰に化した。父親の蔵書、家具、祖母の秘蔵書・古典の写本類も殉じた。
 八月終戦を迎える。
 翌三月、預金封鎖、新円切り替え。没落した。
 鮎子は横浜の商館で働く。
 生活は苦しく、物を売るしかなかった。
 隣の山荘に未亡人の女実業家が越してきた。製罐業で成功した人だった。大貝夫人が挨拶に来た。夫人は高倉を知っており恩人だと言った。夫人は、藤子に夫人の秘書をお願いした。
高倉家の生活は安定した。

 楓刀自が、大貝夫人と孫三人に、土曜日の夜、源氏物語の話しをすることになった。
  
 秋、光琳の香包み、掛け軸、李朝の壺に小菊、千鳥の袖香炉、〈誰ヶ袖〉香木の中で始まった。桐壷。

 大貝夫人は子どもがなく、ある華族の主人と小間使いの間に出来た子どもを、実子として届けた。康男は慶応へ行き、戦後結婚し、工場も任せ東京の本邸も渡し鎌倉に移り住んだ。

 平安時代の絵巻物を見る。
 帚木 
 帚木続
 空蝉
 藤子は大貝夫人と東京へ行き、帰りが一人になった。自動車を運転するジョー葉山青年と知り合う。お茶に招ばれ、礼を持って藤子と鮎子は出かける。
 夕顔 
 ジョー葉村も源氏物語の聴講生になる。
 若紫 二夜。
 末摘花 大貝夫人風邪で欠席、ジョー葉村、名古屋へ出張
 紅葉賀
 刀自風邪でお休み
 花宴
 大貝夫人、孫が産まれ光と名付ける。
 葵
 賢木
 息子夫婦、孫の夫の消息も不明瞭、一家は晴れ渡った気持ちではないが、刀自が源氏物語を初めてから中心に目標が出来、空気に希望を持たせる物になっていた。

2023年12月12日火曜日

体質は3年で変わる

 体質は3年で変わる 中尾光善

2023年12月10日日曜日

柳橋の桜〈四〉 夢よ、夢 

柳橋の桜〈四〉 夢よ、夢 佐伯泰英 

  波乱万丈の旅を経て、二人は江戸に帰って来た。

 二人の祝言が挙げられる。
 コウレルが描いた、長崎から江戸までの素描画五十五枚、真ん中に「花びらを纏った娘」と「チョキ舟を漕ぐ父と娘」が展示された。十六年前の柳橋の桜と三才の小春。広吉と小春の絵だった。北州斎霊峰絵師が白壁一面に小春の花嫁姿と小龍太の紋付き袴姿を描いた。

 小春は船頭を続けることを決めた。
 小龍太は、自分の棒術が大内家が教えてきた香取流棒術ではなくなっていることを知る。携えていた刀を返した。自分は何をしようか迷う。
 長崎会所から貰った刀を差す。江ノ浦屋五代目彦左衛門が隠居し、海外貿易、長崎会所とおなじものを江戸会所として作ろうとしたが、性急過ぎた。長崎会所の江戸店ということで始められた。小龍太は彦左衛門の右腕として長崎に向かった。

2023年12月8日金曜日

マンションフォンティーヌ

マンションフォンティーヌ 小路幸也 

 羽見 晃  29才 小説家 
  膠原病になった晃は、家で小説を書き、新人賞を受賞し小説家としてデビューできることが決まった。会社を退職した。マンションフォンティーヌに移った。
 
大家が日本で六十年暮す、日本国籍を持つフランス人、リアーヌ・ボネさん・如月理亜音78才。終戦に父が殺され、母と如月岩雄の助けで日本に来た。国籍を持つため岩雄と戸籍上の結婚をした。淋しがるためフランスで住んでいたマンションと同じマンションを建てた。中庭に噴水が有る。全ての部屋が中庭に面している。十部屋あり大家さんと管理人さん以外に八部屋ある二階建てのマンション。

 管理人は、嶌谷拓次45才。元暴力団員、刑務所にも入った。暴力団員を抜けてからの刑務所入は、正義感からの喧嘩だった。
マンションの清掃、点検補修大好きで、自分の仕事にぴったりだと思う。

 貫田慶一郎33才 海外送金所勤務・通訳 父親は日本人、母親はフランス人。フランスで三十年暮らし日本に帰ると父親の家は売られていた。日本に来て三年。英語、ドイツ語、中国語ポルトガル語にスペイン語も話せる。

