2022年8月28日日曜日

東京バンドワゴン⑭ アンド・アイ・ラブ・ハー

 東京バンドワゴン⑭ アンド・アイ・ラブ・ハー 小路幸也



秋 ペンもカメラも相身互い  十月 藤島ハウスの管理人室に、相沢夏樹・玲井奈夫妻が住むことになった。正式に管理人に決まった。引っ越しが終わる。
 すずみの友人・美登里が東京に帰ってきてNPOの事務所を立ち上げた。美登里の同僚の長谷部さんは、「美琴へ」を書いた作家・宇田川拓也の元奥さん・美琴さんだそうだ。
 茅野が絡まれている水上を助けてカフェへ連れてくる。カメラを渡せと言われた。二人を尾行して来た男がいた。我南人が感づき、男を神社におびき出し捕まえた。探偵をしている宇田川だった。宇田川は、見つかれば命を狙われるような危ない高級料亭を写している水上を見た。水上のことを知っていた。危ない写真を取りあげるつもりでガラの悪い高校生に頼んだのだった。水上のフィルムは木島が話しを付けてくると持って行った。
 宇田川は、本を書けとお尻を叩かれ帰った。

冬 孫にも一緒の花道か 喪中の藤島は年末年始を堀田家で過ごす。今まで正月を過ごしていた実家は、藤三記念館に建て替え中。二十七日の昭爾屋の餅つき、家と蔵の大掃除、そして初詣。
 藤島ハイツを探っている不審者がいる。芸能界で池沢さんを探している人がいる。東京バンドワゴンに、古い映画のあれこれを持ち込んだ人がいた。仕事始めの日、田山監督が訪れた。監督は池沢さんに、引退前に、映画に出ないかと出演依頼だった。どこか旅の空の下にいる梅蔵と別れたマドンナが、梅蔵の子を生んで、育てあげていたと言う話し。子供役を青にオファーする。
 監督は池沢の妊娠に気がついた。相手が我南人だということも話したうえで、誰にも知られないように映画を撮ってくださった。監督のお陰で、マドンナ役を務めあげ、青さんを産めたと池沢は話した。
 監督は親子だと名乗る必要はない。映画の中の親子として俳優として銀幕に立ち、引退すればいい。田山監督の映画に出て正式に女優から引退することを公表しようと思う。俳優として息子役で出てくれないかという池沢に対し、青は出ますと答えた。そして孫に娘たち二人を使って欲しいと売り込む。全てが決まった。
 夜、我南人は、僕と研人が主題歌を歌えないかお願いしておけば良かったと言った。
 ボンが亡くなった。麟太郎と花陽が見取った。

 池沢さんと青が、母子役で映画に出ることになった。でいいのかな。

春 桜咲かすかその道の 二月、ボンのお別れ会、音楽葬が行われた。
三月 増谷裕太と真央の結婚式が堀田家で行なわれた。
 四月 鈴花とかんなが小学校入学。二人の部屋へ祖父母に買って貰った机を入れ、二段ベットを取り付ける。上下、毎日交代。
 研人と芽莉依は高校三年生
 蔵のことで以前揉めた山端文庫の醍醐教授が二年前からアメリカの古書フォーラムで五条辻の蔵印書を探している。
 研人が、バンド仲間の将来を自分が決めてしまって大丈夫か背負ってしまうことを悩んでいることを知ったサチは、かんなを通じてボイスレコーダーを使い紺に知らせる。紺は我南人に相談した。
 勘一と醍醐教授が、お互いに謝罪した。醍醐は、世界に一冊の本・〈最愛の娘、咲智子へ〉と書かれた「欧羅巴見聞鉦」を持ってきた。醍醐はお互いが死んだ時、後進のために正式な資料として研究のために貸してほしいと願った。約束だけでもさせていただきたい。
 勘一は護るのは自分まででいい。資料にしていい。文章にして残すと言った。
 我南人のバンドのメンバー・ジローさんと鳥さんが、決めたのは自分だ。他の誰かに決められたものじゃない。渡辺君だって渡辺君の生き方だ。希望も後悔も自分のものなのだ。と言った。

夏 アンド・アイ・ラブ・ハー  すずみが子宮筋腫で顔色が悪い。芽莉依は、東京大学を受けるが、余裕綽々で受験勉強中。研人はライブがいくつもある。のぞみちゃんが書いた詩に曲を付けたいと思っている。
 美登里が来た。すずみは病院へ行っていて留守。美登里は藤島の会社に事業パートナーになってもらうことになったと話す。
 みんなが揃っていた。すずみと青が子宮筋腫の手術を受けることにしたと報告する。かずみが子宮全摘術だね。元気になるけど妊娠はできないということだと勘一に説明する。
 すずみは、美登里も同じように手術して妊娠できない体だになっていると言った。そういう話しになって気まずい思いをしないよう先に言っておくと美登里にも話していると言った。手術は一ヶ月か二ヶ月先。
 かずみが介護も医療施設も付いた老人ホームを契約したとはなした。身元引受人は藤島だった。
 かずみの行く老人ホームを見に行く。入居施設が十棟もある巨大マンション群のようだ。設備も見晴らしもいい環境だった。一週間でかずみは引っ越しした。かずみは、自分が死んだ時、この箱を棺桶に入れて欲しいと、亜美とすずみに頼んだ。中身は勘一と一緒に写った写真と一人で無医村を渡り歩いていた日々に書いた勘一への手紙だった。出すことの無い手紙。生きている間に燃やせない手紙。
 帰って来た藤島が、かずみの後の部屋へ美登里が入ると言った。
 自分は家庭を持つビジョンが全く見えない。でも子供は好きです。世界中の子供に希望を与えたい。美登里と話して同じ方向を見つめ、同じ絵を描いていることが分かった。死ぬまでビジネスパートナーであり、人生のパートナーとして歩いて行きたいと思った。結婚ではないけれどということで。
 

