芙蓉の干城 松井今朝子
桜木治郎の家に居候する妻の従妹・大室澪子は、歌舞伎座で陸軍の軍人・磯田遼一と見合いをする。正面の桟敷の客が二人、居眠りして途中で退座したらしいことを見ていた。翌朝二人が、三十間掘りで死んでいるのが見つかる。右翼結社の大幹部・小見山正憲と大坂の芸妓・照世美だった。磯田たち若い軍人は小見山が殺された事で計画していた反乱を起こせなくなったようだ。
桜木治郎は同じ日、四代目荻野宇源次の息子・荻野藤太郎が、宇源次を継ぐ計画があることをしる。治郎は若くして亡くなった宇源次の評伝を書くことにする。
藤太郎の母は大坂の芸妓で照世美の妹分・梅香だという事が分った。小見山は麻薬を密売していた。麻薬が照世美から梅香に宇源次へと流れた。五年前、宇源次の周囲が気がつき、大磯の別荘で療養させ、ほとんど治りかけたころ、宇源次の居場所を知った小見山が、息のかかった宇源次の後援会のまとめ役を使って拉致させた。小見山は麻薬を使って宇源次に役者買いの相手をさせた。大坂の宇源次を見付けて助け出したが宇源次は亡くなった。梅香も亡くなった。藤太郎の襲名にあたり、後援会の出資者が小見山であることを知った、沢之丞付きの衣装方三上秀二が、道具方の者と一緒に小見山を殺していた。宇源次の敵討ちと藤太郎が宇源次のようにされることが許されなかったから殺したと白状した。
治郎が聞き込みをし、舞台道具の人力車に血痕を見付けたりしたため、道具方の者を二人ころしている。
三上は宇源次の父親・大御所・沢之丞の意向を受けて動いた可能性があった。治郎は沢之丞にあたるが沢之丞は知らない事だったようだ。三上が入っている留置所に小見山の片腕だった男の乾分が捕まり入り、三上は小見山の仇討と称して殺された。
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