2022年9月30日金曜日

浮世小路の姉妹

 浮世小路の姉妹 佐伯泰英

 町火消い組の鳶見習の昇吉17才は、老舗料理茶屋加賀屋うきよしょうじの火事の最中、うきよしょうじの姉妹、従業員を助け出すが、主人と女将を助けられなかった。
 半年が経ち、茶屋の新築の材木も用意されているのに新しい茶屋が建たない。付け火の犯人も捕まらない。
 昇吉は、今川橋から日本橋までどんな店があるか調べて行く途中、うきよしょうじの姉妹・佳世19才と澄14才と知りあいになる。
 佳世と若頭・吉五郎には縁談があった。若頭の求めで、昇吉はい組を離れて放火犯を追うことになる。幼友達と古船を直し屋根をつけた船で中洲に作った葦の中の小屋を塒に調べる。
 二人姉妹は今も何者かに狙われていた。昇吉は、夜はうきよしょうじの姉妹と従業員が暮らす屋根船と料理茶屋の跡地を「あかべい」という犬と見張る。
 怪しいのは、金遣いの荒い小間物屋の若旦那を佳世の婿にすれば、料理屋の再建に力を貸すと言ってきた船が沈み大損した札差の内儀。
 一ノ木の若旦那薗太郎を名乗り、職人と一緒に座敷に上がった四人。調べると薗太郎は似ても似つかぬ人だった。
 昇吉は、主人夫婦を殺すつもりの火付けだと考えた。
 加賀屋の別邸に行き、加賀屋の秘密を知る。澄は父親から後継ぎだと言われ秘密を教えられていた。二百年の間、加賀屋は加賀藩の影御用を務めていた。知りえた幕府の情報を加賀屋に知らせる。
 黒装束で料理屋の跡地に立っている男を見た。料理屋の跡地の見渡せる名主の味噌ぐらに誰かが入った形跡がある。置かれた煙草入れを持ち帰り、見張る。男を誘い出したと思った昇吉だが、二人は襲撃された。服部十之助は、藩主・斉広の御近習だった。服部は、藩の親公儀派は加賀屋の陰御用をよく思わない。襲撃も火付けも親公儀派が雇った者による者だと言う。
 襲撃したものは捕まり、火付けを認めたため町奉行所に引き渡され遠島になる。加賀藩でも親公儀派の重臣が切腹した。
 澄は、代々の主人が書き残した書状を全て加賀藩に渡し、陰御用を父の代で終わりにしたいと伝えた。斉広は願いを聞き入れた。
 見張りも今日でお終いという日、跡地に影が立った。屋根船に火を付けようとする。昇吉は阻止する。加賀の親公儀派に雇われた髭の磯松という盗賊だった。捕まった。
 澄は、跡地の地下蔵の話しを昇吉にする。
 昇吉は将来、婿になることを考えて、加賀屋の奉公人になった。

 
 
 

2022年9月28日水曜日

風の市兵衛〈弐 〉 ㉛ 春風譜 

風の市兵衛〈弐 〉 ㉛ 春風譜  辻堂魁

 小春の兄の又蔵が、妹と渋井の息子・良一郎との縁談を知り家出をした。
市兵衛は、我孫子宿の親戚の南吉の所にいるはずの又蔵に会い、三十両を渡すことを父親・扇職人・佐十郎に頼まれた。
 青山村の南吉の家は空きやになっていた。市兵衛は南吉を探す。南吉は父親が亡くなり、稲が病気になり、虫にやられたり、借金した。寒い夏が二年続き借金が増え田畑を手放した。牛次郎の賭場に入り浸りになった。南吉を牛次郎の子分が探し回っていた。
 南吉の子供を身ごもっているらしいおことに会う。
 南吉の幼い頃の唯一の友だち・竹弥・法名・朱恵を尋ねる。朱恵は南吉から五十両を預かっていた。おことと母親を残して昔青山村から姿を消したおことの父親・勘助が旅姿で南吉を呼び出し、おことのために村に帰って田畑を買い戻せと渡された金だった。
 根戸村の尾張屋源五郎親分が殺されていた。殺したのは、牛次郎に五十両で頼まれた勘助だった。勘助は牛次郎に五十両を取り返すために殺していた。その時五十両は無かった。勘助がおことの父親だと知って、牛次郎は南吉を探していた。
 南吉と又蔵の隠れ場所を見付けた牛次郎は、市兵衛も一緒に殺すつもりで、南吉の所へ案内する。
 市兵衛は牛次郎の子分たちも捕まえる。牛次郎の義父殺しや、妻殺し、源五郎殺し、勘助殺し、陣屋の元締め・小曽木との癒着まで洗いざらい調が進んだ。
 南吉は五十両を尾張屋にお供えした。又蔵は市兵衛の持ってきた三十両を南吉に渡した。南吉は名主の借金を返し田畑を返して貰った。おことを迎えに行く。
 江戸へ帰る許可が出た。又蔵は市兵衛と一緒に江戸へ帰る。渋井が佐十郎の店に立ち寄った。市兵衛から飛脚の便りがあったことを聞く。市兵衛が心配ないとあったのなら大丈夫だと安心する。