2022年8月25日木曜日

東京 バンドワゴン⑬

東京 バンドワゴン⑬ ヘイ・ジュード 小路幸也


 冬 人と出会わばあかよろし 二月 藤島の父親・藤三が亡くなり、花陽以外の者総出で葬儀に参列。花陽の葬儀出席は藤島が断る。
 堀田家に研人の後輩・水上君が来る。写真が趣味の水上は、堀田の家の写真が撮りたいらしい。今までの写真を入れたポートフォリオ持参でくる。勘一、我南人、紺、青が見、感心し、マードックと藍子を呼ぶ。マードックは水上の許可を得、写真を引き伸ばしてカフェに飾る。水上の好きな写真家は、石河美津夫だと言う。
 家の前の道が陥没し、工事が始まる。警備員は研人のバンドのナベの父親だった。去年の夏にリストラされ、就職探し中のアルバイトだった。
 藤島が後妻の弥生さんと一緒に藤三記念館を任せようと思っている三島政幸という書家が、蔵の作品を見に来た。ナベの父親・渡辺善尋と顔を合わせた。幼い頃の書道仲間であり、大学の同級生だった。
 我南人が藤島と渡辺さんと蔵にいる三島さんも集めて話す。藤島は藤島の本家の後取りの立場と、自分の会社の社長の立場で悩んでいた。弥生さんと三島さんに任せるつもりが、親戚が何かと煩かった。迷っていた藤島に、我南人は、藤三の作品を守っていくことだけを考えるのではなく、自分の会社に取り込んで若い者を育てる方向に持っていけばいいとアドバイスする。渡辺さんは「大日エデュケーション」で習字のeラーニングデジタルシステムの部長だった。FJの技術なら毛筆でもデジタル習字も可能なのではないかと言う。渡辺は履歴書を持参して会社に伺うと言う。
 水上の作品の少女の写真のモデルは、二年生の時、「三匹のやぎのがらがらどん」を売りに来た名塚のぞみちゃんだった。今は五年生、春野のぞみになっていた。個性的な美人。

 春 新しき風大いにおこる かんなと鈴花が藤島の部屋に泊まった。
 花陽は高校卒業、第一希望の私大医学部合格。パソコンで合格発表を見る。
 夜の合格祝いの食事会の席で、花陽は、藍子とすずみと花陽の三人で、父親の墓に行きたいと話す。蟠りが少ない研人が、堀田家を代表して一緒に行くことになった。鈴花とかんなも行く?藤島家の墓にも行くことになった。
 藍子が、マードックとイギリスに行くことにしたと伝える。
 藤島ハウスに研人と花陽が住み、青とすずみと鈴花が二階に移り、勘一が離れに住むことになった。研人の部屋に、来年、鈴花とかんなの机を置き、小学生の二人の部屋にする。
 二週間後の日曜に、大引っ越しとなった。藤島、渡辺、甘利、裕太、玲井奈、夏樹、麟太郎が手伝いに来た。のぞみちゃんも子供たちの相手。
 芸能関係ぽい人がカフェに来たので、のぞみちゃんの写真を外す。
 のぞみちゃんの家のことが心配になった勘一は、研人もよく知っている先生に尋ねる。のぞみにも話しを聞き、のぞみの書いている物語を読む。芸能界に入れようとする継父に、のぞみの希望は小説家であり勉強のため堀田家に預けませんかと言って来た。紺がサチと話しをしている。のぞみの両親も真剣だった。のぞみも逃げてばかりいないで両親と向き合った。

 夏 若さ故の二人の夏に 藍子とマードックがいなくなって四ヶ月。
 花陽の大学の友だち・君野和がお粥モーニングを食べに来る。
 青の映画の配給会社の知りあい・笈川が、雑誌の買い取りの相談をする。編集者でカメラマンの石河美津夫が亡くなり、残した物が全て笈川智佐子の物になったと言う。両親が早くに離婚し、親戚のいない石河の物が娘・笈川の物になった。青が鎌倉に行き、写真や雑誌を見積もり、家具も知りあいの骨董品屋に連絡し、馴染の業者に梱包も含めて手配した。次の日、八十二個届いた。
 研人が、再婚した芽莉依の両親と三人で芽莉依の誕生パーティをすると微妙な空気が流れそうなので堀田家で両親を招いてやりたいと言う。玲井奈がケーキを作って手巻きパーティをすることにした。芽莉依の両親は離婚し、また再婚していた。父親が実の父なのだが、ぎくしゃくしているらしい。
 日曜日、花陽がカフェに入るならと和ちゃんが手伝いに来た。和ちゃんの実家は静岡で喫茶店をしている。慣れている。
 青とすずみは蔵の雑誌に値付けをしていて、若い頃の池沢のヌード写真を見付ける。どうするか迷っていると勘一が来、我南人が来る。我南人が、預かると言い雑誌に挟んで持って行く。
 池沢が真幸を連れて来る。芽莉依と両親も来る。夏樹と玲井奈と小夜も来る。そこへ、笈川さんと西元さおりさんが来る。西元は、池沢と同世代の女優・五嶋香奈江さんの娘で、本人も女優をしている。二人は池沢がいることに驚く。五嶋は池沢とよく似た女優だったが、早くに引退していた。食事をする。
 西元は石河が亡くなったことを知り、自分のヌード写真がどうなったか知りたくて笈川に連絡したのだった。青の所に全部渡ったことを知り慌てて来た。我南人は預かっていた写真をさおりに断り池沢に見せる。良い写真ですね。
 池沢はグラビアを見ながら、石河さんには情熱を感じた。情熱を持った人と仕事ができて幸せでした。
 突然、研人と芽莉依が、正座をして結婚するからと言い出す。言い直す。二人で北海道に行って下さい。芽莉依はこの家で預かります。芽莉依の父は単身赴任をするつもりだった。折角再婚したのに芽莉依がいるからと言う。
 研人は十八になったら結婚届を出す。飛び回って音楽を続ける。芽莉依は大学に行って国際的な仕事をする。全然一緒に過ごせないかもしれない。でも一生二人で生きると決めている。二人の気持ちをわかって貰うために話した。
 だから二人で北海道に行ってほしい。
 紺が、父親に相談するものだというが、研人は反対されるとは思っていない。
 勘一は、結婚のことは後回しにして、高校卒業までは芽莉依を預かりますと言った。
 サチと話せる紺と見える研人の三人で仏壇の前で話す。大ばあちゃんがずっと見えてずっと喋れるかんなはすごいな。

