菊花の仇討ち 梶よう子
安政三年 1856年
北町奉行所同心・中根興三郎 兄の急逝で家督を継ぐ。普通は兼任する両御組姓名掛っを三年。興三郎は十五年変化朝顔を作り続けている。
くだりの小袖 去年の大地震後、子供を利用したかっぱらいや小さな盗みが続いていた。興三郎は変化朝顔の小袖を見付けた。植木屋の留次郎の娘・みねが気に入って買った。みねは幼馴染みの徳を探して欲しいと頼む。小袖の変化朝顔は、大坂で咲いた花だった。咲かせた者は着物の絵付けにし、妹に送っていた。送られた着物は徳が手に入れ古着屋に送っていた。徳は兄が地震で身体が不自由になった妹に送った物だと知り古着屋から買い戻そうとしていた。徳は子供たちと生きるために盗みをしていた。徳は隠密廻り・松沢福太郎と奉行所に行き、全てを話した。
鳴けぬ鴬 中根家の雑事を全部こなしている藤吉。芸者・小梅がお座敷で客の財布を盗むために利用され、中根屋籐兵衛の名で料理屋に通っていた。
善の糸車 興三郎が時々朝顔の話をしに行く星陵塾の生徒・腰越順平のいる長屋に人の面倒をみることが好きというそめがいた。解き放たれた徳に店を持たせていた。足を怪我して面倒をみてもらっていた左官が怪我が治っても働かず、貰ったお金で博打をしていたことを知り愕然とする。他人の人生を変えてしまうもう真っ平と。興三郎は、一人で店をやれない徳、身寄りの無い徳と母子になれと背を押す。
菊花の仇討 興三郎は、中江惣三郎を知る。菊作りをしていた。菊作りの金持ちの菊に虫を仕掛、虫退治のあと奇麗に花を咲かせる。興三郎は中江と間違って命を狙われる。中江は留次郎に鍋島様の紹介を頼む。中江の父は吹上御庭で菊を作っていた。腕の良さに妬心を抱いた同僚に虫を仕掛られ枯れたため御役御免になった。父の作りたかった菊を作る夢を受けついだ。それが仇討だった。そのためにいろんな所に出入し、菊を手にする。中江は捕まる前に菊を見せる。「百種接分菊」だった。中江は捕まるつもりだったが誰も訴える者が無かった。興三郎はこの菊を咲かせ上様に献上されるといい杏葉館様もきっと口添え下さるだろうと言う。
花ぬすびと 成田屋留次郎が主催する花合せの客花・長助の花が無くなった。盗まれた。団扇に描かれた朝顔の絵を見て犯人が判った。花の手入れをされ見つかった。団扇売れの少年・勘吉が団扇絵師の兄に珍しい花を描かせたかった。勘吉の吟味の時、興三郎ともと同心で今は植木屋の岡本の一芝居で屹度叱りとするとなった。
わりなき日影 腰越順平の友人・夏川市之助の姉が地震以来行方不明だった。市之助の両親は亡くなり、姉は親戚から帰り道で地震に遭っていた。市之助はもうすぐ上州へ行く。そんな時吉原の遊女の仮託から吉原までの行列の中に姉を見た。姉を探して欲しいという願いだった。菊水だった。始めは姉と認めなかったが、やっと認めた。目が悪くどんどん見えなくなっているらしい。地震のあと世話になった夫婦のために身を売ったのだった。菊水と夏川家の変化朝顔の種10粒と交換された。二人は上州へ行った。
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