2022年9月26日月曜日

私立探偵・小仏太郎 京都・化野殺人経路

私立探偵・小仏太郎 京都・化野殺人経路 梓林太郎

 六月 友人の結婚式のため名古屋に向かった社長令嬢・岩倉真琴が行方不明になった。小仏は警視庁捜査一課の安間から調査を依頼される。身代金三千万を持ち京都へ向かうよう要請される。京都で犯人は、もう一人誘拐していた。彼女を劣りにされ、金は奪取されたうえ犯人を取り逃がす。二千万の追加要求があり、二千万を渡し、真琴は保護された。
 小仏は犯人を追い、 真琴がいた家を見付ける。犯人の名は二宮旬・みどり夫婦、二宮の母・二宮貞子。
 二宮旬の妹の娘・君恵の婚約者が、小仏の京都の化野で貞子に会ったと言う情報で京都へ行き、知りあいの男性と貞子に会いに行き、二人が殺された。

 一年後九月、小仏はみどりの故郷を訪ねる。みどりらしい女を見付けるがひと足違いで逃げられる。岐阜でも逃げられる。貞子がいた。他人の母子と一緒に暮らしていた。
 十月 二宮旬が殺される。

 一月 横浜で同じような誘拐事件が起こる。京都で三千万と交換する。彼女は帰ったが金を取られ、犯人も捕まえられなかった。

 三月、北海道で横浜の事件を手伝った男轢き殺されそうになった。みどりは消えた。

 五月、函館開港記念館の管理人が、みどり姉妹ではないかと情報が入る。小仏は別館と宿舎の間の土を採取し、警察に渡した。毛髪のDNAが一致し、みどりは逮捕された。

2022年9月24日土曜日

脳科学捜査官真田夏希⑭

脳科学捜査官真田夏希⑭ イーガル・マゼンタ 鳴神響一

 エージェント・スミスと名乗る犯人にシステムに間違った情報を組み込ませ、倉庫におびき出され織田とお真田は、手錠を掛けられ捕らえられる。
 倉庫から脱出した二人は、スミスと思われる長野に住む男を捕らえるが、スミスではなかった。
 本部に戻り、情報を集め、会議の結果、スミスと名乗り夏希とSNSで会話している者と、システム捜査している者とは違う人物だということ、警察官である可能性が高い。システム捜査している者は幼い。
 バイクで逃走した者を探し出す。バイクを積み込んだ車・トランスポータを見付けた。江ノ電の七里ヶ浜近くに住む、野村隆行親子と断定した。
 アリシアが、織田が倉庫で拾ったチェストストラップの匂いで家を突き止める。野村は夏希たちの仲間・妻木麻美の義兄だった。
 野村は、身体が不自由になり車椅子の生活になった息子・直人のために、直人の能力を巨大クラッカー集団に買って貰うために事件を起こしていた。
 織田は小学生の直人に、直人が行なった行為のために迷惑を被った人がいたことを自覚しなければならないと話す。妻木が直人と一緒にいることになった。

2022年9月22日木曜日

北の御番所反骨目録〈四〉 狐祝言

 北の御番所反骨目録〈四〉 狐祝言 芝村凉也

 宴のあと 古藤は内与力から外された。小田切家の屋敷の留守居補佐になった。深元は内与力筆頭になった。

 狐祝言 上役に暴言を吐いて三日間の謹慎処分を受けた裄沢広二郎は来合轟次郎と美也の婚礼の準備が遅々として進んでいないことを案じていた。
 大奥から戻って以来、美也が備前屋に仮寓したまま親元に帰らないこともあり実家の坂木家に幾度となく出席者を問い合わせても梨の礫だった。
 婚姻許可届けも出さず放置されたが、南町奉行・根岸肥前守鎮衛がまだ出ていないようだがと声を掛けられたことで婚姻届けを提出した。その後のことも全て備前屋が整え、坂木家に手紙で知らされる。坂木家からは何も言って来ない。
 出席者の問い合わせに返事が無いことで、広二郎と備前屋は坂木家に出向く。父親・勘乃丞は、美也が側室にならず帰って来たことにまだ腹を立てていた。勝手に段取りした祝言の席には絶対に出無いという。広二郎は坂木夫妻と跡取り嫡男夫妻の席はぎりぎりまで空けておくと言って帰る。 
 坂木家の嫡男・六郎太が祝言の席に水掛けをする計画があることを知らせてくる。六郎太は父親が筋の通らないことをすると思っていた。
 広二郎は坂木の親戚の伯父に計画を知らせる。坂木家には出席者を知らせる。北町奉行が出席することを知り、増席を望んで来るが断る。親戚を出すため母親、嫡男の嫁は出られないと言われた母親は娘の祝言に出られないなら実家に帰るという。四人で出席した。小田切土佐守は出席した。勘乃丞は隠居した。

まいない新三郎 新しく内与力になった倉島は、考え違いをした。裄沢が深元に擦り寄っていると考えた。仕事に関係のないことを毎日言いつける。裄沢は、古くから古藤と吟味方与力・瀬尾がしていた借財引継や専売品直取引の仲介に気がついた。大名や老中に関わることだった。市中取締緒色調掛・横手が脅迫され手を組んでいた。裄沢は深元に知らせた。
 瀬尾は密かに追放して一件を終息させると奉行が判断した。
 深元に事件を知らせたと腹を立てた倉島は、裄沢に罷免すると叫んだ。裄沢はお奉行様よりの意向承りましたと帰宅する。
 深沢は倉島を呼び出し、古藤が小田切家を出たことを告げた。内与力を辞めた時も明白な証拠があった。確かめたか?思い込みで判断せず推移を見、話しを聞けば簡単に判ったこと。裄沢は切れ味をひと味どころかふた味もみ味も違う。あいつに掛かると斬るべき物は一番無駄のない斬れ方をした上で斬るべきでないところはいっさい瑕をつけぬようしてのける。名刀を探し出すより見付けることは難しい。確かめてみれば良い。殿の承諾も受けず己の感情のまま勝手に罷免を通告した。裄沢がお奉行様の意向と言わなければ、裄沢が誤魔化してくれなければどうなっていたか。裄沢をどうでもいい無駄働きのために顎でこき使っていたことを他の者はどう見ていたか考えたか?
 裄沢の元に、奉行の護衛・宗方が迎えに来た。料亭で小田切は明日は普段通り出仕せよと言った。裄沢は自分の前に、倉島は横手に放逐を申し渡した。脅してやらせた二人は得たお金を取り上げられず追放で済まされた。同じではおかしいと言った。
 裄沢が平然と出仕し、横手の放逐が撤回され倅が出仕することも疑問視されなかった。