 坂東深雪58才 大学文学部教授 このマンションに住んで三十年になる。死ぬまで住むと言う。羽見晃の名を知っていた。受賞作品も読んでいた。

 野木翔44才 花丸不動産ロイヤルホーム部長 野木はこのマンションに住んでいない。このマンションに住む人を斡旋する唯一の人。リアーヌさんに管理人に嶌谷の相談を受けた。野木は嶌谷を知っていた。家も近く、小中高と同じ、中学校では野球部の一つ後輩になる。家庭の事情も知っていた。妹も知っている。

 鈴木幸介35才 大日印刷株式会社第一課営業・菜名38才 株式会社集円社出版校閲部夫婦
幸介は無精子症、菜名は病気で取ったので子どもが出来ない夫婦だという。菜名の妹は奈々子。
 
 市谷倫子28才 蓼凪建設庶務一課勤務、坂上麻実奈23才 ファッションブランドショップ店員
 北海道出身、同じ小学校校区。偶然羽田空港で会い、交流が深まり一緒に住むようになった。
 麻実奈は、空手三段、高校生の時、国体で優勝している。二人はレズビアン

 三科百合27才 いとファクトリー縫製・パタンナー・三科杏5才 年長さん
 母親が孤児、母親が産院で百合を産んで亡くなった。何も判らず母親の名前・三科百合と名付けられた。百合は施設で育ち、専門学校に行き、寮住まいだった。アルバイト先で知り合った人と結婚し子どもが出来た。彼はDVだった。気がついた友人が助けてくれた。助言を求めた人が会社の上司・野木だった。野木がこのマンションに連れてきた。このマンションは、こういう時のために一部屋か二部屋空けて有る。離婚が成立した。

 みんなの事情は知っていた。嶌谷が、百合を探しているらしい男を駅で見かけていた。
みんなで芝居をする。百合と嶌谷がカップルを装い彼を諦めさせようというものだった。
 麻実奈が駅で彼を見付けた。用意した二人は駅に行く。彼の前を通り電車に乗り、彼の行動を見る。全てを麻実奈が動画で取る。彼は諦めたようだ。

 みんなの話を聞いて、菜名は元同僚の編集者を思い出した。千葉出身、養子になる前は嶌谷、長いこと会っていない兄がいると言っていたことを。橋本杏子。羽見の編集者だった。
 そろそろと杏子は、羽見のところにやってきた。兄のことを訪ねられ、ここの管理人だと教えられる。兄は杏子のことを思い近づかなかった。杏子も空いている部屋に住むことになった。
 

2023年12月5日火曜日

源氏物語アンソロジー 君を恋ふらむ

 源氏物語アンソロジー 君を恋ふらむ

 やんちゃ姫玉かつらの巻 田辺聖子
 私十五才、源氏の素敵なお邸きらびやかな六条院に来て三ヶ月経った。流し目で見られると背中がゾクゾクする。私を連れてって。筑紫へ早く。

 髪 瀬戸内寂聴
 横川の僧都が御遷化されたと聞いたのは陸奥の海辺の村だった。
 宇治の院で死にかけた女を助けた。後にもあのまま死なせて下さっていたらと言われ、出家を願う人。
 助けた時の濡れそぼった髪の感触、目に焼き付いた清浄の裸身。
 僧都が出家させたことの後悔の手紙を書かれたことで、彼女が出家を貫けまいと感じ、僧都の手紙は仏への裏切りだと思い、横川を出奔した。長い流浪の中で、僧都を生き菩薩と言う認識に至った。
 彼女は薫大将と匂宮の愛を受け板挟みに悩んだ結果だった。還俗せず、出家を遂げきり五年後流行り病で亡くなったと聞く

 桜子日記 永井路子
 和泉式部に憧れ屋敷に上がった。私を桜子と呼んで下さった。道貞との間に娘がいた。道貞が。伊勢に行く時、式部は行かなかった。
 弾正宮為尊親王が来られる。弾正宮は亡くなる。
 弟・帥宮敦道親王が通う。帥宮も亡くなる。
 弾正宮と帥宮に付いていた桜子のお相手・桂丸も亡くなった。
 帥宮との思いでを書きながら、藤原保昌ともお付き合いしている。