 秋 ヘイ・ジュード 十月 夏休みから芽莉依は花陽の部屋で一緒に暮らしている。
 かんなと鈴花は、箸置き作業を芽莉依ちゃんに任せている。置き場所は指示する。
 藤島の仕事をしている木島が久しぶりに来る。渡辺さんは仕事をしている。
 見慣れない男性が、古本屋を見、家を見、カフェを見て帰った。木島が不審に思いつけると野島久夫だと分かった。
 裕太と真央が、三月にこの家で結婚式を挙げたいとお願いに来た。野島久夫は真央の父親だった。
 近くで研人のライブがあった。麟太郎が来ていた。研人と麟太郎が話す。研人は花陽が、麟太郎が藤島のことを気にしてるようだと思っていることを知っていた。だから、二人は付き合っていると公言出来ないでいるようだ。藤島のことを知りたいならと紺を呼ぶ。
 麟太郎は花陽の大学費用の借用書を見た。ただの仲良しのおじさんでは済ませられなくなった。藤島の姉の事を話す。心中、高木、藍子への憧れ、そして花陽の幸せを願う気持ち。藤島が言う、重症のシスコン。このことを知っているのは、紺と青だけ、そして麟太郎。他言無用。
 ボン・麟太郎の父親がスタジオで倒れたと連絡が入った。紺が青に連絡して花陽を連れてくるように言う。
 病院で痛み止めを打ったボンに麟太郎が、花陽と付き合っていることを話す。ボンはカホンを使ってドラム代わりに三人でアンプを通さず演奏する。ヘイ・ジュード。年長者から若者への励ましの歌。恋人へのその気持ちを躊躇うなという歌詞。ボンは麟太郎に「ひょっとしたら俺の最後のライブかも」。
 藤島ハウスの管理人の高木さんが、身内では唯一親身になって心配してくれた独り身の叔母に、一緒に住んで最後の時まで面倒みて欲しいといわれたので叔母のところに行くことになった。勘一は、玲井奈一家に頼めば良い、明るくてよく気が付いてうってつけ。引っ越しも楽。裕太の結婚も決まって手狭だと言っていた。ちょうど良いと言う。
 
 
 
 
 

 


2022年8月22日月曜日

明日、野球やめます

明日、野球やめます 鳥谷敬

 

2022年8月20日土曜日

京都船岡山アストロロジー2

京都船岡山アストロロジー2 望月麻衣
 〜星と創作のアンサンブル〜

女子高生作家デビューの夢を目指して、神宮寺桜子は改稿に取り組み、完成した『柵』をWEB
で公開する。桜子の小説は編集者の目に留まり、大手出版社・春川出版から順調にデビューしたが、発売された本の売れ行きは思わしくない。続編の刊行も断られた。
 高屋から「星読み」の君は落ち込んでいる人にどんなアドバイスをするか?と聞かれた桜子は、売れなかった理由を知ろうとした。
 耕書出版の見学に行く。
 女子高生とアピールを断った。顔出しも断る。改題も断った。
 書店を見学する。
 文学賞を取った作品はプロモーションしてある。
 タイトルで中身を想像させる。タイトルは読者へのプレゼン。
 こだわることへの見極め。
 桜子はサイトで新作を書き、文学賞に応募してセカンドデビューを目指すことにした。
 売れる作品ではなく、自分なら絶対買う作品。
 
 高屋は耕書出版大阪支店に来て一年。中高生向け占い雑誌「ルナノート」担当。
 WEB小説投稿サイトから公式作家を四人選出し、アンソロジーを刊行することになった。高屋に任された。初めての書籍作り。恋愛作家が春、ホラー作家が夏、ミステリー作家が秋、ファンタジー作家が冬と決まった。
 タイトルと表紙を考えている。 

 桜子の新作タイトル「誰が僕を殺したか」
 桜子は、高屋に「耕書出版の営業の人を好きになった。彼女がいるか調べて欲しい」と頼んだ。

 柊が占星術師ヒミコだったことが知られ、柊に怒声を投げる人が現れる。柊の母と義父が小学生の柊を利用し、法外な金額をふっかけたり、詐欺紛いの手法を取ったことで被害者の会が出来、両親は逮捕された。柊は頭を下げる。
 高屋の母も信者で、一家離散した。
 柊とビールを飲みながら、母親から来る謝罪の手紙のことを話す。そして謝罪文はいらないから、近況報告を送ってと書くことにした。
 頭を下げないで隠れることもある柊は、その人が今でもヒミコに救われたと言う人に対してだった。
 
 桜子の誕生日、祖父母と柊がサプライズを計画、準備のために桜子を連れ出す役を高屋に当てられた。京都国際マンガミュージアムに誘う。イラスト展をやっている。
 表紙を任せる人が決まった。遠野宮守。カメラマンだった。タイトルも浮かんだ。「月夜の四ペンス」持ち物はコイン。
 家でのサプライズのはずが、場所は船岡山公園の桜まつりになった。店の出店は「さくら苺飴」マスターの考案。
 野外ステージで、常連さんのいろんな店のマスターのピアノ、トランペット、ギター、ベース、ドラムの「レディ・マドンナ」二曲目、桜子、柊、高屋もステージへ。「バースディ」桜子に花束、高屋にも船岡に来て一周年と花束を貰う。

 高屋は柿崎の彼女が、最近でき、三波だと調べた。桜子は、朽木だと言う。柊が朽木のお相手は三波だといった。そして柿崎のお相手は、相笠クリスだった。どちらも柊のアドバイスで仲良くなっていた。
 くりすが桜子に初めての編集者が恋の対象になりやすいと言った。桜子の初編集者は高屋だ。ないないないと打ち消す。

 月夜の四ペンスの表紙が出来上がる。会社での評判は上々。そして判ったことが、ファンタジー作家は朽木だった。彼プロ作家にはならないと言う。三波も知らなかったようだ。

2022年8月18日木曜日

あきない世傳金と銀〈十二〉 出帆篇

あきない世傳金と銀〈十二〉 出帆篇 高田郁

 浅草田原町に五鈴屋江戸本店を開いて十年。 

 浅草太物仲間だったが、浅草呉服太物仲間になり、絹物を扱えるよになった。千六百両が必要だったが、前に収めた上納金の千五百両の返済を諦めた。仲間で百両を用意し、許可が貰えた。

 浅草呉服仲間になり絹物を扱えるようになった記念に、呉服切手を出す。同じ小紋の色違いの反物浅草仲間内ならどこでも替えられる。

 婚礼衣装の途中断りを入れてきた武家に、婚礼日の日が、日蝕が起こることを伝える。本当に日蝕が起こったことで、断ってきたにも関わらず教えてくれたことに感謝され、伝わったことから武家の客まで増えた。


2022年8月16日火曜日

死者の配達人

 死者の配達人 森村誠一

 テレビを見て、本を読む。
 地名が少し換えてあるだけでほとんど変わりなかったが、テレビでは三十年前の女と、今回出会った女が親子になっていた。

 妻が年下の男性と生活するため離婚を希望した。離婚した。三十年前、大学生の時、女を殺してしまった場所へ行く。一軒宿は無くなっているらしい。途中で若い女性の遺体が見つかったと警察が来ていた。同じ場所で女性に会う。
 彼女と、殺された女の子の事件を調べる。彼女が殺された同じ日に火事があった。殺された女の子の家と同じ門口だということに気付く。
 警察も少女が、玄関口をのぞいたことで、犯人と出くわしたのではないかという意見が出る。火事は隣の殺人を隠すための付け火と思われ、貰い火事だと思われていたが、殺人犯が捕まり、隣の事件は火事と無関係となった。