 秋日和 小田切家家令・唐家が、内与力を兼任することになった。
 


2022年9月20日火曜日

素晴らしき国

素晴らしき国 小路幸也 

序 大学で社会学を教えている私は、二十年前、わが家に伝わる戦国時代の肖像画とそっくりの肖像画に会った。学生が話しを聞いた女性を描いた物だった。ほくろの位置まで同じだった。私は女性に連絡をとった。彼女から、写真と二十年後に会いましょうと連絡が来た。
一年に一度、年賀状が来た。二十年後、いつでもおいで下さいと書き添えてあった。
 肖像画を持って会いに行った。彼女は二十年前の写真と変わっていなかった。不老不死。
こうと落款の入った肖像画、彼女はこう・光が描いたという。光は明知光秀だと。
 
彼女は、150年ほど、「素晴らしき国」を作ることを手助けする人たちを育成する村・いよを作っていたと言う。ふじみ様と呼ばれていた。いよには何かに秀でた者たちがいた。子供たちがいた。ちょう、こう、よし、こた、ねいもいた。大人はいろんな所に国見にいっている。
 織田に子供が出来た。五宇徳が十数年後の夢をみた。その男の横にこうを見た。 
 こうの父親・雲林院弥一郎、体術に秀でる。その弟・耿之介。橋場、土、農の品種改良もする。五宇徳、この世で起こるであろうことが、その行く末が夢に表れる。
 雲林院の こう、よし、ちょう。 橋場の さん、すい、ねる。 中村の こた、ねい。
佐介の すすな、やえ。相良の りょう。
 中村と弥一郎と五宇徳と、こうを尾張に入れる絵図を引く。
 隠れ里・いよを開き、ふじみ様は尼さま。いの道 美濃は戦わず尾張になるために雲林院弥一郎とこうは美濃の長井新九郎の家臣になる。ろの道 よしは、橋場か吾一と尾張に行く。はの道 りょう、まだ幼いので二本の道が決まってから。
 

2022年9月18日日曜日

京都寺町三条のホームズ18

 京都寺町三条のホームズ18 望月麻衣
  〜お嬢様のミッション〜

 プロローグ 正月五日、葵と香織は、北野天満宮へ行く。香織は春彦とのことで葵に言えない何かがあった。

 小松探偵事務所に、ジウ・イーリンが来て、香港の富豪の娘のボディガード兼ガイドの要請をする。報酬に引かれ小松は無論了承する。
 事務所で暮らす円生は、まだ絵を描く様子はない。
 イーリンと円生にも何かあったか。
 田所敦子は、二十カラットのブルーダイヤを盗まれた。
 清貴と葵は若冲縁の宝蔵寺に行く。葵が円生に誕生日プレゼントに若冲の絵柄の御朱印帳を買いそうなので、清貴は円生に買う。後に若冲展への誘いのメモを入れて渡す。

 ガイド当日、清貴は、チョウ・ズシュエン本人に断られるよう、飛んできたハイヒールを除けない。ハイヒールを投げて返す。連れて行くのはインパクトのある京都では、縁切り寺・安井金毘羅宮。感動できる京都では、幽霊子育飴のお店。特別な体験ができる京都では、法観寺の八坂の塔の二層目まで登った。小松は円生に葵を迎えに行って貰う。京都らしいランチでは湯豆腐だった。話しは清貴らしく嫌み交じり。
 午後は葵が合流して、SNS映えする、八坂庚申堂。嵐山のキモノフォレスト、竹林に行く。
小松は、葵が毒気を抜く人だと気がつく。毒気の強い人は葵を好きになる。チョウは、日本名・梓沙。梓沙、葵と呼びあっていた。
 梓沙は三年前に母を亡くしていた。去年の暮れ、父親の恋人が発覚した。
 二日目ガイドは午前中は中止、午後は葵が来て、下賀茂神社、水みくじ、縁結びの社、美人祈願の社を廻る。
 梓沙の希望で大丸へ行き、宝石アクセサリーを買う。大丸外で事件が起こる。ガードマンの位置が予定と違うことに気がついた清貴は、ガードマンと闘うが、梓沙はガードマンに車に乗せられ連れ去られる。警察に連絡せず、ホテルで父親の来るのを待つ。梓沙のスマホからメッセージが届く。あなたが手に入れた宝と引き換え。不可解な一文があった。
 ホテルに警察並の装備が並べられる。プロジェクターで清貴と小松が付けていたカメラをの映像を映す。ガードマンは、周が雇った元傭兵だった。清貴は一人を捕まえた映像が流れ、周は驚く。小松は街角の防犯カメラを追跡し、伏見区まで追った。周は清貴等を引き取らせようとしたが、清貴は、自分たちの方が早く梓沙を見付けると豪語し出発する。
 伏見とは逆に鷹峯のホテルに行く。小松に豪華ホテルの防犯カメラを見て貰い、梓沙が入ったホテルを突き止める。尾行が付いており周が現れる。
 清貴は、お嬢様の自作自演の誘拐劇、壮大な親子喧嘩にピリオドだと言う。腕の立つ物を置きたくなかった梓沙は、クビになりたいためハイヒールに反応しなかった清貴を採用した。車が見えなくなった辺りにヘリポートがある。ヘリを使って鷹峯に移動。不可解な一文は、何も伝えていなかった君島に「あたしは 大丈夫」というメッセージ。
 梓沙は、父親の恋人のことよりも、ブルーダイヤの手に入れ方が気に入らなかった。盗んだこと。梓沙は母親の青い目と似たブルーダイヤを手に入れるために君島を敦子さんの所へ交渉に何度も行かせていた。それを知った恋人は、父親にねだった。そして盗難騒ぎが起こった。パパはママを裏切っただけじゃなく、パパを信じている全ての人を裏切った。父親からダイヤを奪い、敦子に返し、また交渉しようと思っていた。
 まだダイヤを手に入れていない周は、大阪で開かれるシークレット・オークションのことを話した。盗難品ばかりが集まるオークションのことを小松は知らせ、一斉検挙となった。
 アクセサリーのプレゼントを葵は断った。梓沙はアパレルブランド『華』を立ち上げている。葵が言った「私の人生を変えてくれた町」。気に入った梓沙は後に「私の人生を変えてくれるファッション」というキャッチコピーに使う。
 梓沙は敦子に会ってから帰った。

