料理をつくる人 アンソロジー
向日葵の少女 西條奈加
元神楽坂に住んでた夫婦の娘が、蔦を訪ねて来た。母が亡くなった。母が大切にしていた絵を父に渡して欲しいと言う。二十歳の母の絵だった。画家の父が描いたものだが、絵は引き裂かれていた。誰が引き裂いたか分った望と蔦は、娘を隣の部屋に隠し、父親を呼んだ。再婚した父、結婚を反対した祖父が亡くなった時に会いたいという母娘に会わなかった父を恨んで破いた娘。父が会えなかった理由、再婚の理由を陰で聞く。久方ぶりの父と娘の対面になる。
白い食卓 千早茜
作家が無理難題を押し付けても、何も言わず食事を作る料理人を雇った。六年が過ぎた。愛情がないとこんな事してくれないと言われた作家は、入籍を言葉にした。彼女は来なくなった。見付けた彼女は、あなたは尊大で贅沢な何より手のかかる愛玩物だったと言った。彼は倒れた。心筋梗塞、血管がどろどろだった。
メインディッシュを悪魔に 深緑野分
一流のシェフになってレストランを経営するのがジュリエットの夢だった。老人に声を掛けられシェフになり、人気のレストランオーナーシェフになった。
クリスマスにお客が一人も来ない。悪魔でもいいから誰か来てと祈るジュリエットの前に一人の客。客の導きで連れて行かれたのはたぶん悪魔の前。ずっと前に現れた老人は悪魔だったのだと思い料理を創る。サタンは満足してくれたが、あの日の爺さんではないよと言われる。老人は、迎えに行った客だった。サタンがあなたにちゃんと素直な料理を出せば罰は免除になると言った。悪魔は、接触した人の記憶を消すと言う。ジュリエットはあの時作ったビーフシュチュウを作る。悪魔は食べに来た。ジュリエットに分る臭いを残して帰った。
冷蔵庫で待ってる 秋永真琴
新井沙織は大学に入り、文芸部に入った。三年生の三上部長と付き合うようになる。秋から部員になった小椋詩歌が、沙織の作品の批評をする。クリスマスまでは付き合っていた。連絡が無くなった。文芸部へ行かなくなった。小椋は三月で部を辞めた。三上に会えませんかと送ったが、就活で忙しい。またこちらから連絡すると送られてきた。沙織は外食が食べられなくなった。仕方なく自炊する。内定し、三上から 連絡があった。新井さんを上手く守れなかった。謝りたかったけど連絡する勇気が出なかった。今晩は忙しい?また話したかった。に対して沙織は、「漬け込んでいる豚肉が冷蔵庫で待っているから、今日は帰ります」そうか、それが君の答えなんだね。沙織は嗚咽をこらえ、泣きながら帰った。
数日後、以前厳しい評価だった高校生の青春物を、性格や生活をもっと書き込んでみようと始めた。これが書き上げられたら外食に行ってみようと思った。
対岸の恋 織守きょうや
理貴の実姉・莉子が結婚する。義兄・薫ができ高校生の妹・映奈ができる。三才の時離婚した父母に別れて付いて行き、中学の時、母が亡くなり、父と姉に再会した。高校の時から姉と暮し、家事一般を理貴が担った。薫と映奈は連れ子同志の再婚で、二人は離婚した。二才で妹になった映奈は、薫と離れがたく、薫と住むことを選んだ。薫が許可した。
理貴と映奈は、結婚式の日、海岸で自殺するつもりで家をでる。薫の車で海岸に行き、映奈がトイレに行っている間に理貴は、車を動かし見えないところで自殺を謀る。映奈が気が付き薬を飲み車に目張りをし、練炭に火をつけた理貴を助けてしまう。
死に損なった。薬が切れるまで寝て電車で帰ろう。
夏のキッチン 越谷オサム
さっき、お昼ご飯を食べたところなのにお腹が空いた。コンビニ行こうかと思うがやはり外に出られなかった。小学6年生の翼は、外に出られなくて学校へも行っていない。
お腹の空いた翼は、初めて自分でカレーを作る気になった。包丁は使ってはいけない決まりなので、ピーラーを使う。箱の説明を見ながら、手の皮をピーラーで擦りながら野菜を炒める。水を入れる頃から母親が現れアドバイスする。ルーを入れ出来上がり。母親はお姉ちゃんとカレーマスター今は、総料理長に宜しくと自分の仕事部屋ではなく和室に入り、けっこう美人に撮れてると言った。仏壇の写真の中で笑っている。姉と父親が帰ってきた。翼は、コンビニに福神漬を買いに行った。
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