 東京でも、火事のため亡くなったと思われていた事件が、亡くなる前に気を失った状態で火を付けられ亡くなったと考えられるようになった。
 妻が残した写真に、その家の写真があった。彼女は、その家に出入りしていた。妻と彼は、今、少女が殺された近くにいる。

 妻と一緒にいる男が、二つの火事の犯人で、少女を殺した犯人だった。
 彼のキーケースに、東京の事件の金庫の鍵が付いていた。
 
 テレビでは、三十年前に、彼が殺した女は、東京の火事で亡くなった男性の、後妻だった。彼女は自分の子を残して結婚した。残された子が、宿を見に行ったところで出会い、事件を一緒に調べた娘だった。

 
 

2022年8月14日日曜日

東京バンドワゴン⑫ 

 東京バンドワゴン⑫ ラブ・ミー・テンダー 小路幸也


  一色武男 古本屋・東京バンドワゴンの常連客
 海部宏(海坊主) ④ マイ・ブルー・ヘブンに登場

 プロローグ ⑧の野良猫ロックンロール 我南人に助けられた秋実は古本屋に行く。

 Don't Be Cruel 昭和四十年代 十月 古書店〈東京バンドワゴン〉
 朝、我南人の部屋にいるかいないか、何人いるかのチェック。近所の曙荘の学生三人の食事の世話をしている。風呂にも入る。学生相手の下宿・曙荘の中本さんの奥さん・タキさんが入院、学生の朝ご飯と晩ご飯を二ヶ月前から作るようになった。もともと、学生のセリと拓郎はお店に出入りして店番もしていた。
 どんなに寝不足であろうとも、この家に泊まったからには朝ご飯は一緒に食べること。
 我南人の母・サチが我南人のバンドのマネージメントをしている。
 我南人たちはテレビに出無いと頑張っている。
 
 我南人が夜、怪我をした秋実を連れて帰る。足の手当てをして秋実の生活している養護施設〈つつじの丘ハウス〉に電話する。秋実が今日の話しをする。
 秋実の先輩・中条桐子・きりちゃんが、今はアイドル・冴季キリ。キリが電話で、恋人ができて駆け落ちする。見つかったら殺されるかもしれないと言ったので助けようと思って事務所に行き、捕まってしまった。蹴り倒して逃げている時、我南人に助けられた。駆け落ち相手はアイドル三条みのる。三条みのるは我南人の同級生・元LOVE TIMERのメンバー・北稔・北ちゃんだった。勘一はきりと北ちゃんを助け出すことにする。
 元海坊主・海部さんに二人の事務所について聞く。
 朝、迎えに来た〈つつじの丘ハウス〉の先生・若木さんに、秋実が我南人のファンに追っかけ回されているので日曜日まで預かると話し、秋実の滞在の許可を貰った。
 近所の祐円には我南人がもうすぐ婚約する子だと紹介した。

 Can't Help Falling In Love   海さんが調べた二人の予定を聞き、明日、日曜日テレビ局で二人に会い、連れ出すことにした。
 施設に秋実を訪ねてやくざ紛いの人が来たと言う話しを持って若木が来た。そして秋実の母親の話をする。母親は、二才になった秋実を二階の窓から投げようとした夫をナイフで刺した。病院の前に秋実を置いてから自首した。刑期を終えた母親は、毎月お金を送って来た。途中で途絶えたので若木が調べると、四年前、静岡で亡くなっていた。夫・秋実の父親はやくざだった。父親の生死は判らないという話しだった。秋実の服に秋実と刺繍があった。
 勘一も、キリと稔の話をする。
 秋実も事務所に忍び込み追いかけられた顛末を細かく話す。海さんの話を聞き、追いかけた中にいた中年の男性は中島ということが分かった。
 海さんは、勘一とサチの出会の再現だと言った。
 サチは我南人のマネージャー、新人のタレント志望の少女・秋実の呈でテレビ局の控室に行く。キリのマネージャーが増え守りが堅くなっていた。我南人が部屋を間違えて入ったと言ってキリに、秋実からの、「トイレで待っている」のメモを渡す。サチと秋実とキリはトイレで話す。何があっても助けるから私たちを信用して言う通りに動いて!
 稔の控室に行き、マネージャーをサチが引きつけ、我南人が稔と話す。
 二人は付き合っていることを事務所に話し、付き合いを止めなければ相手を潰すと言われていた。
  
 Love Me Tender 我南人がいなくなった。勘一は、一気に片づけようと何か考えてんだろうと言う。
 二手に分かれ、テレビ局から帰る二人を誘拐?保護する。我南人指名のもう使われていない撮影スタジオへ行く。二人の事務所・御法興業とトミプロの社長も呼び交渉場所とした。トミプロの社長・富弥は勘一たちと同じステージに立ったこともある知りあいだった。
 現れたのは一色だった。テレビカメラや集音マイク、照明さんもいます。芸能記者もいる。
 一色は録音してます。合図で生中継にも切り替わります。今やってるドラマを中断して、全国のお茶の間にこの光景を生放送しちゃいますよと言う。
 二人のトップアイドルが恋をした。事務所が浴びせた脅し文句の数々を聞きましたよ。丸く収めましょう。結婚記念コンサートをやりましょう。ゴールデンタイムに生放送。トップアイドルとテレビ初出演・人気ロックバンド・LOVE TIMER 、仲良しバンドも出る。アルバムも作り売り上げも、コンサートの上がりも御法興業とトミプロで折半。LOVE TIMERは当日ギャラ無し。これでどうでしょう。
 二人のOKが出たところですぐ一色は生放送の用意をした。このまま帰したら口約束なんてどうなるかわかったものじゃない。セットを組んで緊急生放送。二人の結婚と結婚記念コンサート開催。社長と二人の出演の緊急テレビ会見が終わった。
 今夜は二人を我が家で泊まらせ、明日から契約が済むまで海部芸能が一時預かりとなった。
 朝、若木が訪れ、中島が来た。中島は、裏御法の法末興業のプロデューサーだった。中島は逃げる秋実を呼び止め助けようとしていたように我南人には見えていた。我南人は中島に会いに言った。昨日、二人の社長を引っ張り出したのは中島だった。
 中島は秋実の父親の弟分だった。母親・雪子に可愛がってもらった。雪子は秋実を慈しみ幸せそうだった。名野辺五郎、亡くなったのは抗争で殺された。雪子が刺したことが原因ではない。秋実が生まれ親子三人楽しく笑って過ごした時間があった。雪子の事件の時、自分が地方に行っていていなかった。雪子と秋実を忘れたことは無い。古い、雪子と秋実が写った写真を出す。
 事務所に秋実が来た時すぐにわかった。この子を迎えに行けるような人生を送って来なかったことを反省し、御法を辞めてきた。
 勘一は篠原建設を紹介しようとしたが、若木が正式な職員として施設に来て欲しいと頼んだ。子供好きで裏社会を知っている人がいてくれると心強い。桐子と秋実を救って貰い恩返しをしたいと言った。勘一は何も言わずに消えることはないようにと念押しした。
 帰る秋実に、いつでも遊びに来いという勘一。僕はいつ秋実ちゃんをお嫁さんにしてもいいよ。初めて会った時から僕の心は秋実ちゃんへのLOVEで満たされているからと言った。