 円生はメモを見付けた。京都国立博物館。指定された日は休刊日だった。内覧会。葵も円生も特権にわだかまりがある。
 葵と円生は、若冲の絵を見ながら話す。葵は若冲は神様の視点で全てに感動している。特別な物ではなく周りの全てが、特別な物。
 清貴は若冲の作品を「神の視点」だと思うと話す。
 葵はお金に対する価値観を改めた。お金が欲しいではなく、自由が欲しいと思えば良いという清貴。
 葵が庶民感覚を・・・と言っていたことを、価値観の違い、別れの理由と考えていた清貴だったが、葵は、価値観の違いは当たり前、分かり合う努力とか譲り合う理由になるが、別れる理由にはならないと言う。

 春彦が清貴に相談にくる。香織の告白の返事をしていなかったからか、告白なかったことにして、これからは友だちとして仲間としてこれまで通り仲良くして。と言われたと言う。
清貴は、勝手な想像をせず、彼女の気持ちを聞いてみたら。好きな子と友だちになりたいですか?蛇の生殺しのようなポジションと言われて、春彦は自分の気持ちを整理して向き合うことにする。
 
 事務所で宴会が開かれた。「お疲れ様会兼新年会」葵、利休、ユキ、秋人。円生には内緒、円生の誕生会だった。
 秋人が、相笠くりすの、清貴と秋人をモデルにした昭和初期の京都を舞台にした作品が舞台化されることになったと発表した。
 周さんから小松事務所に沢山の報酬が払われた。小松事務所が祇園にいられる。
 みんなで乾杯!

 番外編 拝み屋さんと鑑定士「彼の胸の内」 わが家は祇園の拝み屋さん⑬より
 蔵に、澪人と小春が訪れる。小春は初めて蔵に来た時のことを思い出す。
 ほんの一瞬で小春は清貴の心を読んでしまった。自分のほとんどを当てた。
 初めて葵に合った時の清貴の心も読み取ってしまった。葵に対する清貴の思い、澪人に、恋しい人を前にした時の頭は覗いたらあかんよと言われた。
 衝撃的なひと時。

 清貴は、小春が目をそらしたことは、人見知り、警戒心が強いと判断した。人の心が分かるために目を合わさないようにしているとは考えなかった。
 
 

2022年9月16日金曜日

オリックスはなぜ優勝できたのか

 オリックスはなぜ優勝できたのか 喜瀬雅則
 苦闘と変革の25年

 私は、2021年 寒く震えながらグリーンスタジアム神戸、(今はなんと言うか)ホットモット神戸で、ヤクルトとの日本シリーズを見た。ヤクルトの胴上げを見た。

2022年9月14日水曜日

吉原裏同心㊲ 独り立ち

 吉原裏同心㊲ 独り立ち 佐伯泰英

 五月 墓参りを済ませた神守幹次郎が一年の謹慎が解け、麻と吉原に帰った。
 京で知り合いになった掛川藩藩主・老中・太田備中守資愛に挨拶に行く。
 幹次郎が八代目頭取四郎兵衛を継いだ。八代目と神守の二役をすることになった。三浦屋四郎左衛門も代が変わった。
 八代目は、京都との繋がりと、西河岸と羅生門河岸の変革を考えている。
 澄乃は、小見世から切見世に自分から変わった小梅の事情を調べ、内藤新宿の悪から小梅を助ける。

 六年前に事件で知りあった定信の側室・香の呼び出しを受け、定信に会いに行く。

 大見世の寿楽楼が居抜きで買われ、名を豊遊楼に変えた。奉公人もほとんど入れ替わった。買ったのは三島の船問屋と旅籠の主・三左衛門になっていた。八代目を襲った、松坂町の鬼の五郎蔵と繋がっていた。三左衛門は佃沖に軍船を泊めていた。二、三隻の千五、六百石船を持つ海賊商だった。
 身代りの佐吉と八丁堀の桑平同心に連絡を取り調べ始める。
 吉原面番所の村崎季光が、自分と五郎蔵との関わり、三左衛門との付きあいを認めた書きつけで、五郎蔵を強請った。三百両を要求した。澄乃たちが捕まえた。
 三島丸三隻は大砲を積んだ海賊船だった。定信に願い、海賊船が内海に入った合図のろしが上がる。三島屋一味の隠れ湊を見付けた。交易船から強奪した品々を江戸の大商人に売渡し、ゆっくり寝込んだところをを、湾口を御船手同心たちが塞いだ。
 幹次郎は船に乗り込み三島や三左衛門を斬った。勝負は決した。三島屋の船は御船手組の別動隊になり、隠された二十六万両は海防策に使われる。海賊の残党は活かして手下としてつかわれることになった。五百両は、寿楽楼の奉公人に配られた。
 定信は老中を追われた。

