新・酔いどれ小藤次〈十二〉 夏の雪 佐伯泰英
十一が読めていない。
小藤次と駿太郎親子は、白書院下段の間で十一代将軍・家斉と世子・家慶と御目見得した。帝鑑の間には幕閣要人が、反対側には大名が控えていた。二人は広縁で真剣で来島水軍流正剣十手、序の舞を披露した。五升の酒を飲み干し、小藤次が作った久慈行灯を並べ、紙束を斬り分け雪のように見せた。小姓たちも加わり色紙を斬り分け花火に見せた。
大名から望外川荘に四斗樽の酒が次々と届く。
駿太郎の乳母・さとの父親・俊吉は花火作り名人だった。右手が不自由になり仕事を辞め、病に臥せっていた。息子・華吉は花火職人だが半人前だった。俊吉のいた緒方屋は今年でお終いかとも言われている。不景気な上に職人がいない。小藤次は俊吉の最期のため、緒方屋に花火を頼み、俊吉が職人を教えることを許してもらう。俊吉は最後の気力で息子と職人たちに自分の技を気持ちを教え込む。
大名から届けられた酒樽を三河蔦屋に引き取ってもらい四十両で打ち上げ花火を頼んだ。
市川團十郎を強請る、南町奉行所の悪清水と呼ばれ奉行も手を焼いている非常取締掛与力を倒した。
川開きの日、鍵屋玉屋が終わった後、水戸家石揚場から緒方屋の乱れ打ちが上がり、華吉の上げる尺玉が上がった。俊吉は満足げに微笑みながら亡くなった。大名には酒樽の行き場が手紙で知らされ、家斉も花火見物をしたようだ。
駿太郎の実父の墓に参り、老中・青山忠裕の誘いもあり父母の故郷・丹波篠山へ行こうと言う話になる。
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