 エピローグ 藍子と秋実ふたりきりの夏の夜。藍子は父親が大好き。音楽の才能は・・。御免ね。破滅的な音程を持つ母親に似てしまった。
 藍子が、どうやって知りあった?と聞く。説明するのは難しい。中学生になったら教えてあげようと言う秋実。LOVEだねえ。お父さんが初めて言ったのは私にだったんだよ。

 確か、藍子が四年生の時、秋実が亡くなったと記憶している。この時からどれくらいたっているのか。話しは聞いたのか。 

2022年8月11日木曜日

東京バンドワゴン⑪ 

 東京バンドワゴン⑪ ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 小路幸也

 春 花も嵐も実の生る方へ かんなと鈴花は年中さん、研人は高校生、花陽は高校三年生。
 神保町の岩書院の大沼社長が、神田古書市場に出品してくれないかと相談に来た。
 〈呪いの目録〉を所有している古本屋を知らないかと聞き回っている人がいると言う情報を持ってきた。
修平と佳奈が来た。佳奈の出演のドラマで小宮仲子を演じる。小宮は「蜷川女子大学」の礎担った人と言う関係で図書館で古い資料を見た。小宮の日記のような物の中に、佳奈は堀田達吉なる名前を見付けた。大学創設に世話になった人だったようだ。堀田達吉の家系図のような物が手書きで書かれていたが、上から万年筆で消されていた。と言った。
 我南人の夕暮れライブに、ドラムのボンが出演。息子・麟太郎25才も一緒。麟太郎は臨床検査技師。話しの流れで花陽の希望大学の話になった。どうしても私大になってしまうが、家から通える医大希望ということで花陽の希望が判った。

 呪いの目録を所有している古書店を探している人が来た。マンガ編集長田口さんと、アシスタント・石渡元だった。漫画家・倉見ちずるの熱血担当者で田口と倉見の過去の話を聞いて、奈良勢津子が返しに来た目録を見せ、目録にまつわる話しをした。また与太話でよかったら聞かせると話した。
 田口は借りている小宮の日記を出した。家系図は消されて見えない。紺はコピーを取った。
 石渡元は、夏樹の悪仲間だった。夏樹と同じように自分の道を見付けて頑張っていた。

 夏 チャーリング・クロス 研人は夏休み、ライブハウスでのライブの予定がたくさんある。研人とドラム・甘利、ベース・渡辺のバンド名は〈TOKYO BANDWAGON〉。
 マードックのイギリスの政府の仕事をしている友だちが、アレックス・ワーナーが書いた私家版の一冊に英国王室のスキャンダルが書かれていることが判明し、その一冊が〈東京バンドワゴン〉にあることが判明したので、イギリスの秘密情報部の者が行くから逃げろと言ってきた。
 次の日やってきたSISの事務員のアダムは、言い値で買う。この店にある古本を全て買い取っても結構ですと言った。ふざけんな!勘一はアダムを睨む。ロンドンの古本屋から,秘密の暴露本を堀田草平に渡したと書いたものが見つかり、たまたま相談したのが情報部の者だった。手に入れるまで毎日来ると言い、ホテルに帰った。
 勘一と我南人、紺とマードックはイギリスへ行った。サチももちろん付いて行く。紺はサチがいることを感じている。すぐに古本屋へ行き、主人に会う。主人に本を見せた時、SIS
が現れた。勘一が持っている本を取ろうとした。勘一の背負い投げが決まった。マコーリーがひっくり返った。話しが終わるまで待てと言う勘一の言葉に待てないというマコーリー。そこへ現れたキース。マコーリーは話しが終わるまで待つ。勘一は、堀田草平の子孫に迷惑が掛かることになって申し訳ないと思ってくれたことに礼を言い、わが家は表に出すことの無い物を蔵の奥深くに眠らせ守っている。今更英国の本が一冊増えても我が家にとっては何ともないことです。喜んで末代まで眠らせることを約束しますと話す。
 これは、偽物です。持ってきた本を見せる。一晩で作ったので中身は白紙。作ったのは紺でした。マコーリーにも、日本の我が蔵で眠ったまま、未来永劫眠り続けることを約束する。その場にマードックの友だちもいた。礼を言う。
 次の日、日本に帰る。

 秋 本を継ぐもの味なもの 十月、三鷹と永坂が、愛と名付けた三ヶ月に満たない子供を連れて来た。
 藤島の父親・藤三がいよいよ危ないと言う。
 かんなが、紺と研人にりっかちゃんのおじいさんの幽霊が出ると祖母の家に行ってほしいと言ってきた。お祖父母は翻訳者で、祖父は亡くなっていた。祖母・規子と母親・葉月の関係が良くない。祖母のマンションには、専門書も多く、蔵書が多いが立ち退かなくてはならなくなっていた。
 紺は神田古書市場で規子の蔵書を「葉月文庫」と名付け売った。我南人のライブを行い研人のバンドもアコースティックでサポート参加。規子の挨拶がある。六花ちゃんのお父さんお母さんも呼んだ。これをきっかけに家族の仲がすこしでも修復されればいい。それが鈴花とかんなの目的だったようだ。

 冬 ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード 恒例のクリスマス。鈴花とかんなは二人のおばあちゃんから、サンタさんから、プレゼントを頂きます。脇坂さんはアニメの主人公の洋服を、池沢さんからうさぎの人形の一家の家。パーティにもたくさんの人が集まる。
 お正月も祐円さんの谷日神社へ初詣。
 花陽は二月に控えた試験に向け勉強。藤島が紺と青に、花陽の大学授業料の足長おじさんになりたいと申し入れ。最後にはお姉さんに行き着くようで二人に変態だというわれても出させて欲しいとお願い。二人は借用書を書くということでOKする。何千万円いる。
 研人と、芽莉依が写真を撮られたり、SNSでいじられたりしていることが話題になる。研人はまだしも、芽莉依に何かあっては大変と頭を悩ます。そんな時、我南人のバンド・LOVU
 TIMERがテレビ出演を四日後に控えたリハでドラムのボンが倒れる。肺ガンだった。手術も出来ず入院すれば薬で朦朧とした生活を余技なくされることを拒否して、演奏生活をぎりぎりまでするとの決意をみなに発表する。しかし、テレビで倒れることは困るので、今回は我南人のバック演奏をTOKYOU BANDW WAGON に頼む。研人にしても中途半端な顔出しだったことを反省、渡辺と甘利の親にも了解を取って、正式にテレビ出演をする。
 研人の革ジャンの後に〈Mary〉と赤い文字が入っていた。
 テレビの前でみんなで観賞。その後はるで打ち上げ。