2022年9月12日月曜日

上絵師 律の似面絵帖⑧

上絵師 律の似面絵帖⑧ 告ぐ雷鳥 知野みさき

 にわか御用聞き 律は涼太から彼岸花の透かし彫りの鈴を貰った。律が描いた彼岸花の着物を見て達矢という錺師が意欲を掻き立てられ作られた鈴だった。
 綾乃が御用聞きに成りたいと言う。
 大泥棒の晃矢がまだ見つかっていない。晃矢は錺師・達矢の双子の兄だとわかった。
 律が片桐和十郎と話している時に、弟子になりたいという仁太が来た。和十郎は断っていたが、後に和十郎の所に行くと仁太が、和十郎の世話をしていた。
 律が、前に助けられた男を見付けた。やくざ一家の右腕・賢次郎というらしい。悪さを仕掛けたのは、赤間屋の者だと教えられた。綾乃は赤間屋の息子の悪行を調べていた。旅籠・赤間屋の次男・茂郎とその連れ二人が悪さをして多くの人が泣き寝入りしているという。尾上の板前が殴られている昇太を助け殴られた後亡くなった。綾乃は被害を受けた人を探していた。
 晃矢は子供を勾引かしていたことがわかった。
 綾乃が探し出した秀に話しを聞く。 三年前、赤間屋で働いていた許嫁・清吉が薮入りに帰らないまま姿を消した。前から清吉は茂郎から嫌がらせを受けていた。同心が調べを始めた。三人は大川で溺れて死んだ。話しを聞いた隠居が船をだし孫を溺れさせたようだ。隠居が孫の長男を仕込み、茂郎に甘かった父親を引退させることにした。秀の許嫁は品川で亡くなっていた。隠居が昇太を連れて尾上の板前の仏前に行く。
 広瀬保次郎の頼みで、阿芙蓉売りで捕まった留八の弟の似顔絵を描く。保次郎は弟の顔は知らないが留八の若い頃にそっくりというので、留八の顔を書いた。形見を渡すと言う。律は仁太にそっくりだった。留八は和十郎の密告で捕まった。和十郎の息子・善一郎は、仁太兄弟と一緒にいた。仁太は和十郎の芸のことを善一郎から聞いた。敵討ちのつもりで仁太は和十郎に弟子入りしたが、復讐を躊躇するようになった。親から受け継いだ御護りと、律が書いた留八の似面絵を見た。仁太は阿芙蓉には無関係だ。和十郎は仁太に好きにしろと言った。仁太は辞めないようだ。

 鬼子母神参り 涼太の友人・勇一郎が、身を固めようと思った囲っていた女・のとがいなくなった。律は似面絵を描き、涼太は勇一郎と知りあいを廻る。
 律は、関口水道町の志摩屋の隠居の要望で店まで意匠相談に行くことになった。広瀬の妻・史織と鬼子母神へ行くことになった。志摩屋で「らいの鳥」を描くことになったところで隠居に用ができまた今度ということになった。朔日に行くことにした。帰り道、律はのとを見付ける。声を掛け、女と行動を共にする。のとは身ごもっていた。自分のような者が子供を授かっていいのかという憂いの気持ちから家を出ていた。三人で家に帰ると、のとの姐さん・銀と男がいた。男は金を要求する。史織は広瀬に習った護身術で捕まえ番屋に渡す。勇一郎はのとに妻問いする。
 達矢が十両を払ったり、芸者を呼んだりしたと聞いた律は、晃矢が達矢を騙ったりしているのではないかと思った。達矢は晃矢に騙られないように顔に傷を付けた。

 告ぐ雷鳥 達矢は、晃矢を探している。律は白山権現に行く途中、達矢に会った。達矢が雷鳥の懐中仏に描かれた雷鳥を見せてくれた。律は紙に写す。達矢は紙に雷鳥を書いてくれた。着物の下書きを明日届けるという日、遣いの者が来て持って帰った。史織の実家で父親が、梅園禽譜を見せてくれた。そのころ、達矢が律に会いに来た。今井と晃矢の話をしていた。律に鈴を見せて欲しいと頼む。
 志摩屋か全て任せるという言葉と前金をもらった。
 達矢の品物を全部買う客がいるらしい。
 六日ほど経った。志摩屋が捕まった。志摩屋は盗人宿、隠居は頭だった。晃矢は殺されていた。
 達矢が雷鳥の着物が欲しいと言ってきた。達矢は旅に出ると言う。隠居の着物に贈り主は晃矢だった。二両を置いた。律は丁稚に涼太に伝えるようにと、達矢と白山権現に行くと言い置いて行く。達矢は懐中仏を律に預けた
 千恵を勾引かし、無体を働いた男が頼った万屋も、律が勾引かされた駕籠や栄屋も志摩屋に関係していた。一緒に捕まった。志摩屋は着物の注文を口実に律をおびき出し、律を殺すつもりだった。晃矢が殺すなら雷鳥の着物が出来てからにしてくれと言った。
 晃矢が捕まった。志摩屋にいたのは達矢だった。まだ殺されていなかったが、晃矢を油断させるために晃矢が殺されたと言った。律は達矢と名乗った男が、晃矢と分かっていた。火盗に志摩屋のことを密告したのは晃矢だった。
 晃矢は捕まり二日間、洗いざらい白状した。そして自死した。
 晃矢が勾引かしたとされる少年は、腹違いの弟がいるため、兄である少年は父や継母から虐待を受けていた。晃矢の知る盗人宿を教える代わりに少年のまっとうな里親か奉公先を世話してやってくれと頼んだ。晃矢は憎めない盗人だった。
 少年は達矢が引き取った。律は少年に懐中仏を渡した。
 達矢と晃矢は違った。着物は藍井の由郎が買うことになった。

