長屋道場騒動記〈三〉迷い熊阻む 芝村凉也
菓子屋「恵比寿屋」の道場に仮住まいする者の長屋が出来上がった。道場で練習出来ない間野生馬は玄武館で北辰一刀流を学んでいた。師範代・栄次郎とも行き来があった。
北町の同心・甘楽から十手を預かる段平は、菓子屋恵比寿屋の菓子職人・道介の女房・光に目を付けていた。道介と同じ長屋の左官職人・定吉と振り売り・実太をイカサマ博打に誘い込み追い込んでいた。段平の女・縫の旦那・近江屋長左衛門が妾宅を訪れた時、段平が一緒に悪事を働いている関口栄之進が縫と浮気をしていた。見付かった関口は近江屋を殺してしまう。呼ばれて行った段平は、関口に縫も殺させ、刃物を持った者と紐を持った者に押込まれ殺されたことにした。押込んだのは借金に困った定吉と実太だとし、二人を捕まえに行く。二人と一緒にいた生馬は、刀を持っている事で二人の共犯だと言われ捕まる。生馬と一緒にいた栄次郎が生馬のアリバイを証明し、段平の捕縛の間違いを言い張る。玄武館の名前が出、水戸家の名前が出た事で三人は解き放たれる。
南町同心・反町款弥から十手を預かる仁蔵は二人のアリバイを調べる。段平が証人を脅かしながら調べている様子を甘楽に見せる。仁蔵は犯人が関口であること、段平が犯人でない者を無理槍犯人に仕立て上げている事を調べ上げる。南町の同心が北町に遠慮して言いだて出来ないことを知っている段平に、生馬は箱訴することを言う。関口は生馬に斬りかかりあっという間に倒された。黙って段平は仁蔵に捕まったが、甘楽に預けられ仁蔵の罪を問う事は無いだろうと思われた。甘楽は御役目を辞し息子が見習い同心になった。
六月二十七日、信抜流・間野道場の道場開きが行われた。
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