付録 夢もうつつもひとつ屋根の下 
 サチが自分の初七日の法要を見て独り言を言っている。葬儀の日から元の家にいてあの世を知らない。

2022年8月8日月曜日

東京バンドワゴン⑩ヒア・カムズ・ザ・サン

東京バンドワゴン⑩ ヒア・カムズ・ザ・サン 小路幸也 

  夏 猫も杓子も八百万 鈴花とかんなはふじしまんの場所とその左右に自分たちの場所を決めて、あとは普通にねで朝食の始まり。二人はトイカメラで写真を撮る。

 古本屋の店に幽霊が出るとか話している。
 研人は芽莉依の家で毎日勉強をしている。
 玉三郎とノラの様子がおかしいとみんなが思う。
 バンドワゴンで万引きをした少年が青の同級生・狩野が連れてくる。少年が自ら反省するまで、狩野はまず本を返しにきた。遺品の中から大事そうに置いてあった本だから引き取って貰えるかとやって来た。少年は別行動で、本を一冊買って帰った。夜、先生にまで嘘を付かせて悪いことをしたと、少年が謝る気になったと二人で来た。狩野はフリースクールの先生だった。少年は田中翼君。青が考えた脚本だった。
 狩野が、この天井裏に動物がいると言って調べてくれた。アルビノのハクビシンがいた。我南人は縁側から奥に入って見て欲しいと頼む。ノラと玉三郎が死んでいた。庭に埋めた。
 祐円さんが倒れた。検査したが何もないようだ。
 春子さんはいよいよいけないようだ。
 紺は夜、かんなの撮った写真をチェックしている。時々サチが写っている。研人がきた。紺とサチは話し、それを研人が見ている。研人には聞こえない。

 秋 本に引かれて同じ船 九月、木島主水と仁科由子の結婚式があった。
 はるの真奈美の母親・春美さんが亡くなった。
 はるに時々、バンドワゴンで本を買って食事しながら本を読む老婦人が訪れる。
 図書館の館長さんが、時々古本が置かれていると話しに来る。
 茅野が、この家の写真を撮っている若い女がいると言う。
 玲井奈が、兄が図書館通いをしていると言う。茅野は図書館の司書を調べ始める。写真を撮っていたのは司書・野島真央だった。
 三鷹と結婚した永坂杏里が妊娠した。今は悪阻が酷く、仕事を休んでいる。
 バンドワゴンに野島と裕太が飛び込んで来る。野島はこの店が危ない店だと言う。戦後、サチを守るために十三が用意した武器が、十三と供に写った写真を持っていた。勘一とかずみの昔話しに花が咲く。野島は蔵に武器が隠されていると思ったようだ。
 写真を図書館に持ち込んだのは、はるで本を読む老婦人・おけいちゃんだった。我南人が連れてくる。かずみには判った。畳屋の娘・桂だった。九州にいたが息子が東京に呼んだ。息子の家の近くに住んでいる。図書館に本を置いたのも桂だった。草平が桂にくれた本だった。
 裕太は野島と付き合っていた。
 我南人は図書館に捨てられていた猫の赤ちゃんを二匹貰って来た。七代目玉三郎とノラ。

 冬 男の美学にはないちもんめ 年末の行事はつつがなく、大掃除、クリスマス、昭爾屋の餅つきを済ませた。門松はマードックと研人のお手製。
 古本屋の年末挨拶回りは、前は紺だったが、近ごろは、青とすずみがお供。
 元旦、新年の朝は八時に二人がお越し回る。二人が決めた席に着いてお節料理。
 居間の襖がマードックの描いた日本画の襖絵に変わった。
 女性陣が着物に着替え祐円さんの神社に初詣。勘一と我南人は紋付き袴。居酒屋はるの面々と池沢。
 初めて神社の名前登場・谷日神社。
 紺と亜美と研人とかんなは脇坂家へ、青とすずみと鈴花はすずみの実家の墓参りの後、叔母さん・聡子のお宅へ。
 宮内庁書陵部図書課宮内公文書館公文書第五係 国坂直治 がやってくる。蔵で話す。私どもが預かるような文書があると聞いた。見せてほしいという。ないと言うが、デジタルデータでもいいと。見せないということで帰った。
 藤島から火急の呼び出し。勘一と我南人が、葉山に行く。デジタルデータを見せる見せないで宮内庁、官僚、藤島の会社、三鷹の会社が関係して、アーカイブ事業に横槍が入った。我南人が藤島の会社から出す新譜に、四十年前に放送禁止歌にされた曲が四曲入っている。四曲を外すなら発売可能だ、という。デジタルアーカイブ事業で関わっている役所が、問題になっている曲を新譜に入れるようなミュージシャンを抱えたような会社とか、コントロール出来ない会社は信用出来ない。事業の見直しをしようと言ってきた。宮内庁に貸しを作りたい官僚が我南人を知っていた。勘一が見せれば済むことと言った。
 我南人は、ラブタイマーオフィスとFJとの契約を解除すればOKだね〜。新譜は個人レーベルで出せばいい。風一郎と龍哉も契約を切る。
 夏樹が、我南人の事務所を辞めた。建築関係の仕事をしたいと言った。

 春 ヒア・カムズ・ザ・サン 三月三日雛祭りは盛大にしよう。研人が芽莉依ちゃんと一緒に行こうとした私立に落ちた。都立は受かり、バンド仲間とは同じ高校になった。誰も研人に芽莉依のことを聞けない。
 夏樹が働いている矢野建築事務所が、とばっちりで潰れる。早く知った新さんは夏樹に早めに辞めろとアドバイスするが、夏樹は、矢野さんはすごい人で恩になっている。最後まで矢野さんのために働くと言う。
 芽莉依の母親・汀子が相談に来る。亜美は高校受験に失敗した研人に芽莉依が愛想をつかしても仕方無いと思っている。汀子は研人が自分に会ってくれないかも知れない。自分のせいだと言うが何があったのでしょう。
 我南人が僕に任せて。
 矢野が夏樹と玲井奈と一緒に来る。事務所を整理して新しくスタートする。夏樹に元気づけられこのまま働いて欲しいと思っていると挨拶に来た。矢野は家を隅々まで見させて欲しいと頼む。写真も撮りたいと。
 結婚式を挙げていない夏樹と玲井奈の披露宴をここでするこになった。
 研人の中学卒業の夜、花陽は痺れを切らして研人に詰め寄る。芽莉依とどうなっているのかと。研人は、芽莉依は学校始まって以来の秀才と言われている。街を歩けばスカウトに声を掛けられる。頭が良く、美人。おれなんかより釣り合うようなすごい男がいるよ。いつ離れても、連絡来なくなってもいいから好きにしろと芽莉依に言ったと言う。花陽が啖呵を切った。ばか! 合格するかどうかより、一緒に一所懸命頑張ってくれたことがうれしいのよ。
 LOVEだよね。カフェにバンド仲間と芽莉依がいた。我南人が連れてきた。研人たちは演奏する。ヒア・カムズ・ザ・サン。