 約束 十五年前の千恵の許嫁が、妻を亡くし、千恵に後妻にと申しこんだ。雪永も類も千恵が決めることだからと口を出さない。千恵は律の所に来る。律と千恵は、義父の清次郎から茶道を習う。千恵が事件の後、十年くらした家・椿屋敷で茶を入れ、律と話した。村松に断りを入れた。


2022年9月10日土曜日

手作りかつお節図会

手作りかつお節図会 大海淳 



2022年9月9日金曜日

野菜の酢漬けと展開レシピ

野菜の酢漬けと展開レシピ 野口真紀

ミニトマト 20個、 ニンジン 2本、 紫キャベツ 4分の1、 ズッキーニ 2本、 長いも 400g、 ミョウガ 9個、 蒸し大豆 140g 、柴タマネギ 2個、 ショウガ 100g

カリフラワー2分の1 塩を入れた熱湯で固めにゆでる。
白ねぎ 太いもの2本 3cmに切り熱湯で1分ゆで、水気を切る。
ミックスキノコ エノキ小一袋 シメジ 1パック マイタケ 小1パック熱湯でゆで水気を切る 
切り干し大根 水で洗い熱湯にくぐらせ水気を切る。水を絞る必要はない。
煮干し そのまま食べられるタイプ20g 白すりごま 大5を入れる。



米酢 2分の1カップ
砂糖 大さじ3
塩  小さじ2分の1

キュウリ 5〜6本 しま目に皮をむく。
卵 鶏卵 5個・ウズラ卵の水煮 12個

米酢 1カップ
砂糖 大さじ6
塩  小さじ1


酢みそ 白みそ 大さじ4
    信州みそ 大さじ2
    米酢 大さじ2
    砂糖 おおさじ2
  保存期間 冷蔵で2週間

2022年9月8日木曜日

空也十番勝負(六) 異変ありや

空也十番勝負(六) 異変ありや 佐伯泰英 

 寛政十年(1798)師走 磐音の娘・睦月と中川忠英の次男・英次郎が祝言を挙げた。中川忠英は勘定奉行、元長崎奉行だった。睦月は兄・空也が戻るまで両親の傍らにいることを願った。

 空也は酒匂太郎兵衛との勝負で酒匂を倒したが、空也は重傷を負った。長崎会所の町年寄りの姪・高木麻衣と長崎奉行所の密偵・鵜飼寅吉に出島に運ばれ異人の外科医の手当てを受けた。上海から外科医・カートライト博士を呼び寄せ手当てを願った。手当てすることも無しと言われるが空也の意識は無かった。
 知らせが江戸に着いた。藥丸新蔵が道場を閉じて江戸から立去った。
 年が変わった。高麗人・李遜督が長崎会所を訪れた。麻衣は内密に空也の体を会所に移した。遜督は二人きりで剣を振るった。三日目の朝、空也の目が開き、修理亮盛光の柄を掴み抜いた。遜督は消えた。酒匂との勝負から二ヶ月が過ぎていた。
 空也は生きていると江戸に知らされた。
 空也の体力は見る見る回復する。マスカット銃の仕組みを理解した。分解し組み立てる。
 空也は松平辰平と初めて木刀を構えた。構えて一刻、不動の立ち合いで終わった。
 
 空也は麻衣と寅吉と一緒に、長崎奉行と長崎会所の要請で上海に行く。カートライト博士に礼を言う。あんな傷を受けた者が三ヶ月でほぼ戻ったとは信じられないと言われた。
 設立されようとしている、イギリス東インド会社の大株主の一人の娘・アンナが誘拐された。相手は「蕃族王黒石」参謀は薩摩の仮屋豪右衛門、示現流。アンナを助け出して欲しいと頼まれる。
 空也は目撃者を探し、敵の隠れ家を探す。アンナを助け出し、薩摩人と言っていた高麗人・長南大を倒す。黒石と名乗っていたのは上海を闇から支配していたポルトガルのフェルナンデス・ソーザ公爵だった。東インド会社所有の砲艦の警固兵の面々が取り押さえる。

 福江島に着いた空也は、馴染の肥後丸で次ぎの地に向かうことにした。アンナの命を助けた礼に貰った感謝の品々と船室で書いた文は、御用船で尚武館に送られた。

2022年9月6日火曜日

脳科学捜査官真田夏希⑬ ナスティ・パープル

 脳科学捜査官真田夏希⑬ ナスティ・パープル 鳴神響一

 神奈川県警の心理分析官・真田夏希は、驚愕の異動を伝えられた。警察庁に新設されたサイバー特別捜査隊の隊員だった。特捜隊の庁舎で待ち受けていたのは織田信和だった。
 一昨日から銀行システムや交通系決済システムを攻撃した敵と戦うため夏希の力が必要だと言う。