 朝顔斎王 森谷明子
 娟子は元斎王。父親が亡くなり斎王から下りる。俊房がたびたび訪れる。俊房が訪れる度、いろんなことが起きる。鳥の巣が壊されたり、犬のしっぽが投げ込まれたり。少納言が娟子に付くようになった。
 一滴も雨が降らない夏、帝から娟子に祈祷せよと言われた。数日後、貴船で祈祷を行なった。夜雨が降った。
 朝、朝顔が根こそぎ引き抜かれた。俊房は毎日訪れる。
 火事が起きた。少納言が娟子を非難させた。娟子は鎮火の祝詞をあげる。「鎮火の祝詞を捧げるとはゆるさない」の声が聞こえた。俊房が駆けつけた。
 屋移りの日、少納言が現れ、今日無事に屋移りが終われば全てを話すと言った。
屋移りの途中、液体を掛けるという女が現れる。少納言が抑え、娟子は、構うな と命を下し新しい屋敷に移る。
 少納言は、現れ全てを語る。いろいろ悪さをしていたのは次の斎王・現斎王・三輪だった。俊房が好きで、斎王・娟子の元に行く俊房が、自分が斎王になったから来てくれると思っていた。俊房が行くのは娟子の所だった。抜け出し娟子に悪さをした。そして調べるために少納言を娟子の下に置いた。少納言は三輪から娟子を護るためにいるようになった。
自分が雨ごいをしても雨が降らなかった。帝は娟子を頼る。三輪は火を付けた。そして汚れた血を掛けようとした。
 少納言は、俊房に娟子に代わって歌を残した。
 君こずは 誰に見せまし わがやどの かきねにさける 朝顔の花 読み人知らず

 照日の鏡ー葵上 澤田瞳子
醜いが理由で照日の前に雇われた。吉野の山中に二年籠ったよりまし憑坐として。
照日の梓の法でも葵上は助からなかった。生霊の怨念がわが法を上回っておりました。
生霊などいないのではないか。何もかも承知の上で生霊がいると思いたい人に寄り添っているのではないか。

 栄華と影と 永井紗耶子

2023年12月3日日曜日

たすけ鍼③天神参り

 たすけ鍼③天神参り 山本一力

 天保六年 1835年 三月 いまりは、深川茶屋の老夫婦の後押しを受け、父・染谷の後を継いで鍼灸を習うことを決めた。辰巳芸者の検番にも許しを貰い父の許可ももらった。六ヶ月間、唐人の宋田兆師のもとで武術を教わることになった。六ヶ月で修了となった。
 いまりは難癖をつけてきた男二人を護身術で伸した。札付きだった。
 いまりを探している男がいた。いまりのことを調べている。
 住吉屋の表向き稼業は駕籠屋だが、賭場が本業だった。そこの二人を手玉に取られたため、
住吉屋の主・虎蔵はいまりへの仕置きを考えていた。代貸は、元締の大木尊宅の検校の代貸役・勾当の元徳に、虎蔵が染谷の娘に手出ししようとしていることを話す。
 尊宅は、虎蔵に、恩ある染谷の娘に近づけば、染谷のはたすけ鍼だが、わしが拵えた始末の針で始末すると脅した。

 いまりは庭先の離れに手を入れ、稽古場を作った。年配女性を集め身体の筋を伸ばしたり関節を回したりする。稽古着を作った。六人が集まった。十二月に始まって三月まで続ければ、手が痛みなく上がるようになるという運動だった。

 いまりの兄・勘四郎は染谷の仕事を継がなかった。父親の友人・昭年先生の娘・さよりが好きだった。一度嫁いで帰ってきている。いまりにさよりの気持ちを確かめて貰おうとした。ちょうど、さよりに医者からの縁談があり整ったところだった。
 勘四郎は書を習いたく卜斎先生に師事した。先生と行った大豆屋で算盤を弾いたことがあった。大豆屋から娘の縁談相手と卜斎を通して話を持ち込まれた。勘四郎は話を断りに行く。店で娘の書いた札を見た。卜斎に断りを言った後貰った半紙の言葉を思い出した。
  小人は縁に気付かず    頭の中で半鐘がなった。
 大豆屋に出直しますと言い、雨の外に出た。大八車がひっくり返り、怪我人が出た。勘四郎はずぶ濡れになりながら船宿へ連絡する。勘四郎は黒羽二重の紋付きと仙台平の袴を脱ぎ、紺の腹掛と股引に着替えた。弦太が漕ぐ船で染谷のところに草太を運ぶ。
 勘四郎は船宿・岩戸屋の主・葦五郎夫婦から、大豆屋のこと娘・しおりのことを聞く。
 勘四郎は洗い張りが仕上がってから大豆屋さんに行くことにした。
 弦太はいまりにお熱のようだ。
 


2023年12月1日金曜日

ねこ背をぐんぐん治す!基本ワザ

 ねこ背をぐんぐん治す!基本ワザ 原幸夫