2022年8月5日金曜日

東京バンドワゴン⑨ 

 東京バンドワゴン⑨ オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 小路幸也


 秋 真っ赤な紅葉はなに見て燃える かんなと鈴花は三才になった。毎朝、布団にダイビングして皆を起こす。一番は研人、紺も青もマードックも。朝食の座る席は二人が箸を置いて決める。全員揃って頂きます。
 青が出演した古本屋の映画〈古書店オーガスタ〉上映開始。
 花陽は高校、研人は中学
 はるの真奈美の母親・はるさんが入院。余り先が長くないようだ。
 青の映画の脚本家・岸田安見が〈東京バンドワゴン〉に来る。すずみが、二十年近く前に亡くなった作家・川田鉄フェアをやっているのを見た。
 同時に、増谷裕太が来る。裕太と岸田は同級生だった。
 小学二三年の少女・のぞみがおやつを買うために絵本を売りに来た。勘一は絵本にメッセージをつけ返し百円を渡した。我南人が少女を追う。見ていた岸田は涙ぐみ帰った。
 裕太は高校の時、岸田がたくさんの本を燃やしていたことを話した。
 裕太と母親、妹・玲井奈と夏樹夫婦と子供・小夜が、裏の空家になっている田町家に住むことになった。
 青の映画の穴崎監督が岸田のことに詳しかった。監督は学生時代、川田鉄と親しかった。岸田は川田の娘だった。売れない作家のまま亡くなった川田は、岸田にとって母と自分を
顧みないかってな父親として心に残っていた。紺は青と一緒に岸田の母親にも会って話しを聞いた。小さい頃は父親と古本屋へよく行っていた。
 我南人は、岸田とのぞみ親子をカフェへ呼んだ。
 我南人は、川田の本から娘への思いを引き出し、曲を付けて歌った。父から娘への思いだよ。のぞみを見て涙が出たのは、お父さんへの思いが憎いだけじゃないからだろうと問いかける。川田の本・八冊を売る。燃やす前にもう一度読んでほしいと言う。
 のぞみちゃんは離婚しようとしている父と母の家を行ったり来たりして生活していた。もうちょっと考えてやってほしい。そしてのぞみにはいつでも本を読みに来ていいからと言った。
 
 冬 蔵くなるまで待って 十二月の大掃除、障子の張り替えに集まった。藤島に花陽の塾友だち・谷田愛奈穂。隣から玲井奈と小夜。蔵の掃除に茅野。
 蔵に興味を持ったフリーライターの仁科由子。五条辻家からサチ、そしてバンドワゴンと辿ってきた。木島の知りあいの女性。若くで亡くなった勘一の戦友・小舟黒丹の蔵書の書き込みから辿ってきた。黒丹とサチのロマンスがあったような・・・。蔵の中にはサチの日記もある。
 蔵の書物のデジタルアーカイブを作ることにした。
 藤島の父親は、藤三・藤島三吉77才という皇室関係の書も書く書家だとわかった。藤島より五才年長の元CA・弥生と結婚した。藤三が弥生とバントワゴンの蔵を訪れた。弥生との再婚理由を、自分の作品の扱いを受け継いでくれると確信したからと言った。デジタルで残す理由を、勘一はデータになった古いもんから匂いを感じ取ってくれるけもしれないと言った。残さなければ古いもんにならない。消えたもんになる。二人は話した。
 藤島と我南人は、卓越した父親を持つ息子の心情を話した。
 クリスマス。木島にサプライズ。愛奈穂を合わす。木島の娘だった。みんな知っていた。そして愛奈穂が大人になるまで待たなくていいから結婚しなさいと仁科を連れてくる。堀田家の蔵の書籍や書類のデジタルアーカイブ作成業務を、仁科と木島がすることになった。外に漏れないようにしなければならない。
 正月過ぎに池沢が藤島ハウスに住むことになった。

 春 歌って咲かせる実もあるさ 花陽は高校二年、研人は中学三年。鈴花とかんなは幼稚園。マードックは大学の講師。
 勘一が盲腸の手術を受ける。入院。見舞いにくるなと言いながら、来てくれるとうれしそう。入院中の皆から古本の注文を取る。
 茅野、古本詐欺にひっかかる。古本の価値はないが、アンティークにはなる。
 近所の薫子61才が、カフェの支払いを古銭でする。そのことを知った我南人は同級生と調べ始める。薫子は息子夫婦に子供が出来ないのは自分がいる所為かもしれないと思い、施設に入ろうと思った。言い出せずに認知症の症状が出れば施設に入る話しが出ると思って、わざと古銭を出していた。我南人は古銭屋へ連れて行き、売ったお金でのんびり温泉にでも行くことを進める。息子が、母親を嫁任せにしていることも反省させる。

 夏  オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 七月半ば、かんなと鈴花は朝の席決めの時、おじちゃん、おばちゃんを付ける。
 夏休みの葉山海水浴のスケジュール調整始まる。
 蔵の作業・デジタルアーカイブ化がもうすぐ終わる。内緒のものは、紺と青とすずみの三人で作業した。木島と仁科の結婚式は、祐円さんの神社で九月二十八日、仁科の誕生日に決まった。
 夏休みに、芽莉依がバンドワゴンで廃業する親戚の残った中古レコードとCDを売ることになった。管理は芽莉依がする。
 池沢が真幸のベビーシッターになる。
 葉山の海水浴に行った、花陽と研人と芽莉依と愛奈穂が、一泊の予定だったにも関わらず夜帰ってきた。二人を家に送る。
 研人が高校へ行かないでイギリスへ行くと言ったことを聞いた芽莉依が、泣いてしまったことで帰って来た。
 研人は、イギリスに行きたい、もっとすごいロックに浸りたい。ミュージシャンになりたいから今からそうしたいというのはだめかなと言う。紺はお前の好きなようにすればいい。ただみんなの言うことをちゃんと聞いて言われたことを考える。そうして出した答えには何も言わない。したいようにさせると言った。
 花陽は、芽莉依と一緒の高校に行ってあげても、日本で三年高校に通ってもロンドンは逃げない。研人が尊敬するおじいちゃんは男の生きるエネルギーは、女へのLOVEだよと言ってると言った。
 マードックが研人と芽莉依を連れ出し東京国立博物館へ行き、尾形光琳の風神雷神図屏風の前にたった。そこへ我南人とキースが来た。キースは自分の家のキーを渡し、いつ来ても良いよ。日本の話が宿泊料だと言って帰る。マードックは、自分の生まれた国の良さを知らないと外国の良さもわからない。自分の国の素晴らしさを知った人はとても強い。才能を伸ばすと思うと言った。
 研人は芽莉依にとりあえず勉強教えて、受験までに間にあわせなきゃ。でも研人の成績では芽莉依の学校は絶望的らしい。