 東京航空交通管制部のシステムを狙うというメッセージが来る。メッセージの発信元が長野県だとわかった。横井に逮捕状の請求を任せ、織田と夏希は長野へ向かう。
 新幹線が止まる。パトカーを要請した警察から来たのは、織田と真田の逮捕状を持った警察官だった。すぐ、副所長がとんできて、間違いだったことが判明する。借りたパトカーで長野に向かうが、行く先々で通行止め、待ちかまえていたのは、メッセージの送り主・エージェント・スミスだった。夏希のスマホをクラッキングされていた。
 織田がサイバー特捜隊長になった時から、織田を研究したと言う。最高実力者だからと彼は言うが、織田は納得できないようだ。倉庫に手足に手錠をかけられ椅子に座らせられた。時限爆弾を仕掛けたと言う。赤い文字は9:59を示した。
 織田はあなたがどんなに大切な人であるか痛いほど分かりましたと言う。夏希も私にとっても織田さんは大事な存在です。と言う。
 5・4・3・2・1・・・。次巻「イリーガル・マゼンタ」につづく

2022年9月4日日曜日

ドルチェ

 ドルチェ 誉田哲也 
 元捜査一課刑事・魚住久江42才独身。一課復帰を拒み所轄で十年。今は練馬署強行班係。
 捜査一課殺人犯捜査第三係、警部補金本健一は、捜査一課に復帰を誘う。

 袋の金魚 一才二ヶ月の子供・守が溺死、母親・由子が行方不明、通報は父親。久江が父親・斉藤明に会いに行く。守の重症の小児喘息のため外出もままならなかった。久江の調べでは、由子は献身的に守るの世話をしていた。
 斉藤由子が出頭する。何も喋らない。
 久江が、語りかけていると、由子が喋りだした。由子は十ヶ月前に殺され、自分は身代り、浜田仁美。守と生活し始め由子が殺されていることを知った時には守が離せなくなっていた。守と風呂に入り、仁美は疲れで眠ってしまった。気が付くと守は顔を付けて浮いていた。布団に寝かせたが、息をしなかった。怖くなって逃げた。
 本当の由子は六月に白骨で発見され、大腿部の金属プレートから斉藤由子の名前が出、金本は由子が生存しているか調べに来ていた。守の事故死は翌々日に起こった。

 ドルチェ 川西恵22才 大学四年、十時半頃、暴漢に襲われ左脇腹を刺された。全治三週間。科学捜査研究所の柚木に彼女が持っていたハンカチの調べを頼む。
 柚木は昔の仲間だった。柚木の妻・奈津子を知っている。柚木の指に指輪がないことに気が付く。金本に尋ねる。三年前に別れたと教えられる。柚木は近々再婚する。
 ハンカチに付いた整髪料から犯人は恵の家庭教師をしている教え子と分かった。恵が出頭させた。
 金本が柚木の話しをした。柚木が仕事に没頭し、なっちゃんは寂しさに耐えきれず、アルコールに頼り内蔵がボロボロで入院した。アルコール依存症が深刻だった。一年後、なっちゃんがお荷物になるからと離婚を言い出し、離婚した。ようやく、最近乗り越え支えてくれた同僚と結婚を考えるようになった。

 バスストップ 二十一才の大学生・飯森淳子が、何者かに抱きつかれた。大声を出し抵抗しそれ以上の被害はなかった。交番から峰岸巡査長が臨場。現場保存、鑑識に足痕を取らせた。峰岸は捜査課への転属希望。捜査に加えて欲しいと頼む。農協前でじーと見ている人がいたと言った。
 警視庁刑事部捜査第一課、性犯捜査第二係、佐久間晋介警部補が来る。所轄に乗り込み、調書を出せと言う。久江は佐久間の態度に我慢ならない。俺が仕切ってやると言う。
 農協を見張る。バスが来る前から男が現れ、バスを見送る。青年は佐久間に捕まり署に連れて行かれる。久江は彼・増本秀弥は無関係と判断した。彼は何も言わない。翌日、佐久間が、仕切る。久江は峰岸と自分の判断で動く。昨日と同じバスに乗り、増本が見ていたと思われる男性に声を掛けた。彼らは恋を禁じられバス亭で顔を見ることだけで良しとしていた。秀弥は彼に迷惑が掛かることを気にして何も言わなかった。
 峰岸がとって貰った足痕が決め手になって特捜本部が被疑者を確保した。久江は佐久間に湯飲みのお茶を頭からかけた。佐久間が凄んだ瞬間、里谷が現れ佐久間の馬乗りになる。久江は里谷を止め、上から圧倒的な力で押さえつけられる恐怖、屈辱、少しはお分かりになりました?と言った。

 誰かのために 峰岸が刑組課強行犯係に正式配属になった。印刷工場で障害事件発生。被害者の一人は蹲り頭に怪我、一人は手。加害者は堀晃司。堀は返してくれと喚いていた。堀は結束器で殴った。
 堀家に行き部屋にいた晃司を署に連れて行く。半年、印刷会社で働き、三日前に辞めていた。堀が返せと言ったのは図鑑だった。原口がザリガニと捕まえてきたのは毒を持ったサソリだった。堀は飼っていたサソリを捕まる前に窓から撒いていた。
 堀は仕事を辞める時、ここでも自分は必要とされなかったと言ったと聞いた久江は、晃司に、始めから必要とされる人はいない。みんな一所懸命努力して必要とされる人間になっていくんだと思うと言う。俺も頑張ったという晃司に誰のために?お金のため、自分のため?誰か人のために頑張ってごらん。サソリは十七匹。みんな見つかった。

