2021年5月22日土曜日

左近浪華の事件帳③ 影の泣く声

左近浪華の事件帳③ 影の泣く声 築山桂

 東儀左近は四天王寺の境内で「死んだ息子の仇を取ってほしい」とすがられた。廻船問屋・長浜屋のべか車に轢き殺されたが、役人が金で丸め込まれ、車力も長浜屋も無罪になったという。千年以上も大阪の民を陰で守り続けてきた〈在天別流〉の姫である左近は事件を調べ始める。

 長浜屋は抜け荷の疑いがあった。店の者何人もが公儀隠密に入れ替わっていた。老中松平周防守が命令していた。
 京都所司代・水野越前守は以前命を助けられた東儀上総を家臣にしようとした。周防守の追い落としに利用しようとした。話を持ってきた水野の家臣・小田切は、越前が後ろについてやるから私服を肥やすことばかりを考えている周防守が糸を引く長浜屋をやっつけようという。上総は逃げ惑う者に隠れて自分のいのちを守ろうとした越前を信用しないと伝える。
 長浜屋の隠し持っていた周防守とのやりとりの文を小田切に渡し、在天の存在を知った小田切に上総は単なる楽人だったというように言う。
 越前は周防守の追い落としのため抜け荷の一件の始末に手いっぱいで上総のことは忘れた。今では抜け荷の追求も忘れ、出羽守の機嫌取りに精をだしているらしい。

 長浜屋がおかしいと思われるように手を打ったのは長浜屋自身だった。周防守に好きなようにされることに耐えられなくなっていた。

 過去にも似た事件があった。その時隠密が一人抜けた。今、いろんな情報をくれる赤穂屋だった。

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