 勘一が仏壇の前で、サチに俺ばっかり楽しんじまってすまねなと言う。やって来た研人が、小さい時、大ばあちゃんを見たんだ。幸せそうににこにこ笑っていた。今でもにこにこ笑っていると思うよと言った。

2022年8月2日火曜日

はぐれ又兵衛例繰控 四

 はぐれ又兵衛例繰控 四 蜜命にあらず 坂岡真

釣り鐘小僧 内与力・沢尻玄蕃から、去年師走の陰間の殺された事件を探れと言われた。旧悪となるが同じような事件があればそういう訳にもいかないということだった。
 七日前、陰間・新之丞の息子・佐吉が父親と同じ殺され方で見つかった。
 辿っていくと、満光寺の法印・浄雲、釣り鐘小僧、祠堂金、古銅吹所、擬宝珠盗難、渡部半太夫とつながって行く。
 渡部が釣り鐘泥棒を捕まえた。釣り鐘や擬宝珠を、渡部が盗ませて古銅吹所で銭貨に換えている。浄雲に繋がり奥右筆・城崎大膳につながるらしい。
 佐吉を殺したのは 古銅吹所見回り同心・堀江増也だった。分銅鎖の使い手だ。
 浄雲を捕まえ、悪事を書留、城崎大膳に質せばからくりが判ると大手御門前に置かれた。
 城崎大膳と渡部半太夫を対面させる。渡部を殺そうとするところを、又兵衛は鎖骨を砕く。徒目付が連れて行った。

 蜜命にあらず 評定所留め役・和久田伊織之介が、偽人参を調べよと言って来る。 
 静香と初めて正月を迎えた。つたという鳥追が現れ、七年前、無理心中を強いられ苦しんでいるところを又兵衛の父に救われたと話す。父は十一年前に亡くなっている。
 父を尊敬していた牢屋同心・塚本彦松が、父の名を使っていた。
 偽人参を売らしているのは、能見屋、売っているのは真砂一家。真砂一家の用心棒に塚本がなっていた。調べていた。能見屋は抜け荷をしていた。塚本が抜け荷の日・蔵の場所を摑んで、証拠も持って沢尻にとり方を要請するが、和久田に聞いてからと言い動かなかった。塚本は殺された。

 父の執念 父は根岸肥前守から蜜命を賜っていた。父と一緒に探索していた落としの平九郎は今でも探索していた。抜け荷の主犯は対馬藩中老・梶谷将監。沢尻から謹慎を命じられる。櫛渕平九郎から裏帳簿を託される。平九郎は駕籠訴をし、殺された。
 筒井伊賀守は又兵衛に好きにせいと言った後の尻は持つ。と
 梶谷の呼び出しに応じ会いに行く。又兵衛が対戦している時、採り方が現れ、重臣を騙る狼藉者として捕らえた。梶谷の後にいた黒幕は勘定奉行・守山豊後守だった。
父が殺された場所へ、裏帳簿で呼び出した。父は守山の腹を斬っていた。又兵衛は守山を斬った。


2022年8月1日月曜日

新・秋山久蔵御用控〈十三〉 雨宿り

新・秋山久蔵御用控〈十三〉 雨宿り 藤井邦夫

 忠義者 秋山久蔵は秋山家の墓参りに行き、半天の男に付けられている総髪の浪人に出会った。武士がふたり総髪の浪人を斬ろうとした。浪人は強かった。武士は四千石の旗本永野の家臣。浪人は永野家を辞した黒沢兵衛。永野家から飛び出して来た家臣と女中。追いかける家臣団。黒沢が現れ二人を助ける。永野家の庭に入った植木職人が一人殿様に殺された。黒沢は屋敷に飛び込み殿様を討つ。黒沢も殺された。見届けた秋山は黒沢を御新造の墓の隣に祭った。永野家は家禄を減らされたが残った。

 人斬り 久蔵は付けて来る者が誰か。太市に探らせた。初老の女・望月初枝だった。金次が殺された。殺したのは鬼若と呼ばれる男のようだ。男は望月恭之介、十年前に秋山が旗本の用心棒をして秋山の前に現れ斬った平蔵の息子だった。初枝は息子が狙っていることを知らせに来た。平蔵は尋常の立ち合いをしてくれた久蔵に礼を言ってなくなったと言いに来た。恭之介を斬った。恭之介を人斬りにした始末屋の元締めが判った。死罪になった。初枝は髪を下ろし尼寺に入った。

 雨宿り 久蔵の息子・秋山大助は、閻魔堂で雨宿りした。男二人に難癖を付けられている女を助けた。次の日、二人のうちの一人が閻魔堂の裏で殺されて見つかった。女は盗賊の頭だった。張り込みを続ける秋山たちは狙う店も知った。この仕事は危ないとしり込みする頭を他の仲間は殺して盗みに出た。盗賊は一網打尽になった。頭は勇次に医者に運ばれたが、死んだ。

 隅田川  小普請組牧野隆一郎、息子の薬代のために妻・早苗は小間物屋「紅屋」の主・善三郎と関係を持ち金を得ていた。善三郎が殺され、牧野夫妻が怪しいと思われたが、早苗は息子が亡くなり自死していた。牧野が、酒に酔い半天を着た男と若い侍が殺された。若侍は三千石勘定奉行の息子・柳沢京弥だった。殺したのは牧野。交換殺人だと思われた。京弥は五年前、町娘を手籠めにし、犯人を浅原紀一郎になする付けた。紀一郎は学問所を追われ、乱心し、去年亡くなった。牧野は墓の永代供養を頼み、久蔵の前に現れる。牧野は善三郎と京弥を殺したと言い張り久蔵に斬られる。秋山は浅原左内夫婦に、二人を殺したと言い残し牧野は死んだ。牧野の遺体を引き取り菩提を弔って、妻子と一緒に供養してやって欲しいと頼んだ。