 ブルードパラサイト 医者に運びこまれた男・吉沢徹が女房に刺されたと言う。生まれて半年の赤ちゃんがいる。会社で徹夜して帰ると、いきなり殴りかかり、包丁を持ち出して刺されたと言う。妻・明穂の所に行く。
 明穂を署に連行する。明穂は完黙。一ヶ月前、夫・徹がモデル出身の女優・阿川佑子との付きあいを週刊誌に報じられた。吉沢は昔は付き合ったが、今は何もないということで明穂も納得したという。阿川が大麻所持で捕まった。その時、久江は明穂の気持ちが分かった。
 阿川の本名は美保だった。子供の名前も美保だった。美穂ではなく美保だった。昔の恋人の名を付けたことがわかった時、夫が帰って来た。
 久江が徹のマンションを訪れた時、同時に女が尋ねてきていた。久江は徹の頬を張った。あなたの罪を裁くことは、今の法律では無理。自分の無力が情けない。女に奥さんすぐ帰るわよと言った。

 愛したのが百年目 住宅地の路上で乗用車と通行人の接触事故が発生。車で送って来た友人が、バックと前進を間違え、前の人を撥ね、門柱にぶつかり後に倒れて頭を打ったようだ。
 送ってきた友人・柿内は酒気帯び運転だった。神野は助かった。妻・逸美もいれて三人は大学の時から親友だった。娘・和美は大学四年、就職先も決まっていた。柿内の心配をする。
 久江は柿内の動きが気になる。柿内は酒を飲んでいなかった。事故を起こしてから酒を飲みウイスキーを入れていたペットボトルを捨てに行っていた。柿内は女優と不倫した。週刊誌が写真を掲載しようとした。止めるために、女優の広告クライアントを経由して掲載見合わせをさせようとした。週刊誌の発売元の出版社に和美の就職が決まっていた。娘の就職の取り消しを匂わせた。神野のスキャンダルもみ消しは家族のためではなく、事務所の利益のためであり、和美の就職が駄目になっても退く気がないと言ったことで、柿内に殺意が芽生えた。事故にすれば逸美に犯行動機がさとられないと思った。
 久江は調書を書く。殺人未遂だが、中止未遂になる。柿内は直後に救命措置を行い家人を呼び、救急車も呼んでいる。
 逸美と和美が柿内に差し入れを持ってきた。柿内の待っている。ちゃんとわかっている。どんな結果になっても受け入れられると伝えてくれと言われる。和美は内定を辞退した。来春、警察官採用試験を受けることにした。


2022年9月2日金曜日

東京バンドワゴン ⑯ グッバイ・イエロー・ブリック・ロード

東京バンドワゴン ⑯ グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 小路幸也


 美術品輸送専門ドライバーをしているクレイグ・イーデンは、別の物を探している最中、「青の貴婦人」と呼ばれる絵を見付けた。十何年か前にスチュアート美術館で盗まれた物だった。最悪の保管場所で最悪の保存状態で置かれたようで修復が必要だった。優秀な修復士、交渉人を頼めば、保険で八十ポンドは貰えると考えた。兄のようなハリーは腕のいい修復士だったが、車椅子生活になり仕事が出来ない。そのためにもお金が欲しかった。

 イーデンは、ニュー・スコットヤードの〈美術骨董盗難特別班〉の警部補ロイド・フォスターに仕切りを頼んだ。ロイドの娘・モニカは病気で車椅子生活だった。交渉人をケネス弁護士に頼んだ。ハリーの代わりにケネスは友人のマードックに修復を任そうと思った。マードックを犯罪に巻き込まないために誘拐をする。

 そんな計画が持ち上がっているところに、東京から我南人と研人率いる東京バンドワゴンがオックスフォードのマードック宅にやってきた。キースが、研人たちの高校卒業祝いと結婚のお祝いにとキースのスタジオを貸してくれた。アルバム作りにやってきた。

 マードックが誘拐され、ケネスは親身に相談相手になり、マードックを帰す予定だったが、東京からきた客人が大騒ぎになった。
 一瞬でイギリスに行けるサチがいた。普通なら何も出来ないサチだが、盗難特別班の事務官・ジュン・ヤマノウエはサチが見えた。話しも出来た。サチから話を聞いたジュンは、監視カメラコールドセンターの映像から、マードックの監禁場所を見付ける。
 ジュンが倉庫に着いた時、捕まってしまう。前に着いていた研人たちも、藍子も捕まっていた。ケネスもロイドも捕まっている。筋書きが狂った。
 覆面の三人に、マードックとマードックを補佐しているハリーに強制されていた。

 ヘリの音が近づき、赤い線で三人が狙われる。我南人が現れる。マードックの友人・J・Bが現れる。三人の覆面男から銃を奪い、テロ対策部隊が三人を連れて行く。
 三人は、監視カメラコールドセンターのナイトA・D・Fの三人だった。今までも立場を利用して犯罪を犯していた。J・Bは内偵を進めていた。そこへキースから連絡入った。
 修復が終わり、ロイド警部補が預かり、クレイグが運んで美術館に返す。何もなかったことにする。
 研人はハリーとモニカのためにチャリティライブをやろうと提案する。藍子と三人が買い物に出た後、ビーンは提案する。
 ロイドに本来なら懲戒免職だ。未遂であり情状酌量する代わりに、不正警官、事務官に眼を光らせて欲しい。ジュンは元々ロイドは以前の上司の不正を見過ごせなかったためにこんな閑職にいるのだと言う。
 ビーンは、モニカの病気・難病の脊髄炎を国の治療研究対象とする。そうすれば暮らしに充分な費用が出る。